マシュマー・セロ率いるネオ・ジオン軍と共に「ノックス」の街に現れたのは、ゲゼを駆る765プロの高木順二郎社長であった。
バルバトスに洗脳されている彼は、高槻やよいに投降を迫る。
やよいは反論しようとしたが、エンドラが街に危害を加えてしまい、心が黒く塗りつぶされていく。
街を人質に取ったネオ・ジオン軍がシンデレラガールズの面々に砲撃を放っていた為、誰も助けに入れず万事休すかと思われた際、信じられない事が起こる。
ネオ・ジオン軍の後方からやって来た「お目付け役」という日下部若葉が、街を破壊するエンドラの砲塔を次々とガ・ゾウム(ガンナータイプ)で破壊し始めたのだ。
幼いミネバを虐殺者にするのは許さないという彼女に、ハマーンを慕うマシュマー達が対立。
高木社長もその意思統一が出来ていない軍の在り方に戸惑うが、その隙を見計らい、やよいが半狂乱になって反撃を開始する。
ソシエ・ハイムやメシェー・クンの援護も有り、あと一歩で彼を撃破する事が出来たが、優しい社長の姿が思い起こされ、トドメを刺せずに撤退されてしまう。
混乱状態に陥ったネオ・ジオン軍に対し、シンデレラガールズも迎撃を行い始める中、パワードジムカーディガンを駆る本田未央は、茫然自失に陥ったやよいのカバーに入る。
その彼女の視線に入ったのは、マシュマーのガルスJと対峙する栗原ネネのジーライン スタンダードアーマーであった。
ジーラインのコックピット内で、ネネは愛用のハロに確認を取る。
「ハロ………近くに………特に崩れた城の中に、人の気配はある?」
「ケハイナシ!ケハイナシ!」
「そう………。」
ハロの言葉に少し安堵したネネは、後ろでやよいのM1アストレイ(シュライク装備型)をサブアームのシールドで守る未央に、お願いをする。
「未央ちゃん………やよいちゃんの事、お願いします。後、何か危なかったら伝えて下さいね。」
「ネネちん………1人で戦ったら、ダメだよ?」
「それくらいは分かっています。でも………気遣ってくれて、ありがとうございますね。」
ネネは、心配してくれる未央に感謝すると、ガルスJに向き直る。
搭乗するマシュマーは、作戦行動を思いもよらぬ所で邪魔された事で、かなりの苛立ちを見せていた。
エネルギー・ガンをとりあえず、空中のガザ隊にバースト・ナックルを叩き込んでいる藤原肇のストライカー・カスタムに撃っているが、彼女は器用に機体を捻り回避している。
そんなマシュマーに対し、ネネはおもむろにショート・ビーム・ライフルを足下目掛けて撃った。
「ぬおッ!?貴様………!」
「確か、マシュマーさんでしたね。貴方には、大切な方はいますか?」
咄嗟にビームを回避したマシュマーは、ネネから発せられた質問に首を傾げた。
いきなり戦闘中に何を聞くのか?………と感じたのだろうが、彼は即座に迷いの無い言葉でハッキリと返答してくる。
「私の大切な者は、勿論、ハマーン様だ!ハマーン様こそ、私が仕えるべき一番の主!」
「では、その一番の大切な主が間違いを起こしている場合、どうしますか?」
「な、何………?何を言っている!?」
「貴方は大切な主を………叱る事が出来ますか?」
ネネの言葉を聞いたマシュマーは、目をパチクリさせる。
そんな事態に陥る事は無いだろうと言いたげであったが、ネネはショート・ビーム・ライフルを構えながらも、冷静な口調で言った。
「私には、大切な妹がいます。でも、妹が間違いを起こしたら、姉として叱る事はあります。それは、当然の事では無いでしょうか?」
「まさか………私にハマーン様を叱れと!?」
「先程の若葉さんとのやり取りを聞いている限り、貴方はこの作戦に疑問を覚えていたはずですよね?」
本当は「シャングリラ」でもそうだったのだが、マシュマーは騎士道を重んじる部分がある。
卑劣な策を嫌い、正々堂々と戦う事を望む武人なのだ。
そんな彼が今回、やよいを降伏させるために、「ノックス」の街を人質に取るという非道な戦術を使った。
勿論、色々な葛藤はあっただろうが、一番の行動理由は、ハマーン・カーンが命じたからだ。
「本当に大切な人であるのならば、そのハマーンさんの命令に背いてでも、逆に説得しようとは思わなかったのですか?」
「貴様が………ハマーン様の何を知って!」
「そうですね、知りません。これは、私の身勝手な持論です。でも………もう少し言わせて下さい。貴方が、やよいちゃんの何を知っているのですか?」
「やよいの何を知っている………だと?」
最初に出会った「サイド7」で助けて以降、ネネはやよいと同部屋だ。
だから、彼女の悪夢を一番間近で見て来た。
夜中にうなされて、脂汗をかいて、時に目覚めてわんわん泣きだす少女の姿。
ネネにしてみたら、自身の妹に重ねる側面があった。
勿論、やよいの大切な人は水瀬伊織だ。
自分はあくまで、その代わりの立場に過ぎない。
それでも………彼女のような真っすぐな少女が、日に日に苦しみ自分に泣きついてくる姿は、耐えられない物があった。
「部下を残虐に殺し、同胞たちを裏切っている者が何だというのだ!大体、貴様のような者が、ハマーン様を非難する理由など無い!」
「確かに貴方の言い分も尤もです………多分、私は今とてつもなく機嫌が悪いだけなんだと思います。幼いミネバさんを利用するハマーンさんと、何も考えず妄信しているだけの貴方に、八つ当たりをしているんですよね。」
「妄信だと………!?」
いよいよ頭が沸騰しそうになって来たマシュマーは、エネルギー・ガンをネネ機に向ける。
それに対し、彼女はあまり表情を変えなかったが、静かに宣告した。
「私は………貴方を許さない。」
「貴様!」
ガルスJのエネルギー・ガンが火を噴いた。
ビームはコックピット目掛けて放たれるが、その分かりやすさ故にネネの力量でも、ルナ・チタリウム合金製のシールドで防ぐことが出来た。
しかし、ビームコーティングをされていないシールドは、半分溶解する。
「搦め手を使います………!」
それに対しネネは、バックパックの2門のガトリング・スマッシャーの実弾とショート・ビーム・ライフルを連射する。
だが、横にステップを踏んだガルスJを直接狙ったわけでは無く、自機と相手を結ぶ間にある城の瓦礫に、一斉砲撃を炸裂させたのだ。
「目くらましか!?」
ステップで移動した事が災いし、広範囲に弾幕を放たれた事で、煙がもうもうと立ち上る。
完全に視界が封じられたマシュマーは、油断なくエネルギー・ガンを構えた。
やがて、目の前の視界の中から影が見える。
「真正面からとは………愚かな!」
咄嗟にビームを放つマシュマーだが、爆発を起こした物を見て目を見開く。
それは、投擲されたショート・ビーム・ライフルだった。
「しま………っ!?」
「覚悟!」
マシュマーが気付いた時には、ジーラインはジャンプして跳び上がっており、右手にビーム・サーベルと左手にシールドを構えながら、ガルスJ目掛けてバーニアを吹かして突撃していた。
咄嗟にマシュマーは、胸部の「ミサイル・ランチャー」を放ち、ネネ機を迎撃する。
「跳んだのが災いしたな!隙だらけだぞ!!」
ミサイルは、破壊力のある2門のガトリング・スマッシャーと構えたシールドに直撃し、ネネ機が爆発に包まれる。
だが、爆炎の中から出て来たジーラインは、ガトリング・スマッシャーを失っていながらも、シールドで何とかコックピットへの直撃を防いでいた。
「落とします!」
「な!?」
マシュマーが慌ててエネルギー・ガンを捨てて次の武装を使用しようとした時には、全てが遅かった。
頭部から右腕に描けて袈裟斬りに斬られた事で、ガルスJは半壊する。
本当は真っ二つにしたかったが、ネネが機体の爆発とそれによる街への被害を恐れた為、撃破には至らなかったのだ。
しかし、完全に行動不能になったガルスJは、後はコックピットを貫かれるだけであり、マシュマーは慌てて脱出をする。
「ぐ………っ!?」
ところが、そこで彼は見た。
バイザー越しにツインアイを光らせ、ビーム・サーベルを振り被るジーラインの姿を。
「許さないって………言いましたよね?」
完全にパイロットにトドメを刺すつもりでいたネネの殺気ある姿を確認して、未央はやよいにその光景を見せないように、視界を封じようとする。
だが、アラームが鳴り響いた事で、慌てて警告をする。
「ネネちん!あのガ・ゾウムが来た!」
「!?」
咄嗟に後方に飛んだネネの前にガ・ゾウムが………結果的にシンデレラガールズの味方になってくれた、日下部若葉のガ・ゾウム(ガンナータイプ)が背中を向けて降り立つ。
彼女は、機体を失ったマシュマーを、一応お目付け役である故に、回収しに来たのだ。
「………背中を向けていいのですか?」
「貴女は、私にトドメを刺さないでしょう?」
何処かゆとりのある様子で言葉を発した若葉には、大人の余裕があった。
彼女は去り際に、ネネに向けてこんな言葉を発する。
「ありがとうございますね。ミネバ様の為に、憤ってくれて。」
「私は、やよいちゃんの為に怒っただけで………。」
「それでもです!………ミネバ様は、こんな虐殺望みませんから。」
「貴女は………?」
ネネが若葉の寂しげな言葉に疑問を抱く中、何かの暗号通信がジーラインに届くのが分かった。
彼女は、それ以上は何も言わず、マシュマーを自機の頭部に乗せると変形して、飛び去って行く。
エンドラも一目散に踵を返して去り始めており、残っているガザCやガザDも帰還していったので、戦闘は終結したと見ていいだろう。
「……………。」
「ネネちん………何て文章が送られてきたの?」
最後まで油断なくやよいを守る未央に聞かれ、ネネは、恐らく若葉から送られてきたであろう文章に目を通す。
そこには、こんな事が書かれていた。
『私が仕えるミネバ様は、ミネバ様に在らず。普通の優しい少女である。』
「これって………まさか、そのミネバって子供は………。」
未央の言葉に、ネネは何とも言えない気持ちになった。
この文章通りに解釈をするのならば、少なくとも若葉が大切に想うネオ・ジオンのミネバという少女は本物ではなく、影武者………即ち傀儡のような存在であるというのだ。
とてもでは無いが、その正体と彼女に仕える若葉に対して、やり切れない想いがあった。
「………みんな一度、キャリー・ベースに戻ろう?避難してきた人達を何とかしないといけないし。」
高森藍子の言葉に皆が頷いた時であった。
また、夜空にヒビが入っていく。
「ま、まさか!?」
「ジェネレーション・ブレイクです!」
「空気読んで下さいよ!このひび割れは!」
穂乃香の警告に、思わず幸子が文句を言うが、ヒビは収まらず広がり空間が割れる。
次の瞬間、城の北側から猛烈な量の霧が、まるで生き物のように襲い掛かって来た。
「プギャーーー!?何ですか!?この霧は!?」
「な………何よ!?これ!?ロラン!前が見えないじゃない!」
「わ………わかりません。この兵器はディアナ・カウンター?それとも、ネオ・ジオン?」
幸子、ソシエ、ロラン・セアックそれぞれが戸惑う中、砲撃音が奥から聞こえてくる。
更に、時折ビームが崩れた城の近くに着弾するが、この状態では何が起こっているのか確認しようがない。
メシェーが必死に目を凝らすが、やはりダメそうだった。
「霧が濃すぎるよ!このままじゃ、不意打ちで落ちるって!?」
「藍子ちゃん!柚ちゃん!大き目の城の破片を持って、空中で構えて下さい!」
肇のトンチンカンな指示に、AEUイナクト指揮官型を駆る藍子とオクト・エイプを駆る喜多見柚は、首を傾げながらも大きめの破片を空中に構える。
肇は、バースト・ナックル用の吸着爆弾を右手に握った。
「も、モシカシテ、肇サン………?」
「霧の1つや2つ、バースト・ナックルで吹き飛ばします!!」
「と、とんでもない力技だね!?」
流石に爆弾を地面に叩きつけるわけにはいかなかったので、空中で爆発させて爆風を発生させようというのだ。
これには、柚も藍子も引いてしまったが、他に手段が無い以上、実行する。
「行きます!バースト………ナックルッ!!」
肇の気合と共にストライカー・カスタムはジャンプ。
持ち上げられた破片にぶつけられた吸着爆弾が、光を放つと共に、3体の機体は飛びのく。
空の上で発生した爆風は、思った通り霧を吹き飛ばし、城の北側の様子を明らかにする。
そこでは、ジェネレーション・ブレイクで飛ばされてきたのか、お洒落な柄のあるビーム・サーベルを構えた機体………ガンダムが戦っていた。
しかし、そのガンダムは防戦一方であり、更に北側の複数個所から飛来するビームを、必死に躱している様子だ。
だが、肇の力で霧が晴れ、複数の場所から赤いモノアイの機体が現れているのを確認した瞬間、そのガンダムは明らかに狼狽えた。
『お前が、デュランダルか!!』
『ガンダムファイターとして、もう少し発言には気を遣ってくれ!』
「な、何だ!?この気品の無いAIは!?こ………これは、ダミーか!?卑怯な!?霧に紛れて伏兵を忍ばしておくとは!」
ガンダムから男性の声が聞こえたが、その様子は明らかに憤慨している感じであった。
しかし、状況が分からない以上、とりあえずソシエがアイアンネイルで指をさして叫ぶ。
「ちょっと!?そこのキザな機械人形!貴方、一体何なのよ!?いきなり何、「ノックス」の街で暴れているの!?」
このソシエのマイクで、ようやくシンデレラガールズ達に気付いたのか、男はAIのモビルスーツ相手に身構えながらも、少しだけ振り向き驚きの声を上げた。
「ノックス!?クッ………次元の歪みにも巻き込まれてしまったのか。すまない、私はジョルジュ・ド・サンド。「ネオ・フランス」の「ガンダムローズ」を操る「ガンダムファイター」です。」
「ガンダムファイター!?その機体、「モビルファイター」なの!?」
通信チャンネルで驚きの声が上がったのは、キャリー・ベースで避難民の手当て等を行っている姫川友紀であった。
彼女は「ネオ・ジャパン」出身である為、どうやら男………ジョルジュと同じ世界線の知識に詳しいらしい。
ここで、輿水幸子が疑問符を発した。
「友紀さん、モビルファイターっていうのは?」
「えっと………。」
友紀は説明を行っていく。
モビルファイターというのは、モビルトレースシステムという、パイロットの体の動きを、そのままマシンに反映させられる機体の事であるらしい。
その機体を駆ってガンダムファイターは、1対1の「ガンダムファイト」を行うのだ。
国家間の紛争解決の為の手段としての、競技の形を取った代理戦争としてではあるが。
この言葉を受け、ジョルジュはジリジリと後退しながらも、あくまで冷静に話す。
「その通り。私は「ネオ・フランス」の旗を背負い、「ネオ・イングランド」代表のジェントル・チャップマンの「ジョンブルガンダム」と、1対1のガンダムファイトを繰り広げていたのですが………。」
ジョルジュが話す中、霧の中から現れたモノアイのAIである機体は、また言葉を発していく。
ところが、その内容は………。
『いやぁ………ガンダムは強敵でしたね。』
『こんな街守る価値なんか無い!俺はもう地球人の為に戦いたくない!』
「………思いっきり多対一だよね。」
「………しかも、何かムカつく事言ってるし。」
流石に苛立ったメシェーやソシエが尤もなツッコミをする中、ジョルジュは建物の影に隠れているチャップマンに対し叫ぶ。
「これは、どういう事なのですか、チャップマン!?貴方のどんな時にも、正々堂々と王者としての貫禄を見せつけるそのファイティングスタイルは、騎士の私にも目標であり理想でした………!でも、今の貴方は違う………!貴方は悪魔に魂を売り渡したのですか………!?」
ジョルジュの言葉を受け、北側の奥の建物から、僅かではあったが、長砲身のライフル………「ロングビームライフル」を携えた機体が半身になって顔を覗かせる。
その姿はジョルジュの言う通り、まるで悪魔のような物であった。
「闘いとは非常なものだ。勝つ者がいれば、必ず負ける者もいる。勝負の世界とは、こういうものだ………。」
「だからって、これは大人げないですよ!ルールを捨てては意味がありません!!」
ロランが反論をするが、チャップマンは聞き入れる様子が無い。
むしろ、声高に自身の主張を貫いていく。
「貴様には分かるまい!私は常に英雄でなければならないのだよ!!邪魔をするならば、貴様等纏めて「カッシング」の餌食になって死ねぇ!フフフフフ………ハハハハハハハハハハ!!」
「ちゃ、チャップマン………!?」
明らかに様子のおかしいチャップマンに、ジョルジュを始め皆が気圧される。
堕落した英雄との戦いが、ここで始まる事になった。
いつもは優しい栗原ネネさんが、怒りに燃える回。
マシュマーは本来騎士道を重んじますが、ハマーンの命令となると話は別。
しかし、それでいいのか?…という、一種のフラグのような展開になりました。
今後、マシュマーがどのようなルートを取るのかは、物語が進まないと分からないですね。
そして、いきなり始まったガンダムファイト。
ジョルジュ・ド・サンドも交え、更に面倒な事になりました。
…このカッシングのAIを動画版でネタで登場させた時は、やたらコメントで突っ込まれましたね。