モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第88話 PHASE7-10『招かれざる者』

崩壊した「ボストニア城」の北側で、ジェントル・チャップマンが、ジョンブルガンダムと大量のAIによるカッシングを駆使してきたのを見たシンデレラガールズ。

彼女達は、ジョルジュ・ド・サンドのガンダムローズに加勢する道を選び、またジョルジュ自身も高垣楓の指揮下に入る事を受け入れた。

 

カッシングのAIは低性能である事もあって、シンデレラガールズの前では敵では無く、次第にチャップマンは追い詰められていく。

彼は最後の手段としてジョルジュ機を直接狙うが、戦術の差を見せつけられ敗走。

 

ところが、ここでシークレット・ユニットが出現。

ヴェルナー・ニューロのゼーゴックが、765プロに従わない高槻やよいへの報復処置として、街にクーベルメの拡散ビームを放ち、更に破壊と虐殺を繰り広げてしまう。

何とか落下して更なる被害を繰り広げる前に、工藤忍がジム・スナイパーⅡ(ホワイト・ディンゴ仕様)で狙撃するが、ゼーゴックは撃墜前にクーベルメをパージ。

巨大な破片が落下して最悪の結末が待っていると思われたが、謎の砲撃がクーベルメを破壊してくれる。

 

だが、そこで綾瀬穂乃香が感じ取ったのは、コア・インパクト………アメリアス勢力の気配。

城の南側の通りを確認した彼女達の視界に入ったのは、3つの通りを埋め尽くさんばかりのザクタンクの群れと3機のヒルドルブ、そして………柳瀬美由紀の駆るドム・ノーミーデスであった。

本田未央が衝撃を受ける中、望まぬ戦いが始まる。

 

 

 

「えーっと、今からこの街を破壊します!逃げる人はさっさと逃げてね。抵抗したら………仕方ないけれど、ドッカーンかな。」

 

美由紀は中央の通りを北上しながらも、マイクで物騒な宣告をして、言葉通り破壊活動を始めた。

3つの通りに散らばった大量のザクタンクが、手持ちの武装で建物に砲撃を開始したのだ。

 

ザクタンクは本来、ザクⅡと「マゼラ・アタック」を合わせたリサイクル品であり、戦闘力は高くない。

しかし、両手に「MMP-80マシンガン」を持ち、ランドセルに「180mmキャノン砲」を背負い、更に機関砲代わりに「多連装ミサイル・ランチャー」を装備していたら、破壊力は侮れない。

そんな完全武装の機体が、一斉に街の至る所に砲火を浴びせているのだから、住人からしてみたら、たまった物では無いだろう。

 

「この機に及んで「ノックス」を更地にするつもり!?」

「どうするの、これ!?というか、あの子と知り合いなの!?」

 

ソシエ・ハイムが戦慄し、メシェー・クンが疑問を投げかけるが、言葉を投げかけられた本田未央はそれどころでは無かった。

自分とトランプでババ抜きをしたほどの親しい少女が、街を蹂躙している。

その事実に、自然と体が動かされた。

 

「待って下さい!」

「止めないでッ!ネネちんッ!!」

「1人で戦うなって、未央ちゃんは言ったじゃ無いですか!?」

「でも………みゆみゆは、あんなことを望む人じゃないんだよ!!」

 

咄嗟に、栗原ネネが駆るジーライン スタンダードアーマーのマニュピレーターで掴まれ、動きを止められた未央のパワードジムカーディガンは、振りほどこうとする。

しかし、それが叶わない為、未央は艦長の楓に向けて通信を送る。

 

「アメリアスやボスって人の指示なんだ!みゆみゆは説得できるんだよ!!だから………!」

「それで、貴女が危険になったら、どうするのですか!?」

「だったら………はじはじを一緒に同行させて!ダメだったら撃墜してもいいから!」

 

本当は、美由紀を撃墜なんてしたくはなかった。

しかし、そうとでも言わなければ、未央は彼女の所に行けない。

楓もその心の内は見抜いていたが、今は全員で協力して、この破壊行動を止めなければならなかった。

 

「………部隊を3つに分けます。中央の通りは肇のストライカー・カスタムが、左の通りは千秋のシグーアサルトが、右の通りは藍子のAEUイナクト指揮官型が、小隊長を担当してください。ザクタンクの無力化を第一に考えて!」

 

妥協案として、楓は美由紀との対峙を、一番機体の性能と実力を備えた藤原肇に任せる形にする。

未央は感謝しながら、先行する肇の後ろに我先にと付いて行った。

 

 

 

 

ザクタンクは、火器などの爆発を防ぐために、基本は接近してからのコックピットへの一突きが基本となった。

幸い中央の通りは、接近戦に尤も優れた肇が、2本のビーム・サーベルを駆使してザクタンクに迫り、次々と無力化していった事で、道が簡単に開けていく。

しかし、その猛進を見逃すほど美由紀は甘くない。

接近する肇に向けて、3機のヒルドルブと共に30センチ砲を一斉射する。

 

「全員、回避行動を!!」

 

肇の言葉で、後ろを追従していた未央と、ガンダム7号機に乗った渋谷凛、ジムⅢに乗った島村卯月が一斉に回避行動を取るが、流れ弾は建物を抉り更に破壊していく。

悲惨な行動を繰り返す美由紀に我慢できなくなった未央は、思わずマイクで叫んだ。

 

「みゆみゆ!もうやめてよ!!自分が何をやっているか分かっているの!?」

 

「最初に宣言したよ?みゆきはこの街を破壊するって。この世界全てを殲滅するつもりなのは、「マゼラン残骸」で出会った時に言ったよね?」

 

幼めの美由紀の声は、燃え盛る街のなかでもケロッとしている。

自分は破滅を望む者だと、認めているようなものであった。

しかし、未央はそれでも説得を続ける。

 

「それは嘘だよ!みゆみゆも、きりのんも、ありさ先生も、そんな事を望む人じゃない!大体、それはアメリアスやボスって人の命令なんでしょ!?」

 

未央が戦いの後で考えたのは、美由紀達が魂を管轄するアメリアス達に従わされているという可能性だ。

そうでなければ、心優しい彼女達が、破滅思考に陥り破壊行動を行う事も無い。

 

「みゆみゆは、ボスに従っているだけでしょ?アメリアスに従わされているだけでしょ!?」

 

「なるほどねー。未央ちゃんも鋭いねー。」

 

「だったら………!」

 

しかし、そんな未央のパワードジムカーディガンのすぐ横を、砲弾が通過していった。

30センチ砲ほどの大きさでは無かったが、その弾丸は近くの建物をまた破壊していく。

 

「みゆみゆ………?」

 

「武器………持たないと、死ぬよ?」

 

見れば、ドム・ノーミーデスの右手には、「ジャイアント・バズ」が握られていた。

何で?………と思った未央に、美由紀の珍しく冷徹な声が響き渡る。

 

「未央ちゃんの言っている事は、半分は当たり。確かにみゆき達は、アメリアスやボスに言われて破壊行為をしているよ。でもね………。」

 

ヒルドルブの1機が、ドリフトするように接近すると、両肩に付けられた「ショベルアーム」をパワードジムカーディガンに叩きつけようとしてきた。

未央は咄嗟に回避するが、そこにドム・ノーミーデスの腕に付けられた「大型ガトリング砲」がコックピットへの直撃コースで放たれる。

慌ててサブアームの2枚のシールドを重ね合わせる事で未央は防御するが、明らかに殺意を向けている美由紀の姿に茫然としてしまう。

 

「何………で………?」

 

「亜里沙ちゃんもアヤちゃんも………そして、みゆきだって、心が真っ白な天使のような存在じゃないんだよ?………どす黒いものだって、ずっと秘めているんだ。」

 

声のトーンを落とす美由紀の言葉を受け、未央は理解する。

美由紀の中には、れっきとした破壊衝動があるという事に。

いや、美由紀だけでなく、アメリアス勢力の母艦で出会った桐野アヤや持田亜里沙にも。

 

「そんな事をしたら………そんな事をしたらッ!本当に取り返しのつかない事になるよ!?」

 

「もう取り返しが付かない事になってるんだよッ!プ………母艦で言ったよね!みゆきは、カニ工場でみんなを失ったって!未央ちゃん聞いたよね!両親も消されたのかって!?」

 

パワードジムカーディガンに、今度は30センチ砲が至近距離から放たれる。

咄嗟にサブアームのシールドでまた防御をするが、破壊力が高すぎて盾が2枚とも砕けてしまう。

 

「あの時は誤魔化したけど、ハッキリ言うよ!みゆきの両親は、目の前で塵のように消えていった!みゆきだけ………置いて行かれたんだ!!」

 

幾らモビルスーツに乗る為に、24歳の体を駆使しているとはいえ、心は14歳の少女だ。

世界が消されるという理不尽な現実を前にして、心が狂わないわけがない。

美由紀もまた、亜里沙のように心を壊されていたのだ。

 

「だから………ここにいる家族をみんな不幸にしていいの!?そんなに幸せな家族を妬みたくなるものなの!?」

 

「妬みたくなるよ!幸せな家族なんて、みゆきはだいきらいだ!!だから、みんな消し去ってやるんだッ!!」

 

美由紀の暴論を前に、未央は愕然とした。

ここで未央自身は、気付いてしまう。

自分は美由紀の事を、友達のように思っていたことに。

だが………彼女の方は………。

 

「幸せな街も幸せな人も、みんな不幸になればいいんだよ!未央ちゃんだって………!」

 

「みゆみゆ!でも………!」

「どいて下さい!」

 

しかし、ここで横合いから肇のストライカー・カスタムが割り込む。

彼女は会話内容を聞き、これ以上の説得は無理だと感じたのだ。

だから、相手や機器をマヒさせるスパーク・ナックルとはいえ、拳を叩き込もうとした。

 

「不意打ちなんてくらわないよ!」

 

「な!?」

 

ところが、その一撃は間に入ったヒルドルブの1機に当たり、美由紀機まで攻撃が届かない。

反撃で放たれたジャイアント・バズを、何とか肇機は身をよじって回避するが、また建物が崩れてしまう。

未央が周りを見渡してみれば、残り2機のヒルドルブは、凛や卯月と交戦していた。

 

「みんな………!?」

 

「未央ちゃんからも、大切な人を奪ってあげるよ!いや………未央ちゃんを奪えば、みんな絶望するかな!?」

 

狂った美由紀の言葉と共に、ドム・ノーミーデスの大型ガトリング砲が、未央機を狙う。

もう、シールドは失ってしまった。

強制的に狙いを狂わせるダミーバルーンも、ガトリング砲の散弾が相手では意味が無いだろう。

未央はこの期に及んでも、撃てなかった。

 

だが………彼女はモニターで見てしまった。

 

「!?」

 

先程の砲撃で崩れた建物から、慌てて脱出してきたのであろう。

1組の親子が大通りに………未央機の後方に飛び出して来たのだ。

 

その両親は、自分達に美由紀のガトリングの砲門が向けられたと気付いた瞬間、慌てて自身の子供を庇うように覆いかぶさる。

無論、そんな事をしても、3人共助かるわけがない。

 

「止めろォォォォォォーーーッ!!」

 

未央はもう、躊躇しなかった。

半ば反射で自機の両腕を突き出し、ガトリングガンの狙いを敵機のコックピットに定める。

 

しかし、それでも間に合わない。

罪の無い親子がハチの巣にされるという、最悪の事態が目に浮かんだ。

 

 

 

 

だからこそ………発せられた美由紀の言葉に、未央の思考は固まる。

 

「………やっぱり、撃てないや。」

 

「え………?」

 

ドム・ノーミーデスの大型ガトリング砲は、火を噴かなかった。

未央は………トリガーを押す指を止める事が出来なかった。

 

パワードジムカーディガンのガトリングガンの弾が、無防備になったドム・ノーミーデスのコックピットに吸い込まれていく。

大量の散弾を撃ち込まれた機体は、力を失ったように、後ろの推進剤であるギャロップにもたれかかるように倒れた。

 

「みゆみゆ………?」

 

考える前に、未央は自機のコックピットを開き、工具を持って飛び出していた。

周りのザクタンクやヒルドルブは動きを止めていたが、その事実を理解する余裕もない。

一直線にドム・ノーミーデスに近づき、変形したコックピットのハッチを工具でこじ開ける。

 

そして………未央は固まった。

 

24歳のパイロットスーツに身を包んだ女性が………その精神は14歳である少女が、力なく横たわっていた。

体の至る所から出血しており、スーツは真紅に染まっている。

落ち着いた目で見れば、既に手遅れである事は分かるだろう。

そんな状態なのに、美由紀は………力なく笑みを浮かべていた。

 

「全身が熱いのに………凄く寒いや………。やっぱりバチって………当たるんだね………。」

 

「なん………で………!」

 

その姿を覗き込んだ未央は、わなわなと震える。

叫んではいけないと分かっていても、叫ばずにはいられなかった。

 

「何で躊躇ったの!?みんな不幸にしたかったんでしょ!?私も!あの親子も!みんな!!なのに………ッ!!」

 

「……………世界が消される時………みゆきの………お父さんもお母さんも………ああやって………庇って………くれ………たっけ………。」

 

まるで懐かしい大切な思い出を噛み締めるような呟きに、未央は撃ってしまった後悔から涙を流す。

しかし、美由紀は………そんな事を責める真似もせず、納得したような顔で、静かに眠るように目を閉じた。

 

 

 

 

「肇!ザクタンクが止まったわ!」

「こっちもです!………まさか!?」

 

別の通りを担当していた千秋や藍子から、通信が肇に送られてくる。

しかし、彼女は静かに目を伏せると、2人に事実だけを述べた。

 

「敵大将機は………未央ちゃんが倒しました。………すみませんが、住民の救助活動を先に行ってくれないでしょうか?」

「………分かったわ。」

「………了解です。」

 

肇の声音から、何となく察したのだろう。

2人はそれ以上、何も言わなかった。

 

肇はストライカー・カスタムの操縦を、同乗者の叢雲劾に一時的に任せると、機体を降りて前を見つめる。

その視線の先では、未央が美由紀の亡骸を抱きしめながら、ひたすら涙を流していた。

 

とてもでは無いが………彼女も凛も卯月も、しばらく話しかける事は出来そうに無かった。

 

 

アメリアスに魂を管轄されている柳瀬美由紀は、肉体を失っても新たな体で復活をする。

しかし………それでも、本田未央が一度彼女を殺したという事実は、変わるはずが無かった。




本田未央さんと柳瀬美由紀さんの、ある意味では宿命とも言える戦い。
その結果は…このような残念な物になってしまいました。

街を守るという意味ならば、本田未央さんの行動は正しかったはずです。
しかし、友達だと思っていた相手に対する仕打ちとしては…本人が一番納得できないでしょうね。

これで、「ノックス」での戦闘は終了になります。
しかし、心にダメージを負った者が多い以上、まだまだ話は続きますね。
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