飛行機乗りである愛梨の正体はムーンレィスであり、「月の都」の女王であるディアナ・ソレルから勅命を受けて地球に降りていた。
その内容は、次元の歪みの謎を調査し、解決に導く事。
シンデレラガールズの一員になる事が、その解決への近道に繋がると感じた愛梨は、艦長である高垣楓に仲間に入れてくれるように頼みこむ。
楓にしてみれば、珍しく根拠の無い直感で悩みこんでしまうが、最終的に彼女を受け入れる道を取るのであった。
そして、ハルファスガンダムの控えるポイント・ゼロに向かう為、アプロディアの指示の下、「東南アジアの密林地帯」へと進路を取ろうとする。
だが、そこに小日向美穂が、バルチャー時代の仲間に会う為に、地上の「ネオ・イタリア」の「コロシアム」に向かえないかと聞いて来たのだ。
そして、その後から入って来た女性………バルチャーの組織ロック・ダ・リーナのリーダーである木村夏樹が、笑顔で楓に挨拶をしてきた。
かくして、最初の目的地が美穂の仲間のいる場所になった事で、夜更けにキャリー・ベースは「アラマハン山脈」から離陸をする。
久々の睡眠を取ろうとする高槻やよいは、栗原ネネに洗脳された765プロの面々が敵として出て来たらどうするか聞いてしまう。
結局のところ、やよいを守る為なら汚れ役も担うというネネの言葉に、複雑な想いを抱きながらも、今は彼女に甘えるのであった。
一方で、楓は高森藍子と共に、捕虜にした柳瀬美由紀の肉体が置かれている独房の前へと向かう。
そこに、生気のない目で座り込む本田未央。
彼女を心配する2人であったが、突如美由紀が動き出し、未央に笑顔を向けた。
果たして、美由紀の思惑とは………?
「いやー、流石未央ちゃん。強かったねー。みゆき、1回やられちゃったよ。」
あんなに大変な事があったのに、美由紀の言葉は明るい。
良くも悪くもケロッとし過ぎており、反省の色も無い。
未央の落ち込みようや「ノックス」への被害を考えれば、思わず怒りたくなってしまうのが普通だ。
だが、楓も藍子も何かを言う前に、未央自身に着目する。
彼女は、美由紀が笑っていても、膝を抱えて生気の無い瞳で見つめていた。
何かをジッと、見定めているかのように。
「もー、未央ちゃん黙っちゃってどうしたの?あー、さてはみゆきが元気だから、ヘソを曲げちゃってるんだ!そうだよねー、心配したもんねー。」
天然なのか煽っているようにも感じるが、わざと道化を演じているようにも思えてしまう。
楓も藍子も、そんな美由紀の目的が何となく分かって来た気がした。
彼女は未央に………。
「もー、仲直りの証にトランプでもする?みゆき、アレからちょっとは、ぽーかーふぇいすを、勉強したんだよ?次は負けないから!」
明るすぎる美由紀の言葉に、楓も藍子も流石に何か言おうとした時であった。
未央はゆっくりと起き上がると、お尻のホコリを払い、独房の前まで来る。
美由紀は相変わらず笑顔で、未央に話しかけた。
「お、未央ちゃん!トランプやる気になったー?じゃあ、早速………。」
「みゆみゆ………あの後、ガトリング砲が暴発してね、あの家族はミンチより酷い事になったよ。」
美由紀の笑顔が固まった。
目が見開かれ、ショックで体が硬直する。
勿論、嘘だ。
あの家族は美由紀が撃てなかった事と、未央が美由紀を撃った事で助かり、被害者の中では珍しくシンデレラガールズに感謝していた。
だが、今の美由紀の動揺で、破壊行動を行っていた彼女が、あの家族の安否を気にしていた事が明確になってしまった。
更に、美由紀の動揺を逃さなかった未央は、続けて呟く。
「後、口に嘔吐した後が付いてる。」
「!?」
反射的に美由紀は自分の口を拭った。
勿論、これも未央の嘘だ。
しかし、これでまたハッキリしてしまった。
美由紀は自身の母艦にある14歳の体で目を覚ました際、激しく嘔吐したのだと。
未央達は知らなかったが、アメリアス勢力では道明寺歌鈴が、アイドルマスターの天海春香………バルバトスに1回残酷に殺された。
アメリアスが魂を管轄している事もあり、別の肉体で蘇生したとはいえ、恐怖で錯乱して胃液を吐き出してしまったのだ。
美由紀も血まみれになって息を引き取ったのだから、目覚めた時に同様の反応をしていてもおかしく無いだろう。
ましてや、彼女の精神年齢はまだ14歳。
死を体感させられて、怖くないはずがない。
「ぁ………あの………。」
「大丈夫、全部ウソだから。あの家族は生きてるし、みゆみゆのその身体に嘔吐の後は無いよ。」
「ひ、酷いよ………未央ちゃん!!何でそんな残酷なうそを付くのさ!」
「……………。」
未央は美由紀を見たまま、再び無言になる。
美由紀自身は鉄格子を叩くように握ると、一気に叫びだす。
「そうだよ!未央ちゃんに殺されたから、みゆきは酷い目にあったんだ!!痛いし寒いし辛いし怖いし散々だよ!!未央ちゃんのせいで、みゆきは………!!」
一転して、自身の罪を棚に上げた醜い発言。
だが、最初の煽りと合わせて考えれば、方向性は一貫している。
それは、わざと未央の怒りを買う為に、彼女の神経を逆撫でする言論。
「みゆみゆは………私に嫌われたいんだね。」
しかし、未央はそんな美由紀の心情を見抜いていた。
未央が美由紀の嘔吐を察したように、美由紀もまた未央の後悔を想像出来たのだろう。
心の内では、そんな感情をもう抱えて欲しく無いと願っていたのだ。
だから………わざわざこの場に精神を移し、未央と決別しに来た。
でも………。
「みゆみゆは、私と本当に絶交したいの?」
「したいよ!したいからあの街で殺そうとしたんでしょ!?」
「半分は嘘だね。………少なくとも、今は絶交したいと思っていない。思っているなら、私の事が大嫌いって言うだけで済むはずだよ。」
美由紀から、未央を嫌いだと言えなかった。
だから煽ったり理不尽な事を言ったりして、未央に嫌いだと言って欲しかったのだ。
後腐れなく………この後、更に敵対しても、彼女が後悔をしないために。
「逆効果だよ。みゆみゆは今、私に殴って欲しかったんだ。………いや、拳銃で一思いに撃って欲しかったのかな?」
未央は懐から銃を取り出すと、横に投げ捨てる。
彼女を撃つ意志は無いと示す為に。
「そん………な………。」
もはや、用意していた仮面は完全に砕けてしまっていた。
茫然としてしまう美由紀に対し、未央は1回目を伏せると………改めて何かを決めたように、目に力を取り戻して告げる。
「今決めた。私は、みゆみゆの友達であり続ける。いや、みゆみゆだけじゃない………きりのんやありさ先生も、ずっと友達だよ。」
「やめ………てよ………。」
「みゆみゆがこれから敵対しても、みゆみゆが私を殺そうとしても、ずっとずっと友達であり続ける!」
「やめてよ!そんな事言わないでよ!!」
美由紀は両耳を塞ぎ、未央の言葉から自身を守ろうとする。
悪意を持っていないのが、逆に棘でしか無かった。
目からは大粒の涙が流れており、両膝を付いて首を振る。
「みゆきは友達なんて持つ資格はないんだよ!!醜いんだよ!酷いんだよ!みんな不幸になって欲しいと、心の底では本気で願ってしまってるんだよッ!!」
言ってはいけない本音が、ついに出てしまった。
美由紀は、「ノックス」の街で見せたどす黒い側面を、「大事な友達」に見せてしまった事を後悔している。
世界をバルバトスに壊され、破壊衝動や破滅願望を抱えてしまった自分を、その目で見てほしくない。
「お願いだから!みゆきを嫌ってよ!!見放してよ!!本当は、未央ちゃんを………みゆきはまたーーーッ!!」
一度吐き出してしまった感情は、止まらなかった。
泣き崩れる美由紀は、暗い感情に任せ、「ノックス」の街を破壊して被害を出した大罪人だ。
しかし、一方でその罪に心が押しつぶされそうになる、14歳のか弱い少女でもあった。
だが、美由紀がまだ何とか堪えられた事がある。
それは、未央に対して謝らなかった事だ。
だから、未央も謝らなかった。
どんなに後悔しても、美由紀の行動が許される事で無いのは、百も承知だ。
でも………それでも、罪の意識に押しつぶされそうな少女を見放していいとは言えない。
「艦長、あーちゃん………悪いけれど………今のやり取りは、みんなには黙ってあげて。」
未央はそう言うと、静かに立て膝を付き、泣き崩れる美由紀の顔に両手を当て、鉄格子越しに抱きしめる。
そこで初めて、未央は目を伏せて涙を流した。
「醜くてもいいから………。暗い感情を持っていてもいいから………。みゆみゆは、友達でいていいから。」
優しく耳元で囁く未央の言葉に、美由紀は声を上げて泣きながら、何度も頷いた。
楓はもはや2人を詮索する気は無かったし、藍子も銃を下ろしていた。
只、抱き合う少女達を見て、複雑な感情を抱える。
「何でこうなってしまったんでしょうね………。」
「前にやよいと対峙したケリィ・ニューロの言葉では無いですが、人の心は真珠細工のように真っ白では無いのですよ………。」
「白い部分と黒い部分があるから………後悔を覚えるのかもしれませんね。」
「ええ………でも、絶対に忘れてはならない感情です。」
美由紀の白い部分と黒い部分。
両方を見てしまった2人は、アメリアス勢力の複雑な心持ちに付いて考えてしまう。
きっと、正しさだけで構成されるのが、人の心では無いのだ。
間違いがあるから人は………もしかしたら、変われるのかもしれない。
――――――――――――――――――――
「………ダメだったみたいだな。」
ひとしきり泣き喚いた美由紀が、アメリアス勢力の母艦にある14歳の体に戻って来た時、その沈痛な表情から、部屋で見守ってくれていた桐野アヤは、状況をいち早く理解した。
腕組みをしている女性は眉をひそめているが、鋭い視線は向けてはいない。
「全部………悟られちゃった。そのうえで、みゆき達のこと………ずっと友達だって。」
「大した奴だよ………本田未央は。」
アヤも、前に美由紀が精神体を連れて来た時、自分自身にいきなり「きりのん」という渾名を付けた事を思い出し、少しだけ笑みを浮かべる。
持田亜里沙の凄惨な過去を知ったうえでも、すぐに破壊行動を止めるように説得をしようとした。
彼女にしてみたら、未央は相当肝が据わっていると思えたのだ。
「それでね………みゆき、決めたんだ。」
「決めたって………まさか。」
次に美由紀の言おうとした事を先読みしたアヤは、思わず目を見開く。
だが、彼女は珍しく真剣な表情で、決意を新たにして自身の想いを述べる。
「未央ちゃんを………アメリアスやボスに紹介する。」
「………アプロディアの勢力だぞ?」
「それを踏まえてでも………だよ。もしかしたら………ボス達の辛い想いも、理解してくれるかもしれないし、みゆき達じゃ解決できない事も、何とかなるかもしれないし………。」
醜い部分を含めて、自分達の心を包み込んでくれた未央なのだ。
一度招待する価値はあるかもしれないと、美由紀は考えていた。
一方でアヤは、美由紀の思い切った発言に、溜息と共に頭をかきながらも、第三者に意見を求める。
「どう思う、こずえ?」
「みおはー………やさしいひとー………。こずえはさんせいー………。」
突然アヤの背後から、人影が出現した。
かなり小柄の少女であり、長いブロンドヘアを下でツインテールに纏めている。
彼女は、遊佐こずえ(ゆさこずえ)。
訳があって、アヤの傍を離れられない少女だ。
そんな不思議な雰囲気のある女の子が、アッサリと美由紀の言葉に賛成した。
「まあ………こずえが「見た」のならば、そうなのだろうな。でも、招待するなら全員戻って来た後だ。二度手間になったら、未央も苦労するだろうし………な。」
こずえの頭を撫でながらであったが、アヤもまた笑みを浮かべる。
何だかんだ言いながらも、彼女も未央を気に入っていたのかもしれない。
色々とあった美由紀も、アヤやこずえが同調してくれた事で、本心から笑みを浮かべられた。
――――――――――――――――――――
「参りましたね~………。」
同時刻、とある宇宙空間に浮かぶ廃墟の周りを、1機のモビルスーツが飛行していた。
それは、「ノックス」でシンデレラガールズが出会った、ネオ・ジオン所属である日下部若葉のガ・ゾウム(ガンナータイプ)。
実は、彼女はマシュマー・セロを引き返すエンドラに連れて帰った後、周囲を警戒していたのだが、ジェネレーション・ブレイクに巻き込まれてしまい、はぐれてしまったのだ。
「大体、何でいきなり宇宙に来ちゃうんですか!次元の歪みって、どうなっているんですかね!ぷんぷん!」
コックピット内で1人怒るこの女性は、実は身長が年齢の割に低い。
若干子供っぽい性格も合わせて、本人はそこを気にしているのだが、持って生まれた物はそう簡単に変える事が出来ない。
とりあえず、文句を言っても仕方ないので、周囲を見渡しながら、状況を確認する。
「それにしても、ここは何処ですかね~?大きな要塞が粉々に砕けたような感じで………何か変な雰囲気ですけれど………。」
明らかに人工的に手を加えられた痕跡があるので、何かしら隕石を改良したものであった可能性は高い。
しかし、その所属が何処なのかまでは、知識の中に無かった。
ところが………。
「アレ?あの破壊された戦艦………もしかして、「ムサイ」?」
ジオンの主要戦艦のような残骸を見つけた若葉は、残されていた船尾の紋章を確認する。
そこに刻まれていたのは、確かにジオン公国の物であった。
「ジオン共和国じゃなくて、ジオン公国………これって?………ッ!?」
次の瞬間であった。
アラートが鳴り響いた事で、若葉は狙撃型ナックル・バスターを咄嗟に構えて、反応のあった方角に向ける。
そして、目を見開いた。
索敵に優れたタイプの機体であるにも関わらず、スコープで覗いた先の相手も、寸分たがわず若葉機に巨大な砲門を向けていたのだ。
「アレは………ザク!?」
見た目は黒いザクであった。
しかし、自身の知るザクで、あんな大きな砲塔を構える機体は知らない。
確かなのは、相手が腕利きである事。
一触即発の状態に、若葉の額から冷や汗が流れる。
だが………相手は構えを崩さなかったが、マイクで声を発して来た。
「アンタ………何者だ?」
若い男の声であった。
若葉は正直に答えていいか迷う。
しかし………次の瞬間、別の声が聞こえて来た。
「ディアッカ。アレ………ネオ・ジオンのガ・ゾウム(ガンナータイプ)よ。」
「知っているのか!?」
「この世界でジャーナリストをやっているもの。それくらいの知識は、かき集めるわよ。………というか、アンタが勉強不足なんじゃないの?」
「無茶言うなよ!俺達は、お前ほどフリーじゃないんだって!」
今度は若い女性の声。
サブシートに座っているのか、何故かマイク越しにパイロットの男とギャーギャー喧嘩する声が聞こえてくる。
若葉は拍子抜けしてしまい、目を点にしたが、とりあえずマイクで話し始めた。
「えっと………私はネオ・ジオンの日下部若葉20歳です。任務中に次元の歪みに巻き込まれて………貴方達は?」
「20歳にしては声が幼いな………。」
「むむ!?放っておいてください!」
「あー………悪い。じゃあ、お互い一度構えた武器を下ろすか。」
そう言ったザクもどきのパイロットが、先に砲塔を下げる。
これは、自信の表れでもあると若葉は悟った。
自分の砲撃は、いつでも躱せると言わんばかりの。
「では、こちらも………えっと、それで2人は?」
狙撃型ナックル・バスターを下げた若葉の問いかけに、その男のパイロットが代表して自己紹介を行う。
「俺はこの「ガナーザクウォーリア」のパイロットである、ザフトのディアッカ・エルスマン。こっちの五月蠅いのは、取材に同行してきたミリアリア・ハウ………イテ!?」
「一言余計よ。」
もはや茫然としてしまった若葉は、気を取り直して、改めて自分の名前を名乗る。
そして、とりあえずは味方であろう相手に、おもむろに聞いた。
「取材って………ここに何かあるんですか?」
「………というより、この場所その物が異常って感じだな。そこの戦艦の紋章、見ただろ?」
「ジオン公国のムサイだと思いますが………この壊れた要塞は?」
若葉の問いかけに答えたのは、ディアッカではなくミリアリアであった。
しかし、その言葉は、若葉にとって衝撃的な物になる。
「信じられないかもしれないけれど………本来は月の裏側か「ラグランジュポイントL3」にあるはずの、「ア・バオア・クー」よ。」
「はい!?」
ジオン公国の要の1つであり、ジオン共和国となった後もある事件で崩壊はしたが、粉砕まではしていなかた要塞。
その変わり果てた建造物の正体を聞き、若葉の声が思わず裏返ってしまった。
どんな事があっても、友達であり続ける。
本田未央さんの言葉は、柳瀬美由紀さんの心を確実に動かしていっています。
小説版での彼女は、コミュ力全振りって感じのアイドルですね。
これでアメリアス勢力にも、何かの進展があるような感じですが、果たしてどうなるのか。
柳瀬美由紀さん達の言葉から、推測できる部分は…まだ無いかもしれませんね。
ちなみに、ここで遊佐こずえさんが、小説版からのアイドルとして登場しています。
どうやら、桐野アヤさんと何かしらの関係があるみたいですが…?
さて…最後に意味深なシーンも。
日下部若葉さんが、ディアッカやミリアリアと出会う事になり…?
ジオン公国のムサイの残骸。
本来とは別の場所で砕けている「ア・バオア・クー(ゼダンの門)」。
これらが意味する事とは…?
また、PHASE8が出来たら、2日に1話ずつ投稿していきますので、待っていて下さいね!