本田未央の前に横たわる体に、再び精神を移して喋り出した柳瀬美由紀。
陽気な言葉で煽ったり、自身の罪を棚上げした言葉で罵倒したりした彼女の目的は、未央に嫌われる事であった。
だが、そんな彼女の本心を読み取った未央は、殺意を向けられても、ずっと美由紀達と友達であり続けると意思表示をする。
自分の思惑が完全に外れてしまい、狼狽してしまう美由紀。
彼女は、自分の破壊衝動や破滅願望などの醜い側面を未央に見てほしくないと吐き出してしまい、遂には未央に殺意を向けたくないと言ってしまう。
そして、堪え切れなくなった負の感情と共に涙を流し、未央に抱き留められるのであった。
一通り涙を流し、自身の母艦に精神を戻した美由紀は、部屋で見守ってくれていた桐野アヤに、未央をアメリアスやボスに会わせたいと決意を新たにする。
アヤは当初は戸惑ったが、遊佐こずえの意見も聞いたうえで、全員が揃った際に未央を連れてくるべきだろうと納得した。
同時刻、シンデレラガールズに介入したネオ・ジオンの日下部若葉は、ジェネレーション・ブレイクで宇宙に飛ばされており、ザフトのディアッカ・エルスマンと対峙してしまう。
しかし、彼と同乗していたジャーナリストのミリアリア・ハウと打ち解ける事が出来た為、最悪の事態は避けられる。
だが………目の前の砕けた要塞が、ジオン公国の「ア・バオア・クー」だと知った瞬間、驚きの声を上げてしまうのであった。
「な、ななな何で、「ア・バオア・クー」がここに!?」
「とりあえず、落ちつけって。「ボルテール」………俺達の旗艦に調べて貰ったが、「本物」はまだ健在しているみたいだ。それがどんな状態なのかは、聞いた国によってマチマチだったが………。」
「本物………?」
完全に気が動転していた若葉であったが、ディアッカの宥める言葉に首を傾げる。
彼が説明するには、この宙域には元々何も無かったらしい。
しかし突如、粉々になった隕石の残骸が出現したのだ。
「俺達は議長………ギルバート・デュランダルの指示で、調査を行う事になったんだ。ミリアリアは、戦場ジャーナリストとしての同行者になるな。それで、最初は頻発する次元の歪みの影響で、何処かの隕石が飛ばされたと思ったんだが………。」
「違うんですか?」
「まず、元々の形状や近くの残骸から、ジオン公国の「ア・バオア・クー」としか言いようが無いのが、1点目のおかしなところだ。それに………。」
そこで、ディアッカは少し黙る。
機密事項なのかと思ったが、どうも違うらしい。
「………あまり説明したく無いが、僅かに残された残骸の中が悲惨な状況なんだよ。」
ディアッカが言うには、砕けた要塞の中も少しではあるが、調べてみたとの事。
しかし、そこで見たのは、あらゆるものが強烈な遠心力で引き裂かれたかのような、凄惨な現場であったのだ。
「当然ながら、ミンチよりも酷い亡骸もかなりあってな………ミリアリアは一応写真を撮っているけれど、民間に公表は出来ないレベルだ。」
結局、集めた写真は、デュランダル議長などが管轄するザフトの最高評議会に、まず引き渡す事になったらしい。
この「2つ目のア・バオア・クー」で何が起こったのか。
「ちなみにネオ・ジオンって事は、確かアンタ達の時代では、本物は「ゼダンの門」って言われてるんだよな?」
「はい………「ラグランジュポイントL3」に移動されて、「アクシズ」の衝突で真っ二つになりましたけれど………。」
次元の歪みは時代も滅茶苦茶にしてしまっている為、ここら辺の会話は細心の注意を払わないといけない。
とりあえず、マイクの外でミリアリアと話をして、どの程度まで喋っていいのかを考えているのだろう。
何回か、会話が途切れる事があった。
「ここら辺は、お互いややこしいよな。………で、次元の歪みで飛ばされたって事は、推進剤………というか、そもそも帰る当てはあるのか?」
「う……………。」
補給前だったので推進剤は残り多くは無いし、そもそもどうすればエンドラに帰る事が出来るのかも分からない。
ディアッカは、またミリアリアと………更に、別の人物と会話したうえで、こう言ってくれた。
「じゃあ、俺達の母艦のボルテールに一度寄っていけよ。」
「いいんですか?」
「流石に見殺しにしたら、ミリアリアにナイフで刺され………イテテ!?」
「余計なお世話よ。………でも、危険物は預かると思うけれど、大丈夫?」
要は拳銃や話題に上がったサバイバルナイフなどは、没収という事だ。
しかし、そもそも生き残る事が第一である以上、この好意には甘えるべきだと若葉は感じた。
「大丈夫です、お邪魔させて下さい~。」
「分かった、連絡しておく。………只、その前にもう一度、内部に生存者がいないか調査しておきたいから、協力してくれ。」
仮に生存者がいても、この現状で放っておいては、酸素の残量が足りなくなる危険性がある。
なるべく早い内に全ての場所を調査したいが、正直、今は猫の手も借りたい状況であるらしいのだ。
「とにかく生存者がいそうな場所を探さないといけないんだが………。なあ、若葉だっけ。こういう要塞だと、何処が比較的頑丈だ?」
「そうですね~、地震の時はトイレに隠れろと言われていますけれど………。」
正直トイレは、真っ先に酸素が無くなってダメだろう。
もっと頑丈で、生存率が高そうな場所と言えば………。
「……………格納庫でしょうか。起動していないモビルスーツの中ならば、爆発する危険も少ないですし、パイロットスーツを着ていれば、少しの間は酸素が持ちますし。」
「やっぱりそこになるよな………。戦艦は軒並み全滅しているから、「ア・バオア・クー」の残骸を探すしかないんだけれど………。」
「まだ探していないポイントは、あるんですか?」
「ある。………というか、その件でちょっと協力してくれないか?」
ディアッカはハンドサインを出すと、付いて来て欲しいと合図をする。
何となく罠とかでは無いと感じた若葉は、素直について行った。
やがて、砕けた要塞の中でも、少し大きめな破片に辿り着く。
そこには穴が開いており、近くに数機、緑のザク………ディアッカの言葉を借りるなら、「ザクウォーリア」系列の機体がいて、思わず若葉機の登場に身構える。
しかし、ディアッカが素早く説明を行うと、進路上にいたザクウォーリア達が1機を残して離れた。
残ったザクウォーリアは、追加バーニアと一体になっている、多数のミサイルポッドを付けていた高機動機であった。
ディアッカは、「ブレイズザクウォーリア」だと説明してくれる。
「乗っているのは、シホ・ハーネンフース。俺と同じく「ジュール隊」の一員だ。」
「宜しくお願いします~。」
「確かにビームを撃てる狙撃機ですね。………ゴメンなさい、早速ですが力を貸してくれませんか?」
女性パイロット………シホの申し訳なさそうな言葉に若葉は首を傾げるが、穴の中を見せられて納得する。
その穴は、格納庫の1つへと繋がっているみたいだが、遠心力で破壊された影響か、複数の鉄筋コンクリートの柱が挟まっており、内部へと入れなくしていた。
勿論、生身ならば可能だとは思うが、奥に何があるか分からない以上、モビルスーツを離れるのは得策では無い。
「ザクウォーリアの「ビーム突撃銃」は連射タイプ。更に、俺のオルトロス………「オルトロス高エネルギー長射程ビーム砲」は、威力がデカすぎて内部も破壊してしまう。」
つまり、仮に生存者がいたとしても、安全に救助する術が無くて困っていたらしいのだ。
若葉は素早く、狙撃用ナックル・バスターを構えると、中の様子を確認してみる。
「確かに………地獄絵図ですね。」
整備兵だったのだろう。
ディアッカの言う通り、遠心力で引き裂かれた亡骸が至る所に浮かんでおり、中は凄惨な状況だ。
軍人でなければ、気絶してもおかしくは無い。
しかし、数機ほど、破損したモビルスーツの影らしき姿が伺えた。
これなら、モビルスーツ1機が通れるほどの穴を、安全に開ける価値はある。
「……………撃ちます。」
狙いすましたビームを放つと、複数の鉄筋コンクリートは溶解していき、文字通りモビルスーツが通れるだけの穴が開いた。
そのまま若葉は、穴の中へと入っていく。
後ろから、ディアッカ機、シホ機が追従するが、撃たれる心配は無いだろうと、それまでの会話で何となく分かった。
実際に格納庫の中に入ると、その凄惨さは肉眼でもハッキリと分かった。
至る所に血が浮かんでおり、気分の良い物では無い。
だが、その中で幾つかザクらしき機体が残っていたので、順番に調べていく。
しかし………。
「やっぱり………中も無事ってわけじゃないよな。」
緑のパイロットスーツに身を包んだディアッカが、工具で歪んだコックピットをこじ開けるが、中から出て来たのは、グロいという言葉でしか形容が出来ない亡骸。
後ろでミリアリアは一応、写真に収めているが、これも民間には公表できないだろう。
赤いパイロットスーツを着たシホも、同じように作業を行っているが、やはり生存者は発見できない。
「……………。」
「………どうしたの?」
パイロットスーツを着ていた若葉も同じように作業をしていたが、少し気になる事があった為、機体をジロジロと見ていた。
その様子を気にしたミリアリアが、おもむろに聞いてくる。
「いえ………ザクにしては、形状が違うなって。」
少なくとも、若葉の知るザクⅡは、股間等に追加バーニアが備えられていなかったはずだ。
何かしらの専用機なのか?………と思ったが、今解決できることでは無い。
仕方なく、破損したコックピットハッチを開く作業を進めるが、成果は得られなかった。
やがて、一番奥にある最後の1機になってしまう。
「どう思う?」
「パイロットスーツを着ていなければ、即死でしょうね。」
シホの言う通り、その機体もコックピットのハッチが歪んでいたので、空気は抜けているだろう。
だが、やらないよりはやったほうが良いと感じた一同は、ハッチをこじ開ける作業に入る。
「生存者か、空か、亡骸か………神がいるなら、奇跡でも見せて欲しいよな!」
ディアッカはそう言うと、使い終わった工具をどかして、両手でハッチをこじ開けた。
すると………中から何と待望の生存者が出て来た。
………拳銃を震える手で構えた女性パイロットが。
「うわあああああああああああッ!!?」
「マジかよ!?」
反射的に後ろに身を逸らす事で、射撃を回避。
その背後で写真を撮ろうとしていたミリアリアは、シホが咄嗟に射程外にまで押し出してくれる。
若葉は自身の持っていた工具用のスパナを、体勢を立て直したディアッカに投げた。
「ディアッカさん!」
「サンキュー!」
受け取ったディアッカは、相手が次の狙いを定める前に距離を詰める。
少女の裏返った奇声が聞こえたが、スパナを握ると思い切りみぞおちに叩き込んだ。
「が………は………。」
それで、唯一の生存者である少女は気絶した。
ディアッカは素早く彼女を抱きかかえ、酸素メーターを確認する。
案の定、残り僅かであり、死と隣り合わせの恐怖から、極限状態に陥っていたと推測出来た。
「考えてみれば、コックピットの中で人がゴミのように引き裂かれる場面を、ずっと見せつけられていたんだよな………もっと、警戒するべきだったぜ。」
自身のミスを悔やむよりも前に、早く少女を空気の在る所に連れて行かないといけない。
ディアッカは、ミリアリアをシホに任せると、踵を返して自機のコックピットに乗り込む。
そのまま逆戻りする形で要塞を脱出した彼は、入口付近を守っていたパイロット達に指示を出して引き上げる。
若葉は、シホに連れられる形で、謎のア・バオア・クーの跡地から彼らの母艦である「ナスカ級ボルテール」へと付いて行った。
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事前に許可を貰っていたとはいえ、実際にボルテール内に入るには、部外者である若葉は時間を要してしまう。
シホ機に見守られる形で待機をしていた彼女は、あの少女の事が心配になった。
あそこまで取り乱していたのならば、今頃、拘束されているだろう。
「何も無いといいんですけれど………。」
「多分、独房で甘やかされていると思いますよ?」
「独房で………甘やかされる………?」
不可解な言葉がシホから飛んできた為、若葉はコックピット内で怪訝な顔をしてしまう。
言葉通りに捉えるのならば、独房内ではあるが、彼女を優しく介抱してくれている人物がいるらしい。
「ジュール隊長が仏頂面で怖いからって、そういうのが得意そうな人が部隊に加わったんです。」
「そうなんですか………でも、仏頂面って………。」
「色々あるんですよ、隊長も副隊長も。」
詳細までは聞けなかったが、シホの言葉に何かしらの含みを感じた若葉は、それ以上の詮索を止める。
すると、間もなく戦艦の中から、水色の2門のガトリング砲を背負ったアンテナ付きのザクもどきが出てくる。
シホは、あの機体が隊長の「スラッシュザクファントム」だと教えてくれた。
「ディアッカから聞いたぞ。貴様がネオ・ジオンの日下部若葉か。俺がジュール隊を率いている、イザーク・ジュールだ。………任務への協力、感謝する。付いてこい。」
「武装解除しなくていいんですか?」
「ふん!そのような脅しや腕前で屈する程、軟な部隊じゃない!………後、俺も前よりは善人と悪人の区別は付くようになったつもりだ。」
「はぁ………。」
厳しい言葉の人物であったが、最後の台詞が少し気になった。
何か暗い過去を、抱えているのかもしれない。
とりあえず、若葉はボルテールへと案内をされていく。
補給と情報供給と、あの少女の安否確認を行う為に。
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その頃、この「ア・バオア・クー跡地」………と言えば良いだろうか。
崩壊した宙域を遠目から観察する、モビルスーツの群れがあった。
それぞれ機体のモノアイを輝かせながら、周囲を警戒して回るザフトの機体の群れを観察している。
おもむろに、「敵モビルスーツ」を数えているパイロットが言葉を発した。
「ザフトのモビルスーツが多数………。ジンや「ゲイツ」が中心ですね。比較的新規に作られている、ゲイツRやザクウォーリアはまだ数が少ないです。後は…………「ジンハイマニューバ」?」
「ふーん………てっきり、「ア・バオア・クー」の要塞跡地だから、ジオン公国軍がバカンスの避暑地を求めにやって来ると思ったんだけれどなぁ。」
「フゴフゴフゴ………その内、集まるんじゃないんですか?ほら、パンのいい匂いには、みんな釣られてきますし………うーん、このパン美味しいです。」
真面目そうな声、少し陽気そうな声、そして何かを食べているのか食べながら話す声。
三者三様ではあったが、戦闘区域にいる割には全体的に呑気な空気であった。
しかし………。
「ま………だったら、とりあえずは様子見かな。どうせなら、同士討ちして貰った方が楽だし。」
「そうですね………最終的に殲滅するならば、安全策を取った方が良いでしょう。」
「あははー!パンを食べながら、高みの見物ですね!味付けは、しっかり行った方がいいですし!」
その会話の中には、物騒な言葉が混じっていた。
もしも「彼女達」を直接見る事が出来る者がいたら、その瞳には狂気が宿っていると分かっただろう。
故に、陽気な声を発した3人の中の「年長者」が代表して言う。
「じゃあ………ザフトを真似してあたし達も言おうか。我らが大将………アメリアスの為に!」
『アメリアスの為に!』
「少女達」は、胸に手を当て宣言した。
………破滅を望む者達の勢力として。
皆様、明けましておめでとうございます。
そして、お久しぶりです…擬態人形Pと申します。
スランプになってしまって書けなくなったのですが、ちょっとした事からネタが降ってきました。
そんなわけで、思い浮かんだ通りに書いてみた結果、再開する事が出来ましたね。
さて…このPHASE8は《ア・バオア・クー跡地編》であり、gジェネワールドとは関係ないオリジナルの場所が舞台となっています。
動画版には無い場所で物語が繰り広げられるので、全く新鮮な気持ちで見る事が出来るのがポイントです。
また、この章では重要な情報も語られる予定なので、楽しみにして貰えると嬉しいですね。
そういうわけで、改めて今年も宜しくお願いします!