モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第94話 PHASE8-2『混在する歴史』

次元の歪みで宇宙に飛ばされ、ザフトのディアッカ・エルスマンと、戦場ジャーナリストのミリアリア・ハウと出会った、ネオ・ジオンの日下部若葉。

彼女は2人との会話で、ここが本物とはまるで別の位置に存在する「ア・バオア・クー跡地」であると知る。

 

困惑する若葉だが、ディアッカから母艦で補給を受けていくといいと言われ、お言葉に甘える事に。

その際、ビームを放てる狙撃機が丁度必要だったことも有り、ディアッカと同じジュール隊のシホ・ハーネンフースも交え、生存者探索に参加する。

 

隠された格納庫は悲惨な状態だったが、ザクのコックピットから奇跡的に生存者の少女を発見。

だが、極限状態で錯乱していた少女は、ディアッカに気絶させられ母艦ボルテールへと連れられて行く。

 

流石に事前の許可があるとはいえ、いきなりボルテールの格納庫に入る事は出来なかった若葉であったが、隊長であるイザーク・ジュール自らが、仏頂面ではあったが出迎えてくれる。

 

こうして、少女の安否などを確かめようと思う彼女であったが………「ア・バオア・クー跡地」の向こうでは、アメリアス勢力が虎視眈々とザフトの隙を狙っていた。

果たしてこの区域で、これから何が起こるのか………?

 

 

 

ボルテールの格納庫では、ジュール隊の整備兵達が待っていた。

若干緊張した様子であるのは、勿論、ネオ・ジオンである若葉のガ・ゾウム(ガンナータイプ)が、イザークの後に続いて入って来たからだろう。

しかし、前後にイザークのスラッシュザクファントムと、シホのブレイズザクウォーリアが挟まる事で、余計な真似はさせないと内部に知らせ、ひとまず安心させている。

 

「すみません~、何かお邪魔しちゃって………。」

「気にするな。これくらいで及び腰になる奴らが悪い。それに、危険物はディアッカに預けているんだろう?だったら、堂々としていればいい。」

 

イザークはそう言うと自機を所定の位置に下ろし、若葉に着地場所の指示を出す。

彼女はガ・ゾウムをモビルスーツ形態で置くと、コックピットから顔を覗かせた。

 

相変わらず整備兵は警戒していたが、イザークは迷わずヘルメットを取る。

すると、そこには白髪のおかっぱが印象的な、厳しい顔の男性がいた。

若葉もそれにならってヘルメットを取り、ウェーブの茶色の長髪をなびかせる。

その様子を見て………整備兵達は、ヒソヒソ話を始めた。

 

「む~………初対面の人達は、みんなこうなんですよね~………。私が20歳に見えないからって。」

 

20歳という言葉を聞いて、一部で驚きの声が上がる。

イザークが目ざとく叱りつけに行ったが、年齢と身長とのギャップはそう簡単に覆りそうには無かった。

すると、自機から降りた黒髪の長髪の女性………シホが後ろにやって来る。

同乗していたボブヘアーの女………恐らくミリアリアは、敢えて気にしないように、別の整備兵達と話をして状況を確認していた。

 

「ゴメンなさいね。やっぱりみんな警戒するから………。」

「これは警戒とは違うと思いますが………。」

 

もはや落胆してしまった若葉であったが、こういう対応は慣れているので切り替える。

その間にイザークが、とある整備兵を呼んでいた。

 

「おい、みりあ!いるか!?」

「はーい!イザークお兄ちゃーん!………痛ッ!?」

「だから隊長と呼ばんか!馬鹿者!!」

 

若葉よりも更に身長の低い、外はねの黒髪をツーサイドアップにした少女がやって来る。

いきなり隊長であるイザークにタメ口を使った為か、頭に拳骨を叩き込まれていたが、流石に本気では無いのだろう。

頭を押さえて、ぷく~とイザークに頬を膨らませながらも、若葉を見るとペコリと頭を下げて挨拶を行った。

 

「私、赤城みりあ(あかぎみりあ)って言います!お姉ちゃんが、ネオ・ジオンの日下部若葉さんですね!機体の補給と整備をしておきますので、安心して下さい!」

 

シホがこっそりと、まだ11歳の少女だと教えてくれた為、若葉は内心驚いてしまう。

こんな年端もいかぬ少女兵が母艦の中で活動しているという事は、余程の天才なのだろう。

………いや、冷静に考えれば、本来は見知らぬ兵がいて怖いはずなのに、堂々と対応できる事を鑑みれば、肝が据わっていると言える。

何となくだが、イザークがジュール隊の整備兵にしている理由も分かる気がした。

 

「みりあ。データを取る必要はあるが、武装解除とか余計な真似はするな。」

「分かったよ!議長の信用問題に関わるもんね!」

「作業はそこの笑った奴らを顎で使え。………いいな!」

 

最後の言葉は、その顎で使われる予定の整備兵達に向けられていた。

彼らは困惑しながらも、敬礼のポーズ。

 

思わず彼らに同情する若葉であった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

ボルテールの艦内に入れたからとはいえ、すぐに生き残りの少女に会えるわけではない。

まずは、客人とはいえ、当然ながら取り調べが行われる。

シホが同席していたが、質問は何と隊長であるイザーク自らが行ったので、若葉は正直に答えていった。

但し、ハマーン・カーンの下にいるミネバ・ラオ・ザビが、影武者である事だけは黙っていたが………。

 

「成程、作戦中に次元の歪みに巻き込まれたのか。ちなみに、対峙していた敵勢力は言えるか?」

「シンデレラガールズです。」

「……………随分と、面倒な部隊と敵対していたんだな。」

 

実は、若葉はそこまでシンデレラガールズの事に詳しくない。

作戦前にハマーンから聞いていたのは、765プロと共同の作戦である事だけ。

しかし、その内容が「ノックス」の街を人質に使った脅迫行為だったため、監視者として、マシュマー・セロの部隊を無理やり止めさせたのだが。

 

「結局のところ、どういう組織なんでしょうね?」

「とりあえず、765プロと敵対している事だけは確かだ。………その765プロは、「地球連合軍」に兵を送り、戦力増強を図っているらしい。」

「元々ザフトと敵対していたんですっけ………あまり良い話ではないですねぇ………。」

 

初耳の情報を記憶しながらも、若葉はイザークの問いに答え続けた。

そして、約30分に渡った取り調べを終えた所で、ようやく少女に会いに行ける。

 

だが、事前にシホが言っていた通り、現在の彼女は独房にいる為、今度は牢のある場所を進む事に。

 

「物騒ですね~………私も独房入りとか。」

「それは無いから安心しろ。みりあも言っていたが、デュランダル議長の信用問題に関わる。」

 

イザークは相変わらず仏頂面で答えながらも、やがて、独房の前に立っている男女の前に着く。

恐らく、褐色の肌の男がディアッカであり、傍には格納庫で別れていたミリアリアがいた。

しかし、2人は談笑するわけでもなく、かといってケンカをするわけでもなく、若干怪訝な顔をしながら牢の中を見ている。

若葉が首を傾げながらも、同じように中を覗き込むと………思わず2人と一緒の顔になった。

 

少女は、声を上げて泣いていた。

但し、1人で縮こまっていたわけではない。

部屋にはもう1人、妙齢の女性がベッドに座っており、その膝に泣きついていたのだ。

 

涙を流す少女は、良く見たら身長が高く若葉を軽く超えていた。

黒の短めの髪が特徴で、悲しみに包まれていなければ快活そうである。

 

一方で、女性の方は栗色のロングヘアーを結んでおり、子守歌を歌いながら、優しく少女の頭を撫でていた。

身長は少女よりも更に高めで、落ち着いた雰囲気がある。

 

「………独房で繰り広げられる光景じゃ無いな。まあ、イザークがこんなんだから、ジュール隊に入ったんだけどよ。」

「余計なお世話だ。………で、ディアッカ………その娘の名前は?」

 

イザークの質問に、ディアッカは無言で女性の方を見る。

彼女は、静かに少女をあやすように告げると、少しずつ小声で会話を行う。

やがて、少女は泣き止むと、顔を上げて………少し怖がる様子で呟いた。

 

「あの………その………。」

「あー………錯乱して撃った事は、気にしなくていいさ。」

「そうそう、コイツは頑丈だから。」

「一言多いんだよ!………で、名前は?」

 

ミリアリアと漫才みたいなやり取りをしながらも、ディアッカは少女に問う。

少し目を丸くした少女は、涙を拭うと、頭を下げて話し始めた。

 

「私は、乙倉悠貴(おとくらゆうき)………13歳です。ジオン公国でザクの見習いパイロットをやっていました。」

「13歳でその身長は羨ましいですねぇ~。」

 

ここで、各々が自己紹介を行う。

そのうえで、最後に悠貴の身長を羨ましがった若葉が、座っている女性に聞く。

 

「あなたのお名前は?」

「三船美優(みふねみゆ)です………。ジュール隊に編入してきて、パイロットをやっています。」

 

美優と名乗った女性は、まだ遠慮がちな悠貴の肩に手を置き、優しく接する。

成程、確かにこの母性があるのならば、仏頂面の隊長の下に配属されるのも若葉は分かる気がした。

 

「悪いが、話を詳しく聞かなければならん。美優と一緒でいいから、何処かで何が起こったのかを聞かせてくれ。」

 

かなり本人としては気遣った発言をするイザークであるが、悠貴は反射的に美優を見上げてしまう。

美優は大丈夫と言うと、ブリッジに行こうと提案した。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

ブリッジにはボルテールを管理するクルーがいて、若葉と悠貴の登場に緊張が走ったが、イザークが目で警戒した者に圧を加え、混乱しそうになる場を収める。

格納庫での対応といい、年齢の割には相当なやり手だな………と思った若葉であったが、とりあえず航路パネルの前を囲むように立つ。

若葉はともかく、悠貴はまだ周りを恐れている段階なので、美優が傍で付いてくれていた。

 

しかし、正直何から聞けばいいのか、イザークですら躊躇ってしまう。

あの凄惨な現場にいたという事は、地獄絵図を見せられたという事。

下手に思い出させない方がいいのだが………。

 

「……………悪い。やはり、あの状況を聞かなければ、何も分からない。辛い事だが、正直に答えてくれ。」

「は、はい………。」

 

謝るように言うイザーク。

しかし、悠貴も覚悟をしていたのか、ポツリポツリとではあったが説明を始めた。

 

………と言っても、悠貴も何が起こったのか分からないのが現状であった。

いつものようにモビルスーツの訓練を行おうとした所で、急激な振動が起こったのだという。

そして気付いたら、周りの物が………人も含めて、竜巻が起こったかのように強烈な遠心力で振り回されたのだ。

 

「地球連邦軍の………兵器なのでしょうか………?」

「そのような兵器の存在は、聞いた事が無いですねぇ………。」

「折角ジオンは、連邦に勝ったのに………これじゃあ………。」

「そうですねぇ………はい?」

 

一瞬、場の空気が固まった。

若葉はもう一度、神妙な顔で悠貴に聞いた。

 

「ジオンが………連邦に勝った?」

「はい………「一年戦争」で、ジオン公国が地球連邦軍に勝ったじゃないですか。」

 

今度は、場の空気が凍り付いた。

悠貴が戸惑う中、若葉達は考え込む。

一年戦争の勝者は、地球連邦軍だ。

だからこそ、ジオン残党軍という存在が現れ、色々と問題が起こっているとも言える。

しかし、悠貴が嘘を言っている様子も無い。

 

「あ、あの………私、何か………?」

「悠貴ちゃん、落ち着いて聞いて下さい。私達の知る一年戦争は………連邦がジオンに勝っています。」

「え!?」

 

驚愕する悠貴。

だが、彼女の方も若葉を始めとした面々が嘘を付いているような顔をしていないと分かった為、困惑してしまう。

 

「どういう事だ………?次元の歪みで、別の世界線の「ア・バオア・クー」が飛んできたのか?」

「滅茶苦茶だけれど、アンタの言う事が一番妥当ね………。次元の歪みで、時間軸すら崩れて来ているのかもしれない。」

 

ディアッカとミリアリアの会話を聞いたイザークは、思わず頭を片手で押さえる。

かなり厄介な報告を、ギルバート・デュランダル議長にしないといけないと。

 

しかし、ここで更に面倒な事態が起こる事になる。

突然、ブリッジにアラートが鳴り響いたのだ。

 

「何が起こった!?」

「て………敵襲です!パトロール中のジンが1機やられました!」

「チィッ………!ボルテールは、後方で待機!絶対に前に出るな!!」

 

イザークが指示を出すと共に走り出す。

ディアッカとシホ、更には美優も悠貴の手を引いて駆けだした。

勿論、若葉もミリアリアと一緒に追いかけていく。

 

「みりあ!整備と補給の状況はどうなっている!?」

「全機大丈夫だよ、お兄ちゃん!みんなのウィザードはどうする!?」

「だから隊長と言え!………全員同じ装備で構わん!後、若葉のガ・ゾウムも出せるようにしろ!」

「了解!!」

 

通信で、格納庫のみりあと会話を行うと、そのまま振り向き悠貴に鋭い視線を向ける。

彼女はビクッとするが、流石に今は気遣う余裕が無かった。

 

「悪いが美優も立派な戦力である以上、戦場に連れていく!格納庫に近い年のみりあがいるから、アイツと仲良くしていろ!」

 

パイロットスーツから着替えずに行動していた事が幸いし、すぐに出撃できる準備が整っていた。

格納庫では、各種ザクウォーリアやザクファントムに、ウィザードと呼ばれる追加装備を装着している状態だ。

水色のイザーク機、黒色のディアッカ機、通常の緑色のシホ機に加え、浅葱色………ターコイズに似た明るい青緑のような機体に、それぞれ違うウィザードが付けられている。

最後尾には、ちゃんと武装が整った状態で、若葉のガ・ゾウムもいた。

 

「あの浅葱色の機体は美優さんのですか?」

「そうです………ゴメンなさい、悠貴ちゃん。ちょっと行ってくるので、隊長の言う通り、みりあちゃんと仲良くしてね?」

「あ、はい………。」

 

悠貴をみりあに預けると、美優は自機へと向かって行く。

ミリアリアも敵勢力を調べると言って、ちゃっかりとディアッカ機のサブシートに乗り込んでいた。

 

「………ったく!後悔しても知らないぞ!」

「知識はあった方がいいでしょ!ほら、さっさと発進!」

 

そんなやり取りがコックピットから聞こえる中で、若葉も自機に乗り込み、調子を確認していく。

やがて、リニアカタパルトにモビルスーツが移動し、磁界の力で移出する用意が出来る。

 

「厄介な事になったな………。イザーク・ジュール!スラッシュザクファントム、出るぞ!」

「撃ち落とされないようにしないとな!ディアッカ・エルスマン!ガナーザクウォーリア、発進する!」

「続きます。シホ・ハーネンフース!ブレイズザクウォーリア、出撃します!」

「アイザック君から操作は教えて貰ったから、大丈夫………。三船美優、ケルベロスザクウォーリア、行きます!」

「皆さん、整備ありがとうございます!日下部若葉…………ガ・ゾウム(ガンナータイプ)、最後尾は任せて下さい!」

 

みりあや悠貴達に見守られる中、5機のモビルスーツが出撃していった。




ここで新登場するデレステアイドルの内、乙倉悠貴さんはジオン公国軍が地球連邦軍に勝った世界線出身となっています。
PHASE8-1の話と合わせて見て下さった方ならばティンと来た方もいると思いますが…彼女は、「ジークアクス」の世界出身です。
このア・バオア・クーは、ジークアクスの物語終盤で、とある兵器により強制破壊&転移させられた要塞となっています。

タイトル通り、ややこしい事になっていますが…今の次元圧縮の状況だと、このような事も起こるかなと思い、ジークアクスを履修し終わった後に即座に採用してしまいました。

さてさて…5機のモビルスーツが出撃していきましたが、果たして対峙する敵はどのような存在になるのか?
三船美優さんの専用カラーの機体にも注目です!
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