モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第95話 PHASE8-3『相容れぬ者達』

イザーク・ジュール率いるジュール隊の母艦………ボルテールでの補給の許可を貰ったネオ・ジオンの日下部若葉は、緊張する空気の中、格納庫へと着艦する。

そこで彼から紹介されたのは、11歳でありながら整備兵として活躍していた赤城みりあ。

しっかり者の彼女にガ・ゾウム(ガンナータイプ)を任せた若葉は、イザークの取り調べを受けた後、「ア・バオア・クー跡地」で保護された少女の下へと向かう。

 

そこで見たのは、独房の中で母性溢れるパイロットである三船美優にあやされていた少女………乙倉悠貴の姿であった。

ブリッジに同行して貰い、悠貴に何が起こったのか聞くが、彼女も訳が分からなかったらしい。

しかし、一年戦争で勝ったのは地球連邦軍では無くジオン公国であるという発言を受け、一同は悠貴が別の世界線から飛んできてしまったのだろうと考える。

 

厄介なことになったとイザークが思う中、ブリッジに警報が鳴り響く。

何者かが襲撃してきたという知らせを受け、イザーク、ディアッカ・エルスマン、シホ・ハーネンフース、美優………そして、若葉は急いで出撃する事になった。

 

 

 

「ア・バオア・クー跡地」に飛び出していった中で、若葉は自身の機体についてある程度イザーク達に説明しながらも、代わりに彼らの機体について大まかに教えて貰う。

基本的にウィザードは、スラッシュが接近戦、ブレイズが高機動戦、ガナーが射撃戦に特化しており、それぞれ現在はイザーク、シホ、ディアッカが役割を担当しているらしい。

そんな中特殊なウィザードも存在しており、その1つが、専用カラーである美優の浅葱色の機体が付けているケルベロスであるのだ。

 

「ケルベロスウィザードは、近接戦闘と高機動戦闘を兼ね合わせた換装形態です………。扱いは難しいですが、使いこなせば戦力になります。」

 

何でもジュール隊の一員であるが、今は別任務に赴いているアイザック・マウと言うパイロットから、色々と手ほどきを受けたらしい。

 

若葉はうんうんと頷きながらも、その独特な機体の姿を見て首を傾げる。

ケルベロスウィザードは、背中から生えた双頭の番犬をイメージした武装が特徴的であった。

正直、母性溢れる美優が使うのは、攻撃過ぎるチョイスでは無いか?………と感じたのだ。

 

「このウィザードに辿り着いた経緯って、何かあるんですか?」

「えっと………実は、ジュール隊の忘年会で………虎の衣装を着て………が、がおーってやったのが切っ掛けになって………みりあちゃんに流されるままに………。」

「色々とおかしすぎません!?」

 

そもそもケルベロス…犬は「がおー」とは叫ばないのだが………。

もしかして、美優は天然なのだろうか?………と若葉は考えてしまう。

何はともあれ、ケルベロスウィザードは背中の武装を操る為、両手が自由である利点がある。

使いこなせば強力であるのは、彼女にも分かった。

 

「お喋りはそこまでにしろ。ミリアリア………識別任せるぞ。」

「ええっと………あの動き回っている機体が大将機かしら?」

 

やがて、ビームや実弾が飛び交う戦域が見えて来た為、イザークの指示でミリアリアがディアッカ機のスコープを横合いから覗いて判別を行う。

そこでは、ジンを始めとしたモビルスーツが、敵機に対し苦戦を強いられていた。

 

但し、数が多いわけではない。

むしろ、数は4機しかいなかった。

 

「リック・ドムⅡが2機。ケンプファーが1機。………腕は良さそうね。後は………あのジンハイマニューバと交戦している機体は、アクト・ザクを独自に改造した機体?」

「全部ジオンの機体じゃないですか!?」

 

識別結果を聞き、思わず若葉は唸る。

これは下手に戦闘行動に移るよりも、自身が停戦を呼び掛けた方がいいかもしれない。

そう若葉が考え始めた時………何とマイクで、そのアクト・ザクから声が響いた。

 

「やっと出て来たか!「ヤキン・ドゥーエ」の英雄!!貴様達を倒して、このマレット・サンギーヌが、キシリア様の望む新しいジオンを、この「ア・バオア・クー」で作る!!」

 

「………説得は無理みたいだぞ、若葉。どうやら、俺達を御指名のようだ。」

 

イザークが、溜息と共に背中のウィザードから「ファルクスG7 ビームアックス」を取り出す。

巨大なビームを纏った両手持ちの斧へと姿を変えるのを見たマレット機は、大型の専用ヒート・ホークを二振り握り直すと、対峙していたジンを置き去りにして、一気に加速する。

イザークは内心速いとは思ったが、そのジグザグに突撃してくる動きは、殺意があり過ぎていた。

その為、相手のコックピット狙いである斧の機動が分かりやすく、割と簡単に両肩のシールドで受け止められた。

 

「一応、貴様の目的を聞いておいてやる。」

 

「貴様ぁッ!隊長の癖に頭が悪いのか!?俺はキシリア様の為、貴様らを倒して新たなるジオンへの足掛かりにするのだ!!」

 

隊長とは思えない、支離滅裂な発言であった。

ジュール隊を全滅させたところで、ジオン公国が蘇るわけでも無い。

もしくは、ジオン公国とはまた違った別の国の事を指しているのかもしれないが、どちらにしてもイザーク達を倒す意味は全くない。

 

「そもそも「俺ら」ではなく「俺」と言っている時点で、自分の実力だけを過信している………。」

 

隊内通信でぼやきながらも、イザークは周囲の状況を確認する。

一応3人の部下達………ユイマン・カーライル、リリア・フローベール、ギュスター・バイパーは健気なのか、彼を必死に援護しようとしているのだが、マレットが1人で突出する為、追いかけるのに苦労していた。

 

勿論、こうなった以上は、ディアッカを始めとしたジュール隊の面々や協力者である若葉が、ビーム突撃銃やビーム・ランチャー等で牽制を行い、合流を阻止している。

只、その自身の危険な状態すら、今のマレットは気付いていない。

 

「フハハハハハハハハ!俺の実力と目的の前に、声も出ないか!情けない!!」

 

イザークがシールドでひたすら防御するだけだった為、マレットは受け身になっていると誤認したのだろう。

ひたすら高笑いをする姿に、奇妙な物を感じた。

 

「……………コイツ、正気じゃないな。薬でも使っているのか?」

 

実は、マレットは以前、ハルシュタイン軍親衛隊であるアイドルマスター………というより、彼女達と一時的に共闘したソレスタルビーイングのティエリア・アーデに敗北をしている。

それ以降、彼は周囲の反対を押し切り、反射神経を高める強化薬に手を付けていた。

ティエリアに一度プライドを粉砕された方がいいと判断された狂犬のような性格が、皮肉な事に悪い方向に悪化してしまっていたのだ。

 

「貴様達を倒せば、キシリア様も喜ぶ!俺は!新たなるジオンを作って!!」

 

「部下が報われないな………。」

「他人事じゃないのがまた………な。」

 

何処となくマレットの言動に選民思想を感じ取ったイザークとディアッカは、昔のコーディネイターによるナチュラル差別意識を持っていた自分達の姿を思い出してしまう。

そして、思わずマレットに哀れみを覚えてしまった。

 

一方、その部下達は、何とか傲慢な隊長を援護しようと必死だ。

特にケンプファーを操るリリアは、ジャイアント・バズを二丁抱えて砲撃を行っている。

だが、ディアッカ達の介入で数的にも不利になって来た為、徐々に押され始めていた。

 

一応、遠くに母艦と思われるザンジバル………以前、前川みく達がいた艦とは別の物は見えたが、援護しようとする素振りは無かった。

マレット達を巻き込む危険性を考慮しているとも思えたが、暗に見限っているのかもしれない。

 

「キシリア様の為に死ねええええええええええ!!」

 

いよいよドーピングの効果が悪影響を及ぼし始めたのか、マレットは最終的に子供のように、スラッシュザクファントムのシールドに二振りの専用ヒート・ホークを何度も叩きつける始末。

イザークは改めて溜息を付くと、こう述べた。

 

「一応言っておく。戦闘は1人でやるものじゃない。」

 

次の瞬間、アクト・ザクの背中のバーニアが爆発を起こした。

イザーク達が加勢するまで、マレットと高機動戦闘を行っていた薄緑のジン………ジンハイマニューバが、本来ならば扱わないはずの「スナイパーライフル」による実弾を放ったのだ。

 

「何いいいいいいいいいいい!?」

『マレット様!?』

 

「貴様は殺す価値もない。」

 

そう言うと、イザークはアクト・ザクにビームアックスを振り下ろす真似もせず、思いっきり蹴飛ばした。

勿論、3人の部下達は慌ててマレット機を回収しようとするが、宇宙で溺れながらも彼は赤子のようにヒート・ホークを振り回している為、近づけない。

 

「マレット様!武器を捨てて下さい!」

「これでは、無駄死にですぞ!」

「早くしないと不味いですって!」

 

ここでイザークは、マレット達を完全に放っておきながら通信を送る。

その相手は、スナイパーライフルを撃った、ジンハイマニューバのパイロットであった。

 

「………この馬鹿者達に何機やられた?」

「あの大将機の奇襲を受けて、ジンが2機墜とされたわ。」

「こんな奴に俺の部下がやられるとはな………もう2発くらい蹴り飛ばしておくか?」

 

女性の声であり、イザークに敬語で無い。

気になったので、若葉が首を傾げながらザフトの通信チャンネルで聞いてみる。

 

「貴女は………?」

「初めまして。私の名前は相川千夏(あいかわちなつ)。ジュール隊の中で、別動隊の小隊長を担っているわ。」

 

モニターには、眼鏡を掛けた女性が映った。

美優ほどでは無いが、若葉よりは年上だと直感的に思う。

どうやら、被害を軽減できていたのは、彼女がマレットの性格や技量を見抜き、1対1で戦ったからであるらしい。

機体性能はザクウォーリアよりは落ちるが、わざわざスナイパーライフルを扱うのを見ると、腕はかなり良いと思えた。

 

「くそおおおおおおおおお!キシリア様のジオンがあああああああああ!!新しいジオンがああああああああああ!!?」

 

「やかましい!ジオンの膿め!!」

 

マイクで声を発したのは、イザークでは無かった。

空間がヒビ割れを………ジェネレーション・ブレイクを起こし、別の勢力が姿を現す。

 

大半を占めていたのは、足の無い機体であった。

脚部がブースターに置き換わっており、如何にも宇宙で高機動を見せる為の機体であると言える。

ミリアリアが「ドラッツェ」であると教えてくれた。

しかし、気になったのは、その中心に鎮座していたガンダムである。

 

「アレは………何?ガンダム?」

「ミリアリアが知らないって事は、秘匿機体って事か?………おい、アンタ。わざわざコソコソ表れて………一体、何者なんだ?」

 

ディアッカが、マイクで敢えて挑発するように問う。

すると、相手はふん!………と鼻を鳴らしながらも、武人のように声を上げた。

 

「我が名はアナベル・ガトー!この「ア・バオア・クー跡地」は、デラーズ閣下の為に我ら「デラーズ・フリート」が有益に使わせて貰う!!」

 

「アナベル・ガトー?………ふん!誰かと思ったら、敵前逃亡の腰抜けか!!」

 

「何……………?」

 

名前を聞いて反応したのは、意外にもマレットであった。

彼は斧を振り回すのを止めると、なじるようにガトーに告げる。

 

「キシリア様を放って、エギーユ・デラーズと共に尻尾を巻いて逃げたのだろう!?貴様こそ、ジオンの膿だ!ソロモンの悪夢の名が、泣いているぞ!!」

 

「貴様………閣下を侮辱するかぁッ!!」

 

ガトーはガンダムを………試運転中であったガンダム試作2号機(MLRS仕様)のビーム・バズーカを、何とマレット機に向けて放つ。

慌てて部下達が射線上からマレットをずらすが、ビームが掠り、ユイマン機のリック・ドムⅡの片足が吹き飛んでしまう。

 

「グッ………無抵抗の相手に!?」

「マレット様に何をするの!?」

「と、とにかく逃げるぞ!色々と状況がヤバい!?」

 

文字通り尻尾を巻いて逃げるしかないマレット達であったが、ガトーはビーム・バズーカだけでなく、MLRSによる多連装ロケットシステムを全弾放つ。

この大型ミサイルは、リリアのケンプファーが前に出て、専用ショット・ガンを乱射して撃ち落としていくが、爆発の影響で、左肩から先を失ってしまう。

尚も、ビーム・バズーカを乱射してマレットを狙おうとするガトーであったが、ジオン関係者である若葉が見ていられずに、狙撃型ナックル・バスターを撃って、動きを止める。

 

「何をする!?」

 

「貴方こそ何をしているんですか!?同じジオンの民に………しかも、無抵抗の相手に!!」

 

「あんな下等な男、同胞では無いわ!!」

 

マレットの行動も確かに問題ではあったが、ガトーの言動もかなり傲慢に映った。

イザークは思う所があったのか、密かにコックピット内で頭を抱えたが、一応話は持ちかける。

 

「………俺達は、ザフト所属のジュール隊だ。デュランダル議長の命令で、この宙域の調査をしている。悪いがそのデラーズ閣下に頼んで、議長と交渉を………。」

 

返答は、ビーム・バズーカの軌跡。

自身の主を罵倒された事で、相当頭に血が上っているらしい。

説得は難しいと若葉ですら悟ってしまった。

 

「貴様の言葉など、耳を貸す意義も無い!!」

 

「この男は、自分の気に入った者しか興味が無いのかしら………?」

「プライドが高すぎるんじゃねぇ?」

 

シホやディアッカも呆れる中、ガトーは配下のドラッツェ達に指示を出し、連携を取ろうとする。

一応、周囲を見る事が出来る所を鑑みると、マレットのように分断して戦う事は出来そうに無かった。

 

「恐らく、手強いな………。」

 

巨大なビームアックスでは、対処できないだろうと感じたイザークは、ファランクスを仕舞おうとするが、ここで美優が前に出る。

彼女は背中の双頭を動かし、「ビームファングシステム」による「ビームサーベル」4本を起動させると、シールド裏から「ビームトマホーク」も取り出す。

 

「ここは私が………こういう相手こそ、ケルベロスウィザードの出番です。」

「分かった、なるべく早く数を減らす。耐えてくれ。」

 

今回、イザークのスラッシュウィザードの武装は活かしにくいし、ディアッカ、シホ、若葉は格闘より射撃の方が得意だ。

千夏達は消耗している以上、下手にガトーのようなエース級と相手しない方が現状では良かった。

 

「貴様………犬の分際で私とやる気か?」

 

「ええっと………犬を舐めたらいけませんよ?が、がおー………!」

 

「貴様あああああああああああッ!!」

 

美優は軽く挑発しようとしたつもりであったが、想像以上に効いてしまったらしい。

ガトーはビーム・サーベルを取り出すと、身構える。

そして、部下達と共に、一気に突撃を開始してきた。




ジオン公国出身でも、マレット・サンギーヌとアナベル・ガトーって、相性最悪だろうなぁ…って思いながら書いたのが、この話です。
特に暴走マレットは話が通じない分、多分ガトーにしてみたら、シーマ様よりもたちが悪い相手じゃないかなって。
それだけジオンも一枚岩でないのが、難点なのでしょうけれど…。

余談ですが、アニマル姿の三船美優さんって、ストライカー・カスタムの空合掌底気が使えそうだな…ってデレステのイラストを見て思いました。
今回もケルベロスを怒らせたら、がおーってなりそうです(ツッコミ待ち)。

次回、三船美優VSアナベル・ガトー…実力的にはガトーの方が圧倒的に上ですが…?
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