モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第96話 PHASE8-4『ソロモンの悪夢』

ボルテールを出撃し、戦闘区域へと駆け付けた日下部若葉達。

そこでは、イザーク・ジュールやディアッカ・エルスマンなどのヤキン・ドゥーエの英雄を倒し、ジオン再興を目論むマレット・サンギーヌがいた。

マレットは薬で反射神経を強化していた反面、周囲の状況が見えなくなっていた為、3人の部下を置き去りにして孤立してしまう。

その危険な立場すら見えておらず、自身の力を過信する姿に、対峙したイザーク・ジュールは色んな意味で呆れてしまうが、冷静に背中のバーニアを部下に破壊させる。

 

スナイパーライフルの実弾で狙撃を行ったのは、ジンハイマニューバを扱う相川千夏。

ジュール隊では年上の女性パイロットだと思った若葉は、軽く挨拶を行う。

 

しかし、そんな中………ヒート・ホークを振り回し、赤子のように駄々をこねるマレットのアクト・ザクに、制裁を下そうとする存在が。

それは、ガンダム試作2号機(MLRS仕様)の試験を行っていた、アナベル・ガトー率いるデラーズ・フリートの軍勢であった。

 

エギーユ・デラーズ閣下の為に、この「ア・バオア・クー跡地」を頂くという彼であったが、マレットから一年戦争時に敵前逃亡した事をなじられ逆上。

もはや抵抗する事の出来ないマレット達を撃墜しようとする姿に、思わずジオンに所縁のある若葉が止めに入るが、彼の怒りの矛先はジュール隊にも向く。

強敵だと感じるイザークに対し、しばらく時間を稼ごうと前に出たのは、ケルベロスザクウォーリアを操る三船美優であった。

 

 

 

「それしきの腕で、このアナベル・ガトーが墜ちるとでも思ったか!?」

 

「腕前を見る前に………判断しないで下さい。」

 

先制攻撃を行ったのは、美優。

双頭のウィザード頭部内にある、「リトラクタブルセレクション内ビーム砲」を撃ったのだ。

ビームファングシステムによる牙のようなビームサーベルに気を取られていたら、間違いなく直撃であるが、そこまでガトーは油断してはいなかった。

巨大なラジエーター・シールドで受け止めながらも、ビーム・サーベルを構えながら接近していく。

 

「えっと………鬼さんこちら、手の鳴る方へ?」

 

「馬鹿にするなあああああああああ!!」

 

美優は挑発を止めないまま、ガトーを部下のドラッツェ達から引き離しに掛かる。

煽る行為は苦手な性格であったが、天然であるのが幸いし、ガトーをことごとく苛立たせた。

やがて、後ろにデブリが浮かんでいる場所まで下がると、宇宙ではあるがバク宙をするようにして、隠れ蓑にする。

 

「それしきの事で!!」

 

「あ………このデブリ、後ろにジオンの紋章が………。」

 

「!!?」

 

踏み絵のように忠義の心を試されてしまうガトー。

ジオン公国に身を捧げているとも言える彼は、思わずビーム・サーベルを突きだす手が鈍ってしまう。

しかし、当然ながらデブリの裏に、ジオンの紋章などあるはずが無い。

その僅かな隙に、美優は反時計回りに回り、ラジエーター・シールドに、自身のビームトマホークを叩きつけ、更に双頭のビームサーベルを突き刺した。

 

「しまッ………!?」

 

シールドは破壊できなかったが、形は歪み、収納していたビーム・バズーカの砲身を爆発させる。

厄介なMLRS(多連装ロケットシステム)は、マレット達に使ってくれていたので、これで遠距離攻撃を封じられたのは大きかった。

 

「後は、逃げ回るだけですね………。」

 

「この………!小癪な真似をおおおおおおお!!」

 

ガトーからしてみたら、冷静になろうとしても、中々冷静になれない。

もしも核弾頭が有ったら、勢い余ってぶっ放していたかもしれない程だ。

それだけ彼の中にあるジオン公国への愛を利用された事は、逆鱗に触れるには十分であった。

 

 

 

 

一方でドラッツェは機動力が高い物の、そこまで攻撃力が高いわけでは無かった。

強いて言えば、シールド裏にある「ビーム・サーベル」と、使い捨ての無誘導ロケット推進弾である「シュツルム・ファウスト」が厄介ではある。

しかし、実はジオン残党軍がコストパフォーマンスを重視して生産した機体であるだけに、ベテランパイロット達が、そこまで苦労するほどの敵では無かった。

 

「若葉!同胞かもしれんが、今は状況を鑑みてもらうぞ!」

「分かっています!………割り切れないほど、子供じゃありません!」

 

指示を出しながらも、イザークのスラッシュザクファントムは、2門の「ハイドラ ガトリングビーム砲」で敵機を穴だらけにしていく。

一方でディアッカのガナーザクウォーリアは、オルトロス高エネルギー長射程ビーム砲で纏めてドラッツェを蒸発させていった。

シホ・ハーネンフースのブレイズザクウォーリアは、バックパックの「ファイヤビー誘導ミサイル」で次々と機体を爆散させる。

若葉は、同胞たちを相手にしなければならない現実に若干顔をしかめながらも、ガ・ゾウム(ガンナータイプ)の狙撃型ナックル・バスターで1体ずつ確実に射抜いていく。

千夏は弾数の残りが少ない射撃武装を使わず、ジンハイマニューバの「重斬刀」ですれ違い様に真っ二つにしていった。

 

次々と数を減らされる「デラーズ・フリート」の惨状を受け、思わずガトーに援護を求める機体も出てくるが、美優の挑発に乗ってしまっている彼を引き戻すのは簡単では無い。

ガトーからしてみたら、冷静沈着な副官であるカリウス・オットーを連れてこなかったのも、災いしていた。

 

 

 

 

結局、美優とガトーの追いかけっこは、尚も続いた。

ガトーほどの機動力と腕前ならば、彼女に追い付く事は可能だ。

しかし、遠距離武装を失った事と冷静さを欠いている事が、その可能である行動を不可能に変えてしまっている。

美優は一旦ビームトマホークを左肩のシールドの裏に仕舞うと、両手のマニュピレーターで器用に手を叩く真似すら始めた。

 

「ええい!逃げ回るな!!正々堂々と勝負をしろ!!腰抜けがぁッ!!」

 

「行動不能の味方機を殲滅しようとする、貴方に言われたくはありません………。」

 

マイクで叫べば叫ぶほど、相手に冷静さを欠いている事を伝えてしまう。

その判別が出来なくなるほど、ガトーは我を失っていた。

美優は逃げ回りながらも、定期的にビーム砲を撃つが、やがて操作を間違えたのか、デブリの1つにぶつかってしまう。

 

「あ……………。」

 

「捉えたぞ!!」

 

ガトーにしてみたら、千載一遇のチャンスであった為、ここでようやく右手でビーム・サーベルを突きだす。

美優は慌てて右に飛びのこうとするが、ガトーはデブリに突き刺したサーベルを左に振るだけで捉える事が出来た。

だが……………。

 

「ッ!!!!!?????」

 

今度こそ、ガトーは心臓が喉から飛び出そうになる。

自分が突き刺したのは、破壊された戦艦の船尾………次元の歪みに巻き込まれた若葉が発見した、ムサイの破片であった。

つまり、そこには………紛れもないジオン公国の紋章が刻まれているわけで………。

それを自身の手で、焼いてしまったのだ。

 

「な………なな………!?」

 

勿論、その致命的な隙を逃すほど美優は甘くない。

ビームトマホークを再び取り出すと、試作2号機の歪んだラジエーター・シールドに叩きつけ、今度こそ破壊する。

尚も、動揺するガトーは、ビーム・サーベルをようやく引き抜くが、美優は返す手でビームトマホークを投げつけ、右手のマニュピレーターごと斬り飛ばす。

 

「グッ!?」

 

それでも諦めずに、「60mmバルカン砲」を連射しながら、蹴りを喰らわせようとするガトー機。

美優のケルベロスザクウォーリアは、左肩のシールドで実弾と蹴りを受け止めながら、双頭部分のビームサーベルを振りかざす。

ここまで来たら、もう美優の勝利は目前だ。

 

 

 

 

しかし………勝利の女神は、彼女に微笑まなかった。

 

 

「!?」

 

突如空間にヒビが入ったと思いきや、横合いから強力なビームが飛来し、慌てて下に動いた美優のケルベロスウィザードの双頭部分を焼き払っていく。

ガトーは増援が来たのかと一瞬考えたが、背後に目をやった瞬間に、言葉を失う。

残っていたドラッツェ達が、別の方角から飛来したビームによって焼き払われていったのだ。

 

「無差別攻撃………!?」

 

「何者だぁッ!?」

 

美優が驚き、ガトーが咆哮する中、再び先程と同じ高出力ビームが飛来する。

今度は直撃コースだった為、左肩の耐ビームシールドで防御行動を行う美優だが、威力が強すぎた影響か、左腕ごと持っていかれる。

一方のガトーは盾を失っていた事が災いし、回避しきれずに左足を持っていかれ。バランスを失ってしまう。

 

「ぬあああああああああああああッ!!?」

 

そして、運が良いのか悪いのか、別のデブリに叩きつけられたガトーの試作2号機は、宙域から離脱する形で遥か彼方に飛んでいく。

美優は追いかける余裕も無く、咄嗟に取り出していたビーム突撃銃を右手に構え、相手を見定めていた。

 

「あの機体の群れは一体………?」

 

「ジオンが情けないねー。やっぱり、時代はネオ・ジオンだよ!」

 

美優とガトーを高出力のビームで狙ったのは、水色のモビルアーマーに近い機体であった。

内部に巨大な砲門を携えており、そこから砲撃を放ったと思われる。

僚機としてはドラッツェをより重武装にしたような機体を2機連れており、まるで3機で宇宙を泳ぐように移動していた。

 

「フゴフゴフゴ!味付けはまだまだですが、出されたパンは美味しい内に食べませんと!」

 

一方で、デラーズ・フリートのドラッツェ達を薙ぎ払っていったのは、緑の流線形の長方形に近い2本のアームを携えた機体。

こちらは僚機にアイドルマスターの諸星きらりが愛用していたビグロを2機連れている。

 

「油断せず、確実に射抜いて行きましょう。ザフトも消耗しているのは事実ですから。」

 

更に、イザーク達に妨害されないように、射撃を絶え間なく行っている機体もあった。

茶色を基調としたヅダの亜種のような機体が、狙撃ライフルを撃っているのだ。

ツノ無しのヅダも2機僚機として並んでおり、本来は持っていないはずの対艦ライフルを放ちながら、一糸乱れぬ連携を行っている。

 

声は、全員女性であった。

陽気な声、何かを食べながら喋る声、冷静そうな声。

少なくとも3人は、確実に女性パイロットだ。

 

「おいおい………ミリアリア、アレは何だ?」

「記憶が正しければ「ジャムル・フィン」が1機、「ドラッツェ改(重装備型)」が2機、「ビグロマイヤー」が1機、ビグロが2機、「ヅダF(ファントム)」が1機、ヅダが2機。」

 

ミリアリア・ハウの戦場ジャーナリストとしての解析を受け、ディアッカは肩をすくめる。

特徴的なモノアイといい、またジオンに関する機体が多かった。

 

「若葉………コイツ等も、ジオンの系譜なのか………?何かネオ・ジオンって言ってるけどよ………。」

「それにしては、何か変ですねぇ………。」

 

若葉は油断なく回避行動を取りながらも、首を傾げる。

確かにジャムル・フィンは、ネオ・ジオンで計画されていたモビルアーマーだ。

若葉よりもほんの少し未来に位置する関係者達ならば、搭乗していてもおかしく無いだろう。

だが………一方で、ビグロマイヤーやヅダFは、一年戦争で開発された機体だ。

勿論、ジオン残党軍で使用された経歴はあると言われているが、わざわざ最新鋭機のジャムル・フィンの護衛という形で並べるだろうか?

疑問に思った若葉は、心の中でゴメンなさいと主君に謝りながらも、マイクでこう述べた。

 

「私は、ネオ・ジオンの日下部若葉と言います。このジオン残党軍とザフトへの無差別攻撃は、誰の命令で行っているのですか?」

 

「そりゃ、勿論………あたし達の主君、ミネバ・ラオ・ザビ様の………。」

 

代表して述べたジャムル・フィンのパイロットの言葉は、最後まで発する事が出来なかった。

若葉が問答無用で、右肩のビーム・ランチャーをぶっ放したからだ。

 

「な、何するの!?」

 

「残念ながら、今のネオ・ジオンの中では、ミネバ様はハマーン・カーンの傀儡と化しています。つまり、幼いミネバ様の命だと宣言するのは、余程の不届き者かネオ・ジオンを騙る者のどちらかでしかありません。」

 

油断なく狙撃型ナックル・バスターを構える若葉は、声音こそ落ち着いていたが、間違いなく怒気を持っていた。

陽気なジャムル・フィンのパイロットは、アッチャー………と自分が失言をした事を認めながらも、開き直る。

 

「まあ、仕方ないか。あたし………嘘苦手だから、堂々とした方がいいよね。そうだよ、確かにネオ・ジオンの機体だけれど、あたし達はネオ・ジオンじゃない。」

 

「ネオ・ジオンを騙るとはいい度胸をしていますね。だとしたら、貴女達の軍勢は………。」

「アメリアス。」

「え………?」

 

意外にも通信に答えたのは、ずっと黙っていたイザークであった。

彼はビームアックスを取り出しながらも、侮蔑するように言う。

 

「何も知らないとは言わせないぞ。地球連邦軍から、ジオンなどを騙る存在として情報が流れてきている。各軍事基地などを壊滅させている破壊主義者の軍勢らしいな。」

 

柳瀬美由紀がシンデレラガールズの捕虜になり、アメリアス勢力の情報が彼女達に知れ渡った。

そこで、協力している立場である連邦軍のユウ・カジマは、各組織に分け隔てなく、その情報を伝えたのだ。

 

勿論、バルバトスの情報もそうだが、世界1つを滅ぼす事実が、おとぎ話と捉えられる事も多く、大抵の組織は信じなかった。

だが………。

 

「あははー。そんな「おとぎ話」を、ザフトの隊長さんは信じるんですか?」

 

「………生憎、俺達の「元隊長」は、世界への憎悪から似たようなことを仕向けた経緯があるのでな。」

 

「苦労しているんですねー。」

 

感情を押し殺したイザークの問いに、ビグロマイヤーに乗って食べ物を頬張っている娘は、一度咀嚼を止める。

そして、楽観的な声ではあったが………少しだけ哀しそうに言った。

 

「あたし達………何処か運が良ければ、ちょっとだけは分かり合えたのかもしれませんねー。」

 

「………今から分かり合う事は出来ないのか?」

 

ディアッカはガナーウィザードの高エネルギー長射程ビーム砲を構えながらも、一応聞いてみる。

しかし、ヅダFを駆る冷静に声を発した者が、即座にそれを否定した。

 

「無理でしょう。実際に消された者と消されなかった者………そこに明確な違いがあります。」

 

「世界はともかく………仲間を失った感情は、お互い分かり合えるだろうが………。」

 

ディアッカの悲しそうな言葉に、サブシートに座っているミリアリアも、沈痛な面持ちになる。

「元カレ」であり「腐れ縁」のような状態であるザフトの男であったが、自分が前大戦で失った大切な人物を想ってくれる発言は、素直に有難かった。

ディアッカとの会話を聞き、説得が完全に無理だと悟ったイザークは、最後通告で問う。

 

「悪いが加減は出来んぞ。………名前くらいは、聞いておいてやる。」

 

「あたしは、西島櫂(にしじまかい)。短い間だけれど、宜しく!」

「フゴフゴフゴ………大原みちる(おおはらみちる)です。いやー………殺したく無いんですけれどね。」

「水野翠(みずのみどり)です。消された痛み………味わって下さい。」

 

 

アメリアス勢力の介入。

イザーク達にしてみたら、失った者達の気持ちが少しは分かる分、対峙は辛かった。




幾らアナベル・ガトーとはいえ、挑発を繰り返された上に、忠誠心を踏み絵に使われたら冷静さは無くすよね…と思った今日この頃。
良くも悪くも彼は、ジオンの為に生き過ぎたんだろうなぁって感じてしまいます。

そんな中で今度介入してきたのは、アメリアス勢力。
またしても新顔の登場ですが、大原みちるさんはPHASE8-1で分かった人も多いでしょうか。

様々なネオ・ジオンやジオンのモビルスーツが登場してきていますが、その実力は如何に?
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