モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第97話 PHASE8-5『気休め程度の罪滅ぼし』

デラーズ・フリートが介入してきたことで、アナベル・ガトーのガンダム試作2号機(MLRS仕様)と大量のドラッツェ達と対峙をする、日下部若葉とジュール隊。

しかし、ケルベロスザクウォーリアを駆る三船美優がガトーを挑発しながら誘導してくれたお陰で、敵勢力は分断。

ガトーに至っては、ジオンへの愛国心を逆手に取られた美優の戦術の前に、技量の差を引っ繰り返されてしまう。

 

だが、美優に勝機があると思われた瞬間、更なる勢力の無差別攻撃が飛来。

美優が被弾し、ガトーが戦域から弾き出されてしまう。

ドラッツェ達も壊滅状態になった為、イザーク・ジュールを始めとした面々が、敵勢力を見定めることに。

 

搭乗機体と相手の名乗りからネオ・ジオンの勢力かと思われたが、若葉の引っ掛け問題で、実際には破壊活動を行うアメリアス勢力であると判明する。

イザークやディアッカ・エルスマンは、過去の経験から一応説得を行おうとするが、相容れる事は出来ず、対峙する事に。

 

西島櫂、大原みちる、水野翠の3人を主力とした部隊に、若葉達は立ち向かう事が出来るのか?

 

 

 

「さーて、スイスイっとやっちゃおうかな!」

 

ジャムル・フィンの搭乗者である櫂は、砲門から高出力ビーム………「ハイ・メガ・キャノン」を放つ。

狙いはほとんどの武装とシールド、そして左腕を失っている美優機であったが、彼女はビーム突撃銃で牽制しながら後方に退避する事で、回避行動を行う。

しかし、ドラッツェ改(重装備型)が手持ちの「135mm対艦ライフル」を追撃で放ち、逃げ場を防いでいく。

 

「よーし、まずは1機仕留めるよ!」

 

「くっ………!?」

 

そのまま櫂は、ジャムル・フィンの両肩にある「3連装小型ミサイル・ランチャー」と、ドラッツェ2機に4基ずつ存在する「3連装ミサイルポッド」を一斉に放ち、飽和攻撃でトドメを刺そうとする。

 

「迎撃します!」

 

しかし、シホ・ハーネンフースのブレイズザクウォーリアが盾になるように前に出て、美優の持っていたビーム突撃銃を奪い、自分の物と2丁で構えると、後退しながら縦横無尽に乱射。

まるで「ホウセンカ」のように正確に飛来するミサイルを射抜いていき、次々と爆発させていく。

 

「流石に………全弾はまだ無理ね!」

 

それでも、ミサイルを爆破させた煙で幾つかの弾頭は隠れ蓑になって狙えないので、最終的にビーム突撃銃を捨てて、自身のシールドで美優機を守る。

シールド自体はミサイルで破壊されてしまうが、全ての攻撃を何とか防ぐことが出来た。

 

「武装は………。」

「シホ!俺のを使え!」

「恩に着ます!隊長!!」

 

みちるのビグロマイヤーとビグロ2機の「メガ粒子砲」の波状攻撃を躱しながら、イザークが自身のスラッシュザクファントムのビーム突撃銃をシホに渡す。

ドラッツェ相手に誘導ミサイルを全弾使い切っていた彼女は、これしかもう武装が無かった。

 

「美優、他の機体を連れて後退しろ!」

「隊長達だけで戦うんですか………!?」

「武器が無ければ足手纏いだ!ここは俺とディアッカとシホと千夏と若葉で耐え凌ぐ!」

 

そのまま隊内通信でイザークは、美優に指示を出す。

見れば、既に千夏のジンハイマニューバは、仲間のゲイツから「ビームライフル」を受け取っており、残って戦う構えを見せていた。

下手に消耗している部下を巻き込んだら、間違いなく更なる戦死者が出るとイザークは踏んだのだろう。

ハイドラのガトリングビーム砲を乱射しながら、逃げる隙を何とか作っている。

 

「ボルテールに戻れ!補給が済んだら、また出て来ればいい!」

「………分かりました!」

 

このままでは本当に足手纏いになりかねないので、美優は素直に撤退していく。

 

「逃がしま………。」

 

「残念ですが、こっちもお世話になっているんで!」

 

翠のヅダFが、主兵装の「95mm狙撃ライフル」で遠距離から狙おうとするが、若葉がガ・ゾウム(ガンナータイプ)の両肩の「ミサイル・ポッド」を一斉射し、牽制を行う。

流石に受け止められないと思ったのか、僚機のヅダ2機と共に「ザク・マシンガン」を連射し、撃ち落としに入った。

しかし、ここまでの行動を見ていたディアッカが、おかしな事に気付く。

 

「何か変だな………。あの9機………まるで、それぞれ3機1組でフォーメーションを組んでいるみたいだ。」

 

隙を見てオルトロスの高エネルギー長射程ビーム砲を放ちながらも、その回避コースを見て考える。

櫂のジャムル・フィンはドラッツェ改(重装備型)2機と、みちるのビグロマイヤーはビグロ2機と、翠のヅダFはヅダ2機と、ずっとコンビネーションを組んでいた。

 

「まるで………僚機がドラグーンのようね。」

「ドラグーン?」

「私達の世界で言う、貴女の世界にあるビットのような物よ。」

 

若葉が首を傾げたので、千夏が補足説明をしてくれる。

言われてみれば、僚機2機はずっと追従している形だ。

無言である事も考えると、ビットという言葉は、間違っていないように思えた。

 

「フン………数を水増ししているのか。余程の小心者なんだな。」

 

「器用と言ってよね。あたし達のトリックに気付いた所で、何が出来るのかな?」

 

櫂は、マイクで発せられたイザークの言葉を否定しなかった。

余程、自分達の戦術に自信があると見える。

だが、イザークはそれを気にする事なく、尚も言葉を発していった。

 

「貴様らがどんな地獄を見たのか………それは想像を絶するのだろうな。」

 

「同情するなら、大人しく散ってよね。」

 

「生憎、まだ地獄に落ちるには、早いと諭されたのでな。それに………少し俺達を侮り過ぎだ。」

 

イザークは、ずっとガトリングビーム砲で間合いを取りながら牽制を続けていたが、突然、勢いよくビームアックスを振りかぶり、一直線に突撃を始める。

正面からジャムル・フィンに向かって来た事で、櫂は思わず驚く。

 

「アンタ、バカなの!?そんな豆鉄砲と大振りの斧で!?」

 

「さあ、どうだろうな!」

 

思わず、ジャムル・フィンのハイ・メガ・キャノン砲を撃つ櫂。

だが、その砲撃は、スラッシュザクファントムまで届かなかった。

後方にいたディアッカが、オルトロスの高出力ビームを、何と撃ち出されたビームに斜めから当てて射線を逸らしたのだ。

 

「嘘ッ!?」

 

咄嗟に仲間の様子を確認する櫂であったが、みちるのビグロマイヤーは、千夏のビームライフルとシホのビーム突撃銃で動きを止められており、翠のヅダFも若葉のビーム・ランチャーで援護が出来ない状態であった。

 

「墜ちろおおおッ!!」

 

「うわわ!?」

 

振りかぶられたファランクスのビームアックスを前に、下がりながらも咄嗟にドラッツェ改の1機を盾にする櫂。

機体は横に真っ二つになり爆発を起こすが、その煙の中から「ハンドグレネード」が追加で飛来する。

 

「ちょ!?待って待って!?」

 

更に残ったドラッツェ改を前に出し防御体勢を取るが、受け止めきれずにこちらも爆散。

あっという間に僚機を失った櫂は「腕部メガ・ビーム砲」の出力を調節し、簡易の「ビーム・サーベル」として使って交差させ、追撃のビームアックスを何とか受け止める。

 

「加減は出来んとは言ったが………これが最後の降伏タイミングかもしれんな。」

 

「冗談じゃないよ!?」

 

咄嗟に蹴りを放つ事で何とか彼女は距離を保つが、今度はディアッカのオルトロスのビーム砲が飛来する。

櫂にしてみたら逃げ回ろうと必死に動いているのだが、ディアッカの砲撃は正確だし、イザークも中々距離を取らせてくれなかった。

 

「さて、どうする?大人しく降伏するか、このまま死を受け入れるか………そういえば、死んでも死なないんだったな!」

 

「わ、分かった分かった!侮ったのは本当に謝るから!!」

 

櫂の焦りに満ちた言葉が聞こえて来たが、それは降伏の言葉では無かった。

イザーク機にアラートが鳴り響く。

その意味を理解する前に、本能で彼は下がっていた。

 

「!?」

 

やがて、彼のいた空間を、オルトロスとは比較にならないような高出力のビームが通過していく。

距離を取ったイザークは、遠方を見て溜息を付いた。

 

「増援か………。戦力の逐次投入は、愚行だと思わなかったのか?」

 

「仕方ないじゃん!今までは3人だけで上手く行ったんだから!ゴメン………油断してた。」

「いえ………気にしないで下さい。間に合って良かったです………。」

 

戦場に介入してきたのは、奇妙な太鼓のような物を幾つか背中にぶら下げ、槍を持っているゲイツ。

両隣には、ジンに重火器を装備させた機体を2機連れていた。

 

「あはは~!ゆいも待っていたかいがあったよね~!ずっと待ちぼうけだったし、少しは暴れさせてよ!!」

 

更に、ボールを肩に2機くっつけたようなジムが1機。

巨大な盾を構えたジムを2機連れている。

 

「「ゲイツアサルト」が1機、「ジンアサルト」が2機、「NT試験用ジム・ジャグラー」が1機、「ジム・ガードカスタム」が2機………多くない?」

「連邦の機体だけじゃなく、ザフトの機体までいるのか?節操ないな………。」

 

ミリアリアやディアッカは、思わず困惑する。

何せ、一気にエース級の敵機が6機増えたのだ。

状況が不利なのは、目に見えて分かった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

戦場の様子は、ジュール隊の母艦であるボルテール内部でも、逐一で伝えられていた。

皆がマレット・サンギーヌやアナベル・ガトー、そしてアメリアス勢力の出現に、タブレットを見て緊張した面持ちである。

だが、その中で周囲の整備兵に、不可解な指示を送っている者がいた。

赤城みりあである。

 

「何………してるの?」

「補給の準備だよ!」

 

出撃のどさくさで、美優から預けられた形の乙倉悠貴の問いに、即答するみりあ。

しかし、補給の準備という割には、彼女はバックパックに2門の砲門を背負った青い機体に、ザクウォーリアのシールドを、ワイヤーで数珠繋ぎに幾つも括りつけていた。

戻って来る美優達を待つのならば、新たなウィザードなどを準備するべきなのに、これでは命令違反だ。

 

「えっと、美優さん達を待たないと………。」

「それじゃあ、間に合わないよ!イザークお兄ちゃん達は、今が不利な状況なんだもん!こっちから持っていかないと、危ないよ!」

「持っていくって………!?」

 

みりあのやろうとしている事を悟った悠貴の顔が、凍り付く。

ザクウォーリアのシールドの裏には、ビーム突撃銃の予備カートリッジやビームトマホークが格納されている。

彼女は、どんどん使える武装が減っている面々の為に、自ら補給物資を持って出向こうと考えていたのだ。

 

「だ、ダメだよ!みりあちゃん、11歳なんだよね!?勝手に出向いたら………!」

「後でお兄ちゃんに、本気で拳骨されるね………。」

「そういう問題じゃ無くてッ!死ぬかもしれないんだよッ!?」

 

悠貴は思わず止めに入るが、みりあは出撃準備を止めない。

ある程度準備が終わったら、残りの作業をイザークにパシリで使うように指示された整備兵に任せ、パイロットスーツに着替えに行く。

悠貴も追いかけるが、更衣室でみりあは、平然と整備兵用のノーマルスーツを脱いで着替えていった。

だが、彼女はおもむろに、呟く。

 

「イザークお兄ちゃんはね………前の戦争で、いっぱい人を殺したんだって。」

「殺したって………。」

「「みりあのようなナチュラル」を、沢山殺したんだ。ディアッカお兄ちゃんも、シホお姉ちゃんも、千夏さんや美優さんだって………。」

 

保護されたばかりの悠貴は、ナチュラルという言葉の意味を理解していなかった。

だが、みりあにコーディネイターとナチュラルという種族みたいな物だって教えて貰い、ジオンと連邦の違いのようだと悟る。

つまり、みりあは本来ならば、元々敵軍にいるような存在だという事だ。

 

「何で、みりあちゃんが、そのコーディネイターの人達の中に………。」

「気休め程度の罪滅ぼしなんだって。みりあ………パパとママと妹と4人暮らしだけれど、前の戦争で住む場所を失っちゃってね………お兄ちゃんのお母さんは反対だったらしいけれど、説得をしてみんな養ってくれているの。」

 

尚も、みりあは少し暗い表情で説明する。

 

実は、イザークは前の戦争で民間人を虐殺してしまった。

別に故意では無い。

只、大気圏突入を行うシャトルを逃げ出した地球連合軍の兵士と誤認してしまい、撃ち落としてしまったのだ。

 

だが、虐殺は虐殺。

後からその真実を知ったイザークは、今でもその時の事を思い出してしまい、悪夢に悩まされるらしい。

 

「イザークさんに………そんな過去が………。」

「ディアッカお兄ちゃんも、シホお姉ちゃんも………みんなみんな、色々と抱えてるんだ。………みりあ、本当はコーディネイターの事、まだ怖いよ?でもね………助けてくれた人を助けようと思わないのは、すっごくいけない事だと思うの。」

 

もしかしたら、様々な事情があったとはいえ、救って貰ったみりあにとって、イザークは本当に兄のように思っているのかもしれない。

だから、こうして整備兵としてボルテールに乗り込んでいるし、皆が怖がる中でも彼を助けに行きたいと感じているのだ。

 

「だから………みりあは行くね。悠貴ちゃんは寂しいと思うけど………。」

 

全て言い終わる前に、悠貴はクルー用のノーマルスーツを脱ぎだしていた。

そして、ロッカーを開き、掛かっているパイロットスーツのサイズを確認する。

 

「悠貴ちゃん………?」

「ここは、私の世界のア・バオア・クーだから、少しは力になれるかもしれない………!」

「付いて来て………くれるの?」

 

悠貴は無言で頷く。

勿論、彼女もまだ見習い兵と言える存在。

実際に戦場に出るのは、怖くて仕方がない。

それでも、みりあの瞳が、僅かに潤んでいるのを見逃さなかった。

 

「行こう、みりあちゃん。私達の恩人を………助けに行こうッ!」

「うん!!」

 

みりあは思わず両手で、悠貴の手を握り返した。

 

 

 

 

パイロットスーツを着用して準備を終えたみりあは、悠貴と共にモビルスーツに乗り込み、リニアカタパルトに出る。

両脇のレールが展開を始めた。

 

「そういえば………何処でモビルスーツの操縦を習ったの?」

「イザークお兄ちゃん達に言えば、もしもの時の為に色々と教えて貰えたんだ!スパルタだったけれどね!」

 

笑顔で告げる内容では無かったが、悠貴はその顔に頼もしさを覚えた。

ザクウォーリアは勿論、ゲイツRのような最新鋭のモビルスーツはパイロットと共に帰還途中であり母艦に残っていなかった為、前大戦時代の旧式機体を使う事になる。

みりあ曰く、シホお姉ちゃんのお古………であるらしい。

だから、絶対大丈夫!………と、自信のある顔を見せて、トリガーを握った。

 

「よーし、声を合わせて行くよ!赤城みりあ!」

「乙倉悠貴ッ!」

『「シグーディープアームズ」、行きまーすッ!!』

 

2人の掛け声と共に、補給パーツを山積みしたシグーディープアームズが出撃していった。




実力者揃いのジュール隊VSエース級のアメリアス勢力。
これだけの面々とまともに相手できそうなのは、この章の登場人物だと、冷静さを取り戻したアナベル・ガトーくらいかもしれません。

そんな戦場に、赤城みりあさんと乙倉悠貴さんが、援軍として行ってしまう事に。
混沌とする中、果たして何が突破口になるのか…。

登場機体の内、ゲイツアサルトはGジェネエターナル登場のモビルスーツとなっています。
面白い武装を持っているのが特徴なので、採用しました。
さて…乗っているパイロットは誰でしょうね?
解答は、次回!
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