モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第98話 PHASE8-6『破壊者達の名前』

アメリアス勢力である、西島櫂と大原みちると水野翠。

彼女達は、それぞれ2機の僚機をビットのように扱いながら、連携を見せていた。

 

次々と繰り出されている波状攻撃を前に、被弾していた美優達を、戦死する前に撤退させるイザーク・ジュール。

ディアッカ・エルスマンやシホ・ハーネンフース、相川千夏や日下部若葉が必死に応戦する中、見事な連携で櫂を追い込む。

 

侮った事を謝りながらも、彼女が取った手段は増援の要請。

更に3機2組のパイロットと機体が登場する事に。

 

一方、遠方に位置していたジュール隊の母艦であるボルテールでは、赤城みりあが勝手に補給をしに行こうと準備をしていた。

乙倉悠貴は止めようとするが、みりあからイザークが民間人を誤って虐殺した過去を聞き、ナチュラルである自分と家族は、「気休め程度の罪滅ぼし」で養われていると白状する。

皆が色々と抱えているからこそ、彼を本当の兄のように慕い、助けに行きたいと感じているみりあを見た悠貴は、自分も付いていく事を決意。

ザクウォーリアの補給パーツを沢山付けてある、シグーディープアームズを発進させ、戦場へと急ぐことになった。

 

果たして、彼女達は間に合うのか?

そして、アメリアス勢力の増援の正体は………?

 

 

 

「そこの増援の6機………いや、正確には2人か。貴様らの名前も聞いておいてやる。」

 

イザークはファランクスのビームアックスを構え直しながらも、ゲイツアサルトとNT試験用ジム・ジャグラーに乗ったパイロットにマイクで名前を聞く。

その内の前者が、背中に担いだ太鼓を1つ左手で担ぎ、右手で槍を持ちながら、静かな声で告げる。

 

「古澤頼子(ふるさわよりこ)と言います………。好き勝手している身で言うのも何ですが………よくも好き勝手してくれましたね?」

 

冷静ながらも、油断なく身構えていたが、それ故に若葉はあの太鼓を持っている意味が分からなかった。

すると、ディアッカが教えてくれたジュール隊の隊内通信で話してくれる。

 

「あの太鼓………「ダマル」って言うんだが、あの前に立つなよ。あの中には、「トリシューラビームトライデント」っていう槍から放たれるビームの出力を、数倍に引き上げるギミックがある。」

「もしかして、さっきイザークさんの前を通った強大なビームは………。」

「そういう事だ。あの出力だとオルトロスを使っても、射線を逸らす事は出来ない。」

 

その瞬間であった。

若葉のガ・ゾウム(ガンナータイプ)に向けて、おもむろに太鼓が投げられ、トリシューラの先端の穂からビームが発射される。

何気ない普通の緑色のビームであったが、太鼓………ダマルの中に入った途端、その太鼓が淡い光を放つ。

 

「!?」

 

タイムラグがあった事とディアッカの助言があった分、初めて見る若葉でも回避が出来た。

ダマルを輝かせたビームは、赤い太いビームとなって、彼女のいた空間を薙ぎ払っていく。

その光は、後方に広がる「ア・バオア・クー跡地」の廃墟を纏めて焼き尽くしていった。

 

「とんでもない太鼓ですね!?」

「だろ!?俺達の凄腕の仲間が、以前あの機体の搭乗者と対峙したんだ!油断すると消し炭になる!」

 

ディアッカの言葉を受け、若葉はダマルその物を破壊すればいいと考えるが、そうはさせないと僚機である2機のジンアサルトが、「ガトリング砲」を放って彼女を牽制していく。

更に、櫂のジャムル・フィンもハイ・メガ・キャノンを撃って来た。

 

「やらせないよ!みんなで攻めれば!!」

「ザフトの面々とはいえ………!」

 

再び放たれる、ダマルによる高出力ビーム。

今度はディアッカのガナーザクウォーリアが狙われたので、構えていたオルトロスを撃てず回避しようと動く。

この時、若葉やディアッカは視認してしまった。

ダマルはゲイツアサルトだけでなく、僚機のジンアサルトの背中にも複数付けられていたのを。

 

「太鼓の補充は十分ってわけかよ!?気を付けろ!ああいうシステムである以上、一度に何発も高出力ビームを放てる!」

 

ディアッカの言葉通り、頼子はダマルを3つ並べ、トリシューラのビームをすべてに注ぐ。

狙いは、若葉機では無く全てディアッカ機。

 

「そう来るかよ!?」

 

ダマル自身に間隔がある分、放たれた3本の高出力ビームの合間には隙間がある。

その間を縫うようにすれば、まだ躱す事は出来た。

しかし、その後にジンアサルトが両肩の「グレネードランチャー」と両脚の「ミサイルランチャー」を放ち、波状攻撃を仕掛ける。

 

「くっ………援護してくれ!!」

「了解です!」

 

ディアッカ機は「ハンドグレネード」を複数纏めて放り投げて、ミサイルを撃ち落としに掛かる。

若葉も狙撃型ナックル・バスターと右肩のビーム・ランチャーで何とか撃ち落としに掛かるが、それでも幾つかは残ってしまう。

ディアッカは左肩のシールドで受け止めるが、盾は破壊されてしまった。

 

「もらったよ!」

 

「ゲッ!?」

 

更にまた飛来する、櫂機のハイ・メガ・キャノン。

僅かに右に狙いが逸れていた為、ディアッカは反射的に左に動くが、すぐにそれが罠だと気付いた。

バックパックの右側には大型のオルトロス高エネルギー長射程ビーム砲が畳まれて収納されていた為に掠ってしまい、背中の「ビーム突撃銃」を巻き込んで爆発を起こしてしまう。

ディアッカ機自体は、まだ無事であったが、武装をハンドグレネード以外失ってしまった。

 

「武器が………!?」

「ディアッカさん、これ使えます!?」

 

若葉が咄嗟に自分の手持ち武装である狙撃型ナックル・バスターを投げ渡す。

ネオ・ジオンの物である為、型番の合わない武装であったが、ディアッカは即座にコンソールを叩き、自機用にカスタムしていく。

サブシートに座るミリアリア・ハウはその対応能力を見て、本当に砲撃関連に関する技術はエース級なのだと感じ取り、目を見開いた。

 

「させません………!」

 

「ビンゴ!………コイツは使えそうだ!!」

 

このチャンスを逃すまいと、頼子機がディアッカ機にトドメを刺す為、再びダマルにビームを注ぐ。

しかし、ディアッカは僅かな時間で若葉機の武装を自分用に合わせると、迷いなく中央のダマルを狙撃した。

 

「な!?」

 

狙い撃たれた事で、中央のダマルは大出量ビームを照射する前に爆散。

両脇のダマルも誘爆し、ビームは不発に終わる。

 

「若葉!接近戦は出来るか!?」

「狙撃より自信は無いですけれど………!」

 

一度、若葉のガ・ゾウムはモビルアーマー形態に変形し、櫂機のハイ・メガ・キャノンを、弧を描くように回避しながら接近。

そのままモビルスーツ形態に戻り「ビーム・サーベル」を抜き放つと、同じくサーベルを抜いたジャムル・フィンと鍔迫り合いを行う。

ディアッカは、更に狙撃型ナックル・バスターを効率よく撃ち、頼子のゲイツアサルトを含め、3機を一度に相手取っていく。

かなりギリギリの攻防であったが、まだまだ挫けるには早かった。

 

「イザーク達は………って、あんなのアリかよ!?」

 

チラリと横目でイザーク、シホ、千夏の3人の様子を確認したディアッカは、思わず叫んでしまった。

 

 

 

 

ディアッカが見た時、イザークのスラッシュザクファントムは、一番破壊力のある武装………ファランクスのビームアックスを失っていた。

対峙している敵機は9機だが、彼の技量であれば、肝心の武器を失う真似は簡単にはしない。

しかし………。

 

「まさか、俺達の元隊長と同じことが出来るとはな………。」

 

NT試験用ジム・ジャグラーの一番の武器は、肩のボール部分に取り付けられた「ビーム・ライフル」である。

しかし、そのボールが曲者であり、何と移出して簡易的なオールレンジ攻撃を放つ事が出来るのだ。

 

「強すぎてゴメンね~!ゆいの不意打ち、ビックリしちゃったかな~?」

 

この攻撃をいきなり見せられた事で、イザークはビームアックスを破壊されてしまった。

勿論、シールド内には「ビームトマホーク」があるし、ハイドラのガトリングビーム砲も健在だ。

しかし、みちる機や翠機と的確に連携をこなすこのパイロットは、普通の敵では無かった。

イザークは冷や汗をかきながらも、冷静さを保ちマイクで告げる。

 

「いい加減、名前を名乗れ。破壊者を名乗っておきながら、それすら出来んのか?」

 

「む~!そっちは名乗らないのに、酷い言い草!」

 

「ジュール隊を率いるイザーク・ジュールだ。………これでいいか?」

 

「あ、御親切にどうも~!ゆいは大槻唯(おおつきゆい)だよ!宜しくね~!」

 

かなり軽い言葉であったが、殺意はしっかり持っており、ジム・ジャグラーのオールレンジ攻撃を何度も放っていく。

こういう敵は、ホウセンカの如く縦横無尽にビームを放てるシホの方が優位に戦えるとイザークは思ったのだが、先程美優を庇った時の動きで悟られてしまったのだろう。

ビグロマイヤーを率いるみちるが、僚機のビグロ2機と共に、優先的に大出力のメガ粒子砲を放って彼女のブレイズザクウォーリアを妨害していく。

 

「邪魔をしないで貰えませんか?」

 

「あははーっ!誉め言葉と受け取っておきますっ!」

 

一方で、千夏のジンハイマニューバは、翠のヅダFと僚機のヅダ2機の砲撃を回避しながら、隙を見て仲間のゲイツから受け取ったビームライフルを撃ってくれる。

だが、唯が従えている2機のジム・ガードカスタムが、巨大な「ガーディアン・シールド」で、その射撃をシャットアウトしてしまっていた。

 

「貴様は、とことん小心者だな。大楯の後ろで守って貰わないと戦えないとは。」

 

「そんな下手な挑発受け付けないもんねーっ!翠ちゃん!やっちゃおうよ!!」

「任せて下さい。」

 

千夏がイザークを無理に援護しようとすると、翠の方も唯を援護する余裕が出来る。

ヅダFを操る彼女は、僚機のヅダと共に、ザク・マシンガンを連射してイザーク機の動きを封じようとしてきた。

 

「千夏!そっちの動きを止めろ!!こっちは俺が何とかする!」

「撃墜されないで。隊員みんなが悲しむわよ!」

「分かっている!!」

 

イザークは、とにかくオールレンジ攻撃を放つボールを破壊すれば、何とかなると考える。

もしも、アレがドラグーンと同じ要領で操っているのならば、相手の集中力を切らせてコントロールを奪えば勝機はあるだろう。

故に、彼は思い切った挑発を行った。

 

「………報われないな。」

 

「何?不利だからって、ゆいを怒らせたいの~?」

 

「本音を言っているだけだ。世界を滅ぼされて、貴様が誰を失ったのかは知らん。だが………そいつは報われんだろうな。」

 

「……………。」

 

それまでお喋りだった唯が、突如黙った。

何かしらの効果があったのだと感じたイザークは、敢えて自分の目で見下すようにジム・ジャグラーを自機のモノアイで見下す。

 

「貴様が世界の破壊者に………それこそ、貴様の世界を滅ぼしたヤツと同じ行為をしていれば、報われんのは当然だろう。折角、貴様が生きたというのにな………。」

 

イザークの脳裏に、嘗て同じ部隊にいた優しい少年の姿が思い起こされる。

真面目でピアノが好きで………友達を守る為に、散ってしまった少年。

もしも自身が罪に耐えかねて死に走ってしまったのならば、彼は珍しく憤慨したかもしれない。

それもまた、優しさであるのだから。

 

「貴様の手を血で染める為に、そいつは生きてくれと願ったわけでは無いだろうに。」

 

「………止めてよ。」

 

「ハンッ!図星だったか?だったら、余計にそいつが可愛そうだな!!」

 

ふざけるな………とか、うるさい………とかでなく、かなり弱々しい言葉が出て来た事で、イザークは更に言葉の棘を刺していく。

半分は挑発であったが、半分は本気で見下していた。

 

これで、冷静さを見失ってくれれば、勝機が出てくるだろう。

しかし………イザークの博打とも言える発言は、「図星過ぎた」。

彼女は………大槻唯は………。

 

「止めてよッ!!ゆいの事、何も分からない癖にッ!!「ちなったん」の事!何も知らないクセにーーーッ!!」

 

突然、少女が激高する。

それまで統制を保っていた遠隔操作のボールが、暴れるように動き出した。

 

『唯ちゃん!?』

 

危険信号に気付き、みちるや翠が思わず叫ぶが、唯は手持ちの「ブルパップ・マシンガン」に加え、頭部の「60mmバルカン砲」も狂ったように乱射する。

ジム・ガードカスタムの動きも統制が取れなくなっていた為、これ以上に無いチャンスとばかりに、イザークはビームトマホークを掴み突進をした。

 

「うわあああああああああああッ!!」

 

だが、暴走した唯のボールは、ビームを不規則に乱射していた。

イザーク機から狙いは外れていたが、それが不味い事態を起こす。

 

丁度、彼が横を通過しようとしたデブリに挟まるように、若干潰れたコンテナがあった。

そこに逸れたビームが炸裂した瞬間、何とコンテナの中から大量の斧………ヒート・ホークがビックリ箱のように飛び出して来たのだ。

 

「何ぃッ!?」

 

思わぬ妨害によって突進を邪魔されたイザークは、急ブレーキ。

その隙を逃すまいと、翠のヅダFが素早く95mm狙撃ライフルでビームトマホークを狙い撃ち、破壊してしまう。

正確な射撃にイザークが驚く間もなく、みちるのビグロマイヤーがメガ粒子砲で脚部を薙ぎ払って行った。

 

「しまったッ!?」

 

「教えてあげるよ………ゆいは………ゆいが本来、消えるはずだったんだッ!!」

 

イザークは見た。

一転して冷徹な声を発しながら、ブルパップ・マシンガンを構えて接近してくる唯のジム・ジャグラーの姿を。

その殺意は先程の数倍に膨れ上がっているのが、彼でも分かった。

 

「世界が消される時、ゆいはちなったんと一緒にいてね………ゆいが足下から消えていく中、アメリアスの声が聞こえて………アメリアスに「救われるはずだった」ちなったんは、自分を犠牲にしてゆいを生かしたんだよッ!!」

 

唯の話の詳細はイザークには分からなかったが、それでも自身の挑発が、彼女の一番深い場所を抉ったのは理解出来た。

故に、自分をより確実に殺す為に、ビット兵器では無くマシンガンでハチの巣にしようとしている。

 

「クソッ!姿勢制御が出来んか!?」

 

「ちなったんの事!地獄で悔いろッ!!」

 

「隊長ッ!!」

 

イザークの危機に、シホが敢えてマイクで叫びながら、ビーム突撃銃を構えて突っ込んでくる。

みちるのビグロマイヤーは、一時的に「ハンドグレネード」を投げつけ煙に巻いていた。

しかし、連射されるビームを前に、ジム・ガードカスタムが2機立ちはだかってしまい、その攻撃は届かない。

 

「残念だったねッ!愛しの隊長には、死んでもらうよッ!!」

 

「千夏さん!!」

 

シホの叫びに、反対側から千夏のジンハイマニューバがビームライフルを撃ってくる。

スナイパーライフルは、翠の「シュツルム・ファウスト」を撃ち出したヅダFに投げつけており、こちらも爆発で一時的に煙に巻いていた。

 

「馬鹿者ッ!俺に構うな!共倒れするぞ!?」

「強がりを言っている場合じゃ無いでしょ!?こんなバカな子の思想に付き合って、隊のみんなを悲しませてどうするの!?」

 

千夏はマイクで叫びながらイザーク機の前に出ると、ライフルを構える。

それでもかなり不利であるだろう。

だが………運命のいたずらは、色々な意味で残酷であった。

 

「ちなったん………?」

 

「え………?」

 

「何で、ちなったんが………ゆいに武器を向けて………?」

 

「貴女………何を言って………?」

 

相川千夏は、知るはずも無かった。

ジム・ジャグラーのパイロットである大槻唯………本来バルバトスにデリートされるはずだった彼女をアメリアスに保護して貰い、代わりに自分がデリートされた女性………。

その名前も………いや、その姿もまた、「相川千夏」である事に。




大槻唯さんの登場は、PAHSE8-5の時点で悟った方も多いと思います。
それ故に、相川千夏さんと対峙してしまうと、こうなるわけで…。

ゲイツアサルトとNT試験用ジム・ジャグラーは、特殊な戦術が使える為、戦闘描写が楽しい機体かなと思います。
種運命時代のイザーク・ジュールやディアッカ・エルスマン達じゃ無ければ、簡単にやられていたかもしれませんね。

相川千夏VS大槻唯。
残酷な運命の戦いは、どう決着してしまうのか…?
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