便利屋とかアリウスのオリ主作品は多いのにオリ主が美食研究会のメンバーになるお話はなぜか少ないので書いてみました
それは10年ぐらい前、名前もよく知らない偉い人の誕生パーティーに参加した時のこと。
家族は他の参加者に挨拶に行き、人見知りで他人と会話するのが苦手だった私は家族が戻ってくるのをパーティー会場の隅で待っていた。
私はこの広い会場にたった1人でいることに寂しさを感じないほど鈍感でもいれなかった。かと言って見知らぬ誰かに話しかける勇気も待ち合わせていなかった。なんとも言えない居心地の悪さから私はこの場所から一刻も早く消え去ってしまいたかった。
「あら、そんなにうつむかれてどうされたんですか?」
パーティーが終わるまで誰もいない場所で待っていようと出口へ足を向けた瞬間。美しい銀髪の少女が私に話しかけた。
同い年ぐらいに見えるその少女は初めて会う私にも臆さず、眩しいほどの笑顔を向けていた。
「少し退屈だっただけです…」
「そんなんですか?私は黒舘ハルナと申します。あなたの名前を教えていただけませんか?」
「木春シオリです」
「まあ、素敵なお名前ですね。実は私も退屈していたんです。よろしければ話し相手になっていただけませんか?」
「あの…あなたはどうして私に話しかけてくれたんですか?」
私は彼女の言葉に被せるように問いかけた。私に話しかけてくれた彼女が何を思っているのか気になって仕方がなかった。
私は側から見ていて放ってはいられないほど可哀想な子供だったのだろうか。
私は誰かに自分の弱さを見られるのがとても恥ずかしかった。もしこの時、彼女がそう答えていたのなら私は何も言わずにこの場を去っていただろう。
「うふふっ、それはあなたとお友達になりたかったからですわ。わさわざ退屈なパーティーに足を運んだのですから、せめて楽しくお話できる友達でも作ろうと思いまして」
そう言って彼女は笑った。その笑顔はこの会場のどんなライトよりも明るかった。私のような人間には不釣り合いだと感じていながら、その眩しさに私はどうしようもなく惹かれてしまったのだ。
「わ、私もあなたとお友達になりたい…」
「まあ、それはとても嬉しいですわ。では一緒に料理を食べに行きましょう!ここのお料理はとても美味しいんですよ。食べないで帰るのはもったいないですよ。さあ、行きますわよ!」
「え、ええ!わかりましたから、待ってください!」
彼女…黒舘ハルナは私の手を取って料理がある会場の真ん中にあるまで引っ張ったのだ。
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【ゲヘナ第一校舎】
時間は12時25分、昼休みになった校舎を少女4人が歩いていた。
「ねぇ〜イズミ〜、本当に心あたりないの?」
「う〜ん、どこに置いて来ちゃったかなぁ〜?それがもう全然覚えてないの!朝は持ってたんだけど…」
「流石にナマコを放置しておくのはマズいですからね、早く救出してあげましょう★」
「それで、イズミさん。あと今日居たのは教室だけですのよね?」
「うん!あとは教室だけ!」
「ちょうど昼休みですし、人が少ないうちに探してしまいましょうか」
彼女たち美食研究会はメンバーの1人が学園に持ち込んでいたナマコを探していた。
彼女たちは美食の求道者、例え、それが一般的には人気のないナマコだとしても食材が食べられもせずに捨てられてしまうことは許容できなかったのだ。
「おーい、ナマコやーい!どこ行っちゃったのぉ〜? あれ?シオリ?」
美食研究会のメンバーの1人、獅子堂イズミが教室の扉を開ける。教室に居たのは自分で作った弁当を自席で食べる木春シオリだった。
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昼休み。クラスメイトたちは食堂か友人と一緒にいられる場所に昼食を食べに行くので教室はとても静かになる。
朝に少し早く起きて作った、解凍したご飯といくつかの冷凍食品を弁当箱に入れただけの簡単なお弁当。
ご飯とおかずの配分に気をつけながら少し冷たくなったご飯を口に運び、冷凍食品の小さなコロッケをお箸で半分に割って食べる。喉が渇いたら水筒のお茶を少し飲む。その繰り返し。
広くも狭くもない教室でただ一人。外からたまに聞こえてくる笑い声をbgmに今日も食事を取る。
昼休みにも関わらず一人でいることに寂しいとは感じることもあるが、ただこの時間も嫌いではなかった。人間関係というものは何歳になっても避けられないものだが、この時間だけは誰にも縛られず自分らしくいることができる。
昔からの人見知り高校生になっても治らず、クラスメイトとも仲は悪くはないが、特に親しいわけでもなく休日に遊びに行くほどでもない。
部活にも所属せず、ただ学校と自分の部屋を往復するだけ。そんな生活がこの先も続くと思っていた。
「おーい、ナマコやーい、どこ行っちゃったのぉ〜? あれ、シオリ?」
「こんにちは、イズミさん」
隣の席の獅子堂イズミさん。私がクラスメイトで親しい人は誰かと聞かれたらおそらく彼女と答えるだろう。
人と壁を作る私にもためらわず話しかけてくれる。そんな天真爛漫な彼女には救われていたかもしれない。
「シオリ、私のナマコ見なかった?いつの間にかいなくなっちゃって」
「ナマコ…ですか?先ほどからイズミさんの机の上で時折蠢く生命体のことでしょうか?」
「あ〜!こんなところにいた!良かったぁ〜」
昼食を食べている時に隣で不定期に動く不気味な生命体はイズミさんのナマコだったらしい。美食研究会とナマコ…まあ、ナマコも珍味と呼ばれてるし美食にカウントされても不思議ではないだろう。
「良かったわね、イズミ!無事見つかったことだしお昼食べに行こ!私もうお腹ぺこぺこ〜」
「そうですね。ハルナどうかしました?」
教室の入り口にいたハルナさんが何も言わずに私の机の近くまでやってくる。
「お久しぶりですね、シオリさん」
「え、ええ…お久しぶりです…ハルナさん」
久しく話していなかったが、子供の頃から変わっていない綺麗な銀髪に私は見惚れていた。
正直に言うと少し気まずい。初めて会ったパーティーの後も何回かパーティーで出会い、その度に楽しくお話して過ごした。それ以外にも何度か家に招待してもらったこともあった。節目の日には手紙なども送りあっていた。
彼女と過ごした時間はかけがえないものであり、まさしく親友と言っても過言では無い関係だった。ただ、時が進むにつれて会う回数も次第に減り、ここ数年は連絡も取らなくなっていた。
特に喧嘩とかしたわけではない。時の流れがそうさせたのだ。
彼女は有名人だったので、彼女がこの学校にいるということは入学してすぐに知った。遠目に見かけたこともあったが、久しぶりに会う彼女に私はなんと声を掛ければいいのかわからずいつもその場を離れていた。
そういうわけで何というかどうにも気まずい。私が何も言えずに微笑んでいるとハルナが口を開いた。
「そのお弁当はご自身で作られているのですか?」
「はい、とは言っても冷凍食品とご飯をよそっただけの簡単なものですが」
「冷凍食品ですか…確かに最近のものは味も良いと聞きますし、その手軽さは人類の進化の賜物と言えますね。ところでシオリさん、あなたは最近食事を楽しめていますか?」
食事を楽しめているか?その質問は私の内面に深く突き刺さるものだった。
私は昔から一人で外食することにどこかためらいみたいなものがあり、基本的に自炊している。
もちろん好みの食べ物を作ることもある。それもそれなりに楽しかった。だが、この学園に来てからはいつしか料理は味ではなく、いかに手軽に作れるか否かが一番重要な要素になっていた。
最近は、食事は生きるために仕方のない行為であり、楽しい行為とは思えなくなっていた。
「そうですね…あまり楽しめてないかもしれませんね」
「あら、そうですか…美食研究会たるもの、食事の素晴らしさを伝えることも重要な役目ですわ。ではこの機会にシオリさんにも美食の真髄をお見せすることにしましょう!シオリさん13時半に正門前に来てください」
「え!?ちょっ、ちょっと!」
13時半に正門?普通に午後の授業始まってる時間だ。私に授業をサボれということなのだろうか。
「シオリ!じゃあ、また後でね〜!」
「ハルナ!ちょっと待ちなさいよ!」
「えぇ…行っちゃった」
美食の真髄を見せると言い、去って行った彼女たち。あの強引さが彼女たちがテロリストと呼ばれる所以なのかもしれない。
ハルナさんはきっと今の私を見て心配してくれたのだろう。初めて会った時に強引に引っ張ってくれたあの時の彼女となにも変わっていない。私もそのことを嬉しく感じている。
それに"美食の真髄を見せる" その言葉に少しワクワクしている自分がいる。
「まあ、たまにはこういうのも悪くないですね」
13時半まではまだ1時間以上ある。残りのご飯を食べて、職員室に午後の授業の欠席届を出しても間に合うだろう。
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【ゲヘナ学園正門前】
「遅れてしまい申し訳ありません」
「私たちも今来たところですよ。何か問題でもありました?」
「いえ、欠席届の提出に手間取ってしまい…」
「へ〜、欠席届きちんと出す人初めて見たかも」
欠席届出さないで欠席する生徒も多いので、理由も適当に書いても問題ないだろうと思っていたのだが、職員から思ったより詳しく追求されてしまった。
まあ、最終的には体調不良と言って、提出したら認めてくれたのだけど。
「シオリさんは昔から優等生でしたからね、教師の方も心配になったのでしょう。そんな優等生のあなたに授業をサボらせるのは少し背徳感がありますね、フフッ」
「別に優等生ではないですよ、ただ今までサボるほどの用事がなかっただけで…」
「私たちと遊びに出かけることはサボる理由になるのですね!それは光栄ですわ。さあ、そろそろ行きましょうか、美食の真髄を見に!」
「行きますから引っ張らないでください!」
私の手を引く力は強く、前に出る歩幅も大きかった。10年前に私の手を取って、退屈な世界から連れ出してくれた時と何も変わらない。
彼女の横顔から見える笑顔はとても眩しかった。
「あの、どうして給食部の車なんですか?」
「今日のことを伝えたら給食部の知り合いが車を気前良く貸してくださったからですわ」
「これこそ美しき少女の友情ってやつですね★」
「そうかな?そうかも?」
【本作主人公】
・名前:木春シオリ
・年齢:16歳(2年生)
・誕生日:10月1日
・身長:159cm
・趣味:読書、料理
(人物)
人見知りで思い切った行動ができないタイプ。辛いものが好きだが、体に良くないのではないかと考えてしばらく控えていた。運動は苦手。
(外見)
クリーム色の髪を肩まで伸ばしている。黒いブレザーに赤いスクールリボン、黒のスカート。
(武器)
落ち着いたデザインの黒いハンドガン