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〈ゲヘナ学園食堂〉
食堂でお昼を食べているとハルナさんが急に立ち上がり私たちに言った。
「皆さん、今日の夜にBBQをしますので、各々好きな食材を準備しておいてください」
「BBQ?」
「はい、BBQです」
「それなら皆で買いに行った方がよくないですか?食材が被ったら困るような気がするんですが」
「それも楽しみの一つですわ。それぞれがBBQに最適だと思う食品を持ち寄り、一つの料理として楽しむ。美食への想いの融合だと思いませんか?」
つまりハルナさんが言いたいのは、メンバー個人の美食への価値観が合わさればより洗練された美食が生まれるということだろうか。
「ハルナ、場所はどこでするんですか?」
「学園でやりましょう。時間は18時からスタートとします」
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〈スーパーマーケット〉
そして放課後、私は学園からさほど離れていないスーパーマーケットにBBQの食材を買いに来ていた。
好きな食材か…そもそも私は友達とBBQをしたことがほとんどないのでどんな食材を持っていけばいいかもわかっていない。
携帯でBBQについて調べてみるとBBQの定義は屋外で薪や炭などを使って肉や魚、野菜等を焼くまたは蒸す料理のことらしい。
定義はとにかく、火で焼いたり蒸すだけの単純な料理法だ。その単純ない調理でも美味しく食べれるものかつ自分の好みの食材を持っていく必要がある。
そもそも、ハルナさんの考えからして、今回のBBQは美食研究会の合作と言える。
ハルナさんも各々の好きな食材と言っていたが、自分の好きなもの以外にも皆が持ってくるであろう食材と被らないものも選んだ方が良い気はする。同じ食材ばかりでは飽きそうだし。
頭の中で皆が持ってきそうな食材を考えてみる。
ハルナさんは高級志向があるので高価な食材を持ってきそう。候補としては和牛、カニあたり。
アカリさんはいっぱい食べることが好きなのでとにかく量が多いもの。候補は大きなお肉、ならなら牛1匹をそのまま連れてくるかも…
ジュンコさんはお菓子とか甘いものが好きなので、持ってくるものはマシュマロとかだろうか?
イズミさんが持ってくる食材は予想できないけど好みとしてはシーフード系とかチョコレートあたりだろうか。
私の予想が合っているとしたら、BBQを楽しむために持って行くべきは野菜系のものになる。野菜は嫌いではないし、むしろ好きなのでハルナさんのオーダーにも合致する。
せっかくなので私の好きな野菜も多めに持っていこう。
野菜売り場を順番に回り、BBQに合いそうな食材をかごに入れていく。
キャベツ、にんじん、玉ねぎ、シイタケとエリンギ。あとは定番のとうもろこし、鷹の爪、タバスコ、ハバネロ、その他もろもろ
まあ、こんなところで大丈夫だろう。
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〈ゲヘナ学園〉
「これより第1回美食研究会BBQパーティーを始めますわ!」
クラッカーも鳴らしてご機嫌なハルナさん。かわいい…
「では持ち寄った食材を順番にお披露目していきましょう」
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「では発案者である私から」
「BBQは単純な料理法。よって、素材本来の味が重要だと判断しました!持ってきた食材は霜降り肉にサザエ、伊勢海老、アワビ、カキですわ」
思ったより海鮮が多い。しかし、予想通りハルナさんは高級食材を持ってきた。
「主役級の食材ばかりですね★」
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「私はね〜好きなものをいっぱい持ってきたの!まずはマシュマロでしょ、それにポップコーンにお団子!あとバナナとリンゴ!」
ジュンコさんはBBQらしいお菓子とか好物のお団子などを中心に持ってきていた。全部BBQに合いそうだ、特にマシュマロはぜひとも食べてみたい。
「美味しそうですね!」
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「次はわたしですね。私が持ってきたのは牛肉100kgです★」
アカリさんが机に被せられた布を引くと、そこには私1人分くらいはありそうな大きな牛肉の塊。あれ5人で食べ切れる量には見えないけど今回のBBQだけで食べ切れるのだろうか?
「大きすぎじゃない?」
「皆さんが十分に食べたと判断したら残りは私が食べますから安心してください★」
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「私は好物の野菜を持ってきました。」
「いや、半分以上赤いんだけど!?」
「まあ、野菜が多めだとどうしても赤くなりがちになりますよね…」
「多めだったら普通に緑にでしょ!というか半分以上が唐辛子じゃない!?」
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「私はね〜」
来た…イズミさんの番だ。
イズミさんの持ってくる食材は予想がつかない。イズミさんはゲテモノだけが好きなわけではなく味のストライクゾーンが広いだけなので正確に言うとゲテモノ
「「「「………」」」」
固唾を飲んでその場を見守る美食研究会のメンバー。そして、イズミさんが背後に隠していたカゴを私たちに見せた。
「ナマコと鱈の白子にワニ肉、カエル肉でしょ、あと、みかんゼリーも持ってきたよ!」
みかんゼリーは普通に好きだし。ナマコは見方によっては高級食材。白子とカエルは私的にはちょっと厳しいけど、ワニ肉はまあいける…
うん、今日は当たりの日だったらしい。
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「食材の紹介も終わりましたし始めましょうか。事前にBBQコンロは火力の違うものを3つ用意しておきました。食材も多いですし、それぞれの食材に最適な焼き方で食べてください」
皆が気にいった食材をコンロで焼き始め、私も気になっていた食材を貰うためにハルナさんに話しかけた。
「ハルナさん、このお肉貰っていいですか?」
「ええ、どうぞ。そのために持ってきましたから」
「ありがとうございます!」
用意されていたトングで霜降り肉を一枚取る。筋肉の間に脂肪が網の目のように入っていてキラキラ光っているみたいだ。高級な肉ってどうしてこんなに美味しそうなんだろうか。
ゆっくりと網の上に乗せると、ジューという音がして濃厚なお肉の香りが広がる。
両面をしっかりと焼いて、そろそろ食べようと思っていたら急に横から箸が伸びてきて私のお肉を攫っていった。
横を向くとお肉を箸で掴んだジュンコさん。
「ジュンコさん!それは私が育てたお肉ですよ!」
「ふふん、BBQはね、早い者勝ちなのよ!」
「ぐぬぬ、それなら…!」
お肉の近くで焼かれていた良い焼き色のついたお団子の串を手に取って口に入れる。美味しい。
「あっ私のお団子!」
「ほいひいです」
「ふん、なら私も食べちゃうわ!もぐもぐ…あれ?なんか思ったより普通の肉…」
「もしかしたら熱で霜降り肉の脂肪がなくなってしまったのかもしれませんね」
「それじゃあ普通の赤身じゃん!」
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お肉が食べられてしまったので今度はハルナさんから伊勢海老を貰った。
伊勢海老が焼き上がる間、口寂しくて持ってきた唐辛子を食べていると今度はアカリさんが近づいてきた。
「シオリさん唐辛子ばかり食べて大丈夫ですか?また入院したら悲しいですよ」
私の伊勢海老を奪いに来たのではと思ったが、どうやら唐辛子をいっぱい食べる私を見て心配してくれたらしい。
「この唐辛子は辛さが控えめなので大丈夫だと思います。それに皆さんの食材もたくさん頂いていますし、倒れるようなことはないですよ」
「それなら良かったです。そういえばダイエットの調子はどうですか?」
「実はあれから色々考え直しまして。結局、間食を減らして運動するようにしていたんですけど、最近やっと体重が減ってきました!」
最近の成果を報告するとアカリさんは微笑んで私の頭に手を伸ばして優しく頭を撫で始めた。すごく気持ちがいい…いや、なんで!?
「頑張ってえらいえらいですね」
「な、なんで、頭を撫でるんですか?アカリさん、なんか今日、甘々すぎませんか!?」
「いえ、いつも頑張ってるので褒めてあげようと思っただけですよ★」
そう言って、私をじっくりと撫で回した後、アカリさんは別のコンロに食材を焼きに行った。
「全く。心臓に悪すぎです。さて、そろそろ伊勢海老が焼けて…あれ?」
私の目の前にあったはずの伊勢海老がいない。
もしかして落としたかもと思ってコンロの下を覗いても、いない…まさかとアカリさんの方を見ると手元にある皿には伊勢海老が乗っていた。
「アカリさん!!」
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持ってきた食材も底をつき、残りは私が〆用に持ってきた焼きそばが残るだけとなった。アルミプレートに焼きそばを入れて、加熱しようと思ったが、なんだか火の勢いが弱い。
「あら、火が…」
「炭がもうないみたいですわね」
「そんな…あとは焼きそばだけだと言うのに」
「今から炭だけ買いに行くのもって感じよね」
炭は十分にあったはずなのだが、アカリさんの肉を焼く時に大量の炭を消費してしまったようだ。炭を新しく買いに行くにしてもここからだと少なくとも30分はかかりそうだ。
お腹は8分目くらいなのでこの焼きそばを食べたらちょうど満腹になるくらいだったが諦めるしかなさそうだ。と思っていたらイズミさんが意外な提案をした。
「手を洗ってきたいと思ってたから、その時ついでに何か燃えるもの探してこようか?」
「火は残っているようですし、そうですね、イズミさんのお言葉に甘えさせてもらいましょうか」
「うん!任せて!」
「では、私たちは他のコンロの片付けをしてますね」
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「燃えるもの持ってきたよ〜!」
15分後、炭の処理やコンロを洗ったりしているうちにイズミさんが戻ってきた。後片付けのために離れた場所にいることもあり、カゴ付き台車に色々入っているのが見えるがここからだとよく見えない。
「ありがとうございます!ではそちらのコンロの中に入れてもらっていいですか?」
「わかった〜!」
「ちなみに何を持ってきたんですか?」
「ガソリンだよ!いっぱい置いてあったからたくさん持ってきた!」
「え?まさか入れようとしてるのって!」
「あっ!」
ドカアアアアアァァン!
イズミさんがかけたガソリンは炎上、そして脇に置いてあったガソリンにも引火し、校舎を巻き込んで大爆発した。
激しい音と光でしばらくは音も聞こえず、周りが見えなかった。目が見えてきてから周りを見ると一面が火の海になった現場。
不幸中の幸いなのはイズミさんは起き上がって歩いているのでそこまで重症ではなさそうなことだ。
校舎は窓も割れ、壁も崩れ、教室の中もすごいことになっているのが見える。
これは結構まずいような…いや、間違いなくまずい!
「ハルナさん!どどど、どうどどうするんですかこれ!?」
「シオリさんこういう時こそ冷静に、ですよ」
「まず1番初めにやることは、風紀委員会が来る前にこの場を離れることですね★」
「わかりました、すぐ準備をしま──」
「あなたたち楽しそうね」
振り返るとそこには今まで見たことないような顔をしたヒナ委員長がいた。
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〈シャーレ執務室〉
「こんにちは先生。当番に来たわ」
「"ヒナ!あれ?今日の当番はハルナだった気がするけど…"」
「ああ、美食研究会は海底油田開発部の手伝いでしばらく深海にいるからあと50年は帰ってこないわ」
「"そ、そうなんだ…“」