美食研究会の仮入部員は激辛好き   作:バランスストーン

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プロローグ2

 

「ハルナさん、美食研究会はいつもどのような活動されているんですか?」

 

 

 給食部の車に揺られながら、前々から疑問に思っていたことを聞いてみる。私が知っている美食研究会の知識は食堂や店を爆破してニュースになっているということだけだ。

 

「そうですね…いろいろなことをしていますが簡単に説明するならば美食を研究することが本質的な活動ですわね」

「それは簡単にまとめすぎているような…」

 

 

 美食研究会は何をすると聞いて、美食を研究しますと返ってくるとは思わなかった。きっと人に聞くのではなく自分の目で確かめろってことなのだろう。

 

 

「そう焦らないでください。シオリさんには美食研究会の活動を存分に体験していただく予定ですから」

「楽しみにしてるね」

 

「先ほどの話に付け加えるならば食べたい料理を食べるというのも活動の一つですわ。シオリさんは最近、行こうと思っていたけど行けなかったお店はありますか?」

 

行きたくても行けなかったお店…食事関係は基本的に学園近くにも揃っていたので不便はしていなかったけど…

 

 

「苦死狂血館の赤色革命ラーメン…」

 

 

 『苦死狂血館』ゲヘナの激辛好きにとっての聖地。長い歴史がありながら系列店を作っていないのとアクセスが悪いこともあり、鍛え抜かれた激辛好きしか訪れない店だ。

 

 店に出る料理は全て常人なら気絶するレベルの香辛料が使われている。看板メニューである赤色革命ラーメンは、朝のトーストにデスソースをかけるような激辛好きたちですら初めて激辛料理を食べた時の痛みやおいしさを思い出させてくれると評判だ

 

 激辛好きとして一度は行ってみたかったお店ではある。

 

「それって食べた人が辛すぎて唇の腫れが1週間治らなかったとか、三日三晩腹痛で苦しんだって噂の料理でしょ!?却下よ、却下!もっと普通のお店ないの?」

 

 私の提案した料理はジュンコさんにコテンパンに否定されてしまった。今日は私だけでお店に行くわけでないのだ。もっと無難な料理が良いに決まっている。

 

 

「確かにおっしゃる通りで─「お待ちください!」

 

「私はシオリさんに食事の楽しみを知っていただきたいのです。どうか皆さん、今日だけは彼女に胸を貸してあげてくださいませんか?」

 

「フフッ、仮入部員のためだったら仕方がないですね〜」

「うん!行こう行こう!」

 

「ちょっと待ってよ!流石にやばいって!」

「皆さんの同意を得られたことですし、早速行きましょうか!」

 

「得られてないんだけど!」

 

⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

ゲヘナ西区、某所

 

 

「これはなかなか」

「ここが噂の苦死狂血館…なかなかに趣がありますわね」

 

 車に揺られること2時間ちょっと、目的地に到着した。

 

 血を連想させる赤と悪魔の絵が所々に描かれており、遊園地のお化け屋敷と言われたら信じてしまいそうな佇まいだ。

 

 とっくにお昼を過ぎた時間帯なのに10人ぐらい並んでいる。ゲヘナ生だけではなく、ミレニアムやヴァルキューレ、トリニティの生徒すらいる。

 

 自治区を超えてこの店の評判が伝わっているのだろう。

 

 30分ほど待ち店内に入り、看板メニューを注文する。それから10分ほどで店員が料理を運んできた。

 

「赤色革命ラーメン4つお待ち!」

 

 ドス黒い赤一色のラーメン。スーパーでは見かけたことのない唐辛子、山盛りのスパイスとスープを吸って赤色に変色している長ネギ。視覚情報だけで体が危険信号を発している。

 

 スープに箸を入れ、麺を掬ってみると、なんと麺まで赤色…。スパイスを練り込んであるのだろうか?これは私も覚悟を決めた方が良いかもしれない。

 

「それでは、失礼して…うっ!」

「ねぇ、ちょっと大丈夫!?」

 

「お、美味しいです…!辛さの中に確かな旨味を感じます!ただ辛さ同士を真っ向勝負させている一品見えますが、スパイスや唐辛子たちのそれぞれの辛さが喧嘩していません。何かそれぞれの辛さのバランスをとっている食材があります。長ネギでしょうか?でも、長ネギだけではこのような調和は取れないはず… 。なるほどそういうことでしたか。仕掛けはこの麺に練り込まれたスパイス。この麺自体の辛さはそこまででもない、いえ、言ってしまえば拍子抜けするレベルのものです。しかし、その控えめな辛さがスープの辛さとのギャップを生み出す理由ですか。よく分かりました、これが激辛料理の"高み"というものなのですね」

 

 

「急に早口になったわね」

「あら可愛らしくて良いじゃないですか」

 

 目と鼻と口、喉全てに深刻なダメージを与える強烈な辛みとその辛さに負けずとも劣らない食材たちの旨味との完璧な調和。ただ辛ければ良いと思っている三流店とは天と地ほどの差がある。

 

「確かにこれはなかなかですわね…」

「お店とメニューのインパクトで食わず嫌いをしていましたが確かにハマりそうになる味ですね★」

「痛いよぉ〜!目が開けらないよぉ!」

「もう無理!ていうか、なんであんたたちは平気そうに食べられるの?」

 

 アカリさんとハルナさんは食べられてるようだけど、ジュンコさんとイズミさんは厳しそうだ。私のわがままでここに来た以上、私にもその責任がある。後で何かお詫びのデザートでも買っておこう。

 

「苦労して食べる好物のお味はいかがですか?先ほどの様子を見るにだいたい予想はつきますが、フフッ」

「とても素晴らしい料理です、私の想像よりも数倍美味しいうです。ありがとうございました皆さん」

「どういたしましてですわ、また来ましょうね」

 

「ハルナさんもアカリさんも結構辛いもの強いんですね。自分で言うのもなんですが、私が食べてもすごく辛いと感じるので相当辛いですよこのラーメン。」

「美食研究会の会長としてあらゆる料理を楽しむために訓練していますからね、まあ、ミントは除きますが…」

「私も辛いものには耐性がありますので★」

 

 さすが美食研究会の三年生。この店に来て涼しい顔をしていられるなんて今までどれほどの修羅場を潜ってきたのだろうか。

 

「もちろん美味しい激辛料理の店もいくつか心当たりがありますので次の機会に一緒にいきましょう」

「この前食べた山海経の激辛料理ならきっと気に入ると思いますよ」

 

 激辛料理は好きな人を選ぶ、今まで辛いものは一人で楽しむことが多かった。こうやって食の趣味が合う人と味の感想を伝えたり、美味しいお店を紹介してもらえたりする瞬間の嬉しさ、楽しさは一人でいたら知れなかった。

 

 

「ありがとう!二人とも!」

 

 

「ちょっとシオリ!話す余裕があるなら私もう食べられないから代わりに食べて!流石に残すのはもったいないし…」

「わかりました。ジュンコさん、器をこちらに」

「シオリさん、ジュンコさんを甘やかしては行けませんわ、これは彼女にとって新たな美食への一歩を踏み出すための試練なのですから!」

「絶対そんなんじゃない!」

 

⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 食に関しては海千山千の彼女たちもこの料理には無傷というわけにはいかなかったようで、店を出るや否や、近くに設置してあったベンチで休んでいる。この光景を見ると罪悪感が出てくる。

 

 皆がグロッキーになっている間にお詫びと感謝を兼ねて近くにある洋菓子店のお菓子を差し入れすることにした。

 

 

「ジュンコさん、大丈夫ですか?これ、お水と向かいのお店で買ったシュークリームです。多少はましになると思うのですが…」

 

「ありがとう!う〜、まだ唇がヒリヒリする」

「イズミさんも納豆マンゴー味のゼリー」

「ありがとぉ〜」

 

「ハルナさんにはカスタードプリンです。どうぞ」

「ありがとうございます」

 

「アカリさんにはバケツプリン。口に合えば良いのですが…」

「私の好みを理解している良いチョイスですね、ありがとうございます★」

 

 教室でイズミから美食研究会のメンバーの話は聞いていたので皆の好みを考えて買ってきた。それにしても納豆マンゴー味のゼリーがあるとは思わなかった。私が考えているより需要があったりするのかな…。

 

まあ、何はともあれ、うれしそうな顔をしてるので好みに合った物を買えたということだろう。

 

「あ〜美味しい!やっぱ私は辛より団子よね!シオリ、アンタは何食べてんの?一口ちょうだい!」

「ええ、もちろんですよ。どうぞ」

 

「ありがとう。ってうわ!?なんでこのプリンこんな辛いの!?」

「ハバネロ味ですからね、ピリっと来る辛さと甘さが癖になる素晴らしい商品だと思いませんか?もう一口いかがですか?」

 

「いらないわよ!」

 

 

 





勝手なイメージでジュンコとイズミは辛い物が苦手という設定になっていますのでもし違っていたらすみません

ジュンコの泣き顔は美しい…
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