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投稿がすっかり遅くなってしまいましたが、今後はもっと頑張りたいと思っていますのでよろしくお願いします!
〈トリニティ学園〉
頭痛と吐き気で目を覚ました。最悪の気分だ。見覚えのない場所だ、なんで私はここに?
「ここはトリニティ総合学園ですよ。シオリさん」
ハルナさんの声を聞いて、ズキズキ痛む頭を抑えながら起き上がる。そこにはイズミさん以外の美食研究会のメンバーとフウカさんがいた。
直前の記憶とこの場所から推測するに、私は捕まったのだろう。そして、ここに皆がいるということは…
「皆さんも捕まっていたんですね」
「ええ、私も10mほど頑張りましたが奮闘振るわず捕まってしまいました」
「みじか…」
「ちなみに私たちは正義実現委員会の委員長に捕まりした★」
正義実現委員会の委員長は私の反対方向へ向かったのでどんなことがあったか詳細はわからないが、彼女たちが揃いも揃って捕まったと言うのなら相当な強さだ。
「シオリは弱いのに案外頑張ったわね。一番に捕まるのはイズミかシオリだと思ってたけど」
「私なり必死に逃げたのですが、先生たちのチームの前にあえなく…」
「へぇー、先生やっぱりすごかった?」
「ええ、俯瞰しながら状況を見て的確に生徒に指示を出されていました。あの災厄の狐を撃退したという噂は嘘では無さそうですよ」
皆、先生のことが気になっていたようで先生について色々答えてるとジュンコさんが大きなため息をついた。
「はあ…私たちこれからどうなるのかな?」
「まあ、普通に考えたら風紀委員に引き渡しでしょうね★」
「そうですか…ヒナさんの手に私たちの命運が託させるのは避けたかったのですが」
「(なんで私まで…)」
私もヒナさんに引き渡されるのは嫌だ。私は今回初めて捕まったので何をされるか想像もつかないし、普通に怖い。
というか、アカリさんは笑顔で喋っているけど腕が明後日の方向に曲がっているが大丈夫なのだろうか?前から思っていたがアカリさんは体が丈夫だ。病院直行コースの怪我でもピンピンしてるし。
まあ、私も肩が外れてて腕が全く上がらない状態なのだが。
その後、給食部の車や車に放置されているマグロについて話していると先生がやって来た。
離れた場所に私とも戦った正義実現委員会の人もいる。捕まった時に名前を聞いたが羽川ハスミさんと言うらしい。
先生や彼女がここに来たということは風紀委員との話が纏まったのだろうか?
「"じゃあ、皆行こうか"」
先生に連れられるまま、私たちは護送車に乗り、ゲヘナの境界に向かう。
⭐︎
〈ゲヘナとトリニティの境界〉
護送車の扉が開けられたので外に出てみると先生と風紀委員長のヒナさん、救急医学部のセナさんの姿が見えた。見た感じゲヘナ側の生徒はそこまで多くない。しかも風紀委員会はヒナさんだけのようだ。
おそらく今の政治情勢を考えて、表向きは風紀委員会ではなく救急医学部が代表としてトリニティに来ているということにしているのだろう。
「ヒナさん、お久しぶりですわね」
「ハルナ、相変わらず……いや、詳しい話は帰ってからで」
「あら、やはり救急医学部の方でしたか★ちょっと私の腕があり得ない方向に曲がってるのですが、診ていただけます?」
「あ、私も肩が外れているので治していただきたいです…」
「うぇ、酔った。吐きそう」
「た、助かった」
「あら、給食部の…今日一日見てないと思ったらこんなところに。今、学園でジュリが…いや、やっぱり説明が帰りながらで」
「なんだか美食研究会がもう一人足りてない気がするけど、まあ…面倒だからいいわ。私は先生と話してくるから、あなたたちは車に乗ってて。セナ、手当をお願いね」
私たちに車に入るよう言うとヒナさんは先生に一声かけて離れていった。
「色々と配慮していただいてありがとうございます、先生。今度ゲヘナにいらした際には何か美味しいものでおもてなし致しますね」
「ではまた今度★」
「先生、ありがとうございました」
「うるさい、早く車に入って」
「"えっと、じゃあまた。気をつけてね"」
私たちが先生にお礼を言い終わり、ヒナさんが離れていくのを見届けるとセナさんが私の腕を持ち…
ゴキッ!
「ゔぇ!」
「痛みは治まりましたか?」
「は、はい。ありがとうございました」
試しに腕を体から遠ざけてみる。うん、問題なさそうだ。三角布で肩を固定され、処置が終わるとアカリさんの方へ行ってしまった。
⭐︎ ⭐︎
「おえええ!」
「大丈夫ですか?」
バケツに吐いているジュンコさんの背中を摩っているとヒナさんが戻ってきた。
先生との話が終わったらしい。随分と長話をしていたのでゲヘナとトリニティの間で何か大きな問題が起きているのかもしれない。
「それじゃあ行くわよ。くれぐれも変な行動は起こさないでね」
「わかっておりますわ」
ヒナさんが護送車の扉を閉めてから数分後、車が動き始めた。護送車の窓から外を見ているとトリニティらしい風景から慣れ親しんだゲヘナの風景へと変わっていく。
「はぁ…」
これから私たちはどうなるのだろうか。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
〈ゲヘナ地下牢〉
「あなたたちはここに入ってて」
その後、数時間、車を走らせてようやく辿り着いた風紀委員会の地下牢。ヒナさんに指示されたまま独房の中に入った。
私が入った独房はベットとトイレ、洗面台があるだけの簡単な作り。一応、簡単に掃除はされているようでカビ臭さは感じない。
寝心地が良さそうとはとても言えないベットに腰掛ける。
流石に今日は疲れた。ゲヘナからトリニティへの移動に、そして戦闘、ゲヘナへの移送。もはや立っているだけでも難しいレベルだ。
地下牢に音はなく、まるで世界に私だけしかいないような虚しさと孤独感を感じる。
最近は皆とずっと一緒に居たからこんな感覚は懐かしさ覚える。すぐ隣に皆がいるとわかっていても寂しいと思うようになってしまった。
(疲れているせいか、思考が悪い方へと行ってしまいますね…)
今日一日走り回ってたからなのか睡魔が襲ってきたら。睡眠欲に逆ら気力もなく、そのまま横になって目をつむる。
(…少し、寝ようかな)
そして5分もしないうちに私は意識を失っていた。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
「え?」
私は気がついたらゲヘナ学園の教室の中にいた。さっきまで風紀委員会の地下牢にいたはずなのに何故か教室にいる。夢でも見ているのだろうか。
腕の痺れと背中の痛みで私は机に突っ伏して寝ていたことがわかる。壁に掛かっている時計は12時10分を指しており、窓の外からは笑い声が聞こえている。そして手元には見慣れた弁当袋があった。
これは少し前までの私の日常の風景。
教室に生徒はおらず、現状を聞ける人もいない。なにがどうなっているのかわかっていない。が、ひとまず皆に会うために食堂に行くことにした。
いつもはイズミさんと一緒に食堂に行っているが今は隣にいない。もしかしたら、私が寝ているからと気を遣って起こさないでいてくれたのだろうか。
理由もわからない漠然とした不安からか足取りは速くなり、10分もかからずに食堂に着いた。
昼時の食堂は既に多くの生徒で溢れていた。ハルナさん達を見つけるため周りを見渡すと中央の席に彼女たちを見つけた。
彼女たちはいつものように笑いながら食事をしていた。私などまるで最初からいなかったように。
いつも一緒にいたはずの彼女たちを見るのがとても、とても久しぶりに感じる。
意を決し、少し声を震わせながら彼女たちに話しかける。
「こんにちは」
彼女たちは談笑をやめ、こちらに振り返る。皆、怪訝そうな顔をしたが、ハルナさんが笑 微笑んで挨拶を返してくれた。
「あら、こんにちは」
「ハルナ、お知り合いですか?」
「いえ…そうではないと思いますが。あの、大変失礼ですが以前にお会いしたことがありましたか?」
「え…」
初めは寝坊した私を揶揄っているのかと思ったが、彼女が嘘を言っているようには見えない。それに私への態度もそっけなく感じる。
「も、もしかして私を揶揄っているんですか?」
「いえ。その、申し訳ありません、そういったつもりではなく…」
「そう、ですか…」
彼女に嘘をついている様子はない。本当に彼女は私のことを知らないのだ。
心臓の鼓動が激しくなり、呼吸もうまくできない。目の前が真っ暗になる。これは本当に夢なのだろうか。こんなリアルな感覚を夢で感じられるとは思えなかった。
もしかして私が今まで皆とやってきたことは全て嘘だったのだろうか。何も変化がなく、退屈な人生に耐えかねた私が勝手に創り出した夢。
夢だと思っていたこの瞬間が本当の私?
そう考えると視界がぼやけてきた。
「すみません、人違いだったみたいです。失礼しました!」
涙が溢れてしまう前にこの場から去ろうとした時、ハルナさんが私の手を取った。
「お待ちください!」
「え…」
「これも何かの縁ですわ。一緒にお昼、食べませんか?」
ああ、この人は私のことをたとえ知らなかったとしても誘ってくれるんだ。
その言葉を聞いて私は今度こそ涙を流した。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
カンカン!と鉄格子を叩く音で目を覚ますとそこには銀髪の風紀委員会の生徒が立っていた。
「おい、起きろ!委員長がお前を呼んでるぞ!」
「わかりました」
目尻に溜まった涙を拭いて独房から出ると銀髪の生徒は私を取調室の前まで連れてきた。
「委員長、連れてきました。」
「わかった、中に入って」
扉を開け、中に入るとまさしく疲労困憊といった様子の風紀委員長が椅子に座っていた。
私たちをトリニティまで迎えに来た後にさらに取り調べも担当するのだから並大抵の疲労ではないはずだ。風紀委員長の苦労が容易に想像できる。
「なにを突っ立っているの?椅子に座って」
「あ、わかりました」
しかし、私が椅子に座った後はヒナさんは一言も喋らず、そこからしばらく沈黙が続いた。私は耐えられなくなってヒナさんに問いかけた。
「あのヒナさん、私を取り調べのために呼んだんですよね?」
「取り調べ、そうね…単刀直入に言うわ。あなたはどうして美食研究会に入ったの?」
「と言いますと?」
彼女は紙の挟まったバインダーを見ながら私に答えた。
「少しあなたの事は調べさせてもらったわ…成績は極めて優秀。学習態度も良く、問題らしい問題も起こさない模範のような生徒だったようね」
「……」
「そんな
ヒナさんはじっと私の目を見て、私に問いかける。
「理由ですか、そうですね…簡単に言うなら退屈だったからでしょうか?」
「退屈?ただそれだけの理由でテロリストになったと言うの?」
テロリストか…確かに美食研究会の活動は風紀委員会から見ると気に入らない飲食店を爆破して回る危ない部活としか思えないだろう。
そんな部に好き好んで入部する生徒、何か理由があると考えるのが普通だ。
だけど私は美食研究会がしっかりとした理念と目的を持った部活だということを知っているし、彼女たちの情熱も理解している。
それにヒナさんは彼女たちだけでなく、私のことも勘違いしている。
「美食研究会がテロリストかどうかは置いといて、そもそも私は優秀な生徒であろうとしていたわけではないんです。何もせずに流されるままに生きていただけです」
私が周りのゲヘナ生みたいに問題を起こしていなかったのは単にサボらずに授業を受けていれば周りからは干渉されなかったというだけだ。
不自由ない生活ではあったと思う。ただ、とても退屈な日々だった。
「数日経てば忘れてしまうような無機質で、色のない生活がすごく退屈で退屈で仕方なかったんです。でも、私にはそんな生活を自分から壊す勇気はありませんでした」
「そんな私に手を差し出してくれた人たちがいました。その手が私を普通の学生に戻してくれたんです。何気ない冗談を言い合ったり、一緒にご飯を食べたり、買い物をしたり…」
「怠惰で臆病な私の背中を押してくれた」
「だから仲間が望んだことには応えてあげたいし、叶えてあげたい。私に居場所を与えてくれた恩人たちに報いるためなら何でもしようと決めたんです。それがたとえ悪徳飲食店を爆破することだとしても」
ヒナさんの目を見て、思いの丈をぶつける。
「ヒナ委員長。あなたにも今の生活の支えとなってくれている人はいるでしょう?求められたら何がなんでも助けになりたいと思える人が」
「私にとっては美食研究会のメンバーがそうなんです。彼女たちがテロリストかどうかは関係ない。
いつの間に溢れてしまった涙を拭いながら、ニッコリと笑って見せる。
しばらく沈黙が続き、ヒナ委員長が頭を抑えながら立ち上がった。そして私を取調室の外に連れ出した。
「はぁ…あなたの考えはわかったわ。でも、やったことに関しての責任は取ってもらうわよ。しばらく地下牢で反省していなさい。」
「わかりました」
「じゃあ彼女を連れて行って。何?どうしたの?」
私の護送を担当する風紀委員の生徒から報告を受けたヒナさんがため息をつきながら私にも内容を伝える。
「さっき温泉開発部をまとめて捕まえたせいで牢の数が足りないからあなたたちは同じ牢に入っていてもらうわよ」
「そうですか。それはお疲れ様です」
「そう思うならあなた達も大人しくしてもらえる?」
「考えておきますね」
さっきよりも疲れた顔をしたヒナさんと別れ、私は美食研究会のメンバーがまとめられた牢に入れられた。
泣いてしまったせいで目が赤くなった私を見て、皆が駆け寄ってきた。
「ねえ大丈夫?もしかして拷問とかされた?って、ちょっと!?」
出迎えてくれたジュンコさんを何も言わずに抱きしめる。彼女たちを見たら安心してまた涙が溢れてしまった。
動揺するジュンコさんから離れて今度はアカリさんとハルナさんを順番に抱きしめる。
「あらあら★」
「甘えん坊さんですわね」
彼女たちの目を見ながら、嘘偽りない気持ちを伝える。
「あの時、私をご飯に誘ってくれて本当にありがとうございました」
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