美食研究会の仮入部員は激辛好き   作:バランスストーン

7 / 12

評価やお気に入り登録ありがとうございます!




エデン条約3

 

 

「さて、ここからどうしましょうか★」

 

「もうイズミさんに賭けるしかないですかね?」

 

「まだトリニティにいるんじゃない?」

 

 

 風紀委員会に引き渡されてから数時間、私たちはどうにかして脱出の糸口を見つけようとしていた。

 

 

「諦めるのは早いですよ皆さん、これを見てください」

 

「それは…スプーン?」

 

「そうです!このスプーンを使ってこの方向に穴を掘れば風紀委員会の運動場に出るはずです!」

 

「え〜、スプーンで穴を掘るの?それなら大人しく牢屋で待ってた方が早く出れるんじゃない?」

 

「確かにそうかもしれません。しかし、それは穴を掘ることを諦める理由にはなりません!千里の道も一歩からですわよ。スプーンは一本しかないので交代で掘りましょう!」

 

 

 夕食時に渡されたスプーンを笑顔で握りしめ、ハルナさんは壁を削り始めた。

 

 結構大きな音が出ているが、看守が牢に来る気配はない。周りをよく見ると見張りをしている風紀委員会の数自体が少なくなっている気がする。

 

 このことに気がついてハルナさんは脱獄計画を立てたのだろうか?

 

 私もスプーンで脱出する計画には半信半疑だが、この地下牢では特にすることもないので彼女の手が止まった時に交代し、私も微力ながら脱獄のお手伝いをした。

 

 

「あれ?」

 

「どうかされましたか?」

 

「なんと言うか、地面が震えてるような?」

 

「確かに…っていうかどんどん大きくなってる!」

 

 

ドカンッ!

 

 

 私たちが掘った壁の()()()()から大きなドリルが突っ込んできた。そのドリルはそのまま私たちの牢屋の入り口まで破壊していった。

 

「見ましたか?雨垂れ石を穿つと言いますが、弛まぬ努力はこのように身を結ぶのですよ」

 

「いや、穴を開けたのは私たちじゃないじゃん…」

 

 

 何が起きているかを把握する間もなくドリルの影から一人の人影が飛び出し、高らかに笑った。

 

 

「ハーッハッハッハッ!」  

 

 

「あ…」

 

「温泉開発部の…」

 

「あらあら★」

 

「うげ」

 

 

「これはこれは美食研究会のお嬢さん方。すまないね一つ隣の牢獄を目標にしてたのだが、少しずれてしまったみたいだ」

 

「いえ、自分で穴を掘る手間が省けたましたので、むしろこちらが感謝を述べたいぐらいですわ」

 

「そうかそれは良かった!では、私は仲間を救わなければならないのでね、すまないが先に行かせてもらうよ」

 

 

 そう言うと温泉開発部の部長、鬼怒川カスミは大型ドリルを方向転換させ、隣の牢屋に向かって進んでいった。

 

 

「丁度いいですし、逃げましょうか★」

 

「そうですね」

 

  

⭐︎ ⭐︎

 

「何事だ!」

 

 イオリさんの声とそれをかき消すようなドリルの音が聞こえてくる。どうやらカスミさんは風紀委員会相手に正面から戦おうとしているようだ。

 

 何かが崩れる音と銃声が地下牢全体に木霊し、方から出てきた温泉開発部と風紀委員会とその他の囚人が暴れている。

 

 地下牢が混沌に支配されている間にわたしたちは武器の保管庫から自分の銃や使えそうな武器をいくつか拝借し、脱獄した。

 

 

「やっと出れた〜」

 

「この後どうします?」

 

「事態が収まるまではゲヘナ自治区の外に出ましょうか。私とアカリさんで脱出用の車を探しますので、お二人は私たちが車を確保するまでの風紀委員会への陽動と牽制をお願いします」

 

「わかった!」

 

「わかりました」

 

「では、また後で会いましょう!」

 

 

 

⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

「温泉開発部が出てきましたね」

 

「あ、風紀委員会も出てきた!」

 

 地面に開いた大きな穴から少し離れたビルの4階で状況を観察していると、温泉開発部の部員が溢れんばかりに穴から出てくる。それに少し遅れて風紀委員会が追いかける。

 

 反撃もせずに逃げる温泉開発部と追う風紀委員会。温泉開発部員は揃って同じ方向に走っているのでその先に温泉開発部の本部でもあるのだろうか。

 

 必死に逃げているが次第に風紀委員に捕まり、数が少なくっていく温泉開発部員。

 

 このままだと全ての温泉開発部員が捕まるのも時間の問題だろう。

 

 彼女たちがいなくなると私たちだけで風紀委員会を足止めしなければいけなくなる。この状況を放置することはできない。

 

 

「ジュンコさん、ここから風紀委員を狙うことはできますか?」

 

「うーん、流石に厳しいと思う。せめてあのコンビニぐらいまでは近づかないと無理ね」

 

「私もこの距離では何もできませんね。気乗りしませんが近づきましょうか」

 

「そうね、ここにいてもしょうがないし」

 

 

 ビルの非常階段から地上へと降りる。階段は温泉開発部が逃げている方向と逆方向に付いているので今のところ誰にも気づかれずに移動できている。

 

 ビルを出てそのまま大通りを渡り、彼女たちの死角を進みながらようやく目的のコンビニまで近づくことができた。

 

 コンビニの裏の道路からは銃声がはっきりと聞こえてくるのでこの周辺で戦っているのだろう。銃声も一つや二つとかのレベルではないので相当な人数がこの裏にいるはずだ。

 

 この一つ奥の道路に進んだら私たちは蜂の巣にされるに違いない。

 

 

「やっぱり風紀委員会の本部だけあって人数が多いわね」

 

「そうですね…この後のことを考えると銃弾が足りるか不安ですね。コンビニに在庫があれば貰っていきましょうか」

 

「私も心許ないから行くわ」

 

 

 戦争のような騒ぎの中、コンビニの裏口から中に入る。店員の姿は見えない。この騒ぎの中できっと逃げたのだろう。 

 

 目的の銃弾が置いてある場所に向かおうとするとジュンコさんが私の手を引いた。

 

 

「シオリ、ストップ…声も出さないで!誰かいる」

 

「え!?」

 

 

 目を向けると確かにカウンターの後ろからヘイローが見え隠れしている。敵か味方にせよどちらにせよ彼女は排除する必要がある。

 

 ジュンコさんに目配せして最短距離でカウンターに向かって走り、そのままカウンターを飛び込え銃を向ける。

 

 

「動かないでください!って、イズミさん!?」

 

「誰かと思ったらシオリとジュンコじゃん!あれ?風紀委員会に捕まったんじゃなかったの?」

 

 

 驚いたことにカウンターの後ろにいたのはイズミさんだった。手にはおにぎりとパンを持ち、床には大量のお菓子が置いてある。

 

 包装紙や空袋が床を埋める勢いでそこかしこに散らばっている。相当お腹が空いていたのだろう。

 

 

「イズミさんはいつゲヘナに戻ってきたんですか?」

 

「ん〜、1時間前くらいかな。皆が捕まったって聞いたから助けに来たんだけど、その前に腹ごしらえしてたんだ」

 

「よく正義実現委員会に捕まらなかったわね」

 

「もうすっっごい大変だったんだから!黒いセーラー服の人たち以外にも灰色の制服着てる人たちからも追いかけられて!やっとゲヘナまで戻ってきたのに皆は捕まってるし…」

 

 

 彼女も彼女で大変な思いをしてきたらしい。それでもゲヘナまで大きな怪我もせずに戻ってこれたのだから流石と言うべきだろうか。

 

 

「何はともあれ、お疲れ様です。私の友達はやっぱりすごいですね」

 

 おにぎりを口いっぱいに頬張っているイズミさんをギュッと抱きしめる。ついでに頭も撫でる。

 

 

「なに〜苦しいよぉ〜」

 

「馬鹿やってないで武器の補充して早く出るわよ」

 

「そうですね。時間も限られていますし」

 

 

 イズミさんを抱きしめる手を緩め、保管されている弾薬、そして手榴弾をいくつか手に取ってバックに入れる。

 

 お金を払わないで逃げるのもあれなので持ってきたいた現金をレジの中に入れておいた。

 

 

⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 激しい戦いの中、一番手前にいる風紀委員会の頭をよく狙って引き金を引く。

 

「痛っ!」

 

「なんだ!?」

 

「美食研究会だ!捕まえろ!」

 

 

 私たちに気がついた風紀委員の三分の一ぐらいがこっちに向かってきたのでそのまま引きつけながら後退していく。

 

 

「このまま公園の方まで引きつけましょう!あそこでしたら少しは戦いやすくなります!」

 

「あぁもう!ハルナたちは車の確保にいつまでかかってるのよ!」

 

 

 確かに彼女たちと別れてから既に1時間は経っている。使える車を見つけるぐらいであればそこまで時間は掛からないはずなので、大方、彼女たちも風紀委員会の生徒に見つかって追いかけられているのだろう。

 

 このまま彼女たちから連絡がないとなると私たちだけで逃走するという選択肢も考えなければいけない。

 

 

「覚悟しろ!規則違反者どもめ!」

 

「イオリさんですね」

 

「また増援〜!?」

 

 

 ガードレールに空いた穴から覗いてみるとイオリさんと数十人規模の生徒がこちらに向かっていた。

 

 正直、私たち3人だけにこれほどの人員をかけてくる風紀委員会の熱意に驚いた。思っていたよりも美食研究会は風紀委員会にマークされているのかもしれない。

 

 あの人数とイオリさん相手では持ち堪えるのは厳しいのでこの展開は避けたかったが仕方がない。

 

 

「お二人ともここは逃げましょう!時間稼ぎならもう十分だと思います!」

 

「賛成!逃げるわよ!」

 

「ちょっと待ってよぉ〜」

 

 

 逃げたはいいが彼女たちも簡単に逃してはくれず走っては振り返って撃つを繰り返しながら、大きな公園を突っ切り、ようやく駅構内のデパートの中に逃げ込んだ。

 

 このデパートは広く、色々な店が入り組んでいるので隠れやすく戦いやすい。追う側にとっては嫌な場所だろう。

 

 いろいろな店を通過しながら、身を隠す。ブービートラップを仕掛けておくことも忘れない。

 

 数十分後、ようやく風紀委員会からの追跡から逃れることができた。絶えず走り回ったせいで息も上がっている。

 

 

「やっとあいつらを撒けたわね」

 

「疲れたぁ〜」

 

「どうします?風紀委員会はやりすごしましたし、このままハルナさんたちの連絡を待ちますか?正直、あまり良い案とは思えませんが…」

 

 

 連絡を待つと言ってもこの時間になっても報告が来ないということは容易く解決できない何かしらのトラブルに巻き込まれてはいるはずだ。

 

 ここで待っていても合流する前に私たちが風紀委員会に見つかる可能性の方が高いだろう。

 

 

「駅構内だから車も近寄れないし、せめて車が入ってこられる場所には移動した方がいいんじゃない?」

 

「そうですね…少なくとも繁華街の近くでは合流は難しいでしょうね。地下街から風紀委員会の本部の反対側に抜けていくのが良い気がします」

 

「え〜また走るの?ここ駅だし電車に乗って行こうよ!」

 

「いやいや、こんな時間だし電車なんか走ってないでしょ…あ!」

 

「どうしました?」

 

「線路を進むのはどうかしら?これなら誰にもバレずに隣の駅まで行けるわ」

 

「確かにここの路線は高架ですから上から見られでもしない限り見つからないでしょうけど…そうですね!ここに留まるよりはマシですね行きましょう!」

 

「話がわかるじゃない!イズミも早く行くわよ!」

 

「ちょっと待ってよぉ〜」

 

 





エデン条約編中の美食研究会って詳細が描かれてないですが中々大変そうですよね

早くほのぼの話書きたい!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。