原神詳しいわけじゃない上に神の目も無いけどそれでも可愛い女の子を守りたい   作:あんに

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エミちゃん 前半

いったいなぁ!!...あ...れ?

 

突如ボールがぶつかった頭蓋の中の脳内に12歳の僕には知り得ない知識が湧き出た。

 

知らないはずなのに知っている父と母、友達と良く遊んだ小さな公園、ゲームで溢れていた自室、優しかった先生、死んでしまったペット、最後の記憶の迫りくるトラック、

 

「あ..……….あ?」

 

なんだこれ……俺は、、俺は、、、

 

「おーい、大丈夫かぁ?」「……」

 

一緒に遊んでいた子達が駆け寄ってくる。そうだ、俺は今この子達とボール遊びをしていて、この生意気な男の子のボールを顔面キャッチしたのだった。

 

なにか返事をしないと

 

「だ、大丈夫だ」

 

 

 

 

 

 

なんと、これはもしや、みんなが憧れる転生というものか?俺は前世の記憶を思い出した。しかもこの世界には神の目なるものが有るらしい。しょっちゅう父親が神の目があればな〜って酒に酔いながら乞い願っているのを思い出した。この世界はひょっとしなくても……原神?!

 

 

「なんか考え事してるのか?セイ」

 

切り株に座りながら物思いにふけっていると、所々逆立った白髪で翠緑の瞳をした鼻の上辺りに絆創膏を貼っている以下にもジャンプの主人公ですみたいな見た目の少年……ベネットが話しかけてきた。ちなみにボールを俺の顔面に当てやがった犯人である。そして炎の国ナタを裏から操る真の炎神である(風評被害)。

 

 

セイ「いろいろなー」

 

俺の本名はセイヘン。どうしてこの名前になったのか記憶が戻った今考えたがもしかして、生まれ変わり......生変……いや、そんな訳ないよな、うん、断じてそんな理由ではないと思い込もう。

 

 

ベネット「ふーん?まぁいいか。傷も癒えたみたいだし冒険に行くぞ!ベニー冒険団出発!!」

 

セイ「元気すね……」

 

「……」

 

この物静かな腰ほどはいかない長さの金髪でハーフツインテールの女の子はエミちゃん、冒険譚とか夢の広がる物語が好きなようでよく本を持ち歩いている。いつも気づくと後ろに居る。

 

ベネット「お前ら元気が無さすぎないか!!??お前らはベニー冒険団という素晴らしい伝説を作る冒険団に入っているんだぞ!!気合いを入れろ!」

 

そういえば記憶が戻る前の純粋な俺はベニー冒険団に入団したんだった。……脱退したい……というのも原神においてベニー冒険団に入り、ベネットと冒険をともにしたものは皆、不運が訪れるのである。事故に巻き込まれたり、体調不良を起こしたり……

 

ベネット「もう一度いくぞ…ベニー冒険団出発!!」

 

セイ「お、おー!」

 

エミ「!……ぉ-」

 

でもこの純粋な少年の笑顔を俺には曇らせる事が出来ない。まぁせっかく原神の世界に来たんだから冒険はしてみたいし、不運が起きたなら………その時はその時だ。

 

ベネットが木の枝を手に持ち勇ましい足取りで先導する。ベネット、俺、エミちゃんの順だ。はたから見ると子供3人がごっこ遊びをしている微笑ましいシーンだろう。

 

モンド城の門へと差し掛かる。外で探索をするつもりなのだろう。

 

門番「おぉベネットか、今日は仲間と出かけるのか?」

 

ベネット「おう、ようやくベニー冒険団員が集まったんだ。悪竜を討伐して世界を救うぜ!」

 

門番「ヒルチャールには手を出すなよー!」

 

 遠ざかって行く俺達に聞こえるよう門番の男性が声を張り上げて注意する。

 

 ヒルチャールは群れで行動をする習性があるため1匹見つけたら最低20匹近くにいると考えろと親に口酸っぱく言われたっけ。ベネットも流石にヒルチャールに手を出すほど馬鹿じゃないと願いたいけど……ていうかちょっかい掛けそうになったらマジで拳骨する。

 

 

 

 

 

野を越え山を越え、星拾いの崖までやってきた。てかすげぇ俺達こんな高いとこまでやってきたんだ。

 

崖を登って後ろの景色を振り返る。小さくなった出発地点のモンド城の町並みが見える。ゲームでも勿論見たことはあるがやはりリアルの方が格別だ。高所特有の風も感じられ心地よい。

 

エミ「綺麗…」

 

セイ「良い景色だな」

 

ベネット「だろ、お前達にも見せてやりたかったんだ」

 

ベネットが胸を張って鼻を指で擦っている。なんだ今日はこれを見せたくて連れてきてくれたのだろうか、可愛い奴め。

 

セイ「ありがとな」

 

素直に感謝を伝える。不運に見舞われるのでは無いかとビクビクしていたがこの景色が見れたから落とし穴にハマるぐらいの不運なら別に受けても良いかなと思えてきた。

 

エミ「...…ありがと」

 

ベネット「お、おう///」 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベネット「悪竜め!!ベニー冒険団が退治いたす!」

 

ぷかぷかと風スライムが気持ち良さそうに空を泳いでいる。

………悪竜あれ?????ずいぶん可愛らしい竜だこと。ともあれ変な強敵に手を出す気は無さそうで良かった。

 

ベネット「おら!っほら!……逃げるな卑怯者!!」

 

ベネットが木剣を上を振り上げる。しかし、風スライムは木の葉を掴もうとしても離れるようにするっと剣を避ける、それを延々と繰り返している。…なんか、剣術を習ったことも鍛えようとしたことも無い俺が言うのもあれだが……滑稽だな。

 

エミ「お茶……飲む?」

 

俺とエミちゃんは座りやすい大岩に腰掛けてベネットの様子を眺めていた。エミちゃんが水筒のフタにお茶を注いで差し出してきた。遠足に行く前に用意してたのだろうか。

 

セイ「うん」

 

一回でグイッと飲み干す。チビチビ飲んでコップの役目もあるフタをずっと占領してるのも悪いからな。

 

セイ「ありがとな」

 

エミちゃんにコップを返す。もう一度お茶を注いでエミちゃんがしばらくコップをボーっと眺めた後、口に含んだ。顔が赤いな……熱中症?

 

セイ「顔赤いよ、気分悪い?」

 

ビクッと身体を震わせてコップを隠してコッチを向いた。

 

エミ「な、なんでもない!!///」

 

セイ「そう?」

 

 

 

ベネット「おい!!まったりしてる暇なんて無いぞ!!卑怯な竜がここにいるんだ!これは十億モラの懸賞金がかかっている!」

 

その竜(笑)に十億モラかかるなら大金持ちなれるて

 

セイ「エミちゃん行こ」

 

エミ「!」

 

エミちゃんが急いでフタの残りのお茶を飲み干している。ありゃ、急がせちゃったな。悪いと思いつつエミちゃんを見ながら待つ。

 

………よし、行こうか。エミちゃんの手を取ってベネットの元まで行く。

 

ベネット「こいつ!!届かないとこまで行きやがった!!」

 

ジャンプしながらブンブンと木剣を上へと伸ばし振るうが、届いていない。

 

セイ「ベネットもまだまだだなぁ!!俺に任せとけ!!」

 

ベネット「なにー!じゃあやってみろよ!」

 

ベネットが木剣を渡した。ちっちっちっ、俺の方が身長がわずかに高いのをお忘れかね。未来の炎神よ

 

はぁ!!

 

スカッスカッ

 

あぁ~、あ!……あぁ………

 

自身の頭を叩いてウインクして舌をだす。いわゆる………

 

セイ「もっと高いとこに行っちゃった♪」

 

テヘペロ

 

ベネット「アホーー!!」

 

がッと木剣を取り上げられた。しょうがないじゃないか届いても避けられるとまでは考えて無かったんだから。

 

ベネット「どうすんだよこれー、届かないぞ」

 

くぁ〜と風スライムがあくびをした気がした。

 

セイ「こうなったらベネット!合体だ!!」

 

ベネット「が、合体!!??」

 

ベネットがキラキラと目を光らせている。こういう言葉小学生ぐらいの子は興味津々だよねー

 

セイ「うんとこー!」

 

ベネット「??」

 

ベネットの股の下に頭を突っ込む。そして

 

セイ「どっこいしょ!!!」

 

脚を肩の上で固定して持ち上げる。究極合体!!肩車!!

 

ベネット「うおお!!たっけぇ!!」

 

セイ「いけー!!俺達の友情必殺技!!」

 

ベネット「よーし!!!必殺、風殺斬!!」

 

肩車されたベネットが剣を左右にがむしゃらに振る。しかし、風スライムはまたかみたいな顔をしてプワンプワンと彼方へと飛んでいく。

学ばんな…………楽しかったから良いけど。

 

ベネット「……ガックシ」

 

ベネットが気落ちしている。元気出せ、漢は失敗して失敗して、やっとこさ一つの成功にたどり着くもんさ。

 

パンッ!!

 

風船の割れるような音がした。

 

風スライム「プワ〜」

 

風スライムの身体に穴が空いてそこからの風圧で遠い遠い空の向こうへ消えていった。

 

………え

 

ベネット「なにがおきたんだ?」

 

セイ「………エミちゃん?」

 

エミ「え、ま、まさかほんとにこんなので倒せちゃうなんて」

 

エミちゃんが口元に手を当てて驚いている。

というかやっぱりアイツにダメージを与えたのってエミちゃんなんだ。

 

ベネットを降ろす。ベネットは興味津々と言った様子でエミちゃんへと近づいた。

 

ベネット「なぁなぁ!どうやったんだ??」

 

エミ「石を投げただけ………///」

 

ベネット「すげぇ!!すげぇ!!エミ、頭良いんだな!!」

 

エミ「似たようなシーンが好きな本にあったから…」

 

セイ「凄い、俺(前世と合わせて成人するぐらいは生きているであろう)より凄いや」

 

エミ「そんなことない///」

 

ベネットがんんっ!と喉を鳴らして姿勢を改めた。

 

ベネット「勇者、エミ……ベニー冒険団の智将よ、良くぞ我が国の窮地を救ってくれた。ここに報奨金の十億モラを授ける」

 

ベネットが手の上にそれはそれは山盛りになったモラを想う。てかお前が渡すんかい

 

エミ「え、あ、ありがたく頂戴しまふ!」

 

噛んでるの可愛いなぁ。それにしてもエミちゃんってプレイアブルキャラじゃないのにすっごく美形だな。エミなんてキャラクター居なかった気がするし………居ない……よね?

 

ぷかぷかぷかぷか

 

っうるさい!!今考え事し……て

 

涙目の絆創膏を貼ったおそらくエミちゃんが倒した風スライムがそれはそれはご立腹な様子の大きな風スライムを連れてこちらに向かってきていた。

 

ありゃ多分ママ風スライムだな。

 

セイ「って呑気に考えてんじゃねーーー!!!!」

 

ベネット「おぉ!!燃えてきたぁ!!!」

 

これ絶対お前の不運のせいだろ!!

 

セイ「お前だけ燃えてきとけ!!!!エミちゃん行こ!!」

 

エミ「うん!」

 

エミちゃんの手を取る。急いで逃げよう。つっても崖だからな、気を付けて急いだ。

 

ベネット「お前は俺が相手だ!!!」

 

勇ましい子だこと……3分かな。

 

険しい壁をボルダリングで降りたり、走ったり、飛び越えたり、して3分が経った。

 

セイ「エミちゃん、ちょっと先行ってて」

 

エミ「うん」

 

多分この辺り

 

両足は広く衝撃に備えるように両手を軽く広げて荷物を持っているような格好をする。

 

パァーン!

 

向こうで何かが弾けるような音がする。風の音が聞こえる。

 

ギュム!

 

しっかりとジャストで風スライムの攻撃を受け飛んできたベネットを受け止める事が出来た。

 

ベネット「うぉ!セイ、やるな!!」

 

セイ「う、腕が痺れるぅ」

 

衝撃まで考えれてなかった。でも受け止めれたから良しとしてくれ。

 

ベネット「くそ!!惜しかったのに!!」

 

セイ「はいはい、逃げますよー」

 

ベネットをお姫様抱っこしたままモンド城まで帰った。

 

 

 

 

 

 

セイ「うーん、主人公が来るのっていつなんだ?」

 

自宅のベッドに寝転がりながら考える。

ベネットと俺が同い年で今12歳、本編が始まるときってベネット何歳?????わかんねぇ!!!!でも……多分16くらいはいってそうだよな。

 

てことは後4,5年ぐらい後なのかな……

 

 

 

 

 

 

エミ?「ワタクシは幽夜浄土より降りし断罪の皇女!!フィッシュル・ヴォン・ルフシュロス・ナフィードット………よ!!」

 

幼馴染の女の子が眼帯黒レオタード黒タイツのコスプレを見せつけてきたんだけどどうしたら良いですか

 

セイ「おぉ……」

  

なんて反応したら良いの!!??『凄く可愛いね』っで良いの!!??それとも『なんてハレンチなの!!そんな子に育てた覚えはありません!!』…ってオカンか!!

 

ベネット「すっげぇッ!!かっけぇ!!」

 

凄い、ここに見本がいたわ。コイツのマネしときゃ良いんだ。

 

セイ「スッゲェマジパネェカッケェ……」

 

エミ「ふふん!///」

 

嬉しそう、良かったわ。

 

 

 

 

エミ「それで今日はどんな試練がこの皇女を待ち受けるのかしら」

 

あーこのノリ続くんだ。

 

 

 

 

 

あれから、エミちゃんのフィうんたらかんたらドットさんのコスプレは続いた。なんなの?そういう年頃なの?大人しい子とばかり思ってたからあんな大胆な事するとは正直思っていなかった。しかもそれが続いてるんだよ、恥という概念をどっかに置いてきてしまったのかしら、ちょっと心配。

 

母親に果物と生けるための花を買うおつかいを頼まれたため、街を歩いていた。

 

あ、エミちゃんだ。相変わらずコスプレしたまんま……声かけよ

 

セイ「エミち「うわwタイツやろうだw」……」

 

「よくそんな格好出来るよねwwエミちゃん」「ねぇねぇ、こういうのって『へんたい』って言うんでしょ?」「wwきもー」

 

エミ「違うわ、ワタクシは断罪の皇女で、世界の獣を還すためには身軽で無いといけなくて……」

 

「へんたいコウジョがなんかいってるww」「へんたい!!」「へんたいww」「へーんたい」「へんたい!」

 

 

へーんたいへーんたいと同年代の子供達が手を叩きながら復唱している。

 

エミ「ちがくて、この服装は……」 

 

エミちゃんが泣いている。

 

セイ「エミ」

 

声をかける。エミちゃんは俺に気づいて安心で完全に涙腺が崩壊したらしく涙を流しながら俺の背中に隠れた。

 

「ヘンタイが仲間連れてきたぞ!」「ヘンタイの仲間もヘンタイだろうなww」

 

あぁ~ムカつく……ひどくムカつく……………………よくも俺が中学校でいじめられてたときのトラウマを掘り起こしてくれましたね。おい!!!太郎君!!聞いてんのか!!マジでお前、前世ではよくもやってくれたな!!!この世界よぉ……銃刀法ねぇからよぉ……叩き斬ってやるから来いよオラァ!!!!そしてエミちゃんを煽ったお前らもただじゃおかんから覚悟しろォ゙!!!!!

 

「ひいぃ!!」

 

俺の眼力に怯んだようだ。雑魚が

 

そうだお前らには言いたいことが有った。俺が中学でいじめられた時からずっっと、

 

ピッと人差し指を指す。それだけで人差し指を向けられた子は怯んだ。

 

俺がずっと言いたくて仕方がなかったことは

 

指を左端から右端の子までなぞる。

 

セイ「ここから…………ここまで………ぜーーーーんぶブーーース!!!!」

 

「んなッ!!」「え!!」「???」

 

お前らブスなんだよ!!!!そんなな、人のことをイジメたり陰口言うやつはな、全員すこぶるブスばっっか!!!!!!

 

「酷い……ッぐす」

 

泣け泣け!!お前みたいなブスはな…泣いてるほうがお似合いだ!!真顔だとブス過ぎて目が腐るからな!!!!

 

「無茶苦茶言いやがって!」

 

おお怒れ怒れ!!がんばれがんばれぇ

 

セイ「第一な、エミちゃんは美人だからなにしてもいいんだよ」

 

「……はぁ?」「??」

 

セイ「美人は何をしても許されるっていう法律知らない?馬鹿だなぁ」

 

「なにそれ?」「そんなホーリツあるの?」「馬鹿だぁ???」

 

パァン!!

 

手を強く一拍叩いて黙らせる。

 

セイ「よーく聞け……美人はなぁ……裸で街歩いてても許されるの!!!!」

 

「「「えーーーーーー!?!?!?」」」

 

エミ「え?////」

 

セイ「おまらはぁ……ブスだからダメ!!でもエミちゃんは美人だから何しても良いし裸でもOK!!Do you understand?」

 

「……美人だからってして良いことと悪いことがある!!」「そーいうの差別って言うんでしょ!!」「巫山戯んな!!!」「わたしもビジンだし!!」

 

セイ「おーこわ、負け犬の遠吠えがうるさいわ。行こエミちゃん」

 

エミちゃんの手を取って走る。

 

 

 

 

 

 

 

人気のない路地裏へとやってきた。

 

セイ「はぁ……はぁ……」

 

エミ「はぁ……なんでっ……助けたの」

 

セイ「なんでって……可愛い女の子が虐められてて助けないやつは居ないだろ」

 

エミ「……いらない!」

 

セイ「…………」

 

バッ!

 

エミが俺を押しのけて走っていった。

 

いらない……いらないかぁ………辛いよ……………エミちゃん、泣いてたな……

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも一人で本を読んでいた。パパもママも冒険者の仕事で忙しいみたい。夜は帰ってこない日も多かった、だから本を読んで寂しい気分を紛らわせる。

 

ある日、外で本を読みたくなって日陰で本を読んでいた。

 

「何読んでるの?」

 

話しかけられた、珍しい。

 

エミ「……ぁ」

 

本の中身に集中していたため上手く言葉が出ない。

その人が本を横から覗いてくる。

 

「……しっこくのりゅうが住まうカーテンがはじかれるとりんねのほうかいがひきおこされ………」

 

プシュー!

 

横から脳が沸騰した音が聞こえた。

 

「あうあう……」

 

エミ「だ、大丈夫??」

 

白目を向いてフラフラと身体をふらつかせる………バタンッ

 

エミ「え!!ど、どうしよう」

 

その少年の様子に慌てていると

 

「僕復活!!」

 

勢いよく立ち上がった。

 

エミ「……良かった」

 

彼は何事も無かったようにまた近づいてきた。

 

「ねぇねぇシッコクってどういう意味?」

 

エミ「えっと…多分…凄く黒いって意味」

 

「へぇー、シッコクシッコク……夜は漆黒だ!!」

 

エミ「!その表現……凄くイイ!!」

 

「ねへへ」

 

しばらく本の中身を見てカッコいい言葉があったら2人で盛り上がっていた。本って一人で読むのが一番邪魔されなくて良いと思ってたけど、誰かと読むのも悪くない。

 

「ねぇねぇお名前何ていうの?」

 

エミ「……エミ///」

 

そういえば名前聞かれるのって初めてかも、なんだか恥ずかしい。

 

セイ「僕はね!セイヘン!!セイってみんなに呼ばれてる!!」

 

エミ「セイ……」

 

セイ、セイ、セイ……覚えた。

 

セイ「あの……エミちゃんってめっちゃ可愛いね!」

 

エミ「え………///」

 

セイ「めっちゃ可愛い!!」

 

エミ「あ、ありがとう?」

 

セイ「うん!!」

 

急にどうしたんだろう。嬉しいんだけど困惑の方が勝ってしまう。

 

セイ「えへへ」

 

でも、よく笑う子……この子と居るの好き。

 

私は大人しいから意地悪をしてくる人が居たんだけど、そういう時にセイは守ってくれた。

 

それからセイと本を読んだり、ベネットも混じえて冒険に行くようになった。

 

ある日、王子様がお姫様を魔王を倒して救う、よくあるお話を読んでいると自然と王子様にセイ、お姫様に自分を重ねていること気がついた。その時思った、私……セイが好きなんだ。恋愛ものは嗜まない自分でもはっきりと分かった……私はセイと結ばれたがっている。

 

その日から色々気にするようになってしまった。セイが他の女の子と話していると嫌な気分になったり、セイに渡した後の水筒をフタで飲む時、間接キスを意識してしまったり。

 

セイは最近大人っぽくなった?ように思う。一人称が僕から俺に変わって頭も良くなった。あと、物事を達観するようになったと思う。成長期だったのかな?ちょっと寂しい……

 

私はセイに見合うような強くてカッコいい女性になりたい。だから……私は大好きな本、フィッシュル皇女物語のフィッシュルのようになることにした。

 

 

 

「へんたいコウジョがなんかいってるww」「へんたい!!」「へんたいww」「へーんたい」「へんたい!」

 

 

 

 

泣かない。だってワタクシは断罪の皇女なんだから、もう弱いエミじゃないんだから、だから……だから……言い返さなきゃ………余裕で笑ってなきゃ………

 

「エミ」

 

聞き馴染みのある男の子の声を聞いて振り返った。

黒髪に黒い瞳の凛々しいあの人……セイ

 

安心して涙が止まらなくなってしまった。セイの背後に隠れてしまう。

 

私は……また……また助けられるの………

 

安心してしまっていることが、また助けられてしまったことが悲しくて悔しくてセイの背中でたくさん泣いた。

 

 

 

 

エミ「はぁ……なんでっ……助けたの」

 

そんなの本当は分かってる。セイは優しいから見かねて助けてくれたのだろう。でも、私は弱い自分が悔しくて……セイに当たってしまった。

 

セイ「なんでって……可愛い女の子が虐められてて助けないやつは居ないだろ」

 

エミ「……いらない!」

 

セイ「…………」

 

この時のセイの悲しそうな表情が頭を離れない。

ごめん………ごめんなさい………

 

 

 

 

 

 

 

 

エミ「はぁ、はぁはぁっはぁ」

 

逃げるようにモンド城を出て、野原を走る。

何から逃げてるのかももうわからない……全部か

 

フィッシュルになりきれない中途半端な自分、邪魔してくるみんな、……セイ、そして助けてくれたセイに酷いことを言った自分……

 

なにかに躓いて転んだ。

 

エミ「うっく……うぅぅぅ」

 

大粒の涙が溢れた。拭えど拭えど自身の罪の証は消えない。自分は何がしたかったんだろう。

 

強くなりたかった……セイに相応しいように……自分一人でも生きていけるように……その結果がこれ…

 

浅ましくて愚かで情けない……本の中の最序盤のザコ魔物と同じだ。何も成せない、居なくても変わりない…

 

「buka guru guru」

 

声?が聞こえた。急いで振り向く。

 

あ……そうだったんだ……ここってヒルチャールの縄張りだったんだ……

 

他のヒルチャールとは一線を画す巨体、ヒルチャール暴徒を取り囲むようにヒルチャールが踊っている。

 

……アレを倒せたら、私は…強くあれますか…

 

カラ

 

落ちている棍棒を拾う。そのまま足音を立てずにヒルチャール暴徒へゆっくりと近づき

 

エミ「っ!!」

 

ガッ!

 

頭に思いっきりぶち当てた。

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