原神詳しいわけじゃない上に神の目も無いけどそれでも可愛い女の子を守りたい   作:あんに

10 / 12
ファルちゃん 中編

街でカーヴェを見つけた。

 

セイ「カーヴェ!!」

 

カーヴェ「ん?セイかあの時は済まなかったな……ファルザン先輩にも伝えておいてくれ」

 

セイ「それは……あの時の話をすると怒ってくるので無理です。それと……住居はどうにかなりましたか?」

 

カーヴェ「あぁ、腐れ縁の友人の家に住まわせてもらえることになってね、なんとかなったよ」

 

セイ「それは良かったです!!」

 

カーヴェ「……あ!その……もう少しだけ力を貸してほしいのだが良いだろうか?君にしか頼めなくてな」

 

セイ「もちろんです!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは、屋根を平坦にして目立たないようにして欲しくて」

 

カーヴェ「mgm4tgwpdgg@wj!!!!」

 

カーヴェさんと顧客が建てる家について話している。……否、俺がカーヴェ先輩の口を塞いでいるのでキャッチボールのキャッチの部分でしかできていないが

 

「あのー、何か叫んでますけど」

 

セイ「あー、えっと良いアイデアですね!って言ってます」

 

「そ、そうですか」

 

カーヴェ「gmpjt5なgdgt!!!!」

 

カーヴェさんはいつも顧客と建てる家のデザインで言い合いになってしまい依頼を遂行出来ないのだ。そこで俺が無理矢理カーヴェさんの口を塞いで言い合いに発展させないことでなんとか依頼を貰うという作戦だ。カーヴェさんが投げようとする豪速球を無理矢理手で抑えるというのが俺に頼まれたことだ。

 

「では、そういうことでよろしくお願いします」

 

カーヴェ「jdpdpgdjd@tmt@3'w!!!!」

 

カーヴェさんが手をもがかせている。

 

セイ「こちらこそよろしくお願いします!必ず満足頂ける出来でご提供致します、と申しております」

 

お客さんは去っていった。口を塞いでいた手を離す。

 

カーヴェ「はぁ!……はぁ……」

 

セイ「これで良かったんですよね?」

 

カーヴェ「あぁ、これで良い……これでようやく依頼が……労働が出来る…………」

 

セイ「したいように出来ないって辛いですよね……ってデザイナーでない俺が言うのはおこがましいか」

 

カーヴェ「いや、そんなことない。君は本当に優しい子だ。いつか、僕が手伝えることがあったら頼ってほしい……本当にありがとな」

 

カーヴェ………

 

 

 

 

 

 

 

酒場でカーヴェとテーブルに座っている。

 

セイ「カーヴェ、俺、学者になりたい」

 

今回の人生は戦闘に明け暮れた冒険者では無く学者となってみたかった。一番の理由はファルちゃんと一緒に通勤したいことだ。

 

カーヴェ「……急だな」

 

セイ「作ってみたんだけどこれ、見て欲しい」

 

そう言って前世の知識を拝借して作った扇風機を取り出した。電気水晶を燃料として動くように作ってある。

 

カーヴェ「これ……は?」

 

ふっふ……カーヴェもこれが何か理解出来ないようだ。この世界、プロペラは遺跡のギミックであったりするがソレを涼むために利用しようという考えにはいかなかったようだ。そこを突いてやるのさ

 

電気水晶を型へはめる。すると扇風機のプロペラが回りだした。

 

セイ「どういう機械かわかった?」

 

カーヴェ「……すず……しい?」

 

セイ「そう!!これを今の夏の暑さで体調を崩した人や単純に涼みたい人に使ってほしいんだ!!それともっと涼しく出来るように改良する研究をしたい!!どうかな……」

 

考えているのか沈黙が訪れる。

 

……無理か?

 

カーヴェ「素晴らしい考えだと思う。僕も推薦書を出そう」

 

セイ「ほんと!!?」

 

カーヴェ「あぁ、きっと認めて下さるだろう」

 

セイ「やった!!」

 

カーヴェ「だが油断するなよ、お前がやりたいのは研究。研究ってのは普通は大学を経てから始めるものだ。それをすっ飛ばすという凄く難しいことをしようとしてるということは理解しておけ」

 

セイ「あい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「セイさんと言ったな、この扇風機というアイデア……実に素晴らしい。是非ともより良いものを作る研究をしてもらいたい」

 

セイ「ってことは」

 

「うちの研究機関……妙論派の学者として雇いたい」

 

セイ「いよっしゃ!!!」

 

カーヴェ「やったな!!これで僕の後輩になったわけだ」

 

セイ「そっか、カーヴェさんも妙論派でしたね。よろしくお願いしますカーヴェ先輩!!」

 

カーヴェ「おう!セイ!」

 

 

 

 

 

 

店長「そうか……学者になったのかお前、アイツと同じ」

 

セイ「はい!今までお世話になりました!!」

 

店長「最初はなんにも出来なくて頼りなかったガキが学者になったか……頑張れよ」

 

セイ「はい!!これ!俺の研究してる機械なんです」

 

そう言って扇風機をカウンターへ置いた。

 

店長「ふん……どんな機械なんだ?」

 

セイ「ここに電気水晶をはめると、風が出て涼しくなります!!」

 

店長「おお、確かに涼しいわ!良いもん作ったな」

 

セイ「これ一つ差し上げます」

 

店長「良いのか?高いんじゃないのか」

 

セイ「雇ってくれたお礼です!また人手が足りない時呼んでください!」

 

店長「け、言うようになったな。ありがたくこれはお客さん用にでも置いておくぞ」

 

店長さんに挨拶を済ませて店を出た。

 

ファルザン「おお、セイ仕事終わりか」

 

外にファルザンが居た。偶然を装ってるけど待ってくれてたなこれは

 

セイ「うん!!ファルちゃん!俺、学者になったから!!」

 

ファルザン「………は?」

 

セイ「お・れ・が───」」

 

ファルザン「聞こえとるわッ!!!!わしが聞きたいのはなんでそんなスライム倒すみたいな感覚で学者になれてるんじゃって話じゃ!!」

 

セイ「俺天才だから!!!」

 

ファルザン「真逆の存在じゃ!!!」

 

セイ「ぐすッ…酷いぃ!!!!」

 

ファルザン「ごめん言いすぎたッ!!!」

 

ファルちゃんに扇風機を見せた。

 

ファルザン「お前にひらめき力があったのはわかった。そんなに学者に憧れてたんじゃな」

 

セイ「ファルちゃんとおてて繋いで通勤したかった」

 

ファルザン「お前ソレ他の学者の前で言うなよ?本気でヤられるからな」

 

セイ「あい!!!」

 

ファルザン「大丈夫じゃろうか……わしが守ってやらんとな……」

 

セイ「カーヴェ先輩が居るから大丈夫!!」

 

ファルザン「あ、アイツか!!?心配過ぎるな……たまに様子を見に行こう……」

 

 

 

 

 

翌日

 

大丈夫じゃろうか……仕事の合間を縫って妙論派の学院までやって来たが

 

バレないように観察しよう。抜き足、差し脚……

 

チラッ

 

壁から少しだけ顔を出す。

 

セイ「ここはこうした方がエネルギーを伝える効率が上がるんと思うんだ」

 

カーヴェ「なるほどな、このプロペラはなんていう素材なんだ?」

 

セイ「これは天然プラスチック……樹脂を使っている」

 

カーヴェ「なるほど……」

 

ほう……なかなかに興味深い会話をしている。カーヴェがおるのはちと気に食わんが仕事は順調そうじゃな

 

セイ「取り敢えず導体を変えてみてより伝導効率の高いものを探してみましょう」

 

カーヴェ「あぁ、さっそくグランドバザールに行って探してみようか」

 

セイ「すみません、手伝わせて」

 

カーヴェ「なに、気にしてくれるな。僕は君が居ないとロクに依頼を受理できないんだ、手伝わせて貰えてる方が気が紛れるというものだ」

 

どんだけセイ頼みで生きてんじゃ!!!講義を取ってないからあんまし仕事の無いわしが言うのもなんだけど!!!

 

カーヴェ「こういうのはギミック術に精通したファルザン先輩が得意そうだけどな」

 

っ!!!オッホン!!!わしは何時でも空いてるぞ

 

セイ「いやぁ、ファルちゃんいっつも忙しそうだからな……」

 

ばっばか!!それはお前に格好がつかないから敢えて忙しそうにしてただけじゃ!!!

 

カーヴェ「そうだよな……ファルザン先輩って妙論派だと大人気だしギミック術の神様なんて言われてるしな」

 

わし……知論派に居る間に妙論派では神になってたのか。く、くそ!!その神がお前を手伝ってやるというのに!!

 

セイ「行きましょうか」

 

カーヴェ「そうだな」

 

ファルザン「んっおほん……あぁ、暇じゃなぁ」

 

覗くことを止め、セイ達の前をゆっくり歩く。

 

セイ「ファルちゃん!!今日も可愛いね」

 

ファルザン「ん、そうか……んん暇じゃなぁ」

 

これ見よがしに背伸びをする。

 

カーヴェ「ファルザン先輩、良いマッサージ店をお教えしましょうか」

 

要らんわ!!!まだ体は少女じゃ!!

 

セイ「今日のお弁当はシャケが入ってますよ」

 

ファルザン「そ、そうか」

 

違う!!こんな世間話をしに来たんじゃない!!

 

ファルザン「あー暇じゃ……暇すぎて扇風機を改良出来てしまいそうじゃ」

 

セイ「ファルちゃんはやっぱり凄いな!!」

 

褒めて欲しいわけでも無い!!あーもう!!

 

ファルザン「暇過ぎるから……て、手伝おうかの」

 

カーヴェ「ファルザン先輩って暇なんですか?」

 

そういうとるじゃろ犬畜生がッ!!!

 

セイ「無理しなくて良いよ、家に泊めていただいてるだけでありがたいから……いっつもありがとうねファルちゃん。そんな優しいファルちゃんが大好きだよ」

 

ファルザン「………」

 

無理しとらん………

 

セイ「じゃあちょっと外出するね。また後で!」

 

カーヴェ「失礼します、ファルザン先輩」

 

2人は歩いて行った。

 

ファルザン「………」

 

 

 

 

 

教令院へと戻ってきた。……重い

 

セイ「取り敢えず使えそうな金属は片っ端から買ってみたけどお金大分使っちゃったね」

 

カーヴェ「大丈夫、扇風機は賢者様にも喜ばれていただろう?余裕で取り戻せるさ」

 

俺の席、俺の席………

 

ファルザン「………」

 

ん?

 

セイ「ファルちゃん?」

 

ファルザン「おお、帰ってきたか。ちょうど仕事の捗りやすそうな椅子と机があったもんな、使わせてもらってた」

 

セイ「そう?妙論派と知論派のオフィスで違いって有るんだな」

 

カーヴェ「いや、アイツのを見たときはそんな──」

 

ファルザン「おっほん!!!とにかく悪かった座ると良い」

 

セイ「うん」

 

俺の席へと座る。すると

 

ファルちゃんが俺の膝の上に腰掛けた。

 

……え?

 

カーヴェ「………」

 

カーヴェ先輩が啞然とこの状況を眺めている。

 

な、なにこれ……あ、良い匂いする。

 

セイ「……な───」

 

ファルザン「こ、こんなとこに座り心地の良さそうな椅子があるなぁ!!気にせず作業をしてくれ!!あッ!!もしかしたら何か口出ししてしまうかもな!!その時はすまぬ!!///」

 

ファルちゃんが顔を真っ赤にして叫んでいる。

 

なるほど……ここまで近距離に居たら分からないことがあっても聞きに行くという手間が省ける。ゆえにファルちゃんが仕事に追われていようと意見を聞けるということだ。本当に優しいな……ファルちゃん

 

カーヴェ「なるほど、セイの膝の上は心地良いのか……是非とも───」

 

ファルザン「駄目じゃ」

 

カーヴェ「なんでファルザン先輩が否定するんですか!!?」

 

 

 

 

 

 

セイの膝の上で仕事をする生活を続けていたある日

 

セイ「ファルちゃんって先生なんだよね?講義っていつしてるの?」

 

ファルザン「ギクッ!!!」

 

カーヴェ「声に出てますよ……」

 

つ、ついに聞かれてしまった。

 

ファルザン「そ、それはじゃな……最近は腑抜けた学生が多いから講義をする気にならん!!」

 

ほぼ間違ってない、大体これじゃ。ブーイングを受けるのが怖いとかそんな気持ちは微塵もない……うん。

 

カーヴェ「やはり至高の講義を受けられる者も同様に至高で無くてはならない…ご立派です」

 

よし、犬の方は納得させられたぞ。

 

セイ「えーでも、ファルちゃん先生カッコカワイイと思うけどな」

 

お前は黙っとけ!!

 

カーヴェ「しかし、妙論派のみんなはファルザン先輩の古代ギミック術の本に大変お世話になっています。講義を開いたら相当な人気を誇るでしょうね」

 

………え?

 

ファルザン「……そうなのか?」

 

カーヴェ「えぇ、もちろん!!僕もよく勉強させていただきました」

 

じゃあなんであの時……

 

 

 

 

『どんだけ古臭い解読法語ってんだよ』『あほくさ』

『時間の無駄でしたね』『効率を考えろよ』

 

 

 

 

 

ファルザン「…………」

 

セイ「相当難しい講義なんだろうな〜」

 

カーヴェ「セイ、君は扇風機の研究しかしてないから一般の機械学の知識も獲得しておくべきじゃないか?」

 

セイ「あーたしかになー」

 

セイが腕をわしの腹に回して抱き着いてきた。

 

セイ「ファルちゃん先生に教えて貰いたいな〜」

 

カーヴェ「セイ、迷惑だろ!」

 

………

 

ファルザン「良いぞ……セイのためだけということだったら講義をしてやっても」

 

セイ「マジ!!?ファルちゃん好きぃ!!」

 

セイだけだったら出来ると思う、というか久々に講義をしてみたい気分だ。

 

カーヴェ「ぼ、僕も……」

 

ファルザン「しょうがないの……カーヴェも受けて良いぞ」

 

カーヴェ「やったぁ!!」

 

一人増えたが、コイツもなんだかんだ優しくて出来たやつなのは分かってる。この2人のために講義を開いてやろう。

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さなミーティングルームを借りて講義を行う。というのも今回の受講生は二人とも妙論派ということで古代文字の解読法ではなく解読して得たギミックの知識を解説する形だが。

 

ファルザン「……不可逆的に反応する元素の性質を利用したんじゃな」

 

セイ「うぉぉすげぇ!!!」

 

カーヴェ「ふむ……」

 

大きなリアクションも深く考え込んでくれるのも教える側としては嬉しい反応だ、黒板にチョークで簡素な図を描いて説明する。

 

ファルザン「セイ、ここはどうしてこうなると思う?」

 

セイ「んー、ラマン効果?」

 

ファルザン「いや全然違うわ、よく知ってたなソレ」

 

カーヴェ「要するに元素反応でも強力な激化反応を起こさせないためのものでしょう。機械は激化反応に特に弱いですからね」

 

ファルザン「カーヴェ、正解じゃ」

 

セイ「……むずいむずいむず〜〜い!!!」

 

カーヴェ「セイはたまたま扇風機を思いついただけで基礎はからっきしなんだな」

 

セイ「しょうがないだろ!記憶喪失なんだから!!」

 

むう、セイの学の足りなさには呆れを通り越して心配じゃな……

 

ふと扉へと目を向けた。

 

ガラス張りの部分には無数の目があった。

 

ファルザン「ひやぁ!!!」

 

セイ「ん?どうした」カーヴェ「どうされました?」

 

ファルザン「お、お化けぇ!!」

 

扉を指差す。

 

カーヴェ「……あぁ、多分講義を聞きたい学生が覗いているんですね」

 

セイ「ふははは!!お前たちは講義を想像しながらそこで指くわえて見てるんだなぁ!!!」

 

セイの頭をたたく。

 

セイ「痛いッ」

 

扉を開ける。

 

「ファ、ファルザン先輩……」

 

「すみませんでした……」

 

怒られると思ったのか覗いていた子達が全員俯く。

 

ファルザン「聞きたいやつだけ入れ」

 

小っ恥ずかしくなって顔をそらす。

 

「「「ファルザン先輩!!」」」

 

セイ「みんな!!ファルちゃんがデレたよ!!」

 

走ってあほうの頭を何度も叩く。

 

ファルザン「黙れ!!というかお前も良い加減ファルちゃんじゃなくファルザン先輩と呼ばんか!!」

 

セイ「ファルちゃん先輩!!」

 

ファルザン「合体するな!!」

 

カーヴェ「ファルザン先輩がみんなにも講義をして下さるらしい、入りたまえ」

 

十数名の学生が入ってきて小さな部屋はより窮屈なものになった。

 

セイ「暑い……って思ったよね!!」

 

ファルザン「わしはなんも言っとらんぞ」

 

こんなに聞きたいと言ってくれた子達が居るんじゃ。これぐらい我慢するわ

 

セイ「いんやファルちゃん汗かいてます!!うーーーんどうしよっか!!!」

 

大声で会話するお前が一番熱くしてるわ

 

カーヴェ「あれ、そういえば!!君の研究してるのって!!」

 

セイ「ふふふふふふふ、そう、こんな時に便利!扇風機!!」

 

セイが扇風機を取り出す。

 

これがしたかっただけか…………ウザいのう………

 

扇風機が回る。

 

セイ「うぉぉ!!涼しい!!!!」

 

ファルザン「よし、これでコイツはお役御免じゃ。誰かつまみ出してくれるかの」

 

セイ「待ってぇ!!ちょ、俺を抱えるな!!待て!!」

 

結局扇風機を付けると講義の資料が飛ぶので使用せずに行った。

 

ちーとばかし暑かったが楽しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日経ち

 

セイ「ファルちゃん!誕生日おめでとー!!!」

 

ファルザン「…………は?」

 

セイ「これ!研究者になったお給料で買ったんだ!」

 

赤色の宝箱の形をした髪飾りがセイの両手の上にのっている。

 

セイ「これぜっったい似合うと思うの!!お願い!付けてみて!!」

 

ファルザン「おぉ……ありがとな。ちなみに今日は何日かわかるかの?」

 

セイ「8月20日!!」

 

ファルザン「………今日は8月19日じゃ」

 

セイ「……………ッうぇ」

 

ファルザン「泣くでない……どうせわしの誕生日なんかお前しか知らんのじゃ、これからは8月19日を誕生日に変更しよう」

 

セイ「いや、そこまでしなくて良い……」

 

何時もの金の十字のヘアピンを外して、セイから貰ったのを付ける。

 

ファルザン「その……どうじゃ?」

 

セイ「………めっちゃ可愛い!」

 

ファルザン「そうか///」

 

何照れてるんじゃわしは……

 

 

 

 

 

 

 

ファルザン「ほら!行くぞ」

 

セイ「うん!」

 

すっかり並んで教令院まで行くのが普通になってしもた。

 

セイ「手繋ごう!」

 

ファルザン「ならん」

 

セイ「迷子になっちゃうからさ」

 

んなわけ……もう

 

ファルザン「ん」

 

セイ「へへへっデレた!」

 

ファルザン「……デレとらん!///」

 

セイと手を繋いで仕事場まで歩く。

 

 

 

 

 

これが……毎日続けば

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母と父と手を繋いでいる。

 

今日は最近有名になったシャハリヤールの物語を買いに行く。男性が女性のために悪者を倒して財宝も手に入れる話だ。私の乙女心はそれに十分に支配されてしまい、女性が男性に想いを告げられるシーンを読んだ時なんて……キュンキュンしてその日は眠れなくなってしまった。

 

母「フーちゃんはこの娯楽本が好きなのね」

 

父「ふむ、これが良いのか?」

 

知論派の優しいけど厳しい時もある母親と生論派の厳しく有ろうとするが結局甘くなってしまう父親、どちらも私の大好きな家族だ。

 

ファルザン「うん、これが私は好き」

 

父「なら買ってやろう」

 

母「ちょっと!この子にはお小遣いをあげてるじゃないですか!お小遣いで買わせなさい」

 

父「………だそうだ」

 

ファルザン「うん」

 

ちゃんとお小遣いは持ってきている。店員にお金を渡して最新刊を受け取る。

 

ファルザン「ふふ」

 

本の最初の方を開いて眺める。読むのが楽しみだ。

 

母「……じゃあ私達は、行きましょうか」

 

父「そうだな」

 

母と父が何処かへ行こうとしている。

 

ファルザン「ま、待って!!」

 

私も本を閉じて急いで追いかけるが、2人の歩きは速く、追い付かない。

 

ファルザン「待ってッ!!!行かないでッ!!!」

 

手を伸ばしてもその小さくなっていく背中には届かない。

 

 

 

 

 

 

 

ファルザン「待………って………」

 

気がつくといつもの寝室で天井に向かって手を伸ばしていた。

 

頬を涙が流れている。

 

また見てしまったか………最近は見なかったのに。

 

ふと首の辺りに毛のような物が当たっていることに気づいた。

 

ファルザン「ッげ!!!」

 

セイがわしに抱きつきながら一緒にベッドで寝ていた。

 

コイツ………寝室にだけは入るなとあれ程口酸っぱく言ったのに………

 

手が握りこぶしとなりワナワナと怒りで震える。

 

セイ「……ふぁるぅ……だいじょうぶ……」

 

寝言でそう呟いた。

 

ファルザン「…………はぁ」

 

怒る気も失せたわ………もうひと眠りするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとな

 

 

 

 

 

 

 

本棚が並んでいる通路を歩く。今朝郵便受けに知論派の賢者から直々に招集命令が下っていた。

 

何用じゃ全く。

 

手紙に書かれていた部屋をノックする。

 

賢者の部下であろう学者が扉を開けた。

 

賢者「おお、よく来てくれましたね。ファルザン殿」

 

賢者が両手を広げて、さも嬉しそうな演技をする。

 

ファルザン「なんじゃ小童、わしを呼び出して」

 

賢者「小童は小童でもワタシは賢者ですよ?もう少し敬ってはどうですか?」

 

ファルザン「はいはい、賢者殿は何用であるのかの?」

 

賢者「ところで、ファルザン殿の以前提出されたあの遺跡での論文ですが、肝心なところの情報が足りないのは私達をおちょくっていらっしゃるのですか?」

 

くっ……さすがに気づかれるか

 

ファルザン「あそこだけどうしても解読が出来なくてのう………本当に悔しいことこの上ないわ」

 

賢者「ふん……あくまでシラを切るつもりならそれでも良いでしょう」

 

賢者は手を組んだ。

 

賢者「ただ、もうこれから知論派を名乗ることはお辞めいただきたい」

 

ファルザン「………わしは本当に知らん」

 

賢者「……やはり、情報通り貴方は自身が知論派であることに執着しているようだ。………で、知らないけれどもそれには理由があるのでしょう?」

 

ファルザン「遺跡には……トラウマで行けん」

 

賢者「ほう?100年前に天才と謳われたファルザン先輩ともあろうお方がトラウマで調査が出来ない…と」

 

ファルザン「……何が言いたい」

 

賢者「あの遺跡に貴方以上の適任は居ません、ぜひとも再度調査を依頼したい」

 

ファルザン「………永遠か?」

 

賢者「御名答」

 

賢者は笑みを深めた。

 

賢者「100年もの間貴方の老化現象を一時停止させたその力、それこそが私の今最も欲するもの」

 

ファルザン「……わしだから分かる、あれは虚しいものじゃ」

 

賢者「虚しい……ですって?永遠とは人類の目指すもの、到達点だ!それを目の当たりにしてその腑抜けた感想しかでないのなら研究者など辞めてしまえ!!」

 

賢者が手を机につき前のめりになって声を荒げる。

 

賢者「……っとすみません、熱くなりすぎてしまいました」

 

賢者はコホンと咳払いをした。

 

賢者「とにかく、アナタにはあの遺跡の調査を依頼したい。報酬は弾みます。しないと言うのならば……分かってますね?」

 

ファルザン「………行けば良いんじゃろ」

 

賢者「賢い方は好きですよ」

 

誰がお前なんかに好かれて喜ぶか!!

 

せめてもの復讐に乱雑にドアを閉めた。……しかし、トラウマとはいつかは克服をせねばならぬもの……良い機会になったと思うか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大分と上手くなったセイの白米にかけられたシャフリサブスシチューを口へと運ぶ。

 

セイ「ファルちゃん」

 

ファルザン「……ん?」

 

セイ「今日もギュッギュして寝るからね」

 

ファルザン「ならん」

 

セイ「………ダメ?」

 

はぁ……そんな上目遣いで頼まれても無理なものは

 

ファルザン「しょうがないのお」

 

む……

 

セイ「やった!」

 

………わしのバカ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドへ寝転がるとセイが抱きついてくる。

 

セイ「むへへ」

 

ファルザン「………」

 

セイは………どうしてわしと一緒に居るのじゃろう。

 

ファルザン「セイ……」

 

セイ「なぁに?ファルちゃん」

 

ファルザン「………少し、ハグしても……良いかの」

 

セイ「………もちろん!」

 

セイにゆっくりと腫れ物に触るようにハグをした。

温かいな………

 

明日は………頑張ろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの遺跡へとやってきた。心臓がバクバクと主張している。息が、荒くなる。

 

大丈夫………大丈夫…………

 

大きく息を吸って深く押し出していく。

 

 

 

さぁ、行くぞ

 

遺跡へ入ると一度見たことのある光景が広がる。わしは百年前にこの遺跡の半分も調査をすることが出来なかった。この遺跡はまだまだ未知に溢れている。

 

以前のトラップまでのマッピングは完成しておる。あそこさえ避ければきっと大丈夫……

 

あの部屋を避けて古代の文字を解読していく……分かる。所々にあの部屋の文字が使われていて昔は分からなかった部分が今ならば分かる。

 

この遺跡はキングデシェレトの隠れ家の役割をしておったそうだ。どうも、キングデシェレトは歴史を繋いでいくための人間の語り手を探しており、そいつを保存するために生命の時間を止める魔術を研究しておったと書いておる。

 

こういうのに普通の学者はみな飛びつくのだろうが、直に体験した身としてはもう勘弁願いたい。

 

文字を解読しながら、道を進む。

 

……?この文字は───

 

『フーちゃん』

 

 

 

っ!!!!!

 

聞き馴染みのある一言で振り返る。曲がり角の先から……聞こえる気がする。文字の解読もほったらかしで走りだす。

 

ファルザン「待ってッ!!!!」

 

声の聞こえた方向へ通路を走る、縋り付くように

 

ファルザン「はぁっはぁ………」

 

するとある部屋にたどり着いた。

 

キョロキョロと周りを見渡す。しかし、あるはずの無いものはやはり見つからなかった。

 

すると、何かが光った。

 

ファルザン「?!う……っそ」

 

以前にも見た光景に背筋が凍りつく。急いで振り返ると岩が降りてきて出口を塞ごうとしていた。

 

ファルザン「ま…………」

 

今回は悟るのが早かった。岩は出口を完全に閉ざしてしまう。

 

 

 

…………は、こうなってしまったか

 

あの声は対象者が最も聞きたい幻聴を聞かせる魔術でも食らったのだろう、それでおびき出されてまんまと捕まったというわけか…………

 

 

はぁ…………またか……………今度はどのくらいかかるだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファルザン「ッ!!!!!」

 

閉じてしまった岩の壁へと走る。

 

ファルザン「出せッ!!!!出せッ!!!!出せッ!!!!!!」

 

全ての鬱憤をぶつけて壁を殴りつける。

 

ファルザン「お母さんとお父さんを返せッ!!!!なんでッ!!!!なんでッ私がッ!!!!!私だけがこんな目に、合わなきゃいけないんだッ!!!!!巫山戯るなッ!!!!」

 

手が切れて壁に血がつくが気にならない。

 

ファルザン「お父さん!!!!助けてよ!!!お母さん!!!!」

 

聞こえて欲しくて声を張り上げて叫ぶ。

 

ファルザン「助けて………助けてよ………」

 

壁に頭を押し付けて膝から崩れ落ちる。

 

ファルザン「あぁぁああああぁあああ!!!!!」

 

少女は大声で泣き声をあげた。

 

 

 

100年前に一人の少女が古代の魔神の魔術に引っかかり複雑な暗号の解読を強いられた。その暗号は新人類には未発見のモノでそれを解読することは一から文明の全てを構築しきることと同等であり、それを一人の人間でこなすとするならばそれこそ生命が何度も進化を繰り返すぐらい膨大な時間が必要であろう。

 

それをファルザンという天才はたった100年でやってのけたのだ。その執念を支えたのは一重に家族の元へ帰りたいという願望、それだけが挫けそうになる心を支えていた。

 

されど、100年という壁は大きく、両親とファルザンとの繋がりを断ち切るには十分事足りていた。ようやく壁を出たはずの彼女は更なる壁が増えていたことに気付かなかったのである。

 

その時の、家族に会えないと分かった彼女の心情は……………

 

 

 

 

 

 

ファルザン「………せっかく…………せっかくセイのおかげでもう少し頑張ろう…………って、思えたのに…………」

 

 

 

 

 

 

そしてようやく見つけた『セイ』という止まり木さえも今、取り上げられようとしている。

 

 

 

 

 

 

セイ………私と同じで世界に取り残された可哀想な子

 

『ファルちゃ~ん、今日はね〜、ケッコーが双子の卵産んだんだよ?黄身半分ずっこね?』

 

『今日も頑張った偉い偉いファルちゃんには撫で撫でを受ける権利がございます。……よしよし』

 

助けるつもりだったのに事実助かっていたのは……

 

 

 

ファルザン「……セイ……カーヴェ……寂しいよぉ……」

 

蹲りながらすすり泣く。

 

 

 

…………助けて

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。