原神詳しいわけじゃない上に神の目も無いけどそれでも可愛い女の子を守りたい 作:あんに
ファルザン「今日は遠出するからな」
セイ「えぇ、どこ行くの?」
ファルザン「ちょっとな……ということで今日は一人で行ってくれ」
セイ「嫌だ嫌だ嫌だ!!お手々繋ぎながら行くの!」
ファルザン「ガキか、我慢せい……行って来るぞ」
セイ「………いってらっしゃい」
扉を開けてファルザンは家を出ていった。
ちぇー、今日は一人かよ。
今日はカーヴェ先輩も依頼があるので本当に一人での作業となる。
俺に割り当てられたいつもの席へと座る。
寂しく頑張るか
セイ「ただいま〜」
自宅に入るが、やはり電気が付いていなかったためファルちゃんは帰っていなかった。
うーん………泊まりになるとは言ってなかったけどな…
置き手紙するか、
『ファルちゃんへ
おっそおおおおいッ!!!遅い遅い遅い!!!
帰る判断が遅〜〜〜い!!!!ご飯はここに置いておくから冷める前に食べること!!!!それと、無理は絶対しちゃダメってこと!!!!!!!!
おやすみ』
よし、勢いのある素晴らしい出来だ。これだけビックリマーク付けときゃ大丈夫だろう。
………寝るか
次の日もファルちゃんは帰って来なかった。
おかしい、流石に…………もしかして
俺………捨てられた…………?
酒場にて
セイ「………ッぐす」
カーヴェ「辛かったな……」
カーヴェ先輩が背中をさすってくれる。
カーヴェ「ファルザン先輩とは相思相愛なのかと思ってたけど」
セイ「なんでッ!……どっか行っちゃったッ…の」
カーヴェ「それは僕にも分からないよ……」
セイ「うぅぅ………ふぅ……」
カーヴェ「何か心当たりは無いのか?」
…………………
セイ「……………やっぱりこの前のことかな」
カーヴェ「うぐッ……やっぱりまだ怒ってたのかい?」
セイ「わかんないけど………」
カーヴェ「うぅ……僕も野宿は嫌だったからついやってしまった……僕の責任だ」
セイ「うぅぅ…………」
カーヴェ「……謝りに行くよ。一緒に行ってくれるかい?」
セイ「もちろんです。僕も謝りたいです」
カーヴェ「知論派の人々に聞きに行ってみるか……それとアイツにも」
冷徹胸筋マンのことかなぁ。『そうか、俺は知らん』とか言われそう
アルハイゼン「そうか、俺は知らん」
やっぱり
カーヴェ「あのな………アルハイゼン、もう少しなんかないのか」
アルハイゼン「俺は彼女と会わないし、会おうとも思わない。故に同じ知論派であるという接点があろうと俺が知る由もない」
カーヴェ「……はぁ、もういい。ありがとう」
セイ「ありがとう……ございます」
アルハイゼン「礼を述べる必要はない」
なんだこの世界一意味の無い時間は
その後も知論派の学者達に聞き回ったが行方を知るものは居なかった。
おかしい………こんなにみんな知らないなんて…まるで
カーヴェが口を右手で覆って思考する。
カーヴェ「誘拐………」
………誰が、なんの為に
それに、彼女は神の目を持っている。よほどの強者で無いとそんな芸当、成功しないはずだが
「す、すみません!!」
メガネをかけた学者らしき女性が話しかけて来た。
カーヴェ「どうしたのかな?」
「私、ファルザン先輩のファンで!お二人がファルザン先輩を探しているみたいでしたのでお力になりたくて!」
セイ「何か知っているんですか?」
「ファルザン先輩は論文の出来が不完全なことをよく嘆いていました、あの遺跡の」
カーヴェ「あの遺跡って……あの遺跡かい?」
「はい……その遺跡です」
あの遺跡やらその遺跡やら2人は何のことを喋っているのだろう。
カーヴェ「君……まさか知らないのか?」
セイ「え?本当に分からない」
カーヴェが顔を俯かせた。
カーヴェ「彼女が敢えて言わなかったのか………だったら言わない方が………」
ブツブツ何かを喋っているがよく聞こえない。
セイ「なんて?」
カーヴェ「いや、なんでもない。セイ、ファルザン先輩はその遺跡に居る可能性がある。探す価値はあると思う」
セイ「ホントですか!!行きましょう!!」
カーヴェの案内で遺跡へとやってきた。
カーヴェ「セイ、この遺跡には十分に注意して入って欲しい。暗号を解読出来ないと脱出が不可能なトラップがある」
セイ「……なんてとこ行ってんのファルちゃん」
カーヴェ「では、行くぞ」
セイ「……はい」
左手に赤色の宝箱の髪飾りを手で握りながら震える手で箱を開く。
一つだけ…………これで……頑張れるから……
フォークを手に取り、最初の頃とは見間違える程上手になった唐揚げに刺す。
それをゆっくりと口へ運んだ。
優しい味に涙がまた溢れる。
手を動かさなきゃ………どんどん離れちゃう………
唐揚げを咀嚼しながら石を持って壁を削り、暗号を解読する。
突如、手を伸ばしてもセイに届かないイメージが脳に浮かび上がり、身体が凍った。
身体が、震えて動かない。全部全部意味なんて無くて……結局全て無くしてしまうのではないかと思ってしまう。
…………死にたく…………なる。
その時、救いを求めるようにに弁当箱を見つめると……何か紙が下に挟まっていることに気がついた。
紙を引き抜く。
これ……は?
『ファルちゃんへ
ファルちゃん!!!最近何か悩み事があるでしょ!!!!!!!ずっと顔をうつむかせてるの知ってるんだからね!!!!出来れば話して欲しいけど、話さなくても良いよ。その代わり毎日ギュッてして一緒に寝てもらうけどね!!!!あっはっは!!!!
それはそうとお昼ご飯をとくと召し上がれ!!!!!
毎日頑張ってて偉いねファルちゃん、大好きだよ』
……………あぁ、
一言一言が大きな字で書かれた手紙だったが、最後の一行が特に大きくなっていた。
手紙を宝物を扱うように……大切に胸に抱える。
ファルザン「私もッ………大好きだよぉ!!」
彼女の顔は相変わらず涙で濡れている。しかし、その意味は強く異なっていた。
絶対………絶対、帰るんだ、セイの元に………まだ大好きも言えて無いんだ、ありがとうも言わなきゃ……私と一緒に居てくれて、ありがとうって。
彼女は再び石を持ち、脱出の旅路へと潜り込んだ。
セイ「ファルちゃん!!!」
カーヴェ先輩と二手に別れ、呼びかけながら薄暗い遺跡を徘徊する。何度も呼びかけているが返事は無い。
道を進んで行くと行き止まりへとたどり着いた。
ここはちが……………
ターコイズグリーンの髪の毛が一本、行き止まりの壁の岩に挟まっていた。
暗号を解読している手が止まる。
セイの声が………聞こえる気がする。
「……ふぁ………ん」
ファルザン「セイ………そこに居るの!!!!?」
私も大きな声で呼びかける。岩に耳を当てて集中する。
セイ「ファルちゃんッ!!!!!!」
今度ははっきりと聞こえた。
ファルザン「セイッ!!!」
助けに来てくれた…………
セイ「居るんだな!!待ってろ!!」
拳を強く握り、壁へと思いっきりぶつける。
しかし、そのパンチは壁に傷を一つ付けることすら叶わなかった。それどころか、衝撃で指の骨にヒビが入ってしまう。
セイ「くっっそッ!!」
もう一度拳を作り、更に強くぶつける。
バキキッ!!
今度は完全に骨が砕けた。
ファルザン「な、なに……して……今の音って……」
セイ「まだ………まだぁッ!!!!」
もっと強く………もっと強くッ!!!!
拳の握れなくなった手を壁にぶつける。
ファルザン「待ってッ!!!他にも方法はきっとあるから!!だから!!今日のところは帰って!!セイと会話できただけで……私は……」
セイ「いやッだッ!!!俺はッ今すぐファルちゃんと会いたいんだッ!!今日こそは帰って一緒のベッドで寝るんだッ!!」
ファルザン「でも……そんなことしたら………セイの身体が壊れちゃうよ…」
セイ「俺のことは!!気にするなッ!!今まで散々ボロボロになってきたんだッ!!すぐっ治るさ!!」
ファルザン「やっぱり……記憶が無くなったっていうのは嘘だったんじゃな」
今まで殴り続けていた腕が止まる。
ファルザン「おかしいと思ってたんじゃ、記憶喪失の割には明るいし、寝言でアンバーやらエミちゃんやら人の名前を言っておったし」
セイ「…………」
ファルザン「はぁ〜あ、今まで騙されとったわ。どうせわしの同情心を誘いたくて嘘ついたんじゃろ。完全にのせられてしまったわい。もう二度とわしの前に顔を出すな気持ち悪い、じゃあな」
音が無くなった。きっともう行ったのだろう。
ファルザン「………さよう……なら……セイ」
セイ「うぉぉおおおッ!!!」
バキッ!!
また骨の折れる音が聞こえた。
ファルザン「うぇ?!?!」
セイ「くっそッ!!キックもダメか」
ファルザン「ちょっ!!ばかぁ!!!」
セイ「記憶喪失を嘘ついてたのは謝る!!ごめん!!気持ち悪いのは………許してぇ!!」
ファルザン「いやッ!!もう!!そんなのどうでもいいから身体傷つけるのやめろよ!!」
セイ「俺はもう……ファルちゃんが居ない生活は寂しくて我慢出来ないんだよッ!!」
ファルザン「ッ!!」
お父さん………お母さん………
セイ「おおッ!!!!」
もう一度脚を振り抜いた。
バキィ!!
脚の骨がまた砕けた。しかし、壁の一部分が、緑色に光る。今までにない反応が起こった。
セイ「ここ……か?」
蹴った場所に触れる。再び緑色に光った。
うーん………
セイ「ふッ!!」
その場所をパンチした。
壁全体が薄く光ったかと思うと上へと動いた。
脳筋最強ッ!!!
ファルザン「…………セイ」
ファルちゃんは驚いているようだ。目を大きく見開いている。その目元は泣き腫らして赤くなっていた。
セイ「ファルちゃん!!」
帰れるんだよと分かるように笑顔を作る。右足を引きずってファルちゃんの元へと向かう。
ファルザン「っ!!」
ファルちゃんが抱き着いてきた。脚の痛みは気にしない気にしない。
ファルザン「ああぁぁぁぁあああッ!!!!」
怖かったんだろう、苦しかったんだろう、彼女は大声で泣いている。
優しく頭を撫でてあげた。
ファルザン「ひっく……脚、脚ッ……手も…なんでこんなにしちゃうのぉ……」
右手右脚は真っ赤に腫れており、力なくぷらんと垂れている。
セイ「愛の力……かな」
ファルザン「巫山戯るなよッ!!ばかぁ!!!」
至近距離で叫ばれ唾が飛んでくる。
お説教タイムキタコレ?
セイ「取り敢えず……帰ろ?」
ファルザン「………うん」
右側をファルちゃんに支えてもらい、一本道を戻ろうとする。
脚元の床が緑色に光った。
ファルザン「っ!?!!?」
セイ「っ!?!?」
ドガンッ!!!!
帰り道の広場の中央に音から察するに巨大な何かと思われるものが落ちた。
青白い光が点ったかと思うとそれは宙に浮いた。
中央に四面体の本体、左右下に半透明の盾、左右にレーザーを撃つ機械、左右上に一突きで何でも貫けそうな槍………
ファルザン「……大きなプライマル構造体?」
セイ「は………半永久統制マトリックス………」
半永久統制マトリックスがレーザーを飛ばす。
ファルザン「っ!!!」
ファルザンはあまりの突然の出来事に反応が出来ないようだ。
ファルザンを押した。
右腕が根元から焼き切られる。
ファルザン「ッセイ!!!!」
ベチャベチャと血が砂に吸い込まれる。
けどな、四肢の切断なんか慣れっこなんだわ。今回は……肩までいかれたから縛るのは厳しそうだな。
セイ「ファルザン………逃げろ」
数歩前を歩き、ファルザンの前に出る。
ファルザン「な……にを……お前こそ逃げろ!!そんなボロ体で何をするんだ!!」
セイ「ファルちゃんを守る」
ファルザン「バカッ!!!無理だ!!」
セイ「無理なもんか………女の子が後ろにいて」
ファルザン「巫山戯るな……わたしは……わしは……」
ファルザンが何かを躊躇うような様子を見せたが……意を決した。
ファルザン「わしは……実は……以前にもココの罠に引っかかって……もう」
ファルザン「もう……実は100年も生きる……小汚い老人なんじゃ……」
沈黙が流れる。言ってしまった………けどこれで
ファルザン「失望したじゃろ………だから、もう」
涙は流すな……堪えろ
セイ「なるほど……めっちゃ可愛いな」
はぁ?
ファルザン「……はぁ?」
セイ「100年間も俺と出会う為に待ってくれてたんだこんな可愛らしく、ありがとう」
色んな珍妙な会話をしてきたが今までで一番理解出来ないかもしれない。
レーザーが飛んできたが風元素のバリアを張ってセイを守る。
ファルザン「わしが、注意を引いているからさっさと行け」
バリアを支える手が震える。
パリッ
バリアにヒビが入った。時間が無い。
ファルザン「こんな老人は置いて……さっさと行け!!!」
セイ「行かないよ」
セイがマトリックスへ向けて歩いていく
そんなことしたら!!
ファルザン「待て!!」
レーザーがセイの方を向く。
セイ「じゃあこうしよう……ファルちゃんは頑張り屋で悩みを溜め込んじゃう、寂しがりの可愛い老人の女の子だ」
セイは怪我のない左腕で剣を投擲してレーザーを発射している機械を破壊した。
セイ「笑うと可愛い、俺の大好きな女の子だ!!!」
ファルザン「ッ!!」
泣いちゃだめだ……嬉しいなんて思っちゃ……ダメで
セイ「毎日一緒に居たい!!から、お前がファルちゃんを阻む壁だと言うのなら」
セイ「俺が!!転けないように破壊し尽くして、一緒に恋人繋ぎで行くんだッ!!」
ファルザン「……セイ」
涙が溢れた。こんなの……こんなの……
破壊されてない左側からレーザーが飛んでくる。
風元素の矢をぶつけることで相殺した。
ファルザン「私も……こんな私でも良いのなら、セイと一緒に居たいッ……」
セイ「ヤバい、めっちゃ可愛い」
カッコつけて髪をかきあげる。
セイ「じゃあ俺も応えないとな」
ベネット………エミちゃん………………力を貸してくれ
『よし!!今日から俺たちはベニー冒険団だ!』
『うぉぉ!!カッコイイ!!』
『セイが入るなら……』
セイ「ベニー冒険団……分隊、新規団員ファルザンを加えて半永久統制マトリックスの討伐を行う」
ファルザン「う、うん!!」
そうと決まったら
マトリックスへ向かって駆ける。
セイ「ファルザン、レーザーは任せた!!」
ファルザン「うん!!!!」
矢でレーザーを放つ機械を壊してもらい、その間に投擲した剣を拾いに行く。
しかし侮ってはいけない、マトリックスはゲームにおけるボス……普通は元素反応を屈指して戦う存在。
剣を拾おうとすると素早い風の流れを感じた。
セイ「ッ!!」
捻った顔のすぐ横を槍が通り抜けた。
即死の突き……近距離もお手の物ってか
なんとか転がりながら剣を拾って距離を取る。
剣を構えるとマトリックスは上から消えていった。
ファルザン「え!!?」
困惑するのも無理もない。しかし、これは
セイ「ファルザン!!透明になっただけだ!!」
そう透明になっただけだ。消えたと思ったら後ろから攻撃されて終わる。
ファルザン「ッ分かった!!」
何処だ……何処に居る……
ッ!!
風を切る音とともに背後から槍が刺突される。身を捻って避けた。
セイ「そこか!!」
本体がいるであろう場所に剣を振るうが宙を泳いだだけだった。
……クソッ、遊ばれている気がする。
ッまた来る!!
身を捻って避けたが脇腹を掠ってしまった。
ファルザン「ッ!!セイッ!!!」
セイ「大丈夫だ!!」
ファルザンはこの状況何も出来なくてもどかしいのだろう。草元素さえあれば………
上から風を感じる。しまッ!!
ガキィン!!
それは宙に浮いた大剣によって防がれた。歩く音が聞こえる。
カーヴェ「間に合ったか」
カーヴェが片手に分厚い本を開いて歩いてきた。
ファルザン「カーヴェ!!」
セイ「カーヴェ団員!!」
カーヴェ「だ、団員?それよりセイ、腕がッ……いや、とにかく今はコイツに集中か」
これでコイツを暴ける。
セイ「先輩、コイツに草元素を付与してください!」
カーヴェ「しかし、何処にいるのか…」
セイ「一瞬だけ場所を分かるように出来ます!その時にお願いします!」
カーヴェ「何か策が有るんだな、分かった」
セイ「ファルザン!!風元素で砂をかき回してくれ!!」
ファルザン「ッ!分かった!!」
一瞬で意図を理解したようだ。流石賢い、可愛い。
風元素で砂が辺りに舞う。視界が悪くなるが終わったら──
容赦無くここでも刺突をかましてくるが剣で受け止めた。
砂嵐が収まった。するとマトリックスに降り積もった砂が場所を教えてくれた。
カーヴェがタンッと地面を踏むとマトリックスに地面から生えたツタが絡みついた。
カーヴェ「セイ!」
そして俺はポケットから扇風機の研究で使っている電気水晶を取り出して
マトリックスへと投擲した。
ビジジッ!!!
草元素と雷元素の元素反応……激化反応を起こし、マトリックスは透明化を解除し地面へと落ちた。
セイ「今だ!!みんなで攻撃を!!」
ファルザン「ッ!!」
カーヴェ「ッ!!」
カーヴェが草元素を纏わせた大剣で攻撃しようとするが盾で防がれる。ファルザンも矢を放つがもう片方の盾で防がれた。
クソッ!!完全に機能停止に陥るわけじゃないのか
俺も肉薄し、片手剣を振り下ろす。しかし、盾で受け止められた。
クソッかってぇ!!
もう一度攻撃しようとしたが、槍で攻撃され慌てて身を捻って避ける。
タイミングを見計らえ……チャンスはきっと来る……
今だッ!!
槍が並んだタイミングで強く剣で弾いた。すぐに攻撃にッ──
瞬間、盾を体に思いっきりぶち当てられた。
あまりの威力に壁まで吹っ飛ぶ。肋骨が折れた。
カーヴェ「セイッ!!」ファルザン「セイ!!」
カーヴェが大剣で本体に攻撃を仕掛けるが槍で破壊されてしまった。
カーヴェ「クソッ!!!」
マトリックスはレーザーを生成する機械を再生し、ファルザンにレーザーを飛ばす。
ファルザンは風元素のバリアを作るが長くは保たないだろう。
ピキッ
バリアにヒビが入った。
ファルザン「うっ!!」
ファルザンが苦しそうな声をあげている。
終わる………ここで俺が全てを覆す一撃を放たなければ間違いなく、ファルザンはここ『斬れ』で終わる。
立ち上が『斬れ』れ、はやく
俺にできることは
全部『斬れ』……
『斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ』
俺は……あの時、アンバーのことでは無く、目の前の醜い怪物のことでも無く………以前、己の四肢の2つを斬ったあの………武人の事を考えていた。
筋肉は練り上げられ、誇り高くも猛々しい闘志を持ったあのヒルチャール暴徒。
己以外の全てを断ち切れると信じ切ったあの傲慢な振り抜き……岩を切り裂き、大木、果てには音までも断ち切らん天上天下絶対切断の一閃………事実アレで断ち切れぬものなど無かったのだろう。俺は、その斬撃に憧れた。
俺があの暴徒に時間を稼げていたのはずっと回避だけに専念していたからだ……歯で止められたのも振り抜く前に押さえたから。まともにくらえば切断され死を免れないだろう。
ディルックとの一戦も防御したからこそ敗北したが、もし、攻撃する機会があれば………もし、相打ち覚悟で立ち合いをしていれば………と想像をしてしまう。
あの暴徒の太刀筋が脳内に巣食うようになるのは当然の帰結だった。それは着実に俺の剣技に影響を与えていき……
そして、ついに、俺は確かにあのとき…………核心………あのヒルチャール暴徒の在り方の…………真髄に、触れた。
思い出せ……あの怪物の鋼の身体を斬り裂いた一閃を、思い出せ……あの戦いの意味を………
ピキンッ
ファルザンのシールドにヒビがまた入る。
ファルザン「セイ………」
ファルザンが泣いている。
ファルザン「……大好き、だよ」
断て
マトリックスのレーザーを放っている機械を切断した。断面はあの時のように滑らかだった。
セイ「邪魔だ」
全て断ち切れ
再び次の攻撃に移る。何かが腹に刺さった、口から血が垂れる……しかし、断ち切れるのならそんなものは些細なこと
……己すらも
マトリックスは気づいたのか盾を二枚を合わせ大きなシールドを貼った。
でも、
あの時と同じように防御まで強さに捧げられた豪快な一撃は確かに……
バチチッ
摩擦で起こる火花を置いていった斬撃は……
あの頑強な盾を貫いてさらにマトリックス本体を上下に真っ二つに断った。
ガラクタは地面に崩れ落ち、光の粒子となって消えていく。
カーヴェ「こんなことが人間に可能なのか……」
ファルザン「セイ!!」
ファルザンが駆け寄ってくる。流石にもう限界、血を流しすぎた。
苦しいけどコレだけは答えたかった。
セイ「俺も……ゴボッ……大好きだよ」
ファルザン「そんなのは良いから!!血……血が……早く病院に」
カーヴェ「僕が背負います」
カーヴェに背負われる。あ、これ懐かしい……ディルック先輩と違って筋肉は無いけどゴツゴツしてなくてこれはこれで……
カーヴェ「セイ……辛抱しろよ……」
ファルザンが俺の右腕を持ちながら傷口を圧迫してくれている。
あー疲れた……なんで毎回こんなボロボロになるんだ……
エミちゃんとお花畑に座ってお花の匂いを嗅いでいる。太陽が優しく俺たちを包んでいて心地良い暖かさを感じる。
悪戯心が湧いて摘んだたくさんのお花をエミちゃんの顔に押し付けた。
エミ「んっ!!」
エミちゃんが仰け反った。怒っているようだ体がプルプルと震えている……可愛いなぁ。
エミちゃんが大きな口で叫んだ。
エミ「セイ!!寝ちゃダメ!!!」
む………
頬の痛みを感じた。
横を見るとファルちゃんが涙目で手を上げていた。
カーヴェ「ビックリするじゃないか、急にセイの力が感じられなくなったからさ。ファルザン先輩がはたいて起こしてくれなかったら危なかったぞ」
ファルザン「寝るなッ!!」
肩で息をしてファルちゃんが怒っている。
まじか……危な
あの後、ビマリスタンっていうスメールの病院に運び込まれて治療を受けた。
腕は焼け溶けた部分もあったが肉体の細胞の蘇生を助ける薬を塗ってもらうと無事くっついた。
カーヴェ「生論派の技術革新は凄まじいものだね。後でティナリにお礼を言わないとな」
ファルザン「大丈夫か?」
カーヴェとファルザンがお見舞いでそばについてくれている。
それにしてもこの何でも直し薬はティナリが作ったものだったのか。そのうちティナリの居る………なんとか村にもお礼に行こう。
カーヴェ「それにしても……あの斬撃……人間がしたものとは思えないほど滑らかだった。剣術の経験があったんだな……それどころか名の知れた剣豪だったりするのか?」
セイ「いや、そんな大層なものじゃない。……ただ、見栄えの良い部分を真似っこしただけだ」
カーヴェ「……そうか?」
ファルザン「とにかくお前は頑張りすぎじゃ!!どれだけ……どれだけ心配したと………」
カーヴェ「ファルザン先輩、たくさん泣いてたんだよ」
ファルザン「言うな!!///」
カーヴェ「ふふ、お熱いので僕は先にお暇するよ。セイ、また元気になったら酒場ででも会おう」
カーヴェが病室を去っていった。
ファルザン「くそ、あの犬め」
セイ「そろそろ忘れてあげよう………」
そろそろ良いよね
セイ「ところでさぁ」
くっついた右手と左手の骨をポキポキと鳴らす。
セイ「ねぇ、ファルちゃ〜ん、誰にやらされたの?」
ファルザン「……知論派の賢者じゃ」
セイ「ちょっと外出するね」
ファルザン「ちょっと待て!!まだ安静に!!」
セイ「俺がこの病院に居る間どれだけ我慢したと思ってんの……もう限界だ」
ファルザン「わ、わかったからわしも連れて行け!」
セイが賢者の仕事部屋のドアを蹴飛ばす。
賢者「誰ですかあなた!?それにファルザン殿?」
セイ「ばいばーい」
賢者「べぶッ!!」
セイは頭に拳を振り下ろして机にめり込ませた。
ファルザン「………」
セイ「本当ならお前のせいで右腕切断されたからお前もそうしてやろうと思ったけど……」
ちょっとだけ憐れんだ目で賢者を見つめてしまったのは内緒にしておこう。
セイがぱっぱっと手を払う。
セイ「ふっふっふ、しかし俺は学者となって暴力よりもさらに残虐なお仕置きを覚えました」
ファルザン「なんじゃそれは?」
セイ「コイツの研究してる内容の資料を全部燃やしてやるのさ」
な、なに!!?
ファルザン「学者の生きた証とも呼べる論文を燃やすというのか!!?なんと惨い!!」
セイ「フッヒャッヒャッヒャッヒャ!!」
悪魔だ……コイツは悪魔だ
セイ「今までの君のしてきたことぜーんぶパー」
気絶している賢者に嘲笑している。部屋にある紙を全て抱えた。
セイ「これでバーベキューしようぜ」
ファルザン「お、おぉ」
わしはとんでもない化け物を好きになってしまったのかも知れない。
パチパチと火花を散らせながら論文が燃やされていく。
セイ「おいしくなあれ、おいしくなあれ」
狩ったイノシシを丸焼きにしている。ほんとお肉が好きだな。
舞い上がっていく灰を眺めながら口を開いた。
ファルザン「わしの百年を断ち切ってくれてありがとうな」
セイ「当たり前よ!!その100年俺に尽くしてもらうんだから」
ファルザン「ふふ、有意義な使い方じゃ」
セイ「だろ?ファルちゃんは俺とイチャイチャしながらイノシシ食べてたら良いの」
ファルザン「野菜もな」
セイ「あい」
ファルザン「もう離してと言われても離さんからな」
セイ「当たり前だ」
少しは嫌がったらどうじゃ、全く……カッコよ過ぎるじゃろうが
バーベキューの後は、久しぶりにここへ来た。
セイ「お墓?」
2つ並んだ墓石……これはわしの両親のモノだ。
ファルザン「お父さんとお母さんのモノじゃ」
セイ「……」
セイが顔を引き締めた、緊張せんくても良いのに
前はなかなか怖くてこれなかったがセイという心強い大木のある今なら、行けると思った。
ファルザン「お父さん……お母さん……私……私ね、ようやく頑張れそう。お父さんとお母さんが居ないって聞いて、前はずっと一人で怖くて何も出来なかったけれど、でも今はセイが居るから……全部わかってくれてそれでも一緒に居るって言ってくれた人が居るから……だから、私、頑張るよッ……」
ようやく親の死を認めてしまったことに寂しさやら、悲しさ……嬉しさが溢れて涙が出てきた。
ファルザン「本当にッ……私は、ずっと泣き虫のままじゃったッ……な……ッぐす……」
ファルザン「お父さん、お母さん見ててね」
両方の墓石にハグをした。小さい頃はよくやってもらった。
ファルザン「さぁ……行……」
セイを見ると、彼は泣いていた。まばたきもせず、わしと墓石を見てただ涙を流していた。
ファルザン「どうしたんじゃ?」
セイ「ッ……いや、」
セイはわしが見ていることに気付くと顔をそらした。貰い泣きとかそう言うのでは無いと思う。わしとこの墓石に何をみたのか、記憶喪失と嘘をついたことに関係が有るのだろうか……深くは聞かないでおいてやろう。
しかし、セイの弱ってる姿は初めて見たかもな。
いつもは括っているツインテールを解く。よし
ファルザン「セイ、こっち向け」
お母さんお父さん、ちゃんと見とけ
セイが涙を拭ってこっちをみる。
セイ「情けないトコを見せちゃったな!!……あれ、髪が」
ファルザン「すまぬが今だけは──」
背伸びしてセイの肩に手を置く
ファルザン「──あなたを騙させて」
深く唇を重ねた。
味はわからなかったが、とても、甘い気分がした。
ゆっくり離す。
えへへ、100年もののファーストキスだ。えへへへ
セイ「あぁ、あー?」
セイがフラフラしている。
ファルザン「な!セイ大丈夫か?」
セイ「あー、だいろーぶたいろーふ、しあわせー」
なんか怪しい薬キメたみたいになっちゃった。
「居たぞ!!アイツらが賢者様を襲った学者だ!!」
あれ、なんか三十人団がこっちに来ているぞ
セイ「あ、やべ……衝動的に襲ったのが不味かったか?」
アホしてしまった。もう少し冷静に行動するんだった。
ファルザン「ど、どうすれば」
セイ「クソッ!学者楽しかったんだけどな!!行こ、ファルちゃん!!」
セイが恋人繋ぎで手を引いてきた。
ファルザン「……何処に行くつもりじゃ、もう」
セイ「ん?楽しいとこ!!」
走りながら、最後に両親の墓石を見つめる。
お父さんお母さん、行ってきます。
笑顔で手を振っているお母さんと手を組んだお父さんが見えた気がした。
『ちなみに、俺は認めてないからな』
『あらあらお父さん、私も全く認めてませんよ』
カーヴェ「そんなことよりケッコーはどうすんだよ!!!!」
ケッコー「ケコーー!!!!!」