原神詳しいわけじゃない上に神の目も無いけどそれでも可愛い女の子を守りたい   作:あんに

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ファルちゃん 前編

ん?あ~~よく寝た。……ッウェ!!虫デッッカ

 

大きな黒いGみたいな虫が寝転がった俺の目の前をカサカサと通っていった。

 

草の生い茂った地面の上で寝ていた。大きな葉っぱが上を覆っていて日陰になっている。

 

寝心地いい場所だ。

 

ここ、何処ですか……………アマゾンの奥地みたいなとこ居るんだけど。

 

フム………………………

 

 

…………………………???????????????

 

ごめん、フムれないわ………なんでこうなった。

 

えっと、確か……なんかと戦ってたんだっけ?

 

そう………大きな怪物と戦っていた気がする。

 

っでどうなったんだっけ?……思い出せない。

 

けど、多分死んだんだろうな。そんな感じがする。

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………アンバー、助かったかな

 

それだけ………知りたかった

 

 

 

 

膝を立てて腕の力でサッと立ち上がる。

 

また転生したんだろうな……今度は何の世界だろうか

 

歩こうと思ってプランプランしてることに気づいた。

 

まじかよ…………服ぅ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

モグモグ

 

きのみ〜美味しい〜

 

即席の大きな葉っぱで作った服……肌がかぶれないかだけ心配だけど案外スースーして好きかも。

 

鬱蒼とした森が続く。辺りを緩やかな水音が満たしており心地良いと感じると同時に物静かさも感じる。

 

 

 

 

……………寂しいな

 

 

 

ベネット『セイ!』

 

エミ『セイ』

 

ディルック『セイヘン』

 

バーバラ『セイ?』

 

コレイ『セイ!!』

 

アンバー『セイー!』

 

 

 

やばい……泣きそう

 

 

 

下を向いてトボトボ歩いていると自分では無い足音がした。

 

やっと人と会えたことに喜びながら前を向く。

 

両手の人差し指と親指で四角形を作ってそこから覗く

 

ホッソリとした脚……………女の子!!!!

 

ターコイズグリーンのでっかいツインテールにヒラヒラの部分がステンドグラスの柄になっているワンピースを履いていて黄金色の腕輪を付けている。

 

間違い無い……………SSRです。

 

何やらブツブツと独り言を呟いているけど考え事中かな?

 

明るい声で話しかける。

 

セイ「こんにちは!!」

 

「?こんなとこに人が居るとは珍しいのう」

 

セイ「いやー、それが………迷っちゃって………」

 

 

 

 

 

彼女が振り向いたことで顔が見え、驚いた。

  

「ならスメールシティまで送ってやろう」

 

セイ「……あ、ありがとうございます」

 

彼女は親切に送ってくれるそうだ、無愛想だが優しいな…………

 

 

…………ファルザンは。

 

 

………………………………スゥ…………ハァ〜

 

 

 

 

俺、また原神の世界に転生したの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サッ、サッ

 

2人の草や落ち葉を踏む音が鳴る。

 

ファルザン「……………」

 

セイ「……………」

 

ファルザンも俺も互いに考え事をしながら歩いているので会話は無い。

 

顔を上げ、前を歩く女の子の背中を見る。………何度見てもファルザンだよな。

 

これは……やり直せって言われているのだろうか。流石に2回も同じ世界に転生したらそういう意図を感じざるを得ない。

 

 

 

もう一度…………か

 

前世の自身を思い返す。

 

……俺は、………弱かったな。

 

でも、モンドのみんなに囲まれて………本当に良い人生だった。悔いは……無いと言えば嘘になる。結局主人公に会う前に死んじゃったし、出来ることならまたみんなと会いたいけど………きっとこの世界のみんなは俺の知ってるのとは別の世界のみんななのだろう。

 

大きく深呼吸する。

 

………よし、この世界でも、頑張るぞ!!!

 

 

 

 

ナンパするか

 

 

 

 

 

セイ「ねぇ君!スメールシティに着いたらお茶しない?」

 

ファルザン「……話しかけて来たかと思ったらナンパか?最近の若者は礼儀がなっとらんのう」

 

セイ「良いじゃん!!君可愛いね!」

 

ファルザン「忙しいから却下じゃ」

 

セイ「じゃあさ!!……………………もうナンパしないので仕事も無い金もない友人も居なけりゃ家族も居ない俺の相談にのってくれませんか」

 

ファルザン「急に重くなったな!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セイ「えへへへ、ファルザ〜ン」

 

ファルザン「先輩を付けろ!」

 

スメールシティに着いた。今は適当な喫茶店の屋外の机でコーヒーを飲んでいる。ファルザンは結局、報告書を書きながらで良かったら聞いてやろうと言ってくれた。

 

セイ「ファルザン、可愛いね」

 

ファルザン「……帰るぞ」

 

ファルザンが立ち上がろうとする。

 

セイ「待ってッ!!嘘!!ごめん!!!」

 

ファルザン「………はぁ、セイヘンと言ったな。家族が居らんとはどういうことじゃ?」

 

セイ「えーと、気付いたらファルザンと会った近くで倒れてて……記憶も、無い…みたいな」

 

ここは、記憶喪失ということにしておこう。

 

ファルザン「せんぱ……まぁ良い。ふむ……記憶障害か……よほど酷い精神的ショックを受けたのか、物理的な要因か」

 

セイ「……どうすれば良いでしょうか」

 

ファルザン「……地道にスメールシティの住民にお前のことを聞き回るのが早いと思うのう」

 

セイ「………」

 

きっと聞き回ってもうちの子ですと名乗りをあげる者は居ないだろう……どうするべきか

 

ここは……敢えて

 

セイ「実は訳あって……ここに家族や知人は居ないと思うんです」

 

ファルザン「……ほう?」

 

セイ「記憶は無いんですけど……きっと家族や知人は遠くに居て……もう、会えない。そんな気がするんです」

 

記憶が無いこと以外は嘘を言っていない。ここで愛想を尽かされるなら諦めて一人でなんとかしよう。

 

………返事を待つ。ファルザンはじっとコチラを見つめている。

 

彼女が口を開いた。

 

ファルザン「そう……か。お前も、苦労してきたんじゃな……」

 

同情している表情でそう告げられた。

 

信じてくれたっぽい!!

 

俺はファルザンについてはロリババである事ぐらいしか知らないから人物像はほとんど分からない……だからこれを信じてくれるかは賭けだった。

 

ファルザン「はぁ……しょうがない、今日はワシの家の一室を貸してやろう」

 

セイ「いよっしゃアァ!!!」

 

美少女の家!!美少女の家!!

 

ファルザン「……やっぱり嫌になってきたのう」

 

セイ「……ぐす」

 

ファルザン「あ〜んもう!!分かった分かった!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩くうちに虫の大合唱が始まって、街灯が夜道を照らしてくれている。

 

ファルザン「わしの家はここじゃ」

 

住宅街の中のゴクゴク普通のちっちゃい家、プレイアブルキャラだからって豪華とは限らんのな。

 

ファルザン「なんじゃその思ったよりちっちゃかったなみたいな目は」

 

ぐっ……鋭いだと

 

セイ「そんなこと無いよ!」

 

ファルザン「………そうか、じゃ帰って貰おうかの」

 

セイ「ごめんなさい、少し思ってしまいました……なんでもするから許して下さい……」

 

ファルザン「はぁ……行くぞ」

 

ファルザンが扉を開けて入る。俺もそれに続いて入場した。

 

おお、本がいっぱい。

 

ギッシリと詰まった本棚が5セット程壁に並んでいた。そして、読書用だと思われるの木のテーブルと椅子が一つ、加えて茶色のソファがある。

 

オシャレだけど………女の子って感じはしないな。

 

ファルザン「女性の部屋のような雰囲気では無いと言いたいんじゃろ?」

 

セイ「そんなファルザンも可愛いね」

 

ファルザン「…あ、そう」

 

ファルザンがふぅと言ってソファに腰掛けた。

 

疲れた様子なので話しかけるのもどうかなという気持ちと女の子の部屋に来て緊張している気持ちが合わさって話しかけずにぼうっとしていると

 

ファルザン「お前も座っていいぞ」

 

セイ「か、かたじけない」

 

テーブルのある木の椅子の方へ座った。

 

ファルザン「『かたじけない』と言えば、それは稲妻の方でよく使われる喋り方じゃのう。お前は稲妻出身だったりするのか?」

 

セイ「あ、いや、大きな敬意を表した結果というか、別に稲妻出身では無い………と思う」

 

ファルザン「ほう?お前は大きな敬意を示す時に『かたじけない』という言葉を使うんじゃな。覚えておこう」

 

これ……緊張してるのを見かねて話を振ってくれて居るのか?………ならば、こちらも抜かねば無作法というもの

 

セイ「ファルザン、大好き!!」

 

ファルザン「お前会話が下手すぎないか」

 

ファルザンは窓へと目を向けた。

 

ファルザン「今日は泊めてやるが、モラを貯めたらとっとと出ていけ」

 

セイ「えー」

 

ファルザン「えーじゃないわ!!何様じゃお前!!」

 

セイ「セイ様」

 

ファルザン「……そうじゃのう、モラが貯まるまでは炊事洗濯掃除全部やってもらおうかのう」

 

セイ「はい!頑張ります!!」

 

ファルザン「返事だけはいいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソファで寝ている居候を眺める。よほど疲れていたのだろうか、気付くとすぐに眠ってしまっていた。

 

やっかいな小童を拾ってしまったわい………

まぁ拾ってしまったのは一重にワシと重なるところがあったからなんじゃが………

 

 

 

 

 

 

100年前…………

 

 

 

 

 

ファルザン「………」

 

僅かに積もった砂を踏みつけながら石の壁に囲まれた通路を歩く。

 

私はキングデシェレトの古代遺跡を探索している。私の専門は知論派であり、主に古代ルーン文字や言語学の探求を専門としている。

 

ファルザン「これは、私の研究通り……替えてこっちはまだ知らないものだ………興味深い」

 

古代文字を指でなぞる……古代の言葉は素晴らしい。魔神戦争で喪われた技術や、先人の想いが込められている。それを解読して我が物にした時最も幸福を感じる。

 

 

 

 

 

ファルザン「おぉ……」

 

壁や床天井と至る所に文字が書いてある部屋へ入った。知らない文字ばかりで研究者心をくすぐられる。

 

ファルザン「ヒエログリフ………これは一際重要な部屋のようだ」

 

神聖文字……神と会話する時に神官が使われたとされる言語。昔の神は今よりももっと人間に身近な存在であった。その時に使われてた部屋がここのようだ……

 

壁の文字をみたいと思い、近づいた。

 

何かが光った気がした。後ろを見ると入口が上から下がってきた岩に閉じられようとしていた。

 

ファルザン「待っ!!…………て」

 

走って手を伸ばしたが岩は既に唯一の外へ繋がる出口を閉じてしまっていた。

 

どうしたものか、ここに書かれている文字を解読すれば………出られるだろうか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………1日後

 

 

神聖文字の解読は難しい。何故なら神聖文字自体見つかることが少ないからだ。これの理由は様々な考察があるのだが一際有力なのはその時代では神が民とのやりとりを他の者に見せたくなかった傾向にあることが挙げられる。

 

それと気付いたのだが、ここでは不思議と空腹を感じない。興味深い、この部屋に空腹を感じさせないまたは生命の代謝を止める魔術がかけられているのか…………これも帰ったら論文を書こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………1ヶ月後

 

 

 

ずっと解読を続けているため頭が痛い。もう、どのくらい経っただろうか。もう何十日も経った気がする。それか、意外にそう思えて実際は1日しか経っていなかったりするかもしれない。

 

相変わらず空腹感はおそってこない、加えて睡眠欲も無くなっているようだ。興味深いが……とりあえず出たい。

 

 

 

 

 

 

 

 

………………1年後

 

 

 

 

なんだ………この文字は…………これは神聖文字などではない…………

 

これは……神聖文字を模した……偽物………独自の、全く文献も無い、初めて見る……正真正銘の未発見の文字…………

 

こんなの………分かるわけが……………

 

 

 

 

 

 

 

…………………………10年後

 

 

 

 

 

………………………………手を動かせ…………やるしか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………100年後

 

 

 

………………………………………あぁ………………………………な…………………んだ…………………………………………………あいた……?

 

 

 

自分が何をしていたのかも分からず、とりあえず壁が開いたという事実が目に入ってきた。

 

外へ…………行きたい…………家族に会いたい…………

 

 

 

 

 

 

 

その後、わしは近くを歩いていた商人に倒れているところを見つけられ保護された。

 

保護された後は、ボウっとした頭のまま家族と住んでいた故郷まで連れて行って貰った。しかし、100年という月日は想像を絶する程に長く、当時の知り合いや家族、店、好きだった本全てが消滅していた。

 

わしは自分だけが別の世界に取り残された気がして怖くなって与えられた家に引きこもった。

 

外へ出られる様になったのは最近だ。

クヨクヨしてもしょうがない、研究をしてれば気も紛れるだろうと思い没頭する。

 

わしが見つけた神聖文字を模した文字の論文を書いていたのじゃが、どうしても分からない部分があって……また閉じ込められたあの遺跡へ行かないといけなかったが……行ってから遺跡を見た瞬間胃が痙攣して吐きかけてしまった。泣く泣く諦めて帰っていた、そこで

 

 

 

セイ『こんにちは!!』

 

コイツに会った。太陽がここにもあるのかと思うくらいの明るい笑顔だった。

 

 

 

セイ『記憶は無いんですけど……きっと家族や知人は遠くに居て……もう、会えない。そんな気がするんです』

 

コイツのもう届かない理想郷に思い焦がれる姿に自分の姿を見た。きっとこいつは境遇は違えどわしと同じように自身以外の全てを喪ったのだろう。そして…それでも生きていこうと藻掻いているのだろう。

 

ならば……わしはこいつを助けてあげたい。やがて飛び立てるまでの止まり木として立っていてあげたい。

 

100年も立ってる木なんじゃぞ?頼りがいしかないじゃろう?

 

 

 

そっとセイヘンに毛布をかけてやる。どうか今日は安らかに眠れますように………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コケッー!!!

 

セイヘンの持ったニワトリの鳴き声が家の中に響き渡る。

 

何をどうしたらこうなるんじゃ

 

ファルザン「………わしはのう、卵を買ってこいって言ったんじゃ………なんでニワトリが居るのかのう」

 

手がわなわなと震えながら自然と握りこぶしとなる。

 

セイ「卵ってニワトリから出てくるんだよ」

 

ファルザン「なんじゃ、卵が先かニワトリが先かのジレンマの話でもしたいのか………あぁ????」

 

セイ「ひ、ひぇ………卵産ませたらこれから買う必要無いかな………って」

 

ファルザン「………わしはな、ニワトリを買ったことよりもまず相談しなかったことに怒っとるんじゃ。誰の金じゃそれは」

 

セイ「ファルザンのです………」

 

ファルザン「………はぁ、これからは相談するんじゃぞ………世話は出来るな?」

 

セイ「もちのろんです!!」

 

はぁ………これで悪気が無いのだからたちが悪いな

 

セイ「ケッコー!卵産め!!」

 

ファルザン「ケッコーという名前になったのか……」

 

ケッコー………お前も苦労しそうじゃな

 

あ、卵産んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

机に向かって仕事を行う。わしは今、閉じ込められた空間に関する論文の作成や、学生の試験の採点をおこなっておる。普通は講義を持つのだろうがわしはもう持たんと決めた。この前の講義で古臭いだのなんだのと知論派どもから総ブーイング食らったからのう、もう二度と行かんわバーカ。

 

 

「ねぇ、あれファルザンさんじゃない?」

 

「あー、例の100年消えていたというとか言う?なんか幼い女の子みたいだな」

 

 

………はぁ、それにしても惜しいのうこの論文、あとここだけわかれば完璧だと言うのに……

 

 

「100年前は凄く権威の高い方だったらしいぞ」

 

「100年前は、だろ?俺講義受けてたけどありゃダメだ。いつまで古いやり方にこだわってんだ、最新の方式の方が効率的だ」

 

 

 

………………さっさと終わらせて帰るか

 

 

 

 

シュッシュッポッポ、シュッシュッポッポ

 

 

 

 

………………………

 

 

 

 

シュッ……シュッ………

 

 

 

「機関車を模しているのかあれは?」「人体から無機物を表現することで見えてくるものが……?」

「いや、タダの馬鹿じゃないか?」

 

 

 

セイヘンが機関車のフリして手を動かしながら歩いてきた。

 

ファルザン「……お前は何しとんじゃ」

 

セイ「お届け物です。お弁当」

 

セイの手にはピンクの弁当箱があった。

 

ファルザン「ほう、作って来てくれたのか」 

 

セイ「味は保証しないぜ!!」

 

ファルザン「保証して欲しかったのう……」

 

手を取られた

 

セイ「一緒に食べよ!」

 

ファルザン「………しょうがないのう」

 

 

 

 

 

 

 

 

外の木のベンチに座ってセイヘンと並んで箱を開ける。

 

………なんとも、ガキくさい

 

焼いた豚肉に塩をまぶしたものとヴァルベリー

 

ファルザン「………野菜を入れようとは思わなかったのか?」

 

セイ「美味しくないじゃん!」

 

ファルザン「お前はそうでもわしは欲しいの」

 

セイ「次からは入れるよ」

 

ファルザン「………はむっ…」

 

肉が固くて噛み切れん……

 

セイ「あれ、ごめん硬かった?」

 

ファルザン「……」

 

フォークで肉を押さえて頑張って噛みちぎる。かったい……

 

セイ「ごめん、硬かったみたいだね………俺の方のヴァルベリーあげるからさ、そっちのお肉と交換しよ」

 

ファルザン「………いや、いい」

 

セイ「……そう?」

 

 

 

 

 

 

 

結局遅くなってしまった。

 

辺りは暗い。虫の声と自宅の明かりだけが生き物の気配を感じさせる。

 

自宅の扉を開けて入る。セイヘンは既にソファでぐうすか寝ていた。

 

もう寝てしまったのか……

 

寂しい気持ちになりながら机の上に置かれた紙に気がつく。

 

 

 

『フーちゃん………だと被っちゃうからファルちゃん、お疲れ様。教令院でのお仕事忙しそうだね。俺は酒場で働かせて頂くことになりました。紙の上のモラは今日のお給料の5000モラです。それと紙の後ろにあるのは夜ご飯の野菜を切ったものです、塩をまぶしました。

 

おれはねる』

 

 

 

誰がファルちゃんじゃ!!!それにフーちゃんだと被るって……もうそんな知り合い作ったのか?

 

 

…………それにしても……フーちゃん、か………

 

 

紙の上には5000モラが置かれており、後ろに皿に盛り付けられた……というか置かれた切り刻まれたキャベツとトマトがある。

 

野菜だけとは………極端じゃな。それに野菜に塩をまぶすのは良いんじゃが………浸透圧で底がビチャビチャじゃ。

 

じゃが、もう5000モラ稼げたのか………コイツが出ていくのは案外すぐかもな

 

野菜をフォークで全て平らげた後水浴びをして寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コケッ〜!!

 

セイ「頑張れ頑張れ頑張れ!!!お前なら絶対出来る!!!!絶っ対出来る!!!!」

 

コケーコッコッ!!

 

…………うるさい

 

煩すぎて目が覚めた。寝室の扉を開ける。

 

ファルザン「なんじゃ騒がしい」

 

セイ「ファルちゃん!おはよう!今日も今日とて卵を産んでもらおうと思ってな!!」

 

ファルザン「ニワトリは排卵してからそれが殻を纏うまでに24時間と少しかかる。おんなじ時間に毎日1個は無理じゃ」

 

セイ「そんな………」

 

ブリ

 

セイ「あ、いらない方が生まれた」

 

 

 

 

 

 

 

店長「今日は料理を作れるようになってもらうからな、まずビリヤニだ」

 

セイ「ビリ……ヤニ?」

 

店長「まぁ炊き込みご飯をオシャレに言ってるだけだ」

 

セイ「あーね、なら行けます!!」

 

店長「いっつも返事だけは良いな!!やってもらおう」

 

んーとご飯となんかスパイス適当に入れて……

 

 

 

 

店長「……なんか虹色に光ってんだけど」

 

セイ「げ、ゲーミングビリヤニみたいな」

 

店長「ゲーミングって何??!!!イチから作り方を言わなきゃならんな………」

 

 

 

 

 

 

セイ「ふう……」

 

やり方を見学し終わってなんとなしにお客様の座っているテーブルを見た。そこには金髪の男の人が今日も机に突っ伏して寝ていた。

 

セイ「店長!あの人今日も居ますよ」

 

店長「あぁ、アイツな……まぁ色々あんだ。けどそろそろ何か言わないと駄目だな」

 

セイ「俺、言ってきますよ!」

 

店長「あ、ちょ!俺が言うからいいぞ!!」

 

セイ「いえいえ!気になさらず」

 

ただでさえ料理が下手で迷惑かけてるんだ。何か役に立たないと。

 

その金髪の元へ歩く。

 

セイ「すみません!寝られると困ります!!」

 

その人は顔を上げた。

 

「あぁ、すまない」

 

羽ペンを耳飾りとしてつけていて赤いマントと上は白、ズボンは黒の男性が顔を上げた。

 

イケメソだなぁ…………というかカーヴェだなぁ……

 

セイ「なにしとん」

 

カーヴェ「しとん?……えーと、とにかく済まなかった。家が無くてここで過ごしてしまった。すぐ出るからどうか許して貰えないだろうか」

 

店長「あぁ、流石にずっとはこっちも困るからな…」

 

カーヴェ「一週間ほども置いてくれて助かった。必ずお礼はする……では」

 

カーヴェがゆっくりと酒場を出ていった。彼の背中には哀愁が漂っていて少し追い出したのを後悔してしまった。

 

店長「可哀想だが……しょうがない。こっちも商売だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒場の仕事を終えてファルザンに会いに行く。あぁ、良いな帰ったら誰かが待っている生活……すばら──

 

カーヴェ「………」 

 

……………

 

セイ「……………」

 

なんか道端で寝てる奴居たな………

 

チラッと通り過ぎた道を見る。

 

カーヴェが石を枕にして草むらで眠っていた。辺りは獣の遠吠えが響き渡る。

 

…………俺は、追い出した手前………こんなの……こんなのぉ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局遅くなってしまった。

 

辺りは暗い。虫の声と自宅の明かりだけが生き物の気配を感じさせる。

 

カチャ

 

玄関の扉を開けた。

 

セイ「おかえりなさい!!」

 

ファルザン「おう、ただいま」

 

明るくて優しい笑顔がわしを包んでくれる。今日も頑張って良かった。

 

セイ「今日は獣肉のビリヤニだよ!!酒場の店長に教えてもらったんだ!」

 

ファルザン「ほう……採点してやらんとな」

 

セイ「えー、100点取っちゃうぜ!!」

 

ファルザン「どうかのー?」

 

新しく買った2人座れる少し大きめのテーブルに座った。

 

机の上には拙いながらもビリヤニと分かる見た目をした料理が置かれていた。

 

ファルザン「ほう……成長、したのお」

 

セイ「そんな感動するほど!!?この大きなスプーンでよそってね」

 

ファルザン「おう、ところで酒場での仕事も順調そうだな」

 

セイ「んん、まぁまぁ……かな。店長の手を煩わせてしまうことも多いし」

 

ファルザン「成長しているなら良いじゃろう。わしもいつか行こうかの」

 

セイ「是非来てよ!!ファルザンが来たなら大盛りサービスしてあげる!!」

 

ファルザン「贔屓したら怒られるじゃろ」

 

セイ「えへへ、そうかな」

 

ファルザン「では」

 

ビリヤニを口へと運ぶ……うん、まぁまぁって感じじゃな。でも、最初と比べたら

 

ファルザン「美味しいぞ」

 

セイ「良かったぜ!!」

 

セイがぱぁと太陽のような笑顔を浮かべる。ふふ、可愛い奴じゃな

 

セイ「名犬カーヴェ!!餌だぞ!!」

 

カーヴェ「わ、ワン///」

 

セイがいつの間にか拾ってきた犬にビリヤニを与えている。

 

ファルザン「……相談しろと言ったじゃろ」

 

セイ「ご、ごめん……捨てられててあまりに可哀想だったから……」

 

ファルザン「はぁ……しょうがないのお」

 

ケッコー「コケーーー!!!!!ココココココ」

 

カーヴェ「い、いたっ痛い……ワン」

 

ケッコーが名犬カーヴェを突付いている。

 

セイ「こら!!やめろケッコー!!これからお前と暮らす飼い犬なんだぞ!!仲良くしなさい!!」

 

ケッコー「コケーー!!!!!」

 

カーヴェ「や、やめてくれ……ワン」

 

ファルザン「…………」

 

……………………はぁ、なんとか見ないように意識してたんじゃがな。

 

頭を掻き毟る。……んん

 

ファルザン「犬は外飼いじゃ」

 

セイ「そ、そんなぁ!!名犬カーヴェが可哀想だよ!!(ほ、ほら)」

 

カーヴェ「う…………く、くぅ〜ん」

 

ファルザン「はっ倒すぞ」

 

カーヴェ「ごめんなさい」

 

セイ「ファルザン!!名犬カーヴェが可哀想てしょう──「お前も出ていくか」ごめんなさい」

 

ファルザン「なんで………なんで…………こうなるんじゃ………」

 

ケッコー「こけけ……」

 

ケッコーが寄り添ってくれるお前だけが味方じゃ。ケッコーよ聞いてくれ、今にもわしの家が動物保護施設になろうとしてるんじゃ

 

セイ「カーヴェが……家が無くて、もう3日もご飯も食べてないらしくて……可哀想だとは思わないか!!?」

 

ファルザン「そういうのはきちんと育てられる確約があってから拾うものじゃ!!無責任に拾うと育児放棄や多頭飼育崩壊を起こすんじゃ!!」

 

カーヴェ「あの……僕は犬じゃな──」

 

セイ「育てるもん!!ちゃんと俺、育てられるもん!!」

 

ファルザン「こんな大きいの育てられるわけ無いじゃろ!!!」

 

カーヴェ「もう……犬で良いです」

 

ファルザン「はぁ……取り敢えずカーヴェ、宿代やるから、今日のとこは行け」

 

セイ「ぐすッ……育てられるもん」

 

ファルザン「黙れ」

 

カーヴェ「いや、流石に申し訳ないです……そんなにされたら頭が上がらなくなってしまいます」

 

ファルザン「もう既に上げられんから気にせんで良いぞ」

 

カーヴェは結局宿代は貰わずに出ていった。

 

セイ「カーヴェ………」

 

ファルザン「なぁ、お前自分が泊めてもらえてるだけでも大分ありがたいということを意識できていないようだな????」

 

セイ「意識してるよ!!ファルちゃん大好き!!」

 

ファルザン「困ったらソレか!!!もうお前も追い出して良いか?????」

 

セイ「やめてください!!お願いします!!!足舐めるので!!」

 

ファルザン「要らんわ汚い!!!」

 

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