ルビーはこのところ、明らかな不満を抱えている。というか、フラストレーションが溜まっていた。
理由は、はっきりしている。ここ最近、ルビーがやっとの思いで結成したアイドルユニットの、新生「B小町」としての活動が、とんとできていないのだ。
いや、正確にはルビーにも、そしてMEMちょにも、仕事はそこそこ入っている。
深夜帯に放送されるようなマイナーなものではあるが、地上波の番組に呼ばれたことも片手では数えきれないほどにあるし、兄がレギュラーを持っている若手中心のバラエティに、ゲストとしてお邪魔させてもらったこともあった。
ネットタレントとしての、すなわち「B小町チャンネル」の調子は上々で、この間登録者数は四十万人を突破した。その記念放送の最中、あっさりと自分個人のチャンネルの登録者数を超えられてしまったMEMちょが浮かべていた何とも複雑な表情のことは、ルビーの印象に残っている。
芸能人として、確実に自分はステップアップを果たしている。少しずつ「有名人」になりつつある感触には、ルビーとしても決して悪い気はしていない。
しかし、そうではないのだ。そういうことではないのである。
何故ならルビーがやりたいのは、夢を見ていたのは、「アイドルになること」だからだ。「ネットタレント」でもなければ、「バラドル」でもない。
皆の前で歌い、そして踊って、見知らぬ誰かに夢を与える。誰かの「推し」になることで、その人の中の確かな光になりたい。
そういう自分になりたくて、そういうことがしたくて、ルビーはアイドルになろうとしたのだから。
翻って今の自分を顧みれば、八月のJIFでこそあれだけのお客さんの前でパフォーマンスをしてみせたルビーたちB小町であるが、それ以降ライブのような形でファンたちの前に姿を見せられたのは、九月の半ばごろにやった大手アイドルとの合同ライブの一度きりである。それ以降、ルビーたちは一度もライブをできていない。
原因ははっきりしている。つまるところメンバーである先輩――有馬かなが、二か月以上の長丁場で舞台「東京ブレイド」のために拘束されてしまっているからだ。
それは有馬かなという個人にとっては望ましいことなのだと、ルビーはわかっている。彼女が本当に志しているのは、あくまで「女優としてもう一度名を馳せる」ことだ。最近、アイドルの仕事にも彼女は面白さを多少なりとも見つけてはいるようだが、しかし彼女の主軸が演技の世界にあることには変わりない。ルビーがあくまで志しているのが、アイドルであることと同じように。
ただなんにせよ、彼女の身が空かなければ、ルビーたちは三人での活動ができない。
これが五人以上のメンバーで構成されるグループであったのであれば、かなが一時的に抜けていても問題は少なかったかもしれない。しかし三人組のユニットの一人がいない状態で「B小町」としての活動をするのは、やはり難しいと言わざるを得ない。
いや、仮にそうでなかったとしても、ルビーはかなと一緒にアイドル活動をしたかった。
だってかなはルビーにとって、確かに同じユニットの仲間なのだ。初めに一度一緒にパフォーマンスをしただけで、次からはあっさり彼女を仲間外れにするような在り方は、何か違う。ルビーはそれを、決して良しとしたくはなかった。
そういうわけで、とでもいうべきだろうか。ルビーはこのところ、特に用事がない時でも苺プロの事務所に入り浸ることが増えていた。きっとそれは、ある種の焦りからくるものでもあるのだろうと、ルビーは自己分析する。
そしてそれは、舞台「東京ブレイド」の休演日に当たるこの日においても、同じであった。
「お邪魔しまーす! あれ、MEMちょだ」
学校が終わり次第、かなと合流する形で直行した事務所の中には、既にMEMちょがいた。
そしてその傍にいるのは、ミヤコである。彼女たちは何か話をしているらしい。
「どしたの?」
「あ、ルビー! 聞いてよ!」
事務所の入り口、室内用のスリッパに履き替えながら問いかけたルビーの声を耳聡く聞いて、MEMちょは振り返ってその声を張り上げた。
「私たちの新曲!
新曲。その言葉に、ルビーは記憶を反芻する。
JIFにおけるルビーたち新生B小町は、セットリストの全てを旧B小町の楽曲から引っ張ってきていた。それはアイたちのB小町の後継であることを印象付けるためでもあるが、そもそも結成から一か月も経っていないあの時点では、新生B小町としてのオリジナルの楽曲など一つもないというどうしようもない事情も存在していたのだ。
だから当然、それに対する手は速やかに打たれていた。JIFが終わってから割とすぐの頃のこと、苺プロは、というよりも壱護は、新生B小町としてのオリジナル楽曲の作成を方々に依頼する。
その数、なんと三曲である。これと既存のB小町楽曲をモダナイズしたリアレンジ版の数曲を組み合わせたミニアルバムを出し、直後にその曲をセトリにした単独ライブをそこそこ大きな箱で挙行することで新生B小町の知名度を一気に上げるという算段を、どうやら彼は立てていたらしい。
つまり新曲云々の話が出たのは、実のところもう三か月、いや、四か月は前のことなのである。
「えっなんで? だってその話してたの八月ぐらいじゃん! もう十二月だよ!?」
よってルビーはそんな声を上げざるを得ない。
確かに新曲を三曲も依頼しようというのだから、多少の時間がかかることはルビーとて覚悟していた。しかしそれにしても、いくら何でも時間が経ちすぎている。
何せ、季節が一個どころか二個ぐらい回ってしまっているのだ。どういうことかと、MEMちょと一緒にミヤコに向かって詰め寄る。
二人の重圧すら込めた視線が向かった先で、ミヤコはどこかバツが悪そうな表情でルビーたちに答えた。
「えっと、ね?」
目を少しだけ逸らして、ミヤコが続ける。
「みんなにはまだ言わないでいようと思ってたんだけど……今回の楽曲を担当してもらってるの、『ヒムラ』さんなのよ」
その言葉に、ルビーは目を見開く。しかしそれよりももっと直接的な反応を示したのは、ルビーたちの背後にいたかなだった。
「『ヒムラ』さん……って、あの『ヒムラ』!? 大御所じゃないですか!」
たたた、と軽い足音を響かせて、かながルビーの隣に駆け込んでくる。
当然、ルビーもその名は知っていた。かなの言う通り、この国のミュージシャン界において彼は純然たるトップランナー、生ける伝説といってもよい存在であるのだ。知らないわけはない。
もっと言えば、旧B小町の人気ナンバーのうちの何曲かは、彼から提供されたものだ。代表曲の一つにして、JIFにおいてルビーたちが最初に歌った「STAR☆T☆RAIN」も、まさしく彼の手によるものである。
まさか、それほどの大物に自分たちの曲を担当してもらっているとは、思いもしなかった。「B小町」という名前の持つ力の強さというものを、ルビーは改めて自覚せざるを得ない。
故にルビーは俄かに胸に膨らむ期待感に思わずその表情を輝かせる。
しかし同時に、それこそが問題となっているのだと、ミヤコは続けた。
「そう。だからね、やっぱりヒムラさんもいろいろ忙しいみたいで。一応、〆切は先月末とお伝えしてたんだけど……」
「まだできてない、と?」
MEMちょの声に、彼女は頷く。
「ある程度は書けてるらしいんだけど、納得がいかないとか何かで。『新生B小町の初めての楽曲なので、妥協できないんですよ』って言われたら、もうどうしようもないじゃない」
「大御所あるある、ね」
ミヤコの物言いに、かなが肩を竦めて反応した。
「長いキャリアで何百曲と曲書いてるとね、『これ前にも書いたな』みたいな感覚に陥るのよ。慣れちゃって、手癖でいくらでも曲作れるようになるってのもあるんでしょうけど、逆にそれがね」
訳知り顔で、ルビーたちの方を流し目で見つつ、彼女は講釈する。
「そうなると、もう自分の書いたものが何も信じられなくなるっていうか、ドツボに嵌まっちゃうって感じ」
これは時間かかるでしょうね、と半ば諦めすら混ざったような響きで、かなは自らの言葉を締めた。
事実、それはそうなのだろう。三曲も依頼しているとはいえ、三か月を超えてそろそろ四か月になろうとしている期間のことを考えると、明らかにヒムラというアーティストが作曲において詰まっているのは間違いがない。
「納品の曲数減らしていいからなる早で、というわけには……」
「いかないでしょうね。もう多分、曲数の問題じゃなくなっていると思いますよ」
ミヤコとかなが深刻そうな声色で言葉を交わしているのを横目に、ルビーは顎に手を当てていた。
その時、ルビーの脳裏の去来していたのは、アクアとの会話であった。いつのことだったか。もしかしたら、もう数年は前のことであったようにも思う。
それはアクアが五反田監督のところで演出の勉強を盛んにしていたころの話だ。何かのタイミングで、彼と自分との間で「クリエイターという人種」のことについていろいろと話していた中で、彼は言っていた。
「クリエイターの生産性なんて、モチベーション次第って言うか。時間かけたらいいものができるわけじゃないんだよな」
確か、アクアが五反田監督のところからなかなか帰ってこない日が続いたときに、「もっと家族との時間を取れないのか」とルビーが文句をつけたから出てきた言葉であったか。
「『降りて』来るか次第、みたいなところはある。アイディアとかアプローチとか、考えつけばあっさり進むのに、まったく湧いてこないと一日中机の前に座ってても一ミリも進まないとかザラだしな」
「効率的じゃないねー」
さらっと、そして当てつけのように毒を吐いてみせたルビーに、アクアは笑った。
「そりゃそうだ。創作者なんて効率のこと考えてたらやってけないよ。ぶっちゃけ、役者もそうだな」
そして、ただ、と続ける。
「ま、だからクリエイター連中って、ちょくちょく『刺激』を欲しがるんだよな。新しい情報のインプットが、自分の中でインスピレーションを生んだりする。今まで考えもしなかったアイディアが浮かんだりな」
――だからクスリとかやって身を持ち崩したり警察に引っ張られたり、挙句死んだりする奴もいるわけだけど。
そう言って肩を竦めてみせたアクアの物言いに、ルビーはその場において少しだけ引いていたのは事実だが、しかし今この瞬間において、そのアクアの言葉は自らにとっての明確なヒントとなっていた。
「あのさ、ミヤコさん」
真剣な声音を作って、ルビーは声を上げる。
ミヤコの、そしてかなの視線が、ルビーに集中した。
「ヒムラさん、たぶん困ってるんだよね? 私たちのためにいい曲を作ろうとしてくれて、でもどういう曲を作ればいいか、分からなくなってるっていうか」
「……そうね。で?」
「だからね」
一つ、息を吸う。その間に、自らが言葉にすべきものの中身をまとめた。
そして、言い切る。
「だったら、私たちのこと、ヒムラさんに知ってもらえばいいんじゃないかなぁって」
発したそれに、しかし未だピンときた様子のない面々を見渡して、「つまりね」、とルビーは続けた。
「メッセージ。ヒムラさんに、送ろうと思うんだ。私たち『B小町』みんなで、ビデオ撮ってさ」
見渡した場所で、視線の先で、かなが、そしてMEMちょが、目をぱちぱちとさせた。
「私たちが?」
「うん」
「ビデオを? ヒムラさんに?」
「うん」
相次いで問いかけてくる彼女たちに、ルビーはただ頷いて返す。
それは、彼女にとってもう一つの意味を孕んでいた。
ルビーが、というよりもアクアが、この新生B小町のメンバーを集めるために奔走していたとき、かなにせよ、そしてMEMちょにせよ、彼女たちをこの事務所に呼び寄せたその最後、必ず彼は彼女たちの目を見て、そして自らの言葉で、意思を伝えていた。それを、ルビーに対しても求めた。
――人を動かすのは、いつだって誠意だ。
それはアクアが常日頃から言っていることだった。ルビーもまた、そんなアクアの信条を好ましいと思っていた。手本とすべきだとも、思っていた。
「せっかく私たちのために曲を書いてくれてるんだから、私たちも、何かしたい。しないと、って思う」
誰かに何かをしてほしいのならば、まずは自分の意思を示すことだ。それを己の言葉で伝えることだ。
そうすることで、未来は開かれる。世界はきっと、そうあるべきなのだ。ルビーはそれを信じたかった。その節理を、枉げたくはなかった。
ならば今ルビーたちがヒムラにすべきことは、この瞬間確かに困っているであろう彼のために出来ることはなんであるかなど、分かり切っている。
「だから私たちの言葉で、ヒムラさんに伝えようよ。『私たちはこういうアイドルだ』、って。そしたら、何か変わるかもしれないし」
でしょ? とルビーは首を傾げてみせる。
そうすれば、わずかの沈黙の後、小さく息を吐いて、かなが答えた。
「……ま、一理あるわね」
一つ頷いて、かながミヤコの方に視線を向ける。
「ミヤコさん、カメラありますか? こうなったら善は急げですし、出来れば今から撮ろうかなと。……ああ、あとスタジオも借りていいですか? 『STAR☆T』踊りたいので」
捲し立ててから、目線だけでルビーの方を見る。
――こういうことでしょう? そう、その目が語っていた。
なるほど、この先輩は人の心の機微を読むのに長けている。ルビーは改めてそれを意識した。
もっとも、彼女の異様なレスバの強さを考えれば、相手の心の急所がどこかを的確に読み取る力を持っているのはある意味当然ではあるのだろう。普段ロクなことに使っていないというツッコみはあるにせよ、だが。
ただ今この時においては、そんなかなの察しの良さというものは、ルビーにとって掛け値なしにありがたいものだった。
故にルビーは黙したままに大きく頷いて、果たしてB小町の三人は連れ立って、事務所付きのスタジオの方へと足を向けた。無論、三人でメッセージビデオを撮るためにである。
そして――ルビーたちが撮り、ヒムラに対して送ったメッセージがどの程度の意味を持つものであったかは、そのわずか一週間後に送られてきた三曲の新曲のデモテープこそが、きっと克明に物語っていた。
東ブレの舞台の期間も、そろそろ半ばへと至りつつある。約一か月という、この類の演目にしてはかなりのロングランな今回の舞台は、十一月の下旬から始まり、十二月の半ば過ぎまで続く*1。
今日はその三回目の休演日だった。
役者である以前に一介の高校生であるアクアは、舞台をやりつつも毎日の授業にも欠かさず出なければならない。学業を疎かにするのは高校生の本分には反するものだから、当然だ。ただそのせいもあって、舞台稽古が始まってからの一か月と少しの間、アクアには休息の時間というものがほとんどなかった。舞台に昼の部のある日に至っては、朝から劇場に詰めることになるが故に公欠まで取らなければならないのだ。
そしてこの生活は、恐らく冬休みに突入するまで続くことになる。だからこそ、放課後だけとはいえ自由な時間を得られるこの休演日というのは今のアクアにとってはオアシスにすらも感じられていた。
ただ、ならばすぐに家に直帰してダラダラとしているかといえば、そうでもない。アクアは今日、苺プロの事務所へと訪れていた。
理由は一つである。本来先月末が締め切りとなっていたはずのB小町の新曲が完成し、デモテープが送られてきたと連絡があったからだ。故に今日、苺プロの事務所にはミヤコとB小町の三人に加えて、アイの姿までもがあった。
すなわち、今日苺プロの事務所に集まった全員の目的というのは、やってきたデモテープの内容を確かめることに他ならなかった。
デモ「テープ」とは言いつつ、昨今のデジタル化の流れに逆らうことなく、納品されてきたのはクラウドサービス経由のデジタルデータである。
本当に、三曲ともにしっかり上がってきている。先々週ぐらいまで、今回の仕事の依頼先であるヒムラとミヤコとの間で進捗に関してはあまり明るい話が上がっていなかっただけに、そこから急転直下で新曲がやってきたこの状況に、アクアとしては狐につままれたような感覚に陥ったことは事実だ。
しかし、今回の顛末の裏にあったこと、つまりアクアが事務所にいなかった先週の休演日にルビーたちが何をやっていたのかを聞いて、アクアは納得させられるものがあった。
自分の意思で、存在で、パフォーマンスで、人を奮い立たせる。惹きこんで、力を与えて、その気にさせる。ルビーには、それができるだけの資質があるのだ。
確かに彼女のアイドルとしての活動は、どうしても振る舞いの中に「アイのかつての姿」を追っている部分がある。それは新生B小町というユニットの旧B小町からの連続性をファンに感じさせる大きな要因となってはいるが、逆に言えばルビーの「アイドルとしての在り方」をどこか型にはめてしまっている部分があるのは事実だ。
だが、ルビーのアイドルとしての本質は、きっとそこではない。そう、アクアは考えている。これまでのメンバー集めの時にも時折見せていたルビーの瞳の輝きも、そしてJIFのあのステージの上で「叫んで」いた、アイドルとしての彼女の「主張」も。
そしてきっと、そんな彼女の意思というものが、ヒムラというアーティストにはしっかり届いたのだ。心を揺さぶったのだ。その結実が、今アクアたちの前にあるデモテープに他ならない、のだろう。
しかし、三曲ともに本当に見事な出来である。
一曲は、B小町としては異色といってもよい、ミドルテンポのバラード。
もう一曲は、昨今のアイドル音楽シーンにおいて流行の兆しを見せつつある、EDM調のダンスナンバーだ。サビ以外の部分がほとんどラップで構成されているのが特徴と言えるだろうか。
そして最後の一曲こそが、恐らく今回のB小町の新曲としては表題曲となるであろう、「POP IN 2」という歌だった。
送られてきた三曲の中では最もポップな、ある意味では旧B小町の血脈を意識した曲ではある。しかし同時に、最新の音楽シーンにおけるトレンドも組み込まれていて、しっかりと時代にはキャッチアップできている。
歌唱パートも三人共に見せ場が確保されていて、「センター」の存在を特別扱いする構成にはなっていない。アイという絶対的センターを常に主軸に置き続けて、その存在を際立たせることを重視していた旧B小町の楽曲とは根本的に違うイズムによって作られたナンバーだということが、よくわかる。
見事な仕事をする。アクアは率直にそう思わされた。流石はかつて「ヒムラサウンド」として日本の音楽シーンを支配し、自らの名前を冠したコード進行のメソッドまで提唱される*2ほどの才能の持ち主だ、というべきなのだろう。
ただ、懸念はなくもない。
「ルビー。それとMEMも」
B小町の三人がソファーに寄り添うように座って、仮歌の入ったデモテープに聞き惚れているところに、アクアは敢えて声をかけた。
全員の顔が上がり、視線がアクアに集中する。そこで、アクアは口にした。
「今回の、結構曲としては難しいぞ。かなに関しては心配してないけど、歌えるのか? 二人とも」
野暮なことではあるだろう。しかしアクアにとってみれば、それは深刻な課題なのだ。笑い話では済まない。
そうすれば、我が意を得たりとばかりにかなが反応した。
「それよ。アンタたち、私が東ブレの稽古してる間も真面目にボイトレ積んでたんでしょうね? JIFの時から全く進化してなかったりしたら、せっかくのヒムラさんの仕事に泥塗ることになるわよ?」
半ば据わった目で、かなが二人を睥睨する。その鋭い視線を受けて、ルビーたち二人は一瞬だけ顔を見合わせた。
しばしの沈黙を経て、ルビーが答える。
「……まあ、多少は? 上手になった……と思う」
「多少は、って、アンタねぇ……」
「いやだって、そんなすぐに先輩みたいに上手に歌えるようになるわけないじゃん! あ、でもこないだMEMちょとカラオケ行って、七十五点行ったんだよ!? 」
すごくない!? と身振り手振りを交えて、そんな必死な抗弁をルビーはしてくる。
正直なところを言えば、カラオケマシンの採点機能で歌の上手さを測るというのはナンセンスな面がある。路上で聞けば誰もが足を止め、手を叩いて絶賛するような歌が、必ずしもカラオケマシンにおいて百点満点を取るとは限らない。
が、かつてはやれ五十点台だ六十点台だの世界で彷徨っていたルビーの歌の腕前のレベルからすれば、点数が上がったことそれ自体は確かに彼女の歌唱力の向上を証明しているのかもしれない。いずれにせよ、彼女が努力しているというのは確かなのだろう。
「そだねー。ルビーちゃんは頑張ってるよ。MEMちょもね」
考えていたところで、そうアクアたちの背後から声がかかる。聞き慣れた声だった。
声の主の方を向いて、ルビーが目を輝かせる。かなもまた、その目を瞠った。
「アイさん……ミヤコさんとの打ち合わせは終わったんですか?」
「やっほ。うん、そだよ」
「何の話されてたんですか?」
「んー。えっとね、『それ』」
かなの問いに対して、事務所の会議ブースからミヤコと共に出てきたアイが、ルビーたちが聞いていたデモテープ音源を再生していたスマホを指さした。
「新曲も来たし、そろそろ『あの話』進めなきゃって。でしょ?」
そう言って、片目を瞑る。
曰く、あの話。それが指す意味については、アクアとて理解していた。
「『MVの話』、ですか」
「そ」
声を上げたアクアに目を向けて、アイが我が意を得たりと頷いた。
新曲が出来上がり次第、かなの舞台の千秋楽を待ってMVの撮影を行うという話は、以前より決まっていたことではあった。そのMVを引っ提げてファーストワンマンライブに臨むのが新生B小町売り出しの戦略となっている以上、ここは既定路線ではある。
しかし逆に言えば、それについての詳細は何一つとして決まっていないということでもあった。具体的に言えば、MVの撮影について発注を誰にするかという所から始まって、詳細な撮影の日程はどうするか、そして予算に至っても、未だ何一つ確固たるものが計画として存在していない。言ってしまえば現状は、「B小町のMV撮影をする」という決意表明をしただけに留まっているに等しい。
「昔B小町のMVとか撮ってたクリエイターさんたちに連絡してはみたんだけど……今回の作品は『ネットでバズらせたい』ってこちらの要望を伝えたら、思ったより反応が悪くて、ね」
とは、ミヤコの弁である。
それはある意味、致し方のないことなのかもしれない。なにせ、旧B小町が現役アイドルをやっていたのは、その解散時期ですら十年も前の話なのだ。その頃はまだ今ほどにはネットにおける広報戦略の重要性は認識されていなかったし、その時代にコンテンツの作り手として表舞台でバリバリやっていたような人物は、そこまでインターネット上の「バズ」の狙い方に詳しいわけでもない。だからむしろそういう方向に長けているクリエイターというのは、最近頭角を現してきているような人たち――所謂「若い才能」であろう。
「じゃあ、やっぱり私の話、考えてもらえるってことですか?」
俄かにそこで、MEMちょが会話に参加してくる。アイと、そしてミヤコの視線が、そちらに向いた。
「ええ。そういうことになるわ」
頬に手を当て、ミヤコが頷く。
どういうことか。まあ、わざわざ勿体つけるほどのことでもない。
「MEMの言ってたクリエイターの……『アネモネ』さん、だっけか。 あれから都合とかつけてもらってるのか?」
つまり今回のMV撮影に際して、普通ならあり得ないルートから、その発注先について一つの提案があったのだ。
すなわち、MEMちょのYouTuber、インフルエンサーとしての知人に、インスタグラムでいろいろと作品を発表しているコンテンツクリエイターがいて、その彼女に今回のMVの撮影や編集を頼んでみればどうか、という話であった。
「一応ね。まだ本決まりじゃないって伝えてはいるんだけど、結構乗り気でさ。その人は地方住みというか、地方にアトリエ構えてるんだけど、出向いてくれるんだったら『友情価格』でいいよって。スケも結構融通利かせてくれるらしくてさ」
アクアの問いに、得意げな表情でMEMちょが答える。
なるほど、と首肯して、アクアはミヤコの方へ顔を向けた。
「一応、僕の方でもポートフォリオとか見てみましたけど、結構芸術家肌っぽい人で。でも画は確かですし、インスタグラマーとして確実に一流ですし、悪くないとは思いますけど」
そのまま、私見を述べる。つまりアクアとしては、今回のMVの発注をかける相手にMEMちょの推薦するクリエイターを選ぶことに関しては、賛成寄りの立場であった。
地方というのがいかほどのものかという問題はあれ、「友情価格」でというぐらいなのだから、トータルでかかるコストも悪くはないはずだ。断る理由は薄いというのが、アクアの見立てである。
「確かに、そうね。じゃあやっぱり、その人にお願いすることになるのかしら」
果たして、そんなわずかばかりの思案を見せたミヤコが、頬に当てていた手を外す。考えがまとまったということか、MEMちょの方に目を向けて、一つの問いを発した。
「MEMさん。因みになんだけど、その『アネモネ』さんって方、どこにおられるって言ってらした?」
「はい? あ、はい! えっとですねー……」
水を向けられたMEMちょが、一瞬だけたじろぐそぶりを見せる。
しかしそれは本当に一秒にも満たないことで、すぐさまに彼女は、一言で以てそれに答えた。
「
その瞬間、アクアの時間が止まった気がした。
いや、アクアだけではない。ちらと視線を向ければ、そこには大きく目を見開いてMEMちょの方を見るルビーの姿が見えた。
そして、もう一人も、また。
「――へぇ?」
朗らかな、しかしその裏にかすかに『何か』を含んだような響きの声がする。
全員が、そちらに目を向けた。声の主は、言うまでもない。
「いいじゃん、宮崎」
あっけらかんと、彼女が、アイが言う。
「それ、私も行っていいかな」
「は、え? アイさんが、ですか?」
「うん。いいでしょ、だって今のB小町は、『私がプロデュースしてるアイドル』なんだしっ!」
当惑したようなかなの問い返しに、茶目っ気交じりに片目を瞑ってみせた。
宮崎。アクアのみならず、アイにとってもそれはある種因縁の場所だ。
ルビーまでもがそんな反応を見せたのは、よくわからないが。もしかしたらアイに、自分の生まれ故郷のことについて聞く機会でもあったのだろうか。
いずれにせよ、ここで、こんなタイミングで、その地の名前を聞くことになるとは。
アクアにとってその巡り合わせには、何か「運命」のようなものすらも、感じざるを得ない。
まるで、それが必然であったかのような。
「そだ。アクアくん、きみも来るでしょ?」
そんなことを考えていたからか、アクアはそんなアイからの問いかけに答えるのに、一拍ほどの時間を要した。
「あー……そう、ですね。行くとしたら、いつぐらいになりそうですか?」
「そうねぇ……」
その、アクアが発したある種当然の問いには、アイではなくミヤコが答える。
「あなたたちの終業式が終わるのがクリスマスぐらい、でもそのあとの週末はもう年末年始だし、アネモネさんにも迷惑でしょうから……たぶんその次の週、成人の日絡みの三連休を使って二泊三日、みたいになるんじゃないかしら。あなたと有馬さんに関しては、『東ブレ』の慰安も含めてって感じで」
「成人の日……」
それを聞いたアクアは、スマホを取り出す。最近、その言葉を聞いた気がしたからだ。具体的に言えば、つい一週間前に。
果たして、スケジュールアプリを開いたアクアはすぐさまに答えを見つける。
「その日、は……」
「その日は? どうしたのよ?」
怪訝そうに問いかけてきたかなの方を見て、アクアはバツが悪そうにその言葉を口にした。
「その日程、あかねに誘われててさ。その、『あちらの親御さんと一緒に、旅行にでも行かないか』って」
部屋中から、驚愕の声が上がった。
「はぁ? どういうことよ!? 黒川あかねが!? アンタを!? 家族と!?」
「ステイ、かなステイ。近い」
「んなことどうだっていいでしょうが!」
瞬く間に、本当に一瞬のうちに、蹴倒すように席を立ってアクアに詰め寄ったかなが、捲し立てる。
「アンタたち別にそういう関係じゃなかったはずよね!? え、何もう親紹介とか行くわけ!? 何考えてるのよ黒川あかね!」
がしっ、と襟元を掴まれる。久方ぶりに、かなにこの距離まで近寄られた気がした。
いや、そんな感慨に浸っている場合ではない。アクアは慌てて弁明する。
「いや、別にそういうわけじゃ」
「そういうことでしょう!」
「いやだから!」
かなの腕を掴んで襟から手を離させようとするも、日々走り込みや筋力トレーニングを欠かさないかなの膂力も握力も流石のもので、舞台期間ということもあって多少は筋肉がついているとはいえ、基本的には虚弱なアクアの力程度ではどうにもならない。
もみ合うようにしながら、アクアは必死に言葉を続けた。
「稽古期間とか、あかねには
無論、その「いろいろ」の中身はここでは話せない。稽古期間にぶっ倒れた話でもしようものなら、この場は更なる地獄と化すことは分かり切っているからだ。
ともあれ、アクアのその答えに、かなはぴたりと動きを止めた。顔を俯かせる。
そして、ポツリと問うてきた。
「……いつ出たのよ、その話」
「その、先週の休演日」
「……あぁ、確かにアンタその時ここにいなかったものね。そういうこと」
ぱっと、襟から手が離れる。二歩三歩と後ずさり、そのまま彼女は腕を組んだ。
しばしの沈黙が流れる。先ほどまでのあまりの剣幕に、アイでさえもかなに口を挟むことを憚っていた。
故に、それはかな自身が破る。
「じゃあアクア、あなた黒川あかねを宮崎に連れてきなさいよ」
そんな、特大の爆弾発言によって。
「……は?」
顔を上げ、そして指をこちらに突き付けながら斯くもとんでもないことを口走ってくれたかなを見て、アクアからは間抜けな声が出てしまう。
しかし一方の彼女は止まらない。そのまま捲し立ててきた。
「いや、は? じゃなくて。別にあっちだってまだ予定ってだけで、宿とか押さえてるわけじゃないんでしょ? 先の話だし、正月でもないんだから」
「それは、まあ。そういうことはまだ、何も」
「じゃあいいじゃない。寧ろアゴアシマクラ*3つけて黒川あかねのこともてなしてやる方が埋め合わせになるんじゃないかしら? アンタが黒川あかねの家族旅行に押し掛けるよりもよっぽど」
謎の圧を発揮して、かなはアクアに自らの提案をゴリ押してくる。丁度その辺りで、少し冷静になったアクアの頭が彼女の言い分を咀嚼しはじめた。
言わんとすることの理屈は分かる。しかし、常識的に考えて彼女の理屈は無茶だ。というか、横暴とすら言えるかもしれない。
何となれば、あかねから誘われたのはあくまで、「彼女たちの家族旅行への同伴」だからだ。その逆をするというのはつまり、あかねの家族の予定そのものを潰すことも同じだ。いくら費用をこちら持ちにしたところで、あちらの親御さんに迷惑をかけることは避け得ない。
――分からない彼女ではないはずだ。なら、どうしてこんなことを。
そんな一瞬の疑いをかなにかけて、しかしアクアは気づかされてしまった。
そうだった。有馬かなという少女にとって、家族の、特に「両親」というものの存在は、あまりに希薄なものとなって久しいのだった、と。
「それともなに? あなた自分の妹ほっぽって黒川あかねとよろしくやるつもりなの?」
その事実を思い出してしまったことで出来たアクアの意識の空白に、かなから矢継ぎ早に放たれた追撃が刺さる。
言葉が、出なくなった。
確かに、それはそうなのだ。アクアにとっての優先順位は、何がどうあっても家族こそが最上位である。いくらあかねに返さねばならない借りや恩があったとて、そのために自分の家族を蔑ろにしていいわけではない。なるほど、正論ではある。
とはいえ今回の話、先約はあくまでもあかねであるのもまた事実だ。無論、こんなバッティングの仕方をするとは全く考えず、具体的なところはまだ何も決まっていないからと、千秋楽が終わったあたり、つまりもう少し近くなってから話をすればいいかと考えていたアクアの落ち度は大きいのだが、しかしそれでも先約は先約である。
すなわちアクアは今、自業自得とはいえ完全な板挟みの中にいた。
自分はどうすべきだろうか。アクアはそこから丸々一分ほど使って悩みに悩み、その末に一つの苦渋の決断を下す。
「……わかった。とりあえず、話だけしてみる」
つまりそれは、ある種の先送りだった。
ダメ元でと言うか、ほんの話のタネ程度に今回のMV撮影の宮崎旅行のことを持ち出して、あかねにぶつけてみる。予定がバッティングしているということも伝えて、それとなくあかねの意思を確認するという寸法だ。
公算は限りなく低いが、もし万が一あかねが積極的にアクアたちの旅行に参加することを選ぶというならば、問題はギリギリ丸く収まってくれる。いや、あかねに、そしてあかねの家族に負担を強いるのだから、「丸く」というのも失礼な話なのだが。
そして、まあ大方そう話は上手くいかないだろうから、結局自分はその時の自分に判断を投げることになるだろう。「先送り」というのは、そういう意味である。
話を持ち掛けたときのあかね側の温度感を見て、自分の判断をどちらに倒すか決める。
かつて「吾郎」として曲がりなりにも社会人をやっていたはずのアクアにとってはこの体たらくは何とも情けない話だが、しかし今の己にはこれ以上のアイディアを出せる気がしなかった。
斯くしてその日、その場がお開きになるなり、アクアはすぐさまスマホのチャットアプリにいくつかのメッセージを打ち込んだ。あかねに対して、今日決まった諸々の話を伝えるためにである。
前々から言っていた新曲三曲がやっと届いたこと。
ついては苺プロ総出で、MV撮影のために宮崎へロケ兼旅行に行くこと。
そして――その予定が、あかねから打診されている家族旅行の日程に丸被りしてしまっていること。
あかねの返答は早かった。
『それは、ルビーちゃんの用事の方を優先すべきだよ』
『私たちの方は特にまだ何も決まってたわけじゃないし、お母さんもまだまだ先の話って言ってたし』
『埋め合わせは今度でいいから、アクアくんも楽しんできて』
らしい言葉ではある。本当に、どれだけ人間ができているのかと、思わずにはいられない。
もう少しぐらい、わがままを言ってもバチは当たらないだろうに。
『それについてなんだけど』
『その三連休、最初から家族旅行の予定だった? それだったらこの話忘れてほしいんだけど』
『そうじゃなくて、それでもし親御さんがいいって言うようなら、あかねも宮崎に来ないか』
そう思いながらアクアは自らの本題を、その提案を打ち込む。
『ほんと!?』
反応は、劇的だった。すぐさまやってきたそのメッセージと一緒に、スタンプまで送られてくるほどに。
『でもいいの?』
『大丈夫』『というか、かなが連れて来いって』
『かなちゃんが? なんでアクアくんと?』『あ、わかった』『そっか、B小町のMV撮るんだもんね』
全体的に、思ったより乗り気そうというか、かなり前のめりな意思を感じさせる返答だ。
アクアからすれば、少しばかり不思議な振る舞いだった。あかねの家庭の家族仲はおそらくかなり良好なはずで、だとすれば自らの両親をともすれば蔑ろにすることになるであろうアクアのこの提案には、難色を示して当然であると考えていたからだ。
故に、自然とアクアの指は動いていた。
『俺からすれば、君の親御さんに申し訳ない感じ凄いんだけど』
『全然! むしろお母さんとかに話したら喜んでくれると思う』
『どうして?』
問い返したアクアのメッセージに、少しだけ返信の間隔が空く。
『私、仕事とかで小学校も中学のときも修学旅行いけてなくて』
『同い年ぐらいのみんなで一緒に旅行、みたいなことできなかったから』
『お母さんもお父さんも、ちょっとそのあたりのこと気にしてたみたいで』
「なるほどな」、とアクアは画面を見ながら呟いていた。
ある意味、それはアクア自身とも似通った境遇であるのかもしれない。アクアは「前世持ち」という特殊極まる境遇であった故に、特に小学生時代は同年代とのコミュニケーションからある意味「逃げて」しまっていたのだが、あかねもまた同じように、「演技の世界」の方に重心を置いていたことで、同年代との付き合いというものが希薄になってしまっていた可能性は大いにある。
畢竟、「芸能界」という場所は良くも悪くも普通の世界からは断絶しているのだ。それを「選ばれし者の世界」と見るか、「普通の社会から疎外された場所」と見るかは、人次第ではあるのだろうが。
『わかった』『なら、こっちにはあかねが来る話は伝えとく』
『ありがとう、よろしくね』
いずれにせよ、あかねの方が随分とその気であった故に、あかねの宮崎旅行同伴の話は斯くもあっさりと決まった。
運がよかったと言うべきなのか。いや、それよりもやはりこれは、あかねの人の良さに助けられていると見るべきなのだろう。
『いや、こっちこそ』
『ごめんな、色々迷惑かけて』
その二つのメッセージだけ送信して、反応は見ずにアプリを閉じた。
――結局、借りを作っている状態は変わらず、か。
内心で呟いて、アクアは天井を見上げる。
その時、同時にアクアの脳内には、自分に課されているもう一つの「タスク」のことが浮かんでいた。
そうだ。今回の宮崎旅行、あかねがついてくるというのであれば、もともとあかねの家族旅行に付き添うタイミングで持ちかけるつもりだった話もまた、きっとすべきなのだ。
劇団ララライのOBの中に、アクアとよく似た容貌をした男の子がいないか。
具体的に言えば、十八年前ごろに、中学生から高校生ほどの年頃であった男の子が。
それを調査してほしいと、伝えなければならない。
何の因果だろうか。そんな話をするのが、アイが子供を産み、自分が死んで、そして――天童寺さりなを無力のままに見送らざるを得なかった、あの宮崎という地であるなど。
だから、アクアは思う。
ともすればそこには、自分には及びもつかないような、何か大きな意思の力すらも、働いているかのようだと。
――心の中、ほんの少しだけ、胸騒ぎがした。
次回、宮崎です。
舞台編で言っていた「埋め合わせ」は、宮崎旅行へのあかね同伴のための前提条件でした。
本作のアクアはこの時点で星が消えていないので、かなにせよあかねにせよ二人きりでどこかに出かけに行くモチベーションが殆どないです。よって「二股デート」はスキップと相成りました。