勇者属性を持つ新人のパーティーに入ったら国家の危機が目白押し。パーティーが活躍している裏で動かなきゃ国が詰む 作:マツバキクノスケ
あと書いている途中で(この設定こうしとけばよかったな…)となることが結構多いので書き直すか、いっそ新しく書き直して投稿するか迷いますねぇ……
追記:下書きから消し忘れていた箇所を削除しました。深夜テンションで書くものじゃないですね。申し訳ありませんでした。
微睡んだ意識の中で薄らと景色が浮かび上る。
高い山、鬱蒼とした木々、山々と薄い霧に太陽を遮られ、薄暗く、枯れた土地に乗せたように建てられた粗末な家々。いや、家と呼ぶのも烏滸がましいような、掘立小屋の様な建造物。
これは夢の中だ、なんとなくそう認識した。
その日の畑仕事を終わらせ家路につく俺の前に誰かが現れた。痩身で何処か神経質そうな顔立ちに苛立ちの表情と、ほんの少しの恐れを見せながら俺を睨みつける。
「なんだ。村長の息子がお前の前にいるのに挨拶も無しか、ヨトゥーン」
振るうつもりの無い俺の拳を恐れてか、ある程度距離を置いているのに挑発的に俺に話しかける。
「おい、お、おっ、お得意のダンマリがいつまでも通用すると思うなよ! お前が何故親父に目を掛けられているのか知らないけどな、俺が村長になったらすぐにでも追い出せるんだからな! わかったか!?」
金切り声を上げて叫ぶ奴に俺は何も話すことは無かった。
コミュニケーションが苦手っていうのもあるが、この頃は日の光も当たらない陰気臭さと…後は、まあ、まだ前世のアレコレの記憶で憂鬱になっていた所もある。
話す気力すら億劫だし、コイツの絡みが鬱陶しくなり深いため息を吐くと悲鳴を上げて後ずさる。臆病にも程があるとは思わない。こんなナリだ、仕方がない。
男に背を向けて歩く。未だに何か喚いているが、耳にはもう入ってこない。
村を出ていく、何か月か前の記憶だ。
段々と景色がぼやけていく。夢から覚めていくのを実感した。目を開けると、木の爆ぜる音と温度が俺を出迎える。
久しぶりに見た夢だ。少しばかり過去の事を思い出してしまったからか。
「ルーメン」
火の番をしながら、魔導書を広げて熟読していた彼女に声を掛ける。
「…あら、ジョー様? 貴方の番はまだ先の筈でしたが」
「眠りが浅かった。此処からは俺が引き受けよう」
「ありがたい申し出ですが、魔術書の読解が良いところまで来ていますの。もう少しだけご一緒させてください」
そういうと彼女は再び魔術書に目を落とした。
俺は身体を起こし、背を伸ばした。弾けた音を立てながら関節が伸び、コリから解放された体で彼女の対面に腰をかけ、薪を火にくべる。
半分の月は未だ頭上で青白く輝いていた。
日が昇り始め、2日目。俺達はテントを片付け、再び探索を再開していた。
昨日は樹木につけられた印を道から逸れない程度に追いかけてたが、そんな上手くいく訳も無く、結局太陽が沈む前に野営を組んで夜を明かすことになった。
故に今度は多少範囲を広げ、サーベルボアに繋がる痕跡を探す。
「あ」
誰かが声を上げた。
クリスが地面の一点を指差している。そこには複数の足跡が乱雑に地面に押印されていた。地面の泥濘に対して、鮮明に残っている。群れは未だ近くにいるかもしれない。
付近を見ると、樹木の根元が掘り起こされ根が齧られている。他にも幹に擦られ剥された皮とソレをやった犯人の茶色の枝毛が付着していた。
「これって……」
「サーベルボア…の物ですよね?」
「…あってるぞ」
お手柄だな。早速事前学習の成果がちゃんと出ているようで。
痕跡がやけに多い事から、この辺を縄張りにしているサーベルボア達は若い個体が多いのかもしれん。ある程度年齢を重ねると人と遭遇した時点で慎重になり人目に付かないように痕跡を最小限しか残さない。それでも人と生活圏が被ると畑の味を覚えてその辺りをうろつくようになるから被害は出るが。
「…総員、気を引き締めろ。いつ遭遇しても良いようにしておくんだ」
改めて周辺を警戒しながら跡を辿る先に――いた。気付かれない距離から遮蔽に身を隠して様子を見る。
数は雄が三頭。牙の太さ、紋様の濃淡を見るに成体になってから月の浅い個体群か。さっきの‟成れの果て"が居た位置と言い、こいつらが犯人とみていいだろうな。
これは少し危険な状態だな。人を殺した若くて気性の荒い連中は人を恐れなくなる。そうなるとバンバン人の生活範囲に現れるし、積極的に人を襲うようになる。早い内に駆除しなければ被害は増える一方だ。
「…ジェナ。まずは、どう動く?」
隣にいるジェナに指示を仰ぐ。今まで基本的に俺が音頭を取っていはいたが、そろそろジェナにリーダーとしてその役割を担ってもらう必要がある。今回の探索はその最初のステップも兼ねている。
「クリスは高所に陣取って討ち漏らしの対処と周囲の警戒、ルーメンは私達の援護を。ジョーさ…ジョーは私と一緒に突撃です」
決められた合図と同時に突貫。ルーメンの略式詠唱を背後にサーベルボアの群れに突っ込んだ。
それに対し、連中もいきなり現れた俺達に対して無防備に待ち受けるほど間抜けではない。即座に隊列を組んで此方にチャージを仕掛けてくる。
俺はクリスの前に立ち――新しく追加した盾で三頭の突撃兵を受け止めた。
これは冬の時期に行きつけの鍛冶屋に依頼して作って貰ったもので、『多少』乱暴に扱ってもビクともしないように鍛造して貰った特注品だ。
重厚でデカい重装歩兵が持つようなな盾は防衛と足止めの役割を十全に果たすだけの強度と重量を以て、軽い衝撃と共に重みを腕に伝える。
そのうちの一頭を側面に回り込んだジェナの剣が上段から襲い、その分厚い毛皮諸共首を切り落とした。
力を失い、斃れる同胞の姿を見た他の二頭は盾に突き立てていた牙をジェナに向けて振り回す。それを盾で殴りつけて阻止。彼女が十分に距離を取ったところで背後から一際大きな声が聞こえた。
「
射線を開ける。同時に彼女の魔法が獲物に襲い掛かった。
実体を持たない筈の火の矢はしかし、生き残った片割れの胴体を貫き食い込み、その身を内部から焼き始める。
悲鳴を上げ転がる相方を見ていよいよ命の危機を感じた最後の一頭は身を翻して逃走を図る――が、それを見逃すほどこちらも甘くはない。
体勢を立て直していたジェナが逃げるサーベルボアの背後から襲い、刃が胴体の半ばまで食い込んだ。
サーベルボアは逃走の勢いのまま地面に滑るように転がり、裂けた身体から内容物をまき散らしながら息絶えた。
ルーメンの魔法を受けた方は纏っていた火を消し終えていたが、既に無視できない傷を負ったその動きは精彩を欠いている。
最早語る必要も無し。ジェナの剣で止めを刺して終了である。
樹上のクリスが警戒を続けている間に討伐部位の対の牙と、毛皮と部分肉に切り分ける。
慣れた様子で解体を行うジェナがルーメンに手順を教えている。
「……手慣れているな」
「はい。鶏とか猟師さんが狩った動物を解体する時によくお手伝いしてたんです」
ああ、成程……俺の所はそんな事なかったな。まあ、痩せた土地で生活しようなんてもの好きな生き物は人間以外居なかったからな。何だったら冒険者になってから肉を食い始めたぐらいだし。解体も加工所の職人の見よう見まねで覚えたし。
そう考えたらそんな食生活でデカくなった俺の身体大分おかしいな? そりゃ村の連中もビビるわ。
一通り解体を終え、収納袋に収めたタイミングでクリスと合流して森から出る。が…クリスはジェナを見て何とも言えない表情をしている。
「…クリス? どうした」
「あ、いや…何でもない」
いや、そんな表情してて何でもないは逆に怪しいぞ。ほら、問題にならない内におじさんに教えてごらん?
と今ここで言いたいところだが、まあ本人たちが居る場所で聞くことは無いか。街に帰ってからでいいか。
「…ごめん、嘘ついた」
「別に本人の前で聞けない事だったら言わなくてもいい」
「いや、そういう事じゃなくて…ちょっと違和感と言うか、気のせいなら良いんだけど」
ああ、悪口とかじゃないのね。よかったよかった。
「彼女、農村出身であってるんだよね?」
「……本人が自己申告している限りならそうなのだろう」
嘘をついているなら別だけど。いやこれまでの付き合いから見ても嘘を吐くような性格ではない筈…もし嘘だったら戦慄モノだが。
「鉄級の冒険者がサーベルボアの首を切り落とすなんて芸当出来るのかなって思って」
「……そうなのか?」
おいなんだその呆れた表情。「あ~相談する相手間違えたわー」みたいな顔するなよ。泣くぞ? 良いのか? いい歳こいたおじさんがみっともなく泣いちゃうぞ? 俺の心は繊細なんだぞ? ゴリラの様に。
その後は特に会話が続くことも無く、俺とクリスの間に気まずい空気を醸しながらヨルアク行きの道を馬車を探しながら帰路に就いた。
色々解説
魔法の詠唱と属性について
詠唱……正式・略式詠唱、正式・略式無詠唱、詠唱破棄と特殊なもので物体及び自身に刻印した魔法式によるものがある。また、外付けに遅延術式を付けることで時間を指定することが可能。
難易度は正式・略式詠唱→正式・略式無詠唱→詠唱破棄になる。
詠唱は補助輪の役割を果たすため、口に出すことで魔法の行使を容易にできる。無詠唱は魔法の種類を特定されない利点や、口に出す必要が無い分高速で行うことができるが集中力を要する。詠唱破棄は魔法を無意識下で行使できるまで使い込んだ結果可能となる。
属性…元素(火・水・土・風)と特殊(毒・麻痺・洗脳・回復)が『一般的』に広く知られ、7割が元素に適性を持ち、特殊はその性質から適性があれば安定的な収入を得ることができる。