勇者属性を持つ新人のパーティーに入ったら国家の危機が目白押し。パーティーが活躍している裏で動かなきゃ国が詰む   作:マツバキクノスケ

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 足りないなりに色々調べたり考えているのですが突っ込みどころあったら()()()(重要)教えて頂けるとありがたいです。
 あとこの話が投稿されると同時に匿名解除しますので、もし質問等ありましたら活動報告にてご質問ください。


貴族、そして責務

 緊張する場面、或いは苦手なものと対峙する時、『帰りてぇ~』と思ったことは誰にでもあるだろう。俺にもある。

 

 国王から勲章を頂いた時、先輩冒険者から絡まれた時、或いは村々の関係絡みの面倒くさいクエストをうっかり受けてしまった時。

 

 そして目の前にいる――――

 

「うむ! 突然の呼び出しにも関わらずよく来てくれたバーアライド士爵!」

 

 首都ヨルアクを統治している公爵家当主、エルフォンス・ラ・カーランドとの会話である。

 俺は今、ジェナ達の昇級試験の為に一時的にパーティーから離れて、公爵の家にお呼ばれしている。黒級の俺は受けることができないし、彼女達の実力で上がらないと意味が無いため、せめて試験受かるように応援でもするかぁと思っていたところに呼び出しを喰らったわけだ。

 彼女と関わったのは『とある事件』で大暴れした時に色々協力してもらった、というか本来ならば彼女が解決しようとしていた所に色々横やりを入れたのが最初だ。そっから何かとお呼ばれしては色々お話をする仲になったという訳だ。

 

 

 おっかしいなぁ……普通冒険者と貴族ってあんまり関係を持つことは無いと思うんだけどなぁ……。あ、そっか俺そういや今一応貴族なんだっけ。関係あったわ。

 

「……いえ、公爵のお呼び出しとあらば………」 

 

「そう畏まるな、卿が爵位を賜る前からの付き合いじゃあないか!」

 

 いや、無理っス。こんなパチモン貴族(笑)がガチの貴族相手に自然体になるなんてできねっス。

 と言う気持ちを抑えて公爵の勧めに従って椅子に座る。俺の体重を軋む音一つ上げる事無く受け止め、快適な座り心地を提供してくれている。

 

「さて…本来ならば軽く世間話。と言うところだが、知っての通り私は遠回りなことは嫌いなのでな。単刀直入に言おう」

 

 座るなり両手を組んで此方を見る。勘弁してくれ、そういうのは未だ苦手なんだよ。

 

「私の個人的な依頼を受けて欲しい」

 

 …………嫌だなぁ。

 

「言葉にせずとも卿のその表情からよーく伝わってくるぞ」

 

 呵々、と一頻り笑うと一転して真面目な表情で話を続ける。

 

「これには面倒な事情が関わっている」

 

 少々話は長いがのとカップを傾け、喉を潤して話を続けた。

 

「まず、卿は現国王から勲章と同時に爵位を賜った。これは理解できるな?」

 

 まあ、確認しなくとも当事者なので。はい。

 

「うむ。これにより卿は最下位とはいえ貴族の一員としてその名を残すことになる。同時に《国家へ貢献する義務》も生じてしまった」

 

「…貢献する、義務?」

 

「そうだ。王国に属する貴族は、特権と同時に責務を背負う。多くの貴族は預かった領土の管理とその税を国に納め、戦時においては戦力、つまり兵を出す。しかし、卿は土地を持たぬ。そこをよく思わぬ者が居るのだ。名誉とはいえ、貴族である卿が責務を果たしていないと。今は別段被害も無いだろうが、そのうち卿の活動に害を及ぼす可能性もあり得る」

 

 そんな言いがかりみたいな理屈で俺の事嫌う連中がいるの? 暇なの? 

 

「…今から返上することは」

 

「無理だな。五等爵なら理由は様々だが返上する、あるいはさせることが出来るが、名誉爵位はその必要が無いからな。却下される」

 

 ……ウワァ面倒臭ぇ~……こんなことなら貰うんじゃなかった。いや、貰わなかったら貰わなかったで其れまた面倒臭い事になったかな……あのクソトカゲほんっとうに碌なモン残さないな。 

 

「それらを黙らせるためのこの提案だ。『個人的な依頼』と銘打っているものの依頼人は私、そして受ける人間は卿。実質的にはヨルアク、ひいてはナッパロー王国の危機に対し卿が解決する。これならば卿に対する不満の声をある程度抑えることができる」

 

 まあ、それでも出てくる不満は出てくる上に、卿に頼む案件が来る事など早々無いのだが。

 

 じゃあ意味ないじゃん。そもそもギルドを通して受ければ済む話じゃん。

 公爵の提案の詳細とその後の呟きに対する俺の突っ込みは間違ってないと思いたい。

 

「…それならばギルドに依頼を出せば」

 

「私が卿に依頼するという事実が重要なのだ。中には『知るべき人間にのみ伝える』情報を扱う依頼もあるかもしれない。ギルドを通さずに卿に直接伝えることで情報漏洩を防ぐこともできるという事だ。安心してくれ、君に依頼以上の面倒を背負わすことは極力しない。無論依頼に際し必要な援助も行う」

 

 ええー? ほんとにござるかぁ?

 と、巫山戯けるのもここまでにして、ちょっと真面目に考えてみようか。

 

 まず、貴族からの妨害で仕事が邪魔される。そうなると俺は勿論、ジェナ達も被害を被る。と言うかジェナ達の方が困る。

 あ、受けない選択肢消えたわ。パーティーメンバーに迷惑が掛かるわ。本当は離れた方がいいかもしれないけど、その後でも『元』パーティーメンバーっていう価値ができるからどの道受けなきゃ駄目だわ。

 

 はい、熟考しゅーりょー(時間にして15秒)

 

「……不肖ジョー・バーアライド、カーランド公爵の提案を…」

 

 ヤッベ、なんて言えばいいんだ? 受けようだと軽いし拝命だと重いよな…… 

 

「はっはっは! 卿は相変わらず面白いな!! 良い良い、引き受けることが分かった故それ以上言わなくても良い」

 

 スンマセン。次回までにはちゃんと勉強しておきます……

 

 

 

 

 

 

 ナッパロー王国公爵家当主、エルフォンス・ラ・カーランド。

 実直、豪快、気さくでおおらか。女だてらに首都ヨルアクを任される公爵家の当主に相応しく、その辣腕は文武問わず振るわれる超人。

 男の様なパンツスタイルを好み、上品ではあれども貞淑さを好まない。

 ジョー・バーアライドが彼女に対して抱く人物像はこの通りであろう。それは多くの貴族も同じように抱いている。

 

「お嬢様もお人が悪い」

 

「何のことだ?」

 

 筆頭使用人であるマクスウェルの言葉が、執務室の窓越しにジョーを見送る彼女の耳を打つ。惚ける様に返すとジョーに伝えていない本当の目的を口にした。

 

「彼の『三辰の巫女』の末裔たる彼女は俗世を嫌い、他の黒級冒険者は例外を除き制御不能。故に例外たる彼をご自身の派閥に取り込み、且つ国家の切り札の一つにすることが主たる目的でありましょう?」

 

「幼いころから世話を焼かれるというのも考え物だな。爺」

 

 彼女はマクスウェルの方を向き、悪戯が発覚した悪童のように肩を竦める。

 大半の貴族が抱いている人物像は確かに正しい。しかしそれはあくまでも一面でしかない。

 斯様な性格で務まる程、貴族は明るくない。彼女もまた、貴族と言う『生き物』に相応しいものを腹に秘めている。

 

「かの厄災から復興して数百年。かつてと比べると物足りないものの栄華を取り戻している」

 

 しかし、と飾られている地図。その一部を冷徹な目で眺める。

 

「それではやはり足りぬ。嗚呼、足りぬのだ。どさくさに紛れ裏切り、王から賜った領土を奪い僭主した盗人連中を叩き伏し、再度取り戻さぬことには真の栄華とは言い難い」

 

 身を焼くほどの激情を、しかし永久氷河の如き冷徹さを以て押し隠している彼女を前に、マクスウェルはなおも冷静に尋ねる。

 

「しかし…あの方一人で切り札となり得ましょうか?」

 

「無理だな」

 

 それまでの激情諸共一瞬、一言で切り捨てた。

 

「いくらバーアライド卿がドラゴンを討滅した傑物であろうと、相手は国家だ。一騎当千、いや万夫不当の実力であっても国を崩すには至らぬだろう」

 

「ならば何故?」

 

「切り札はいくらあっても問題は無い。それに私が取り込むのは彼だけではない。知っているだろう?」

 

「『彼女達』ですか?」

 

 ジョーの所属するパーティーのメンバー。定期的に上がる報告から詳細に知っているマクスウェルだが、彼女達がソレに値するのかと疑問を抱く。

 

「バーアライド卿をパーティーに誘い、尚且つランク外モンスターとの戦闘も無事に乗り切った。いくら彼が超人とはいえ、()()()()()()()()撤退できるとは思えない。コレばかりは私の勘でしかないが、彼女達も切り札たり得ると思っているよ」

 

 既に視界から消えたジョーの姿を、想定している未来の中で思い浮かべる。

 敵対派閥の貴族からのアプローチを阻止し、自派閥に取り込めた。行く行くは寄子の娘と引き合わせ――いや、卿の性格からしていきなり引き合わせても委縮するだろう。最初はプライベートなパーティーで慣れさせて徐々に大きなパーティーに参加してもらい、貴族社会に慣れたタイミングで引き合わせるか。パーティーメンバーも何れ我が私兵団に―――

 

「お嬢様。何を考えておられるのかわかりませぬが、いくら彼が好みの異性だからと関係を持つなどと考えませぬように」

 

「分かっている、爺。彼をどう貴族として育てるか考えていただけだ。今はまだ考えていない」

 

「『今は』ですか……」

 

「そうだ。万が一私の想定を超えてそうだな……男爵を賜った時は一考するかも知れないが。その時は寄子として私の傘下に入れてから対外的にアピールを……」

 

 不穏な一言に反応して聞き返した事をマクスウェルは酷く後悔した。

 

 エルフォンス・ラ・カーランド。世間では行き遅れとされる、ジョーと同じ年齢の彼女。

 武芸に優れた叔父の影響か肉体美をこよなく愛し、気に入った者をそれとなく誘導し、教え導くことを趣味とする変わり者(変態)

 時たまジョーを誘うのは、貴族同士の腹芸と多忙な執務で疲弊した精神を癒すことと、何よりもそうした『好み』と『趣味』と『実益』を兼ねた『バーアライド士爵育成計画』の為でもあった。




色々解説

・エルフォンス・ラ・カーランド……ざっくり言えば筋肉フェチで目を付けた人材を育てて成長する様に快感を覚える。なお予想を超えて成長すればスタンディングオベーションする。色々兼ね備えてジョーと『触れ合い』している。ジョー程ではないが身長は高い方。

 闊達に見えて腹芸もできるし後ろ暗いこともできる高身長美女。私の好きな性癖です。

・マクスウェル…片眼鏡をしたナイスな御老人。幼いころからエルフォンスの面倒を見てきて考えている事がよくわかる。不本意なことに性癖も把握しているのでジョーを招き入れているエルフォンスの考えを一発目で見抜いた。尚マクスウェル本人も若かりし頃はナイスマッスルだったのでこいつも性癖を歪めた原因の一人。と言うか元凶。
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