勇者属性を持つ新人のパーティーに入ったら国家の危機が目白押し。パーティーが活躍している裏で動かなきゃ国が詰む   作:マツバキクノスケ

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 感想でテンプレート=飯屋の看板と言うのを見まして、しっくりきました。
 確かに飯に意外性を求める客は少ないですし、素人が下手にアレンジしてゲテモノを作れば誰も寄り付かない。
 料理の大筋に沿いつつアレンジを加えることで『差別化』することができるんだなあと納得しました。今更ながら。


*説明不足の所があったため加筆いたしました。


二重の暗躍、二つの発見

 ナッパロー王国は、嘗ての悲劇が起きる前は大陸の凡そ3分の1にも及ぶ広大な領地を持った王国であった。

 しかし、悲劇を乗り越え再建を図る最中、隣り合う5つの領地を統括していた各領主の半ば強引な独立により、大陸の4分の1にまでその領土は規模を縮小されてしまった。

 半ば略奪の形で独立を果たした領主たちは領主達で連合を組み、一つの名を宣言した。

 

 ーーーー連合統治国家アムーレリア。領主共同により統治をおこなうその国家は、現在に至るまでナッパロー王国との交流を絶っている。国土には各領地に跨がる広大な鉱脈を包含しており、膨大な鉄鉱資源を莫大な富に変えナッパロー王国から離れた後でも栄えていた。

 しかしそれも過去の話。猪も七代過ぎれば豚になり、虎を描きて犬に類す。それは独立を目論んだ当主たちの誤算。利益のみを追求し他を顧みなかった結果。

 

 マトモに教育を受ける事の出来なかった能無き者が偉大なる先達を真似しようとも結果は伴わず、怠惰なものは顧みることもせず贅の限りを尽くし只々食い潰した。

 市井は無意味な政策により疲弊しきり、施設もその維持に回る資金が皆無である故に老朽化著しく、騙し騙しの補修は遂に限界を迎える。

 そのような場所にまともな商人が寄り付く訳も無く、次第に税収も減少し、領主たちは豪勢な暮らしを維持するため手段を択ばなくなり、遂には怪しげな取引に手を出し始める。

 加速度的に治安が悪化し、貧富の差が激しくなるのは当然の帰結であった。

 

 その荒廃しつつある街並みを見下ろすかの如く、一際高い位置にある屋敷の中。アムーレリアを統括する三家の一つ、デレッソ家当主レアーノ・ラ・デレッソは腐り落ちつつある街並みを眺めながら苛立ちを吐き打てるように鼻を鳴らす。

 もうすぐ約束の時間になるというのに一向に現れない契約者を思えば、無理もない行動であった。

 

『このような場を設けて頂いたこと、誠にありがとうございます』

 

 先代、つまり父の時から既にこの国の陰りは濃くなっていた。

 それでも道の窪みに溜まった水の様に僅かに残った鉄を細々と売り、祖先の残した遺産を使い、使用人を減らし、貴族たる暮らしを守ろうと奮起していた。

 そんな時にやってきたのが彼等であった。彼らの求めるものは我々にとっても都合が良かった。

 

『我々にこの国の管理を任せて頂きたい』

 

 彼らの背後に聳える物品、宝石、そして黄金の山。そして―――共通保障印が記されている金貨の山。

 アーマリア家、ニレアム家、そして我が父は断固として拒んだ。どことも知れぬ余所者にこの国を任せられるものかと。貴族としての責務を放棄するのかと。

 

――――何とも莫迦らしい。

 

 所詮、我々は利益のみを追求した結果の同盟でしかなく、独立したのも利益を5家で独占する為だ。そこに貴族の責務など関係あるものか。

 この2家が何れ取引の邪魔になる以上、排除しない選択肢は排除された。

 前向きなサルッソ家およびジャーミー家と結託し、父を当主の座から『降ろし』、残りの障害を取り除いた。

 その際の残った財産は未だ『話し合い』の途中だが…まあ、良い。近く連中も排除し全ての富を手に入れれば済む話だ。

 

「レアーノ様。先方がお見えです」

 

 使用人の一人が部屋に入ってきた。

 漸くかと振り返り使用人に視線をやる。彼女も、この屋敷で雇っている全ての使用人も全て彼等との取引の一つだ。

 上から下まで眺める。飽きる事のない良い身体つきに昨晩の情事を思い出し、下腹部の欲求が鎌首を擡げる。しかし取引相手が来ていることを思い出し、何とか沈めて応接間に向かう。

 

「ああ、デレッソ卿! 遅れてしまい申し訳ありません。何分想定外の事が起こりまして、そちらの対応に手を取られていたもので……」

 

 大仰な男の謝罪が入って早々に聞こえた。痩せこけた体と道化師染みた哀れなその仕草にレアーノの怒りは大分薄まった。自分とは違う、この男の汗水を垂らし、想定外なことに時間を取られ謝罪せねばならない立ち位置に、哀れみと優越を見出して。

 

「構わないとも。それで、例の計画の進捗は?」

 

「ええ、ええ! それはもう順調且つ確実に! 貴方様がこの地、全ての富をその手中に収める日に近づいておりますとも!」

 

 その言葉を聞いて男は満足気に頷いた。

 この国に己が王として君臨し、彼らに統治を任せる。一切管理に関わらず、叶わぬ欲の無い生活を送るだけ。なんと素晴らしい事か。

 

「ならば良い。その時まで統治に励むように」

 

「ええ。委細承知しておりますとも。全ては計画の為に」

 

 王を気取る愚か者と其れを持ち上げる道化。愚か者は道化の思惑に気付くことなく、道化の暗躍は国を超えて蠢動する。

 

 

 

「結構変わっているな、此処」

 

 都市ヨルアクから徒歩で凡そ半日。現在は封鎖された、駆け出し冒険者が基本を学ぶ為に利用される森林区域。

 王立生物研究部門に所属するアレンス研究員は報告書に記載された通りの状況――雨風に晒され多少は変わってはいるが――を更に細かく観察しながら、独り言つ。

 

「何かわかったかい? アレンス研究員」

 

 ジャック・ジョウン・ジュノーはそれを聞き逃さずに尋ねる。

 住居らしき建築物から這い出たアレンスは土を払いながら立ち上がり、彼の疑問に答える。

 

「まず、報告書の記載によれば此処を含め、正確には7つ集落跡が存在している」

 

「報告書の通りだな。それの何処に変わった所が?」

 

「おかしいんだよ」

 

「おかしい?」

 

「その規模の王国なのに、これ程の建造物ができることはおかしい。技術が明らかに飛躍している」

 

 アレンスはさっきまでいた建築物を指差した。ジャックは彼の話を聞き、改めて見て初めて気が付いた。

 半年だ。冬の時期を含め半年も時を経過し、更にはその間手入れもされていない。普通なら雪の重み、溶けた水の浸食によって酷い状態になるのが当然だ。

 だというのにその建築物、いや殆どの建築物に損傷はあまり見られない。その簡素な見た目の中に、確かに技術が存在している。

 

「本来これ程の建築技術は、巨大な王国―――3,4年前の討伐時よりも更に巨大な規模でみられるものだ。これは実に恐ろしい事実だ。時間が経った今王国はどれほどに成長しているのか」

 

 両腕を抱き、しきりに上下に擦るアレンスは今度はジャックに尋ねる。

 

「それで? 私と話す時間があるのだからキミも何か見つけたんじゃないかね、ジュノー研究員?」

 

「勿論だとも。装置を起動して直ぐに明らかな違いが見つかったさ。多分、最初の調査隊でも機材があれば見つけられたんじゃないかな?」

 

 アレンスにジャックが装置を見せる。生憎アレンスには魔力流学はさっぱりな為、それが何を示しているのか初見で理解できる筈も無い。

 

「…まあ、最初はゴブリンキングがいるかどうかの調査であって、魔力云々の調査は必要なかった。だからソッチ方面の機材を持っていなかったのだろうな」

 

 それで? と続きを促す。

 

「普通なら半年と言わずに1時間もすれば使用された後の魔力は魔力流脈周辺を除いて流れを失い通常の漂った状態に戻る。だというのに、此処の魔力は一定の方向に流れ続けている。わかるかい? 起動した状態の魔法陣か、或いは魔法があるんだ。この流れの先に」

 

 それを聞いたアレンスは頭の中で情報を整理する。

 起動したままの魔法による某、報告書にある途絶えた足跡、規模に比例しない技術。

 

「…ゴブリンが魔法を使うケースはあると思うか?」

 

「ゴブリンがかい? 今まで聞いたことは無いけど、それを聞くってことは君はゴブリンが魔法を使っていると考えているのかな?」

 

「……いや、そんなことはありえない。と、一言で切って捨てることが難しい。今回は常識外の事が多い。ありえない何てことはそれこそありえない」

 

 現状、この場での証拠は殆ど最初の段階で調べ尽くしている。他の集落跡も見てみないことには言えない。

 

「取り敢えず、拠点に戻り他の調査団の報告を聞いてみないことには、な。他の集落で違いが見つかる。なんてこともあるかもしれん。今この場で結論を出すのは早計だ。その魔力の流れの先に何があるのか、それを確認することもな」

 

 だからそれ以上先に行くんじゃない。

 興奮気味に先に進もうとするジャックの襟を引っ掴み、引きずりながらアレンスは護衛と共に拠点へ帰還するのだった。




色々解説

共通保障通貨……加盟国で流通させることのできる通貨。現在ではナッパロー王国のある大陸の殆どで流通している。その規格は厳しく定められ、管理・製造所はパワーバランスが偏らないように加盟国に数か所存在している。その流れは硬貨に緻密に刻まれた魔法陣で追跡され、製造所以外の通貨の製造・及び正規の通貨の改造は重罪になる。

魔力流学………魔力の流れを調査する学問。物質、魔法行使時等の流れを見ることでより効率の良い魔法陣の開発などに貢献している。行使されて時間も経っていない場合なら属性も探知できる。

魔力流脈………魔力が流れるぶっといパイプ。魔法を行使すると暴走して事故が誘発されやすく、魔道具も誤作動を起こす。あまりの魔力量に一般人でさえ体調を崩しやすくなるが、魔力調整の上級訓練として赴く者もいる。或いは魔力を取り込んで許容量を鍛えることも行われるが、調整を誤ると体内で魔力の暴発を起こし、魔法を使えなくなる他最悪の場合死に至る。

・レアーノ・ラ・デレッソ……判り易い阿呆。貴族の責任を放棄しているくせに貴族の暮らしを望んでいる。それ以外の生き方を知らないからね。しょうがないね。


 みんなも都合のいい取引には気を付けよう!!!(例のBGM)
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