勇者属性を持つ新人のパーティーに入ったら国家の危機が目白押し。パーティーが活躍している裏で動かなきゃ国が詰む   作:マツバキクノスケ

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 やる気が出たので勢いで書いて勢いで投稿です。
 別視点の話しで申し訳ありませんが、ストーリーを進める以上必要な事なので……ホントウニモウシワケナイ(某AI)


近づく終わり、継承の果て

 ギィギィ、ギャッギャッ。

 

 薄暗く広大な洞窟の中を多くの雑音が満たす。

 その多くは聞くに堪えない金切り声で、常人ならば嫌悪感で耳を塞ぎたくなるほどだ。

 

 しかし、それを遥か高い崖上から眺める男にとっては、たまらなく愛おしいものに聞こえる。

 浅黒い肌、小柄な体躯に比べてやや大きな顔についた鷲鼻、そして尖った耳。

 男の眼前で蠢いている声の正体。凡そ一般的に不快・不潔の象徴とされるゴブリン。それが何十、何百万と群れを成し、思い思いの行動をしているのだ。

 

「戻りました」

 

 男の背後から気配がする。振り返るとそこには痩せこけた風貌の男が居た。

 深い洞窟を抜け、此処まで来たというのにその顔に汗は一つも浮かんでおらず、更にはその纏っている布にすら土くれの一つもついていない。

 

「首尾は?」

 

「万事恙無く。この国を我々の手中に収める―――」

 

「我々。ではない」

 

 言葉を遮る。そこには若干の苛立ちを含めた力強さが籠っている。

 

「私と、彼らのだ」

 

 そして、その力強さのままに宣言する。狂気に染まったその眼は訂正を求める様に痩躯の男を睨みつける。

 それを受けてなお、痩躯の男はいたって冷静に、両手を上げながら要求を飲んだ。

 

「大変失礼いたしました。貴方方の。でしたね」

 

 満足そうに男は頷いた。拍子でフードが外れ、その顔立ちが露になった。

 絹糸の様な白髪、端正な顔立ちにゴブリンと同じような長い耳。悠久の時を生き、森と共に生きる長耳亜人の姿がそこにあった。

 

「しかし、貴方も物好きですねぇ。貴方方の種族は殊更ゴブリンなんて嫌悪するでしょうに」

 

「奴らは可能性を理解していなかった。彼等ゴブリンに秘められた可能性を」

 

 背後で活動を続けるゴブリンを見やるその眼には先ほどの狂気は消え、優しさが宿っている。

 やはり変わっている。痩躯の男はそう呟きながら同じようにゴブリンを見るが、その眼には群れる害虫を見るような嫌悪が隠しきれていなかった。

 長耳亜人の男はそれを察してはいたが特段怒りは抱かない。所詮短命の者に理解できる範疇ではないと理解していたからだ。

 

「して、研究はどの段階まで進んでいるのですか?」

 

「いつでも事を起こせる」

 

「成程。では、時が来たら合図いたしますので。その時は…宜しくお願い致しますね」

 

「嗚呼。再度あの魔法陣に配置すればよいのだろう? 万が一にも発見されることは無いだろうな」

 

 事前検証と危機の伝達を兼ね、一度利用したあの魔法陣。満足の行く結果を得られたのは僥倖だった。危機は生物の進化を進める要因だという仮定の正しさを、結果を以て証明してくれた。

 

「ええ、ご安心を。ただ前回より多くポイントが配置されていますので、より多くの数を用意して頂けるとありがたいです」

 

「それは貴様の計画の進み具合によるな。上手く事が運べば最適な住処が用意できるからな」

 

 では、失礼します。

 痩躯の男はその言葉を残して姿を消した。

 長耳亜人の男は再度ゴブリン達を眺めながら己の過去を思い起こした。あの惨劇の日、嘗てのルクレベの悲劇を目の当たりにしたあの日から。

 

 男は嘗てルクレベと交易をおこなっていた集落で暮らしていた。

 その時から研究は行っていはいたものの、今とは比べるまでも無く、どうしようもない、今でも無駄な時間を過ごしたと後悔するほどの、下らない研究。いや、研究ごっこ。とでもいうべきだろうか。

 その日も研究ごっこの資料を集めるべく、ルクレベ郊外の丘まで赴いていた。

 突如響く咆哮、現れた太陽。此処からでも聞こえる――悲鳴、怒号。

 呆然となった。短命の者が世代を掛けて築き上げた栄華が、一刻もしない内に崩れ去った。

 命からがら逃げかえり、時間を掛けて冷静さを取り戻し、そして後に残った虚しさに気が付いた。

 

 それこそとっかかりだった。生涯の目標となった命題のその始まり。

 なぜ生命は栄え、命を繋ぎ、次代へ継承を続けるのだろうか。本能に刻まれているのだろうか。種族の進化と文化の継承の果てに何があるのか。滅亡か、或いは際限のない進化か。一度抱けばそれのみが脳を支配し、遂には答えを求めたいという衝動は身体を突き動かした。

 

 まず男が最初に求めたのは仲間である。これは直ぐに数が揃った。

 時間だけはある同胞に声を掛ければ、興味に目が無い者はすぐさま食いついた。数人から始まったその計画は規模がやや広がり十数人程の規模となり、男の研究の準備をスムーズに推し進めていった。

 

 次に求めたのはその対象である。即ち、どの種族を研究の対象にするのか。である。

 人間では駄目だ。高すぎる知性と自我故に実験が破綻するのは目に見えた。世代のサイクルもそこそこ長く、いくら長命種であろうと結果を見る前に命が尽きる。それでは本末転倒だ。そもそも、それほどの規模を集められるだけの場所が用意できない。

 人間よりも小柄、最低限の社会性を保つ知能を持ち、命のサイクルが短くそして変化を容易に引き起こす種族。

 考えに耽る男の前にゴブリンが現れた時、運命だと感じた。神が自分に答えに至る鍵を与えて下さったのだと。

 興奮冷めやらぬうちに仲間に伝えた。その誰もが彼の考えを拒絶し、結局一人また一人と男の元を去った。

 計画は練られた。鍵は見つかった。後は実行に移すだけ。それだけなのだ。だというのに、その鍵が差し込まれる扉は目の前で破壊された。

 男の胸中に渦巻いた激情は如何程の物だったか。男は今でも覚えている。寧ろそれすら研究への熱意にくべる薪になった。

 

 計画は一から練り直しになった。今度は一人で全てを動かさなければならない。

 止めようとする裏切り者共から逃れる様に、隠れ潜みながら考える彼の元に痩躯の男は現れた。

 

――取引致しませんか。

 

 静かに切り出した男を酷く警戒した。

 誰も知らぬはずの己の拠点に侵入し、あまつさえ仕掛けた筈の罠を傷一つ追うことなく切り抜け己の前に立つ。ただものではない男を警戒しない訳が無い。

 痩躯の男は警戒されていることを知りながらも、それに対して不快感を見せずに薄ら寒い笑みを浮かべながら再度取引を切り出した。

 

――私と組めば全てを提供いたします。その代わり、私の野望の為にその研究を利用させて頂きたく。

 

 ス、差し伸べられたその骨と皮だけの手。それは悪魔との取引にも思えた。

 だが、此処でこの手を振り払えば、一人で膨大な問題を抱えながら研究に挑むことになる。この手を取るのも選択肢の一つか。

 

――本当に全てが用意されるのだろうな。

 

 痩躯の男は笑みを深め頷く。取引は成立した。

 

 眼前の景色に目を向ける。

 ある集団は作物を育て、別の集団は武器を作っている。奥に見える観衆の前で二体のゴブリンがどちらかが命尽きるまで闘い、勝ったものは武器を支給され同じように武装された集団に加わる。恐らくは先史階級の選別試験だろう。

 そして質の良い装備に身を包んだゴブリンジェネラル2体に護衛される――ゴブリンキング。

 毛皮と骨で拵えられた玉座に座り、ひじ掛けの傍に鉄の剣を置き、自らの王国を睥睨するその様はまさしく一国の主。

 時折此方に視線を向けるものの、現段階ではそれ以上の行動は起こすことはなった。

 

 ふと、男は考える。あのゴブリンキングがこの王国に齎したものを。

 質が良くなりつつある武具にトラップの数々。生産性の向上した農場に明らかに段階を飛ばした建築物の数々、そして体系化され明確かつ厳格に作り上げた組織。

 ()()()()()()()()()()が考えもしなかった概念を短時間で発明した。知識の中に入っている同種の中でもそんなことを成し得た者はいない。

 この短期間で著しい発展を続けるこの王国が、広大で自由な空の元に拠点を移した時、どのような進歩を遂げるのだろうか。

 近い未来に始動する計画の後を思い、男はゴブリンの王国を後にした。




 名前が明かされていない以上混乱するかも知れません。やっぱり名前明かした方が良かったかな………
 因みに作中の疑問は私がちょっとした時間でたまーに考えていたことです。
 ユニバース25の様な完全な楽園なら緩やかに死に向かうなら、ある程度全滅しない危機と引き合わせた上ならどのような結末になるのかぁと、足りない頭でうすぼんやりと考えていましたね。
 他にも色々ショーも無い事を考えていますので、もしかしたら作中でも出すかもしれません。色々支離滅裂かもしれませんがお付き合いいただけるとありがたいです。

 何か気になる点、質問等ございましたら活動報告にお気軽に投入ください。あまり細かいところまで考えていないので、皆様方の質問がアイデアに繋がるかもしれませんので……

 今後もよろしくお願い致します。
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