勇者属性を持つ新人のパーティーに入ったら国家の危機が目白押し。パーティーが活躍している裏で動かなきゃ国が詰む 作:マツバキクノスケ
取り敢えず1章? 完結に向かいつつあります。
カクヨム、なろうの方でも徐々に反響が出つつあります。ありがとうございます。
目覚めは鈍痛という、最悪なものだった。
痛みに呻きながら目を開ければ、すっかり日が沈み夜の帳が降りた、破壊の後が残る街中に何故か『魔女っ娘』エリーの姿があった。
「おっはよ―! ね・ぼ・す・け・さん☆ いや~たまたま通りがかったらピンチな君を見かけたから助けに来ちゃった☆」
……まあ、黒級冒険者はどっかをふらふらしていることが多いからなぁ。たまの生存報告以外でギルドに居る事なんてまずない。
と、言うかそうだ、ヨルアクの方…ジェナ達はどうなった?
「おっと、目が覚めたばかりなのに急に動いちゃ駄目だよぉ! 頭のタンコブが治るまで此処は安静にね☆」
いや、たんこぶは多分アンタのせい……いや、そんなこと言っている場合じゃない!
「ゴブリン共を……」
「もう
「ならジェナ達の様子を……」
「っもーう! 強情さんだなぁ! そういう子にはおねぇさんが――
メッ!」
「ッ!?」
一瞬で身動きが取れなくなった俺に彼女は頬を膨らませながら怒る。
「ほらー! 普段の君なら
―それに。と彼女は続けて口を開く。
「君は
「…っ!」
一瞬、雰囲気が変わった。
普段纏っている明るい表情じゃない、何処か遠くを見つめているような、何かを待ち望んでいる人の目。その視線にさらされて、俺は冷や水を掛けられたように思考が止まった。
「あとは他の冒険者もいるし、カーラちゃんもあの状況で何もしない程おまぬけさんじゃ無いと思うなぁ。でしょ?」
どこまでも穏やかで、こっちを試しているかのようなその眼に逸りかけた俺の気持ちは落ち着きを取り戻した。
「……そう、ですね」
「君は一人で何でも背負い込みがちだよ。たまには誰かを信用することも大事だと、おねぇさん思うな☆」
いつの間にか、普段通りのテンションに戻った彼女の説得に俺は納得して身体の力を抜いた。
エルフォンス公爵にも言われたっけな。
――卿は自分で抱え込むきらいがある。
相談、信用、ねぇ。
前世でそんな人間いたかな。
地面に背中を預け、空を見上げる。やりがいも無く、目的も無く、ただ生きる為の手段として淡々とこなしていた頃とも変わらない、星が夜空を彩る光景がそこにあった。
気の合う人間など居ない、一企業の歯車として動く代わり映えのしない日々。それに比べれば、今はずっとマシだ。
それでもこの性分が変わることは無かった。そんな状況を打破しようと我武者羅に依頼をこなしてきた。その最果てがあのクソトカゲとの死闘だ。功績が増えれば、人は寄ってくるかもしれない。声を掛けてくれる人間が来るかもしれない。
だが結局のところ、それで現状を打破できたかと思えば、寧ろ余計に人は遠ざかった。
努力の方向性が違うのは判り切っている。かといって、今まで行動できなかったことをいきなりやったとして、それが失敗しない保証がどこにある? それだったら、いつも通り仕事して、成績を残して、そうして周囲からの注目を集めた方が、まだ可能性がある。
けど…それはこの身体、この体質のおかげで手に入ったようなものだ。運が良かったからできたことだ。
偶然の一致で手に入れたもので望んだものを手に入れたとして、それに何の意味がある?
「あぁーっ! まーた変なこと考えてる―!!」
倒れ込んだ俺の顔を覗き込んだ彼女がまた頬を膨らませる。そんなに判り易いですか…?
「伊達におねぇさんは長生きしてないのです! と・く・に、君の場合はおねぇさんじゃなくても判る人は判ると思うナ☆」
そうですか……
「兎に角、難しく考えすぎない事! 世の中君が思うほどに難しい事なんてそうそうないんだから」
「……そう、でしょうか」
応える声はない。
代わりによっこいしょと隣で寝転ぶ気配を感じた。
そちらを見れば、案の定仰向けになっている彼女の姿。
「君が何を背負っているのか、それは全部明かさなくてもいい。打ち明けられるものが何か、打ち明けるべき人間が誰か判らなかったら、せめて私が聞いてあげる」
「……何故そこまで」
「約束だからね」
食い気味に答えるエリーさんの顔は良く見えない。その穏やかな声だけが静かに耳に入ってくる。
遠くから聞こえる風鳴りの音が心地よい。
ふと、腕を上げる。何の抵抗も無く空に向かった。
もしやと思い、体を起こすとかかっていた重みは確かに感じるものの、問題なく動かすことができる。
「あっ! 凄い。もう回復したんだね☆」
「……昔から身体の治りは早い方なので」
横に寝ていた彼女も立ち上がってステッキをこっちに振ると体にかかっていた重力が消えた。
よし、じゃあ、戻るか。
「……お気遣いありがとうございます。では、これで失礼します」
「えっと、失礼しますって、まさか歩きで帰るつもりかな☆?」
「はい」
クソトカゲ討伐の時も似たような感じだし、あの時よりもだいぶましな状況だからいけるだろ。
そう伝えると彼女から『コイツ正気かよ』みたいな顔をされた。甚だ遺憾である。
アムーレリアとナッパロー王国、その間には標高の低い山々が立ちはだかり、5か所点在する切れ目にアムーレリア側が立てた中規模の要塞が点在している。
これらはまだ旧首都が襲撃される前より建設されていた物であり、当時の国王もその動向を注視していたのだが、件の襲撃によってそれどころではなくなってしまった。
兼ねてより独立を目論んでいた領主達は首都再興の最中に建設に力を入れ、当時まだ潤沢にあった資源を使っているだけあってかその頑強さは折り紙付きであり、現在に至るまで国境を取り戻すナッパロー王国の足はその手前で止められている。
「魔術班! 転移陣の起動準備は終えているか!」
「滞りなく」
「何だっていきなり…」
「私語を慎めッ!! 今がどういう状況下にあるのか判っているのか!」
その足止めされた地点に建設された巨大な要塞施設。
この日、要塞は蜂の巣を突いたかのような慌ただしさに包まれていた。
『アムーレリアで不審な動き有』
首都に潜伏していたエルフォンス公爵の諜報員から、暗号化された一通の魔導通信文と共に送信されたその一文。
暗号化された文章はエルフォンス公爵の元へ送信され、要塞で駐在している兵士たちに向けられた文章には攻め込まれる可能性を視野に入れ防衛を強化せよという提言。
これにより、普段は鍛錬の声が大きく響き、それ以外は巡回・監視・報告以外に任務が無く、数百年もの間攻め込むことも攻め込まれることも無いために緩慢な緊張状態を維持していた要塞は、その緊張状態を数週間前から強めていた。
その緊張が更に破られたのはつい先ほどの事である。
正午の鐘が鳴る1刻前、ヨルアクから送られた通信文。それが静かな緊張を破った。
『アムーレリアより侵略行為を確認。増援をそちらに送る。受け入れ次第越境しアムーレリア首都へ侵攻する』
これには担当部署一同が困惑した。ここ数種間の間、そんな行動を確認していないためである。
かつてアムーレリアがナッパロー王国の領土だった時代より、街道は5か所の要塞から伸びている。
仮に一番遠い街道から攻め入ったとして、そこはルクレベに近い山脈が立ちはだかる為、一度ルクレベを通るか或いはこの要塞を通る必要がある。
更にルクレベからヨルアクへ最短距離で繋がる山脈を超える街道には、《とある理由》から監視として建てられている塔が2基。
この監視塔はその特殊な役割から高度な通信設備と監視性能を備えている為、ルクレベに異変があった場合即座に情報が首都へ送られる。
つまり、ヨルアクを侵略する規模の軍事行動はどの街道を通ろうとも見落とす可能性は低いのだ。
念のために巡回と監視記録を辿っても、やはり不審な点は見られない。
となれば考えられる手は転移魔法陣を使った強襲であろうが、それだけの規模を転送できる魔法陣を展開するにも時間と資源は必要になる。
いくら考えども、現地に居ない彼らに答えが出る訳も無く、結局これ以上の憶測は意味を無意味であり首都からの来客を受け入れるしかないのだ。
要塞の統括を担っている大佐はやってきた公爵家私兵隊を受け入れると、その指揮官と挨拶を交わす
「このような僻地へようこそ。こんな時でなければおもてなしできたのですが」
「ああ、気持ちはありがたく受け取っておこう。首都の防衛もひと段落した故まだ部隊は送られてくる。彼らが到着次第、都市部への進行を開始する手はずだ」
「一日も経たずに!? となれば規模はさほど大きくはなかったのですか」
「いや…その辺りは少々込み入った事情があってだな…その辺りを含め後詰めが来るまでの間に共有して置こう。公爵様からは協力する様に申し付けられているのでな」
公爵家の諜報員からの報告と言い、この件はどうやら複雑な事情があるようだ。
面倒なことになりそうな予感を抱きつつ、指揮官と情報の交換を行うのであった。
大まかな地図を作ったんですが上げた方がよろしいですかね?
本当にざっくりしすぎている+縮尺があっていないのでイメージ程度にしかなりませんが…。