勇者属性を持つ新人のパーティーに入ったら国家の危機が目白押し。パーティーが活躍している裏で動かなきゃ国が詰む   作:マツバキクノスケ

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 コレを書かずにはいられなかった。最新話を書きつつも寄り道していたものです。


外伝弐:微睡みながら望みを抱いて

 ――しくじったか。

 それは深い底で思案する。

 

 此度の宿主は思ったよりも手こずっている。数日前に漸く表層に姿を現すことができた。あの小娘が居なければ身体を乗っ取り再び現世に顕現することができたものを。

 惜しい。実に惜しい。

 全てはあの日、宿主によって斃された時から宿主との因縁が始まった。

 

 都合の良い『巣』を見繕い、不快な虫けらを駆除し、心地の良い眠りを貪っていた。

 時折侵入する不届き者も、息を吹きかけるだけで容易く駆逐できる。何の障害もない毎日。

 

 それが崩れたのは数年前。

 いつものように虫けら―――宿主が現れた時だった。

 妙な気配を感じながらも、気まぐれに弄んではいたのだ。

 爪で小突き、尻尾で打ち据え、それなりに頑丈故になかなか愉しめたことを覚えている。

 

 暫くして飽いたのでいつも通り息を吹きかけて駆除し、再び塒へ――虫けらどもが造った物の中で特に気に入っている『シロ』と呼んでいたあの場所へ戻ろうとした時だ。

 一瞬――ほんの一瞬だが、気配を感じた。

 振り返ってみればどういう理屈か、所々を焼かれながらも我が胸郭にその剣を叩き付けんと振りかざしていた。

 反応するには時遅く剣は力強く胸に叩き付けられ、虫けらどもの持つ小枝にも劣る棒きれでは傷一つ付けられなかった鱗を易々と突破し心の臓を破壊された。

 

 油断――いや、たかが虫けら一匹に怯える龍がこの世の何処に居ようか。これは己の油断が招いたことではない。

 己をいかなる手段であれ、打ち倒したこの()が上手だった。それだけだ。それだけは認めよう。

 しかし―それとこの恨みは別の物である。

 矮小なる者の分際でこの身を傷つけ、あまつさえ命を奪わんとした。その代償はその身で払って貰う。

 

 

 ――嘗て己を倒したあの『キシ』の様に。

 

 

 我が怒りと恨みを込めた末期の息吹に魂を注ぎ、それを男に吹きかけることで自身の魂を寄生させる。残りは男の魂を喰らいながら身体を作り変えるだけ―――の筈だった。

 誤算があるとするならば、魂の質が異なっていることと――この男の身体が異様に抵抗すること。そのせいか、中途半端に呪いが発現し男に都合が良いように働きかけていた事。

 それでも勝機はある。宿主の纏っている我が一部。自身の物を操れない道理はない。

 呪いが表に出ている間と言う制限があるのが甚だ遺憾ではあるが……。

 

 それ故にあの瞬間程待ちわびた一時は無かった。

 あの緑の小虫共が投げた妙な物体から出た爆炎で宿主の意識が混濁した瞬間を見計らって身体を奪うことに成功した。

 意識さえ奪えば肉体など如何様にもできる。嘗ての姿に戻るまで時間は掛かるだろうがソレだけ。そう、それだけの筈であった。

 あの小娘――いけ好かぬ長耳亜人の小娘さえいなければ。

 中立者を気取っていたあの耳長虫共の中でも、特に気に喰わぬ。

 久方ぶりの外を堪能していた所に突然現れ、意味の分からぬことを呟いていたかと思えば気が付けば地面に押さえつけられ、自身は再び奥底へ封印された。

 あまりにも呆気なく訪れた終焉に怒りを沸き立たせた。たかが虫けらの身体を奪えず、漸く訪れたと思いきやいけ好かぬ長耳虫によってまた封じ込められる。これが怒りを抱かずにはいられようか。

 しかし、いくら怒り狂ったところで何かが解決するわけではない。それは煮えたぎる感情を鎮火させると再び微睡みの中に意識を沈めて待ち続ける。

 

 

 いつか再び好機が来る、その時を。

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