The Beginning of the Fighters   作:黒冠

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13.想波の集約

 

★ドンキーコング&ヨッシー&ピカチュウ&カービィ★

 

 巨大な石扉を目の前に、息を飲む四匹の脳内にも、聞いたことの無い少年の声が伝播する。真っ先に反応を示したのは、カービィだった。

 

「ねえ、今誰かの声がしたよ!!ドンキーでもヨッシーでもピカチュウでも無い、男の子の声が聞こなかった?」

「…ですよね!?僕も聞こえましたよ、カービィ。お二人はどうですか?」

「おうよ、俺もばっちり聞こえたぜ。故郷でも聞いたことねえ声だったな。」

「僕も聞こえたよ、皆。…もしかして、この声、‶他の仲間〟だったりして…?」

 

 全員が「聞こえた」との結果で一致し、幻聴の可能性は消失した。四匹は自ずと周囲へ注意を張り巡らせ、声の主の姿を探し出そうと試みる。しかし、不可解な点があることに誰もがすぐ勘付いた。真っ先にヨッシーがぼやき、自ずと相槌が重なる。

 

「…さっきの声。近くで聞こえているように感じたのに、傍で話しているのとは違う感じがしたような。まるで、脳内に直接声が響いているみたいで……。」

「ボクもそう思ったよ!頭の中に、声が。お~~いって。言ってるみたいだったよね!」

「もし本当にそうなら、もう少し耳を澄ませてみても良いかもしれねえぞ。まだ、俺たちに呼び掛けたばっかりだしな。」

「僕もドンキーの意意見に賛成かな。多分、僕たちの力が必要なんだと思うから。」

 

 脳裏に再び音声が接続される瞬間を、全員で待つ。きっと、声の主の通信は途絶えていない。神経を研ぎ澄ませば、デジタル媒体を横行するモノクロの砂嵐のような雑音を、感じ取ることが可能であるからだ。ピカチュウはヨッシーと目を見合わせ、静かに頷く。この様子なら、ヨッシーも同類の結論を出していることだろう。先程まで、このノイズは一切聞こえていなかった。このノイズの向こうに、声の主が居る。声の主は、多数の‶仲間〟に向かって、何かを伝えようとしている。分かっているのなら、今の自分たちに出来ることは、黙って耳を傾けることだ。

 

─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ───

 

★ファルコン&プリン★

 

「…!ネス君!ネス君なのか!!」

 

 幾度と対話を為した‶仲間〟の声は、記憶へと鮮明に焼き付いている。判別に掛かる時間は、ほんの刹那であった。初めは隣で不思議そうに首を傾げ、ファルコンの説明を待っていたプリンも、彼の分かりやすいリアクションから声の主に見当がついたのだろう。答え合わせをするように、問い掛ける。

 

「もしかして、ファルコンさんがさっき言っていた…。この世界に来る前に出会った‶仲間〟…ですか?」

「嗚呼、間違いない。この声は間違いなくネス君のものだ。…しかし、このタイミングでテレパシーを使うとは予想外だったな。」

 

 眉を寄せ、疑問丸出しの表情を浮かべるファルコンに、プリンも当然、疑問をぶつけずにはいられない。彼が険しい表情を浮かべる理由を確かめる為、あまり時間を置かない内に論点を擦り合わせていく。

 

「予想外……?つまり、ネスさんは定期的にこうやって話し掛けてくる人では無いってことなんですか?」

 

 ファルコンは束の間、思考を挟む素振りを見せるも、瞑目し、プリンの問に首を横へ振って応じた。しかし、言語で答えるには少々難しいのか、何処となく歯切れの悪い言葉の羅列で捕捉を始めた。

 

「いや、別に連絡をして来ないタイプとまでは行かないんだがね。……何て言えば、伝わるだろうか。前提条件として、我々は各エリアのチェックポイントを突破したら報告し合うという行動で統一していたんだ。前回の定期報告から推測するに、第二チェックポイントへ到達するには些か早過ぎる気がしていてね。…何か、トラブルに見舞われていなければ良いのだが。」

 

 …トラブル。

 その一言でプリンが真っ先に想起するのは、この世界に迷い込む以前の出来事だ。

 突如発生した暴風に攫われる形で光渦に呑まれ、「友達」と逸れ、気付けば見知らぬ地に放置されていた。これ以上の恐怖体験が存在するのかと、疑いたくもなるが、傍らにて聴覚を拡張する彼の‶仲間〟も、同類の困難に陥っていたなら。…考えただけで、恐ろしい。だが、逃げ出したい気持ちよりも、彼の仲間を助け出したい気持ちが遥かに勝っていた。もう、支えられてばかりの自分ではない。胸に片手を強く押し付け、はやる心音に言い聞かせる。

 

「きっと、大丈夫です。…それに、もし何かトラブルがあったとしても。私だって、助けになれるんですから!ファルコンさん一人で解決しようだなんて、思わないでくださいね。」

 

 膝を抱え蹲り、声を震わせ泣きじゃくっていた少女は、もう其処に居ない。

 ただ、「応えたい」一心のままに、双眸を煌めかせ、真っすぐ此方を見つめるその姿に、ファルコンは知らず知らずのうち安堵を覚えていた。心強い───その一言に尽きる。

 

 

 

 

 

ピ、ピピ、ピピピ…、ガガ……───。

 

 

 

 

 

 再び、ノイズが走った後、先程同様の少年の声が脳裏へ直接送り込まれる。

 

((__良かった…!どうやら、皆さんに届いているみたいで…。突然でごめんなさい。でも、あまり時間が無くて……!))

 

((そんなこと気にするなって!お前、困ってるんだろ?俺たちが力になってやるよ、なあマイリトルブラザー?))

 

((おい、兄さん…!サムスの話によれば、他にも聞いている奴が居るんだろう?静かにしろって。))

 

((あはは!何だか楽しそうな声がして来たね~?僕もワクワクして、何だかお腹空いて来ちゃった!))

 

((いや…、何で其処でお腹が空くんですか…。まったく、カービィは食いしん坊なんですから…。))

 

 少年の声の後に続く、兄弟の仲睦まじいやり取りに、子どもの声、少し落ち着いた声。これら全てが伝播していることから、ファルコンはテレパシーが成功している状況にあることを察知した。少年───ネスの声以外はどれも聞き覚えが無いにも関わらず、何故だか警戒心を抱くには至らないから不思議だ。返って、親近感さえ覚えてしまうような。隣のプリンを見やると、同感の様子で、朗らかなやり取りに笑みを浮かべて頷いていた。

 

((ふふ。皆さん、リアクションを有難うございます!声が届いているようなので、このまま続けますね…!えっと、今、僕は「洞窟のような場所」から皆さんに声を届けているんです…!))

 

 

 ネスの声に、プリンがはっと、顔を上げた。咄嗟に周囲を見渡し、やがてファルコンへ視線を返す。無論、ファルコンも黙って相槌を打つに至る。今、二人を取り囲む石造や建造物は、螺旋状を描くような構造の巨大な建物の前座として聳えるものばかりだからだ。石畳の小道を抜け、階段を通過すれば、建物内に侵入出来る状況にある。現状をネスに伝えるべく、ファルコンはそれまで閉ざしていた口を開いた。

 

((此方、キャプテン・ファルコン。恐らくだが、ネス君。我々は今、君が潜入している洞窟付近に居る。石造物が多く立ち並んでおり、外観は螺旋状、ピラミッドが如く上空へ向かって細長く伸びているように見受けられるよ。))

 

 ファルコンの伝達した情報が、ノイズ越しに不特定多数へ共有されてゆく。すると今度は、先程「マイリトルブラザー」等とおどけていた青年の声が連なった。

 

((此方、マリオ!今、弟のルイージ、それから新しい仲間のサムスと一緒に居るんだが、俺たちも石畳のエリアに差し掛かって来てるせ!ただ、ファルコンらしき人影は見えねぇから、方角が違うのかもしれん!))

 

 ───成程。「方角」の懸念もあったか。

 マリオの発言により、ファルコンはまた一つ着眼点を得る事になる。生憎、システムに阻まれてか、移動機は此処まで呼び寄せられない。その上、コンパスの持ち併せもない為に、正確な方角情報の伝達は不可能と見た。ただし、洞窟───巨大な建造物の存在を全員に周知出来たのだから、合流自体は可能だろう。僅かな望みに賭ける思いで、再び他者の発言を待機した。

 

((え~っと、こちら、カービィ!今四人で行動してま~す!えっとね、僕たちは今おっきい門の前に居るよ!門を開ける為には、鍵と何かもうひとつアイテムが必要みたい!鍵は敵を倒して見つけたんだけど、もう一個のアイテムが見つからなくて先に進めないんだ~…。))

 

 マリオに続いたのは、先程の子どもの声───カービィであった。元気はつらつな性分が滲み出る、明朗な声とは裏腹に、何やら難航している様子が窺える。すると、咄嗟にネスが声を重ねた。

 

((丸い、ビー玉みたいなアイテムが何処かに隠されているはず…!洞窟内に潜入する前に手に入れた情報が正しければ、だけど…。))

 

((ビー玉…?待て、それなら俺たちが持っている物、使えるかもしれない!道を示す、赤いビー玉…!))

 

 ネスの助言に、すぐさま反応を示したのは、マリオという名の青年に揶揄されていた、弟の方だろう。先程は揶揄に呆れ返っているような素振りを全面的に表していたものの、手持ちの情報に心当たりがあれば一転、活路を見いだしたかのように、自ら声を上げた。

 

((ルイージさん達も此処に…!?あ、いや。話は後ですね。とにかく、そのビー玉を持って僕たちの方まで来てください!!それから、ファルコンさんとやらも、念の為洞窟の正面玄関に回ってくれませんか。大きな、門の方へ!僕たち、其処で落ち合いましょう!!))

 

 落ち着いた声音でカービィを諭してた者が、全員に呼び掛ける。実に明晰な判断と、的確な指示に、洞窟の外で探索している面々は口々に賛同した。無論、ファルコンとプリンも異論はなく、高まる喧噪の色に馴染んでいく。

 

((どうやら、外に居る皆さんの指針はまとまったみたいで良かったです。実は、僕たち、内側から外に出ることが出来なくて…。皆さんといち早く合流するため、現在進行形で最下層を目指しているところなんです。ですから、皆さんから此方に来ていただけて、なおかつ洞窟の出入り口を掘り出してくれたら、本当に助かります!))

 

 少年の懇願にも同様に、反論を示す者は誰一人として居ない。皆、口々に、閉じ込められてもなお懸命に探索を続行している「仲間」を助けるべく、意思を固めていると、手に取るように伝わって来た。ファルコンもプリンも、終始、笑みを浮かべて対話に聞き入っていた。この、空間。時間。今はまだ二人きりで、声の主だちは一人も傍らに居ないのにも関わらず。何故か、全員が一か所に集まっている感覚がしていて、それらがイメージとして明確に共有出来ている実感が湧いている。ネスの能力の賜物だ。───彼には、次再会した際に、面と向かってお礼を言わなければ。

 

((それ…、…は、み...、…ん!ま…、───…ち……ほ、ど!))

 

 

 

 

 

 ピピッ!ガ、ガガガ…───。

 

 

 

 

 大勢を一気に中継し、接続していた影響だろう。今回の通信は、前触れもなく途絶えた。それまで脳裏に伝播していた喧噪が一気に遠のき、賑わいに染まった思考は現実へと引き戻される。ただ、ネスやサムスと共に、この世界へ潜入すると決意したあの瞬間とは、全く違う感情が胸の内に残存していた。

 消えてもなお、残る喧噪の温かさ。鮮明に浮かぶ、やがての仲間たちの、顔触れ。嗚呼、きっと。我々はたった今、一丸となったのだろう。なんと、清々しいことか。

 胸に留まる爽快な残滓を胸に、「遺跡」へと向き直れば、二つ並び立っていた無象徴の彫刻が、重々しい音を立てて変形し始める。あれは───、石像などではない。隣で戦闘態勢を取るプリンが、声を潜め、呟いた言葉に確証を得る。

 

「…ホログラム、ですね。あっという間に、形を変えてしまいました。」

「あの形は、…サムス君か。手強い相手になりそうだが、プリンくん、行けるかね?」

 

 念の為、意思確認を取る。彼女が後手に回ると言うならば、意思を尊重する準備は出来ている。しかし、それらすべてが杞憂であることは、瞬きの間に伝わった。強く、真っすぐな意思を宿す大きな瞳を相手へ向けたまま、プリンは首を縦に振った。

 

「もちろんです、ファルコンさん。ぱぱっと、片付けて。誰よりも早く、正面玄関へ到達しましょう…!私たちなら、無敵です!」

 

 

 

 

 

 

 

 




お久しぶりです、黒冠です。
近頃は猛暑が続き、短時間の外出でさえ億劫ですね。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
私は私情により、多忙な日々が続いておりますが、変わらず生き抜いております。
次話投稿はいつにしよう、そもそも、第一編を何話で終わらせよう、などと様々な思考を巡らせながら、ちまちま執筆する日々です。
ひと月以上空いての投稿になりますので、若干文体に違和感があるかもしれません。
温かい目で読み進めていただけると、大変ありがたい限りです。

いつも閲覧していただいている方、ブックマークを入れてくださった方、ありがとうございます。励みになります。投稿頻度はまばらですが、私なりに魂込めて執筆し続けますので、今後ともよろしくお願いいたします。

では、また次話で。
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