The Beginning of the Fighters   作:黒冠

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3.未知の世界、未知の邂逅

 

★???&???★

 

「オラァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

「どりゃあああああああああああああああああ!!」

 

 鬱蒼と木々が生い茂るフィールド内にて、雄叫びに近い声ふたつと共に沸き起こる轟音。砂塵。勢いよく噴き出す自然由来の煙幕は、地割れ規模の衝撃を示している。

 赤いネクタイを首に掛けたゴリラ一頭と、丸くて大きな鼻と橙色のブーツが特徴的な恐竜一匹。二者は臨戦態勢を崩さぬまま、背中合わせにフィールド中央へ立ち、絶えず周囲を見回している。もし仮に、この場に新たな敵襲が攻め込もうものなら彼らの手刀ひとつで一掃出来てしまいそうだ。二者は過剰と言われても致し方無いレベルの殺気と警戒心を纏いながら、フィールド内を再び歩き始める。しかし、穏やかな声音で対話出来る程の余裕はあるように見受けられる。

 

「…はあ。然し驚きましたよ。まさか『ドンキーコング』さん、あなたまで此処に迷い込んで来ていただなんて。てっきり僕ひとりが罠に嵌められたのかとばかり。もう帰れないと思いましたよ~。」

「俺もビックリしたぜ、『ヨッシー』。こんなよく分からない森の中で、お前さんに遭遇するだなんて思いもしなかった!」

「ははは。遭遇したのが顔見知りで良かったですよ。これが全然知らない誰かだったら、僕は今頃食べられてたかも…?」

「嘘つけ!逆に丸のみにして懲らしめてただろ、絶対!ああ、そう考えると知り合い枠で本当に良かった!迷い込んだ挙句尊い犠牲者になりました、…なんて笑えねえよ!!」

 

 似ても似つかない種族にも関わらず、和気藹々と話しながら、二者はほぼ同じ歩幅で道を辿っていく。道と言えど、当然何の宛も無い道だ。

 

・・・───約30分前。

 

 「手紙」───、否、「招待状」に地図は同封されて居なかった。

 自力で探索して回り、出口を見つけて「終点」へ来い。ヨッシーが解釈した文章内容は、こうだ。淡白で、事務的で、目的もよく分からない手紙。差出人は「マスターハンド」。これまで生きて来た中で見たことも、聞いたことも無い名前。

 そんな奴から送り付けられた手紙を易々信じて此処に辿り着いたわけじゃない。…むしろ、不本意である。本当であれば、暫く無視を貫いておいて、それでもしつこく迫って来るようなら差出人を特定して何とかしてやろう。そんなことを、考えていた時期も確かにあった。でも、そんな戦略は水の泡になってしまった。誰かに相談する間も、様子を伺う間も無くして、招待状に吸い込まれて───、気付いたらこの見知らぬ大地に辿り着いていた。迷子の自分を嘲笑うように、所狭しと生い茂る森林。無造作に伸び切った草木を掻き分けて、前に進んでいるつもりなのに、目に映る風景には全く変わり映えが無い。…迷い込んで、ものの数分で気力が失せてしまった。先程口にした、「もう帰れないと思った」なんて軽口も、実際嘘では無い。ヨースター島のみんなは今頃どうしているだろう?なんて諦めに等しい淡い妄想を描き始めたところで、状況が変わることは無かった。

 

・・・───約20分前。

 

 右も左も前も後ろも分からない状況下で、未知の有形ホログラムに追い回されるのは、正しく地獄の沙汰であった。既視感のある造形物を相手取るなら、迎え撃って済む可能性が高かったが、「電撃を放つ鼠」とは何事だ。ヨッシーからすれば未知以外の何者でも無く、ひたすら逃げ回る以外に対処法が浮かばない。そもそも、あれは敵なのか?下手に攻撃してありもしない敵意を掘り出してしまっては最悪だ。ああ、さっき余計なことを考えながらとぼとぼ歩いていたのが良くなかったか?

 追尾して来るものが一匹ならばリスクはかなり低かった。しかし、全く同じ図体と性能を持った瓜二つに追い回されては、どうしようもない。やけに俊敏な二匹が休む間もなく放つ電撃は、ヨッシーを追い詰めるのに不足ない威力とスピードを兼ね備えていた。

 攻撃は愚か、防御にも及ばない逃走。このままでは埒が明かないと、勇気を振り絞って足を止めたは良いが、いざ攻撃姿勢を取ろうとした瞬間都合悪く足が竦む。…最悪だ。最悪のタイミングだ。僕は一体、何に怯えているの?答えを出す暇すら許されず、いよいよ電撃が脳天を貫かんと降り注いだ瞬間。

 

「喰らいやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!」

 

 全身を覆い隠す程に大きな影が空高く舞い上がり、力強く振り上げた拳が電撃を掻き消した。その勢いは留まる事を知らず、電撃の主二匹も纏めて吹き飛ばす。登場から、ヨッシーの目の前への着地まで。ものの数秒の出来事が、彼にはスローモーションの大道芸のように映った。息を飲み、言葉を失い、半ば腰を抜かしているヨッシーを元に、舞い降りた影───、それも非常に見覚えのある赤ネクタイの霊長類は、辺りを見回し標的を探している様子であった。

 

「よぉし。彼奴らは仕留めたか?全く、不時着早々手間掛けさせやがって!」

「あ、あの~…。あなたは~…。」

「…あぁん?って、お前は…!?」

 

 赤ネクタイの彼は、もしかしたら自分のことを認識していないかもしれない。そんな思考は杞憂に終わり、ヨッシーの方を振り返ったドンキーコングは喜色満面に口を開いた。

 

「ヨッシーじゃねえか!?何でお前が此処に…。まさか、お前も絶賛迷子中?」

「あ、えっと…。まあ…、情けないことに…。」

 

 みっともないところを目撃され、挙句ピンチを救われたヨッシーとしては気のやりどころに困るもので、彼とは対照的な苦い表情を浮かべ、ぎこちない返答をしてしまった。しかしドンキーコングは嫌な顔ひとつ見せず、返って安堵の表情を浮かべているようにさえ見受けられた。何故、この危機的状況でも彼は余裕を見せていられるのだろう?新たに浮かんだ疑問を口走るより早く、ドンキーコングの腕振りに制止される。慌てて視線を視野の外へと広げれば、すっかり身体を起こしこちらを睨む電気鼠二匹の姿が入り込んで来た。思わず、顔を顰める。…どうやら、嫌な予感は的中してしまったらしい。ドンキーコングの方を見やると、彼は静かに相槌を打ってくれた。つまり、既に次の行動は決議している。

 

「…はあ。こうなってしまっては仕方無いですね。交戦は避けたかったんですけど、此処で仕留めないと僕たちの状況は変わらないでしょうから。」

「おうよ!腹括って、一気に切り抜けるぞ!お前さんも全力、出せよな!」

「ええ、勿論ですよ。早く此処を突破して、マスターハンドとやらに尋問してやるんですから!!」

「うっはは、普段温厚な奴を怒らせたらおっかねえな?良いか、鼠さんよお!痛い目見たくないならさっさと降参しちまった方が身の為だぜ!!」

 

 

───そして、現在。

 派手で爽快なフィニッシュと共に敵を仕留め、出口を捜索している最中である。たった30分の程度の出来事であるにも関わらず、特にヨッシーは、数時間単位の出来事のように錯覚するくらい、精神的な疲弊を覚えていた。げんなりしながら、義務的に重い足を動かしている彼を見たドンキーコングは、ケラケラと軽やかに笑っている。

 

「そんな憂鬱そうな顔すんなよ~。合流出来た以上、仲間が見つかったってことだろ?つまり俺たち、前進は出来てるんだって。こうやって歩き回っていれば出口が見つかって、そのマスターハンド?とやらにも会えるだろ!」

「今ドンキーさんが話してくれたぐらい、単純な話なら良いんですけど。僕は何となく、これから更に面倒なことが起こる予感がしています。鼠二匹で満足するような奴なら、討伐時点で出口が出現するはずでしょう?」

 

 それまで能天気に笑っていたドンキーコングも、ヨッシーのこの一言には口ごもり、少しだけ思考時間を設けていた。恐らく、理屈に納得したのだろう。していなかったとしても、勝手に解釈して話を進めた方が手っ取り早い。ヨッシーは心の中で判断を下すなり、新たに言葉を塗り重ねた。

 

「出口とやらが、どこにあってどんな条件で出現するのか。…何も手掛かりが得られない以上、慎重にフィールドのすみずみまで調べ上げるべきでしょう。まだ伏兵がいる心配もありますからね。あとは、僕たちと同じようにこの世界へ迷い込んでしまった誰かが居る可能性もありますし。…仲間は、多く集まった方が心強いはず。」

 

 暫く黙ってヨッシーの話を聞いていたドンキーコングは、思考の整理と言葉の意図の処理が追いついたようで、脳内に浮かんだ言葉同士を、賛同と共に接合し始めた。其処からは、先程のぎこちなさが嘘かのように会話がサクサクと進む。

 

「お前が今並べた通り、やることは山積みだ。このフィールドでどの程度の情報が得られるかは正直分かんねえけど、しらみつぶしに歩き回るよりは目標を定めた方が現実的な気がして来た。それこそ、他にも仲間が居てそいつと連携を取れて、情報共有が出来たら…!良いテンポで出口に辿り着ける!!」

「ええ、その通りですよ。だから僕たちはあまり体力を無駄遣いしないよう気を付けながら探索を進めましょう。僕の予感が正しければ、行く先はまだ長いでしょうから。」

「いざって時に動けるように、今は温存しておくって方向性だな?オーケー、任せとけ!こんな場所、俺とヨッシーでいち早く攻略して、ついでに困ってる奴が居たら助け出してやるぜ!!」

「やれやれ。本当に、恐れ知らずなんですから。ああ、そんなに走らないでくださいよ~!まだ僕たち、警戒段階なんですからね~~!?」

 

 森林の奥へ、奥へ。楽し気な話声と先程より軽い足音がこだまし、溶け込んでいった。

 

 

─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ───

 

★マリオ&ルイージ★

 

「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

 またしても、凄まじい墜落音と、衝撃。地面が一時的に大きく揺れ、砂埃が舞い上がる。

 遥か上空から地上へ放り投げられた兄弟は、為す術無く着地に失敗した。マリオは顔面から地面に追突したことで首が埋まっており、ルイージは顔面衝突を回避したものの地面に突っ伏している。流石は兄弟、二人はほとんど同じタイミングで身体を起こし、先ずは此処が何処であるかを確かめるべく、周囲を見回した。…が、視覚情報は残酷な程、未知で埋め尽くされていた。

 見覚えのない森林に、人の一人二人簡単に呑み込んでしまいそうなほど、大きな湖。生い茂る草の群れ。警戒に先んじて、不満と疑問が漏れ出す。

 

「…此処は、何処なんだ?俺たち、一体どうなって───まさか、死んd」

「に、に、兄さん!馬鹿!縁起でも無いこと言うなよ!?此処が黄泉の世界だなんて…、ヒィッ!!か、帰るぞ!早く!!今すぐに!!」

「ははは!何だよ、ルイージ。冗談だって!相変わらず怪談系が苦手なんだなあ。そんなビビらなくても俺が居るじゃんか!お化けだろうと何だろうと纏めてドカン!これで解決さ。…それに、今すぐ帰るって言ってもどうすれば良いんだよ。俺たち、空から降って来たっぽいじゃん?」

「空から───、…嗚呼。」

 

 マリオの指先が指し示す方向を無意識に追い掛け、ルイージは絶望した。

 雲一つ無い晴天。視界を遮るものは何一つ無い。行楽目的なら最高のコンディションだ。しかし、「視界に何も無い」という事実は、今の彼らにとって地獄である。ルイージは項垂れ、兄の言葉に同意した。

 

「レンガブロックや何か足場になりそうな物があれば。もしくは変身アイテムが設置されていれば。俺たちは‶今すぐ〟帰ることが出来たんだろうな。しかし見て分かる通り、そんな救済措置はありません、と。…そりゃあ、そうだよな。」

「そんな親切心溢れる奴なら、いきなり送って来た手紙で別世界に転送!なんて強硬手段は取らねえよッ。あ~あ、こりゃあとんでもないことになっちまったみたいだ、マイリトルブラザー。」

「言ってる場合かよ…。とんでもないって言ってる割に、何か楽しそうだし。」

 

 呆れたように。それでいて、何処か慣れたように。ため息を吐く弟へ視線を送り、マリオは穏やかな表情で頷いた。あまりに現状にそぐわない表情を目にしたルイージは、驚きのまま目を見開く。

 

「嗚呼、楽しいよ。だって、久々にお前と新しい冒険に繰り出せるんだから!此処が何処なのか、何が起こっているのか。今は何も分からないけどさ、きっと進んで行けば全部が分かって…、道中でまた、誰かの助けになれるかもしれない。そうだろ?」

 

 兄の純粋で、冒険心に満ち溢れた言葉に、つい声を上げて笑ってしまった。

 そうだ、兄さんは何時もこんな感じだった。未開の地や強敵に遭遇しても、恐れるどころか果敢に立ち向かい、経路さえも楽しみ尽くしてしまうような…、眩しい人。だからこそ、一緒に居たいと思える。この人に、着いて行きたいと思える。キノコ王国でも、他の世界でも。ずっとそうやって生きて来たじゃないか。これまでの道筋を懐かしむと、今回の状況も案外何とかなりそうな気がして来てしまうから不思議だ。ルイージは自分の頬を両手で挟むようにして、数度叩くと、視線を前へと向け直した。そんな姿を目にしたマリオも、ますます気合が入ったようで隣に並び立つ。

 

「随分とポジティブな兄貴を持ったものだな、…俺は。良いか、兄さん。早くこんな場所抜け出して、居なくなってしまった王国の皆を取り戻すぞ。」

「あったりまえだろ?それから、このマスターハンドとやらの居場所を突き止めて、事の真相を聞き出さないとな!大丈夫、俺たちなら出来る!!」

「そうと決まれば、前進あるのみ!行くぞ、兄さん!」

 

───

 

「…ど……、…てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 

 

 遠くに響いていたと思われる叫び声が、突如、意気込む兄弟の鼓膜へと差し迫る。語彙全てを聞き取ることが出来ずとも、二人は反射的に左右の路肩へと飛び退いた。すぐさま揃って顔を上げ、視野の端を飛行物体が駆け抜けて行く姿を捕捉する。星型の飛行物体の上に、球体のようなものが乗っており、何処かへ向かって飛んで行った…?二人が得られた情報は、程度の低いものである。ルイージはマリオに目配せし、同時にマリオもルイージと視線を交えていた。

 

「ルイージ、今のを見たか?ボム兵みたいに丸い奴が、星に乗って飛んで…!」

「嗚呼。あんな奴、キノコ王国じゃあ見たことが無い!もしかしたら、この世界の住人で、マスターハンドとやらの手先かもしれないぞ!」

「よぉし、一先ず、彼奴のことを追い掛けよう!話はそれからだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ─── ───

 

★???★

 

「ワープスターってばぁぁぁぁぁ…!!落ち着いて!!ねえ、僕を何処に連れて行くつもりなの~~~!?」

 

 その頃。マリオとルイージが目撃した球体生物は、星型の飛行物体にしがみつき、目を回していた。ついさっきまで、口に含めば忽ち甘みの広がりそうな雲と共に青空を滑走していたはずが、気付けば雨粒注ぎ雷鳴轟く雲海に呑まれている。数秒前、人にすれ違ったような気もするが、声を掛ける時間も無く通過してしまった。自分を取り巻く景色の不気味さも相まって、球体───「カービィ」の胸の中は不安でいっぱいだった。

 

 

───約30分前。

 

 故郷プププランドのど真ん中に突如現れた「光渦」と自分宛の「手紙」のことを大王から聞き、カービィは現場へ直行した。大王の話によれば、今朝方出現したこの光渦の中から「手紙」が飛んで来て、大王が開けようとしたものの、うんともすんとも言わないらしい。そこで、封筒裏に名前の記されたカービィであれば、何か知っているのではないかと見込んだ大王は、朝っぱらからカービィの家へ突撃したのである。勿論、カービィ自身「手紙」にも「光渦」にも心当たりが無い。しかし、自分を誰かが呼んでいるのだとしたら、放ってはおけない。ヒーローの本能から、カービィは毛布を蹴飛ばし、家を飛び出していた。

 予想通り、光渦を取り囲むように、野次馬たちが集まっている。カービィは特に気にすることなく、大王に導かれる形で光渦、そして「手紙」と邂逅を果たした。翼が生えているわけでも無いのに、上手に浮遊しながら自分の元へ舞い降りる「手紙」を両手で受け取り、封に手を掛ける。大王がどんなに力を込めても開かなかった封は、宛先本人の手に渡った途端、するりとその中身を示したのである。これには野次馬たちもこぞって感性を上げ、大王の方は不服そうな顔で一部始終を眺めていた。

 「手紙」に認められた文章はやけに洒落た言い回しが多くて、カービィは理解に結構な時間を要した。何となく自分の活躍が褒められていて、送り主が自分を必要としている。そんなニュアンスのことが書いてある。とは言え、送り主の意図はよく分からなかった。頭を悩ませながら最後まで読み進めたところで、ようやく自分ではない誰かの名前を見つける。

 

「マスター…ハン、ド?」

 

 その名を口にすると同時に、これまで大人しくカービィの手中に収まっていた「手紙」が宙へと舞い上がり、目が眩む程に眩い光を放つ。思わず目元を覆い、余りの迫力に仰け反り掛ける。誰かが目の前に舞い降りて、光を遮断してくれたことで、やっと目を開けることが出来た。紫紺のマントが、風になびき、カービィを極光から守っている。カービィにはそれが誰なのか、すぐに分かった。

 

「『メタナイト』…!!どうして君が、此処に!?」

「…早朝から騒がしいと思えば、まさかこんなことになっていたとは。どうやら陛下の危機管理能力は私が想像していたよりもずっと、程度の低いものであったようだ。」

「な、なんだとメタナイト!!ワシは何も知らんゾイ!!何でもかんでもワシの所為にするな!!」

「ふむ。これは失敬。如何やら私の早とちりであったようだ。」

「き~~さ~~ま~~!!」

 

 何時もと変わらない小競り合いが聞こえることで、大王「デデデ」の無事も確認出来る。カービィはメタナイトのマントの陰から、光渦を見つめた。ただの光。でも、その中から誰かが自分を手招いている気がする。好奇心のまま、一歩踏み出そうとしたところで、メタナイトに制止される。

 

「…カービィ、正気か?何処の誰とも知れない輩からの手紙に加え、明らかにお前を誘い込むつもりの、この光渦。これは絶対に罠だ。少なくともお前が行くべきではない。此処は私が───。」

「ううん。大丈夫。僕、行くよ。メタナイト。」

 

 自分を引き留める、その温かな手を優しく放し、カービィは一歩前へ進み出た。先程は目が焼けてしまうと錯覚するぐらいに眩しく、怖いとまで感じた光が、今は怖くない。自分が、行かないと。誰かが呼んでいるのなら、僕が助けに行かないと。意思を込めた双眸でメタナイトを見つめると、彼が仮面越しに目を伏せたのが分かった。これは恐らく、了承の意、なのだろう。長年の付き合いから得られる推測が告げている。カービィはもう一度、メタナイトとデデデを振り返った。ひしひしと感じる、二人が自分を案じていることを。同時に、自分の背中を押してくれていることを。もう、迷いは無かった。

 とびきりの笑顔で、片手を振る。

 

「絶対、帰って来る!行ってきます!!」

 

 

───現在。

 当然、見知った二人の支えは無い。見知らぬ光景に包まれて、今のカービィは掬い上げてくれたワープスターと共に空中を彷徨うことしか出来ない。「手紙」の主は、何処に居るのだろう?どうしたらその人に会えるのだろう?同じ思考を何度巡らせたことか。声を張り上げる気力も、ほとんど使い果たしてしまった。きっと、自分を乗せて飛び続けるワープスターにも思考が伝染しているのだろう。徐々に、高度が下がり始める。今度誘われる先は、何処になるんだろう?思考を切り替えようと、ワープスターのヘリを精一杯の力で掴もうと手を伸ばしたその時。

 

 ───一閃。雷轟の音が、カービィの鼓膜を貫いた。

 

 一気に視界が冴える。暗雲を掻き分け、ワープスターにしっかりと捕まり直し、前方へ身を乗り出す形で光の軌道を探る。絶対に、今。何かが光った。見間違いとは言わせない。…言わせたくない。カービィが気力を取り戻したことに同調するように、ワープスターも再び上昇し始める。カービィは目を凝らし、何かが動き回っている姿を視認した。人型では無いし、故郷にたくさん居るような球体でも無い。黄色くて、尖った尻尾を持った…鼠?しかも、その生物は何かに追われている様子であった。

 あの子が、「マスターハンド」とは思えない。でも、あの子はきっと、助けを求めている。

 

「…助けに、行かなくちゃ。」

 

 カービィが小さく呟くと、ワープスターは応えるように宙を一回転して進路を変え、目標に向けて直進し始めた。カービィは小さな手を握りしめ、徐々に近付いて来た敵を討つべく体勢を整えた。

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