東方心共画   作:抹茶屋

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忘れられた若き少年

 人里から離れたとある山奥、様々な絵の具やペン、消しゴムなどを詰め込んだトートバックを引っさげ、大事そうにキャンバスを両手で包み込むように持っている青年が一人険しい山道を歩いていた。

 青年、恵心(エゴコロ) 麗夜(レイヤ)は若くして有名な絵師だった。しかし、今ではもう過去の栄光。最近ではめっきりとその才能が生かせずにおり、世間で彼を知る人はもう居なくなってしまったのだ。

 そんな記憶の片隅にも存在しなくなる自分に焦った麗夜は、もう一度人の心に残り続ける絵を求めてこんな山奥まで来ていた。

 あたりはすっかりと真っ暗になっていた。足下が見えない、何かに足をひっかけてしまってもそれが木の根だろうが石だろうがわからないほどに暗かった。だが、その足取りには迷いがなかった。自分でもは分からない、しかし感じる何かがあった。その先に自分が絵に残したいそう思える何かに背中を押されながら導かれている感覚。気がつけば森を抜け開けた場所にいた。

「こんなところに……神社?」

 何段あるか分からないほどに長い石段、その先に小さく辛うじて形をなしている朽ちた鳥居が見えた。

 麗夜はその鳥居目指して石段を登っていく。石段はどこも脆くなっており、度々削れて転けそうになる。しかし、臆することなく一歩一歩慎重に進み、やっとの思いで鳥居の前にたどり着いた。

 ついに麗夜の目に映った光景は石畳はボロボロ、きっと狐や戌といった神前を守護する象があったであろうところは所々苔むしその凛とした佇まいはもう見る影もなくなっていた。そしてその守護していたはずの拝殿は柱が腐り崩壊していた。そこはもう神社とは形容しがたい有り様だった。

 しかし、麗夜の目にはそこに存在していたであろうかつての神社の風景が広がっていた。そして重ねていた。自分と同じ忘れ去られてしまい、その末路を……。

 だから、麗夜は直ぐにでもその光景を何かに残したい、自分にできる方法でと、その腕に抱えて持っていたキャンバスにペンを経て目に写るかつての神社を描き始めた。

 何十分何時間、いや日すら跨いでしまったのかも知れない、時間の概念すら忘れて描き続けた空想の絵が完成した。

「できた……今までの作品のなかで最高の作品だ……作品名は、そうだな……」

「『博麗神社』」

 急に妖艶な女性の声が耳元で囁かれた気がした。しかしその声は麗夜の頭の中を支配していく。

 そして考える暇もなく、疲弊と空腹が一気に麗夜を襲い、その場に気絶してしまった。

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