落ちる堕ちる墜ちるおちる
意識が少しずつ覚醒してきた
どうやら現在は落下中のようだ。どうやって?俺はどういう状態?
そう疑問に思ったのは、周りはひたすら暗闇に覆われていたからだ。
何かが下から上へ一瞬で登ったように見えた。落下中だろうか?
不思議と冷静だった。異常だ。意識と世界の間にまるで薄いベールで遮られたかのような、ふわふわとした居心地だった。
ただただ落ちるだけ。でも突然と一つの疑問がふと浮かんだ。
俺は今どうなってる?
この疑問を皮切りに、決壊したダムのようにどんどん疑問が溢れ出していく。
ここはどこ?なぜここにいる?なぜ落ち続けている?なぜ、なぜ…
疑問が湧いてきては泡となってはじけて消える。しかしそれでもパニックにはならなかった。
そして疑問と共に、周りの景色がリアルになっていく。
いや、俺自身がリアルに近づいたのだ。そんな気がした。
不思議とそう思ったが、なぜか違和感なく受け入れることができた。
…!
……
そうか…死んだのか。
大学の第一志望に受かり、その初登校日の登校中であったことだった。
電車に乗ろうと、電車に入ろうとしたところ、電車内に変な人がいたのを見えた。これいかんやつだ、と思ってアレから勘付かれないように、目立たないような端っこに隠れた。サングラスやマスク、そして帽子を被り、一寸の皮膚も見えない。怪しさ満点だった。
さらに一番恐怖は、吊り革も掴めてないのに、重心が崩れていない。まるで足が地面にくっついたかのようだった。そして周りの人は恐怖を感じることはないようだった。
俺は耐えられなくて、バレないようにひっそりと移動しようとした瞬間、奴はどこかもなく刃物を取り出した。
そして近くの乗客にいきなり斬りつけた。
このとき初めてこの異様な情景に周りから認識された
赤い
そう思った。
怖かった。逃げようと思った。
でもこの胸よりやや下ぐらいから伸びている無機質な銀色の光沢を持っているこれはなんだ…?
目を閉じて、そして開ける
すると銀色は消えていた。
よかったと、見間違いだと、そうやってホッとした。
視界が傾ける。駅の天井の隣から空が映っていた。よく晴れた日だった。
周りが怒号と悲鳴に満ち溢れているが、だんだんと聞こえなくなっていく。
青い空はひたすらきれいだった
俺は死んだ
そのはずなのに、今はどうなってる?奇跡的に助かったという線はなきにしもあらずだが、周りが妙にリアルで、病院の様子とかけ離れている。
転生したのだろうか?俺もライトノベルとネット小説を嗜まれてきた人間だ。
しかしどうにも周りの景色と合っていない。
既に何日間すぎたのであろう。
意識が半覚醒状態の時の時間の流れがいまいち掴んでなかったが、おそらくかなり時間が経ったかと思われる。
記憶の周りの景色と照らし合わせて、どうやら僅かだが、少しずつ青色になっていってる。
と同時に気温が低くなったような感じがした。
これは…転生じゃなくて、普通に冥界かな?
悲しみはあった。死が近づいたときは諦めという感情が体を全て占拠していた。だけど不思議と苛立ちはなかった。
何時間、何日間経ったのだろうか?この間に眠気も食欲もが一回も襲ってこなかった。
するといきなり視界が広がってゆく。
天井が霧で見えないくらい高く、奥も霧で見えないくらい広がっている。洞窟内であるはずなのに、まるで一つの世界であり、まさに地底世界のようだった。
奥には霧でうっすらと映っている、黒を基調とした宮殿があった。
そしてその宮殿の方向から青白い川がくねりながら流れてきている。川の水面は波紋一個も立たず、まるで一つの巨大な鏡のようだった。しかし、その川の終点はすぐ近くにあった。静かな水面は少しずつ躍動感を帯び、水は大きな声で怒号し、うねりを響かせながら壮観な瀑布として、奥が闇に包まれて奥が見えない奈落に降り注いていた。
奈落?あ待って俺の真下にでっかい穴あるやんけ。ちょっとおい俺死んだからちゃんと冥界に連れてってよ!
奈落から嫌な感じがする。
まるで悍ましい生物がその深淵からこちらをのぞき込まれている感じだった。
とにかく「これ」から離れないと、本能から、いや魂から警告アラートが鳴らされている。
しかし体がどうやって力を入れても、まるでそもそも体が存在していないかのような、何も起こらない。
とにかく離れないと意識しても何も変わらない。ただただ落ち続けるだけ。
焦る…が、何もできない。近くに生き物というべきあらゆる動くものは、ただただ自分自身と、その川による瀑布のみである。それ以外はまるで写真から切り取ったような、何一つ動かない景色のようだった。助けられる可能性は0だ。
俺は吸い込まれたかのように、奈落に落ちていった。
落ちる
落ちる
落ちる