都市で生きていくには   作:ウェザービー

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久しぶりにやったロボトミーで私は調律者に見事ボコボコにされました(6連敗)ちくせう
ノーデスクリアを久しぶりのプレイでやろうなんて思ったのが無茶だったのだろうか?
いや、それでも私はやり遂げて見せる!
と意気込んでいるところで3日目投稿です。
ここですることではないでしょうが、するタイミングが思いつかないので『トオル』の現在ステと肩書きを乗せておきます。
職員『トオル』
肩書き:用心深い先輩
ランク:Ⅲ
勇気:Ⅰ
慎重:Ⅱ
自制:Ⅲ
正義:Ⅲ


ようこそ、Lobotomy Corporationへ【3日目】

「ピピピピッ!ピピピピッ!」と、朝を告げるアラームが室内に響き渡る。

私はアラームを止め、ベッド半身を起こし背伸びをする。

Lobotomy Corporationで働き始めてからもう3日経ち、ここでの業務に慣れてき始めた。

といっても今のところZAYINとTETHしか収容されていないし

今後やってくるであろう怪物共(WAWやALEPH)の事を考えれば、こんな慣れ無意味だってことを嫌でも理解する。

先日の『1.76MHz』の件で幻想体によって自身のみに起こる被害を身をもって体験した。

TETHであれなのだ、怪物共なんかはあれの比ではない苦痛を強いられることになるはずだ。

もちろん、それを対処するころにはきっと私はランク5職員になっているだろうから先日の時とは勝手が変わっているだろう。

だとしても、一度味わった恐怖というのは中々に応えるのだ。

 

これから遠くない未来に訪れる恐怖に身を震わせながら私はベッドから起き上がる。

身支度を済ませロッカーにしまわれているEGO装備を取り出し、着替える。

 

<正義の為には公正さが必要である。善の為には一つの虐待が必要だ>

 

あれから変わらず罪善さんの声が聞こえてくる懺悔メイスを見つめながら私は思う。

私に聞こえるこの声、他の人にはどうやら聞こえないらしいのだ。

あの後同じ装備をもらった『エフゲニ』もそんなものは聞こえないと言う。

何故私には聞こえて他の人には聞こえないのだろうか?そんなことを考えていた時にふと

ゲブラー...もといカーリーが初期型のミミックから声を聴いたという話を思い出した。

その話の内容を正確には思い出すことができないけど、確かEGOの声が頭に直接響いてきて使用者の精神を揺さぶってくるのだとか。

精神を揺さぶる?今のところ私の精神が揺らぐ様子はない。

ロボトミーで使われているEGOはカーリーの初期型とは違い調整が施されているらしいが、それのおかげなのだろうか?

調整されることによってEGOの侵蝕が起きなくなっているはずなのに、私には声が聞こえる...

 

「もしかして、ゲブラーみたいな使い方ができたりするのかな?」

 

ロボトミーでゲブラーがやっていたEGO二刀流、あれが私にもできるのだとしたら...ちょっと興味ある。

 

「でもあれは本当のEGOの使い方がどうとかいう話だったし...少なくともEGOに引っ張られるような使い方をしていた私にはまだ縁遠い話かなぁ」

 

でもそのような使い方が私にもできるのだとしたら、やってみたい気もする。

 


 

業務開始10分前、私はメインルームまでやってきていた。

 

「あっ先輩、来たんですね!」

 

そう言って私に元気よく手を振る『エフゲニ』、これほどまでにかわいい後輩を見たことがあるだろうか?私はない。

そんなことを考えている私は彼の後ろにスーツを着た職員がいることに気が付く。

 

「おはよう『エフゲニ』、後ろの人は?」

「おはようございます先輩。この人は今日新しく配属されることになった...」

「『ログン』って言います。初めまして」

 

そう言ってぺこりと頭を下げる私と同じ黒髪の女性。

頭の上にちょこんと乗っかっているような短めのツインテールが特徴的なかわいい女の子だ。

 

「初めまして『ログン』。私は『トオル』だよ、よろしくね」

「『トオル』さんですね。よろしくお願いします」

 

そうして私たちが自己紹介を済ませた時

 

【これより業務を開始します。管理人と各部門セフィラの指示に従い、管理作業を行ってください】

 

業務開始のアナウンスが入る。

相変わらずアンジェラ統括の声は透き通っている。

そんなことを考えていた時

 

【職員『トオル』へ、F-01-02に洞察作業を行うように】

 

指示が飛んでくる。

 

「先輩って新規幻想体の管理に良く選ばれますよね」

「まぁ、この中だと一番階級が高いの私だからね」

 

新しく来る未明の幻想体の管理は大抵一番ランクの高い職員...初期なら初日雇用職員が選ばれがちだ。

そして、そういった生贄に選ばれた職員の末路は大抵悲惨なものだ。

まぁ、こんな序盤の幻想体で死人を出すようなことはさすがにしないだろうけど...しないよね?

先日の『1.76MHz』の件があるからなぁ...案外やりそう。

というかこの管理人のくせに今気が付いたんだけど、この管理人...知らない幻想体には洞察を行うようにしてるな?

そんなことを考えながら私は収容室の方まで足を運んだ。

 

収容室前まで来た私に事務職は箒と雑巾を渡し、掃除した際に出たゴミは収容室の隅にある溝に捨てろとのことだ。

説明を聞いた私は早速収容室へと入る。

そこに居たのは黒焦げた棒のようなものが体に刺さっている灰になった少女だった。

 

「マッチちゃん...」

 

今回の収容幻想体は『マッチガール』だったか

...指揮チームにマッチちゃんは、運命を感じるな。

図書館で歴史の階最初に出てきた幻想体がここで来るなんて...

 

「だから何だって話ではあるんだけどね」

 

私は床に散らばっている灰を箒で掃き、壁にある溝に流す。

その間もずっとすすり泣く声を響かせる少女が部屋を徘徊し、そのたびに灰を撒き散らしている。

彼女の体を貫通したマッチの火が煌々と輝く

燃えるマッチはすでに半分が燃え尽きているが、もう半分は未だ燃え続けている。

降り積もった灰は彼女の体を貫くマッチが燃える度に落ちているようだ。

 

「確かあのマッチが本体なんだったっけ?」

 

ストーリーだったかな?そこに幻想体なのは少女じゃなくてマッチだって書かれてたと思うんだけど...

まぁそうだったとして何があるわけでもないし、気にせず作業を続けよう。

 

それから10分ほど掃除を行いった辺りで作業が終わる。

どれだけ掃除しても灰が床からなくなることはなかったが、作業結果はまあまあだった。

生産で来たBOXは7個...これギリギリ普通判定じゃなかったっけ?

マッチガールは前世で収容してたはずなんだけど、中盤以降は殆ど雑管理しかしてないぐらい影か薄くなってたから基本情報とかほとんど覚えてないんだよなぁ

どうか脱走しませんようになんて祈りながら私はメインルームへと戻る。

 

「あ、『トオル』さん。おかえりなさい」

「先輩!今回の幻想体はどんなのでしたか?」

 

メインルームではかわいい後輩たちが談笑をしていたようだ。

 

「燃え尽きた少女の幻想体だったよ」

「燃え尽きた?燃え尽きてるのに生きてるんですか?」

「体は燃え尽きてるけど、体に刺さった燃え続けてるマッチが本体だから生きてはいると思うよ」

「体にマッチが刺さってるって...随分と痛そうですね」

 

そうして私たちが幻想体の情報を共有していたその時

 

【F-01-02が収容違反を起こしました。職員は速やかに対処を行ってください】

 

けたたましく鳴り響く警告音、それとともに告げられる収容違反のアナウンス。

どうやらマッチちゃんが出てきてしまったみたいだ。

 

「せ、先輩!?これって...」

「マニュアルにあった幻想体脱走時や施設内に大規模な被害が起きた際になる警告音だね」

 

さて、ここの管理人はどう動く?管理人にはマッチのマークがついた職員が見えてるはずだ。

それが何か理解しているのならここでその職員に移動指示を出すはず...

 

しかし、いつまで待てど指示は飛んでこない。

どういうことだ?私がそんなことを考えているとき

 

[あーあー!聞こえてる?]

 

アナウンスが流れる。

 

[私、『マルクト』だよ!今から収容違反中のF-01-02の鎮圧指示を私から出すからみんな私の指揮に従ってね!]

 

『マルクト』が直接指示を出すのか?!

管理人は?作業指示は出すのに、鎮圧指示は出さないのか?

私の知っているロボトミーと全然違う...それもそうか、ここは現実。

管理人は最終決定権を握っているだけで、それ以外の問題は本来セフィラが担当するべきことだ。

今回のこの対応も間違ってはいないだろう...しかし

管理人の指示には絶対に従う必要があるとは条項に書いてあったけど、セフィラの指示が絶対だとは書かれてなかったってはず...だからといって指示に従わないことが正しいのか?

独断で動いていいものなのか?管理人からの指示を待つべきじゃないか?

私の頭の中で様々な考えが巡る。

 

[それじゃあ、職員M-03!F-01-02に接近して注意を引き付けて!]

 

M-03?私はM-01で『エフゲニ』がM-02だから...

 

「『ログン』だ」

「え、私ですか?」

 

『ログン』は初めての勤務だから知らなかったのだろうが、『マルクト』は職員を名前では呼ばない。

ゲームでは普通に呼んでいたと思うのだが、ここではなぜか番号だ。

その理由は知らないが、とにかく

 

「『ログン』指示だから、向かって」

 

私はそう言うしかない。指示には従わなければいけないから...

 

『ログン』は少し困惑したような表情を浮かべながら指示された場所へと向かっていく。

彼女が扉を潜り抜けて行こうとしてる。

彼女の通った後には燃え尽きた灰のようなものが少しつもり、彼女の軌跡を残していた。

 

「灰?」

 

おかしい、なんでここに灰が残ってるんだ?

『マッチガール』が来たわけじゃないのに...となればこの灰は

私は今『マッチガール』の元へと向かおうとしている『ログン』背中を見る。

そこには小さいが確かな火を宿した、今にも燃え尽きそうなマッチがあった。

 

「目印...」

 

目印を見つけた、見つけてしまった。

このまま彼女を行かせれば間違いなく彼女は死ぬ。

だからといって命令を破れば私もただでは済まない、はず。

 

「ハァ...ハァ...」

 

呼吸が早くなる。

周りの音が遠のき、心臓の音が響く。

 

「~~?~~~!!」

 

隣に居る後輩が何か話しかけてきているが、今のは私にはそれに意識を向ける余裕すらなかった。

 

<正義には公平さが必要だ>

 

懺悔から再び声が響く。

 

<より良い善の為に、一つの虐待が必要だ>

 

正義が公平?善の為に犠牲が必要?そんなの...

 

「...絶対、間違ってるッ!!」

 

正義が公平なもんか、善の為に必要な犠牲があってたまるか。

今この場において正しい行いが彼女を見捨てることだというのなら...そんなものが正義だというのなら...

 

「私は...そんな正義要らない!」

「先輩!?」

 

後輩の呼びかけを無視して私は飛び出す。

まだ部屋を出ていなかった『ログン』の方を掴み止める。

 

「『トオル』さん!?」

「行っちゃだめ」

 

私から告げられた言葉に驚いたのか、彼女は目を見開いて固まっている。

 

「先輩?何を言ってるんですか!指示には従わないと...」

「管理人の指示には従え...条項にはそう書いてあるけど、セフィラの指示に関しては記載が一切なかった」

「それは...」

 

私を止めようとした『エフゲニ』は私の言葉を聞いて言葉を詰まらせる。

 

「それなら、どうやって収容違反を対処するんですか?」

 

困惑した様子の『ログン』が私に不安そうな目を向けながら尋ねてくる。

 

「私が行く」

 

ただ一言、それだけを簡潔に告げる。

二人は驚いた顔を浮かべ固まっている。

 

「『ログン』、反対側の廊下の端で待機しててくれる?」

 

私は最後に一つ指示を出す。

そして、私は固まった二人を置き去りにして『マッチガール』の元へと向かった。

 

扉潜り抜けた先の廊下には灰を散らしながらゆっくり目標に向かって進む少女が居た。

 

<寒い...暗い...>

 

すすり泣く声で言葉を発しながら歩く燃え尽きた少女の前に私は立つ。

 

<正義の為には公正さを欠いてはならない、善の為には...>

「うるさい、少し黙って」

 

言ったところで無駄だろうけど、今だけはため込まずにこの湧き上がる情動を吐き出す捌け口が欲しかった。

罪悪感に押しつぶされそうだった先ほどとは違い、私の深い呼吸音と少女のすすり泣く声が良く響く。

私は今、湧き上がった怒りのままにここに立っているが、その思考は至って冷静そのものだった。

私は腰元のホルダーから武器を取り外し、構える。

眼前の敵に向かって私はメイスを振り下ろす。

()()()振り下ろされたメイスから繰り出される攻撃は灰の体を的確に崩していく。

それでも灰の少女は止まらない。

灰となってしまう彼女の元に向かって真っすぐに進んでいくのだ。

 

<私はずっと苦しかった...私が燃え尽きて消えてしまわなきゃいけないなら、君もそうしてやる>

「そんなことはさせない」

 

燃える少女...貴方がそうやって向ける羨望も嫉妬も、全て理解できるよ。

だからこそ私は貴方を止める。

今まで私は何処か現実味を感じていなくて、未だ死人の出ない環境に甘えて現実を直視できていなかった。

あの時私は明りを見失った迷子のように、どうすればいいかわからなくなってしまっていたんだ。

そこで私は気付いた(思い出した)

大事なのは貴方のように何れ燃え尽きてしまうとしても、向かうべき道を見失わないように自分の足で真っ直ぐ立つことだって。

 

「もう、迷わないよ。私はこれから私の道を見つめ続けるから」

 

2撃、3撃と私は『マッチガール』に攻撃を加え続ける。

少しづつ少しづつ灰の体が崩れていった少女はやがてその体を失い、今にも燃え尽きそうなマッチだけが残った。

メインルームに入る前に鎮圧できたのは運が良かったとしか言えないな。

「ふぅ」と一息ついた私は先ほどまで『マッチガール』の居た場所に目を向ける。

 

「...なにこれ?」

 

そこには燃え尽きたマッチが突き刺さった灰でできた卵があった。

鎮圧が終わった後、オフィサーがやってきて幻想体は鎮圧すると核になるとかなんとか言ってこれを収容室に戻しとけと言ってきた。

初めて聞く設定なんですけど!?

 

その後は特に問題が起きることはなく、というか起こさないよう慎重に作業をした。

私は何度か『マッチガール』の作業を行い、慎重ランクがⅢに上がったのだった。




ただのTETH脱走なのに話が早大になってしまったのはこのくだりがやりたかったからです。
後悔はありません。
それから『トオル』が声が聞こえるのは感応してるからというより、彼女が特殊だからです。
そこら辺は今度何処かのタイミングで出す予定のL社職員調査報告書みたいな奴に書くのでそれを待っててください
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