これはひどい!!
ほんとなんでこんなやらかしするかねぇ...もうかれこれ400時間は越えてるってのに、いまだにこんなミスをするのか私には理解できない。
そんなこんなで初日からやり直しになったカリジャナリによる5日目と6日目はっじまるよ~!!
朝を告げるアラームで目を覚ます。
今日も気持ちのいい朝だ!張り切って5日目の業務も終わらせるぞ!
ん?なんで5日目なのかって?それは私が昨日の業務から外されたからさ!ハッハッハ~...
十中八九3日目の命令無視の件で謹慎処分にでもされたんでしょうね。
終わったことをいつまでも悔やんでいたって仕方がない!今日も元気に業務業務♪
そういえば話が変わるけど、私防具変わったよ。
新しい防具、それはなんと『4本目のマッチの火』です!
まぁなんとなく予想はついてたよね、メイス持ってる私が近接担当になるのは目に見えてたしね。
それでも...私は大砲(マッチ武器)をゔぢだがっだ!!
近接担当に選ばれたからにはしっかりと熟させていただくつもりだ、決してできるなら痛いの嫌だから次は遠距離武器もらえたらうれしいな!なんて思ってない、思ってないったら思ってないのだ
それからまた話が変わるが、このマッチ装備からも声が聞こえるのだ。
内容は
<やがて燃え尽きてしまうなら、君もそんな風にしてやる>
という怨嗟の籠った声だ。
少し周囲に対して恨めしい感情が湧き上がってきたような気がするが多分気のせいだ。
私がメインルームに着くと、そこには『ログン』が居た。
ノイズのような色味をした防護服を着て、背中に大砲を背負っていたので一瞬誰かわからなかったが、特徴的な真っ黒な髪のおかげですぐに気が付いた。
「おはよう、『ログン』」
「あっ...『トオル』さん」
挨拶をした私に対し『ログン』は何か後ろめたいことでもあったかのように目を逸らす。
一体何があったというのだろうか?そういえば『エフゲニ』はどうしたんだろうか?
「ねぇ『ログン』?『エフゲニ』がまだ来てないみたいだけど、なんでか知ってる?」
私は彼女にそう尋ねるが、彼女は俯いたまま小刻みに震えているだけで何も答えない。
私が居ない4日目に何かあったのだろうか?
まさかマッチちゃんが脱走したとか?いや、その時の対処法は当日のうちに二人に伝えていたし、ミスを犯すようなことはないはずだ...ならいったい何が
まさか、私が居ない間に『マルクト』の試練鎮圧訓練を行って疲れて仮眠室で寝てるんじゃないだろうな?...ん?試練...あ
私は一つ大切なことを忘れていた...
昨日は『マッチガール』の騒動があったせいですっかり頭から抜けていたから二人に注意を促しておくことをうっかり忘れてしまっていた。
そうだった『マルクト』は4日目に試練の無謀な鎮圧を試み、失敗してしまったんだ。
「...もしかして『エフゲニ』は、"退社"したの?」
私は彼女に尋ねる。
「....はい」
数秒の沈黙の後、小さいけど確かな肯定の言葉が私の耳に張り付いた。
そうか、彼は死んでしまったのか...そう考える私。
その時、いやに冷静な思考でそれを受け止める私が居ることに気が付く。
初めて知人が死んだというのに、それを聞かされた私の頭には淡白な考えしか浮かんでこない。
別に悲しんでいないわけではないのだ、ただ...悲しみを感じながらもそれを当然と受け入れているような...
私は気が付かぬ間にかつての私からかけ離れて行っているような気がした。
この世界に来て、私は都市の在り方に順応してきているのか?
人の命の軽いこの都市のありきたりな考えに...それは、とても
「嫌だな」
口に出てしまっていた否定の言葉。
これほどまでにひどい自己嫌悪があっただろうか?
私は私に嫌悪感を抱いていると同時に、私はひどく冷静に仕方がないのだと受け止めている。
私は本当に私なのか?
あれからしばらくたって、自分の世界に入り込んでいた私は業務開始を告げるアナウンスで目を覚ます。
今色々と考えていたって仕方がない。
今は業務を行わなければ
【職員『トオル』へ、F-01-02へ洞察作業を行うように】
私への指示が来る。
私はそれに従い、収容室へと向かう。
掃除用具を受け取り、収容室へと入った私はすぐに掃除を行う。
床に散らばった灰を清掃し、しみついた煤を雑巾で拭き取る。
壁際ですすり泣き続ける灰となった少女には目もくれずに...
業務を終え、生産されたBOXを送る。
今日は10個生産できていた、結果は良好だ。
その後はノイズへ抑圧と本能、罪善へ愛着作業を行い続けその日の業務は終わった。
その後の検査で私は勇気がⅢ、自制がⅣ、正義がⅣとなり、ランクⅣ職員となった。
『ログン』の方は慎重がⅢ、自制がⅣへと成長し、ランクⅢ職員へとなっていた。
その日の作業が終わった後、私は一人の事務職に呼び止められ手紙を渡された。
それは異動通告だった、どうやら私は次から情報チームへと異動することになったらしい。
管理人の指示だろう。
私は了承の旨を伝え、指揮チームから情報チームへとその日のうちに部屋を移動した。
明日からは別部署での作業が始まる、多分最初は私一人だろうな。
気が付けばもう6日目だ、日が過ぎるのが早く感じる。
情報チームでの勤務初日、いったい何の幻想体が来るのか...
【職員『トオル』へ、T-01-68へ洞察作業を行うように】
業務が始まってすぐ飛んできた指示に従って、私は収容室へと向かう。
収容室前には顔を青くした事務職が立っていて、急いで私に用具を渡して下がる。
一体何にそんな怖がるのだろうか?そんなことを考えて収容室の扉とみると
「蝶...」
蝶が扉の前に数匹止まっていた。
どうやら今日来たのは葬儀屋らしい...
「間がいい葬儀屋だな」
そんなことを考えながら私は収容室へと入る。
そこにはやはり長身の体に多腕で、顔が蝶の幻想体が居た。
私の入室する音に気が付いたのか蝶と戯れるのをやめ、私の方を見つめる。
大丈夫だ。正義は足りてるし、勇気はⅣ以上ではない。
そんなことを思いつつ私は作業を開始する。
「チリン...」と高い鈴の音が響いた。
攻撃された?!と焦った私は葬儀屋の方へと身構えた。
その時
<人は死んだら
頭の中に直接声が響いてきた。
驚いた、この幻想体は会話ができるのか。
そんなことをのんきに考えていたが、私は頭を振るい
「帰ったんじゃないですかね?私たちの届かない遠い所へ」
そう答える。
<遠い場所とは
私の答えからさらに質問を出してくる、曖昧な答えにしたのがいけなかったかな。
「距離ではなく概念的な...詩的に言うなら決して届かない星の如く、どれほど欲しても取り戻すことができないような場所じゃないでしょうか?」
<それもありうるだろう。だがここに居るものが皆自らの意思で飛び立つことができないように、死したものたちもまたここに留まっているのではないだろうか?>
彼の言葉も、また一つの答えなのだろう。
死んだ人間がどこへ行ったかなんて実際にわかるわけじゃないし、人の数だけ答えがあるだけだ。
<遠い昔、人々は死後小さな羽根を持った美しい存在になれると信じていたそうだ>
彼はポツリポツリと話し出す。
<そのような翼があるのなら死んだ者たちはここから飛び立つことができたのだろうか?
きっと無理だろう。僕がここに居るように...>
先ほどまでの会話と違い、自問自答をしているかのようだ。
<君もまた、苦しんでいるのだろう?>
心でも読まれたかのように私の悩みを見抜く彼は私に向けて指で鉄砲を作る。
<そんな苦痛からは逃げよう、僕が助けてあげるから...>
「チン!」という甲高い音が鳴り響くと同時に私に向かって蝶が咲く。
その蝶はひどく冷たくて、全身が体の底から冷えていくような感覚を味わった。
「うっ...」
寒い、体の奥に響く様なダメージ...前にノイズで味わったものと違うwhiteダメージ...
私は気を持ち直して立ち上がる。
「私は、貴方に助けてもらわなければいけないほど苦しんでいない」
真っ直ぐに蝶の顔を見つめる。
蝶もまた私の方をじっと見つめてくる。
私の体に収容室の壁に張り付いていた蝶たちが張り付いてくる。
酷く冷たい蝶たちが私の体を覆い隠してしまいそうになった時。
「ゴーン...」という今までの音とは違う低い音が鳴り響いた、それと同時に蝶たちは私の体から離れていく。
作業終了のブザーの音が鳴り、私は収容室の入り口にあるレバーを下げる。
8個のBOXを送り出し、私は収容室を出ていく。
その時、「チリン...」と音が鳴る。
<可哀そうな君へ、ただただ哀悼の意を表すしかないな>
最後に彼からひと言告げられた言葉
「あなたに哀れまれる謂れはないよ」
収容室から出てオフィサーに用具と資料を渡し、メインルームへと戻る。
戻った後、私は冷えた体を温めるように自販機でコーヒーを買った。
その後からは洞察と抑圧を交互に行い、2,30回ほど作業をした辺りで業務が終了した。
慎重と正義のランクがⅤに上がった。