ここはいたって健全なサークルです…たぶん   作:スピリタスXIII

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サークルへようこそ

トレセン学園にはサークルと呼ばれる物がある。大学や高校にある部活動としてのサークルでもなく、円の別名称であるサークルでもなく、様々なチームやチームを持たないトレーナーやその担当ウマ娘がグループを組むサークルである。

 

「○○トレーナーさん。今度、合同でトレーニングしません?」

「良いね。その代わり、今度の飲み会…おまえが企画してくれよ」

 

だったり。

 

「△さん。うちの子の良い経験になりそうなので、模擬レースお願いします」

「良いですよ、是非お願いします」

 

などなど様々だ。このようにサークルの仲間内で合同練習を行ったり、模擬レースを行って担当ウマ娘同士の課題を見付けたり、適性を見付けたり…

 

「今度の土曜日、レースないですよね?折角なので、一緒にお出かけしませんか?」

「良いですね!引率は私達として、あの子達を連れて遊園地行きませんか?」

 

ウマ娘は中学生~高校生の学生が多く、トレセン学園の高等部を卒業して大学進学や社会人としての現役であるドリームトロフィーリーグに進んで活躍したり、様々であるが青春が沢山ある若人である。なので、同じサークル同士で遠足に向かったりと遊びも充実だ。

 

 

 

 

「おかしい……これは何かの間違いだ」

 

1人の青年が目頭を抑えて、深く溜め息を吐き出した。彼は今年の春に短大を卒業して、トレーナー免許を取得した若きトレーナーである。トレセン学園でウマ娘の指導を行うためには教員免許とトレーナー免許のどちらかが必要であり、教員免許は文字通り…学問としてウマ娘を生徒として指導するための免許であり、トレーナー免許はトレセン学園やドリームトロフィーリーグに上がったウマ娘達をアスリートとして指導するための国家資格である。

 

「トキノミノル…いや今は駿川たづなって名乗ってたな。アイツの紹介で、サークルを紹介してもらったけど、ここで合ってるよな?嘘じゃないよな?」

 

青年にはウマ娘の友人が1人いる。彼女との出会いは今から数年前、中学3年生の6月だった。北海道の牧場で生まれ育ち、学校まで歩いて2時間という環境で暮らしていた彼のところに、トゥインクルシリーズで伝説を残したウマ娘トキノミノル*1がトレセン学園を中退して、青年のクラスに転校してきたのだ。だが、その右足には包帯が巻かれており、その下には手術痕がくっきりと残されており…かつてのように走ることは出来ないようだった。

 

その後、家族がいないトキノミノル*2は青年の家族と家族ぐるみの付き合いとなり、青年とは同じ短大に進学した。だが、短大に進むようになると…トキノミノルは『駿川たづな』と偽名を名乗り、帽子でウマ耳を隠したのだ。

 

話がそれた。トキノミノル…今は駿川たづなから紹介されたサークルの活動場所兼喫茶店兼レースショップにやってきた青年。

 

『良いですか?君は若くしてトレーナー免許を取得した秀才です。ですが、トレーナーの世界は甘くありません。なので、私の亡き恩師の父親が代表を務めるサークルに入って、経験を積むと良いです。

そのサークルにはトレセン学園と協定を結んでいる大学生の方々も学びに来ますし、良い刺激になりますよ』

 

と紹介された場所。そこはサークル『PEEKaBOO 』と呼ばれるところの活動場所であり、喫茶店兼レースショップ『静かなるミサ』と呼ばれる建物だった。一応、地方から出てきた青年の下宿場所でもあり、トキノミノルが荷物の手配もしてくれている。

 

「よーし」

 

深く深呼吸をして、扉を開く。今思えばさっきも扉を開いて直ぐに閉めたが、気にしてはいけない。扉の先では……

 

「アウト!!セーフ!!」

「よよいのよい!!」

 

全裸マッチョの男達、恐らく青年と年が近い男達が野球拳を行っていたり、豪快にビールジョッキで酒を呑んでいたりと世界観がぶち壊れそうに成っていたのだ。

 

「しゃぁぁぁあ!!俺の勝ちぃぃい!!」

「ちっ!!やられたぜ!!」

 

青年は再び目頭を抑えた。あ~れ?可笑しいな、ここはトレセン学園の関係者が居る筈だよな?どうして全裸のハジケリストの巣窟となったのだろうか?

 

「いや!!きっと…マトモな人が居る筈!!」

 

全裸のハジケリストと視線が合わないように、店内を見回す青年。店内の人物の大半が全裸のハジケリストであるが、良く見てみると…何人かのウマ娘も居ており、そのウマ娘の大半はトレセン学園の制服を着ており、トレセン学園の生徒のようだ。

 

「客か…珍しいな。今日は定休日だ、この時間は頼れるバカどもが騒がしい。なんのようだ」

 

すると、奥から帽子を被った老紳士がやってきた。顔は整った顔立ちをしており、脚が悪いのか杖を着いており…左足を引きずって歩いていた。

 

「すいません!!トキノ……げふんげふん!!駿川たづなさんの紹介できました!!」

「ああ、彼女が言っていた新人トレーナーは君のことか」

「あの…奥様居ます?」

 

青年は老紳士に奥様居ます?と聞いた。何故なら、トキノミノルから「ヘイローって人に話しは通してますよ」と言われたためだ。ヘイローと言うと、ウマ娘のような名前だ。ウマ娘は原則的に女性だけであり、青年は奥様と聞いたのだ。

 

「妻とは大昔に離婚した。息子が産まれたあの時からな」

「そっそうですか…あのヘイローさん居ます?」

「ヘイローは俺だ」

「うそーーん!!いや、どっから見ても男性じゃん!!」

「固定概念は良くないぞ、青年。コーヒーで良いか?」

 

老紳士こそがトキノミノルが話を通していたヘイローだったのだ。まあ、ヘイローとは栄光という意味があり、男性でも外国人なら違和感がない名前だろう。

 

「改めて自己紹介だな。俺はヘイロー、アメリカ出身のしがない男だ。10年以上前に、息子が病死してな…娘の誘いで日本にやってきた。

今はこの『静かなるミサ』の店主をしながら、チームアルコルのチーフトレーナー兼サークルPeekaboo 略してパブの代表をしている」

 

老紳士…ヘイローはそう言うと、青年にカウンター席に座るように合図を出して、青年はカウンター席に座る。

 

「どうも…荒川ユタカです。○○短大を卒業して、この春から中央トレセン学園で、トレーナーになります」

「ふむ。そうか…」

(良かった…代表はマトモそうな人だ…)

 

ヘイローが良い人そうで、一先ず安心する青年改めて荒川ユタカであった。

 

「パブはトレーナーやウマ娘の社会的教育も兼ねている。トレーナーとして成長したい若人、どこのチームに入れば良いのか迷うウマ娘が居る。

そして、全てのウマ娘がレースでの夢を叶えられる保証はない。君もそれは理解できるね?」

 

ヘイローはそう告げて、コーヒーをユタカに差し出した。

 

「ただレースで活躍できるように導くのが我々、大人の仕事だろうか?いや、違う。俺達大人は、子供達のその後を見据えて導いていかなければならない。

だからこそ、共に社会経験を積んだり、レース以外での夢や生き甲斐を共に見付けるのだ。もちろん、レースで活躍できれば一番だがね」

 

トゥインクルシリーズでのレースで活躍できれば、莫大な利益が入る。レースでの賞金、CDデビュー、広告費、ファッションモデルとしてのデビューなどなど、沢山だ。しかし、それが出来るウマ娘はほんの一握りであり、トレセン学園に入ったのは良いが、一勝も出来ずに現役を終えるウマ娘だって少なくないし、成績が振るわなくてトレセン学園を中退するウマ娘だって居るのだ。

 

「夢やぶれたからと言って、トレセン学園に居たかった子供達も多い筈だ。パブはそんな居場所を失ったウマ娘達の居場所でもありたいんだ」

 

「そうなんですか……ところで、アレは良いんですか!?」

 

一方、後ろでは

 

「「アウトセーフ!!よよいのよい!!」」

 

全裸のハジケリスト達が大ジョッキでビールを呑んだり、野球拳をしていた。

 

「ああ、いつものことだ。なに、今度の地域ボランティアでの準備を誰がするのかを決めるため、じゃんけんしていたんだよ」

「いいか?気が付けば脱げていた、じゃんけんと言えば野球拳だろ?」

「全くだな、新人」

 

先ほどまで野球拳で争い、片方はパン一、片方は全裸と成っていたマッチョ二人が話しかけた。

 

「俺は寿竜次郎、パブ所属のトレーナーで大学2回生だ。春から3回生だが」

「同じくパブ所属の時田信次だ。同い年だし、宜しくな」

 

金髪全裸のマッチョは寿竜次郎、短髪パン一マッチョは時田信次。パブ所属のトレーナーであり、なんと大学在籍中にトレーナー資格をとった非常に優秀な2人である。

 

「そうか…宜しく」

「竜次郎、信次。可愛がってやれ」

「「VAMOS(行こうぜ)!!」」

 

 

 

 

 

 

「しゃぁぁぁぁあ!!どんなもんじゃぁぁあ!!」

 

荒川ユタカ。約2時間でパブに染まり、ビール大ジョッキを掲げてガッツポーズ。野球拳で3人切りを達成した。

 

「ふゅー!!やるじゃないか荒川!!」

「3人切りとは大したもんだぜ!!」

 

その後、トキノミノル改めて駿川たづながやってきて、気まずくなるのは内緒である。

*1:
日本競馬史上最強と名高い伝説。距離適性関係無く、芝もダートも関係ない。3本足でしか踏ん張れないのに、日本ダービーで引退するまで無敗を貫き…その大半を日本記録という訳の分からない強さを叩き出したリアルチート。誰か、ディープインパクト呼んでこい

*2:
史実でもデビュー戦を圧勝するまで馬主に忘れられていた




次回、たづなさん合流
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