ここはいたって健全なサークルです…たぶん   作:スピリタスXIII

2 / 2
キングちゃん、登場。


パブは常に新人を募集しております

「キング。私の後を追うのはやめなさい」

「えっ?」

 

東京都のとある高級住宅街。パブの新人トレーナーの皆様の月収を合わせても、恐らくは一月の家賃さえ満足に払うことが出来ない程の高級住宅街、成功者が集う一等地。そんな一等地に『グッバイヘイローデザイナー事務所』と看板が立てられた豪邸兼工房が存在する。

そこはアメリカでG1に輝いたデザイナーであるグッバイヘイローが夫、そして今年の4月からトレセン学園に入学することになる新1年生の少女 キングヘイローと共に暮らしている。グッバイヘイローとキングヘイロー、パブの代表であり喫茶店『静かなるミサ』の店主である老紳士ヘイローと名前が似ている。それもそうだろう、実はグッバイヘイローはヘイローの娘であり、キングヘイローは孫娘に当たるのだ。

 

キングヘイローはトレセン学園に入学が決まったが、母親であるグッバイヘイローから反対されていたのだ。

 

「お母様?どういうことですか?」

「簡単よ、キング。悪いことは言わないわ…貴方に素質はない」

 

グッバイヘイローは目力で娘を睨むように、そう無慈悲に告げた。

グッバイヘイローは素質があると、アメリカトレセン時代はちやほやされた。だが、それでもG1を勝てたのは僅かであり、ドーピングに手を出そうかと本気で迷った*1が、父親であるヘイローからグーパンを受けて思い止まった。

 

「素質があると判断されたウマ娘でさえ、勝てるかどうか分からない、それが重賞レース。更にG1を勝つには運も必要で、何度も勝てるのは本当の一握りの存在だけ。

毎年7000人のウマ娘が産まれてるけど、トゥインクルシリーズで一勝出来るのは僅かだけ…その他は敗者として未勝利で終わる」

 

グッバイヘイローの言葉はもっともだ。年間、7000人以上のウマ娘が産まれているが、その中からトレセン学園に入学できるのは僅かだけ。家柄、財力、学力、素質、コネクション、そして運…様々な要素があるがスタートラインであるトレセン学園入学でさえ狭き門。

そこからデビュー出来るのは僅かであり、デビュー出来ずにトレセン学園を去るウマ娘も多い。更にその僅かからデビュー出来ても、未勝利で現役を終えるウマ娘も多いのが現実であり、重賞を勝てるのは正にエリート中のエリート、G1複数勝利なんて最早…イレギュラーである。

 

「事実、トレセン学園に入学したことを後悔し、普通の中学に転校したウマ娘も居るわよ」

 

苦労してトレセン学園に入学できたのは良い。だが、活躍の場に恵まれず、トレセン学園を去るウマ娘も居るのだ。

 

「貴方は私のようにはなれない良いわね…高校からは進学校に「いやよ!!私は!!」キング?」

 

だが、キングヘイローには我慢できなかった。たとえ、素質がないと笑われても…その夢を諦めさせる切っ掛けを与えてきたのが実の母親だとしても。

 

「おじ様は不可能を可能にして、アメリカの頂点に立ったんでしょ!!おじ様は世間からの笑い者にされても、ダービーを「キング。サンデーの話は例外よ、あの子は例外中の例外、イレギュラーと呼ばれる例よ」それでも……」

「それでも…なにかしら?もうサンデーサイレンスは居ない……奇跡は起きないのよ。良いわね、レースだけが人生じゃないわ」

 

その瞬間、キングヘイローは机を思いっきり叩いた。

 

「なら!!私はこの家を出て、お爺様の所に向かいます!!お爺様なら……おじ様を…サンデーサイレンスを頂点に立てたあの人なら私の夢を否定しない筈ですから!!」

 

キングヘイローはそう言った10分後、必要な物をキャリーケースとリュックサック、手提げカバンに全て詰め込み、豪邸を出ていった。

 

「……誰に似たのかしら。ねぇ、サンデー…貴方が生きていたら、なんて言うのかしらね」

 

グッバイヘイローは寂しそうにそう言った。

 

 

 

「ここが『静かなるミサ』…おじ様の死後、お爺様が作ったお店」

 

電車を乗り継ぎ、トレセン学園の側にある喫茶店+レースショップ+サークル Peekaboo 略してパブの活動場所。そこにやって来たキングヘイローは、祖父の自慢の店の前に立つ。

 

「あら、珍しいですね。もしかしてキングヘイローさんですか?」

 

ふと、後ろから声をかけられる。振り向いたキングヘイローであったが、そこにはトレセン学園の理事長秘書としての緑スーツを身に纏い、帽子でウマ耳を隠した美女 トキノミノル改めて駿川たづなが立っていたのだ。

 

「貴方は?」

「私は駿川たづな。トレセン学園理事長秘書です。そうですね、あの人の姪なら正体を明かしても良いですね。私はトキノミノル…サンデーサイレンスの最初で最後の教え子です」

「おじ様の教え子!?」

「はい。先生の昔話は、お店で話しましょう」

 

たづなと共に、キングヘイローは『静かなるミサ』の中に入る。

 

「「「いらっしゃいませぇー!!」」」

 

そこでは…見た目では全裸の上からエプロンを纏った荒川ユタカ、時田信次、寿竜次郎の3人であった。

 

「男の裸エプロンとか、誰特なんですのぉぉぉおお!!」

「荒川くん、もう染まったんですか?私が見込んだだけは有りますね」

「この魔境に放り込まれたら、だれだってこうなるわ」

 

実は既に荒川がこの魔境であるパブに放り込まれてから、既に3日が経過しており、荒川はヘイローからトレーナーとしてのノウハウを教えてもらいながら…同時にパブのノリに染まってしまったのだ。

 

「いやいやいや、なんで裸エプロンなの!?」

「いや、この後…トレセン学園のプール清掃からの指導が有るからな」

「どのみち水着になるんだ、良いだろ」

「手間が省けるしな」

 

キングのツッコミに対して、上から荒川、時田、寿の言葉であった。

 

「そっ…そうなの…」

「活動費も出るからな」

 

と、その時だった。

 

「ユタカ、信次、竜次郎、良いか?」

 

奥からヘイローの声が聞こえ、裸エプロンの男3人は振り返る。だが、荒川は水着を履いていたが、時田と寿は全裸の裸エプロンだったのだ。

 

「この人達、はいてねぇぇぇえ!!」

「「おっと、つい」」

「ついで済ませますの!?」

「キングさん、これがパブクオリティーです」

「たづなさんまで!?」

 

これぞ、パブクオリティー!!

 

やがて、杖を着いてヘイローが現れた。当たり前だが、ヘイローは服を着ている。

 

「キング、大きくなったな。1人で来たのか?良く来た」

「お爺様!!」

 

と、その時…店の扉が開いて『衝撃』と書かれたTシャツを着た10歳位のウマ娘が店にやって来た。

 

「プイ!じいちゃん、ただいま」

 

そのウマ娘の子供はディープインパクト。衝撃の名を持つウマ娘であり、数年前にヘイローが拾って保護責任者として育ててるそうだ。拾った理由は、亡き息子と同じ誕生日で、自分と同じ体質だからとのこと。

黒く焦げ茶色の髪をなびかせており、可愛い顔立ちのウマ娘。

 

(あれ?なんですの……この違和感)

 

だが、キングヘイローはディープインパクトを見て違和感を感じたのだ。可愛い顔立ち、どこから見てもウマ娘であるが…なんだ?この違和感は?ディープインパクトは本当に普通のウマ娘なのだろうか?

 

 

*1:
当時のアメリカ競馬では合法




静かなるミサは下宿も対応しており、寮を選ばなかったウマ娘も暮らせます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。