【VR】ブレイブファンタジー【神ゲー確実】   作:hikoyuki

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CLIMB DESIRE
CLIMB DESIRE Ⅰ


 かつて、この世界にはいくつものデスゲームがあった。

 

 『ブレイブファンタジー2』『エクステンドVR』 『ブレイブファンタジー3』。これら以外にも数多くのデスゲームが世に存在しており、今や人々はそれを一種の娯楽として捉えている。

 

 参加した回数を自慢する者、 新たに主催する者、多くの人々がデスゲームというイベントに憧れを持ち、そして受け入れてきた。しかし、実のところ、彼らはデスゲームを知っているとは言えないだろう。

 

 ブレイブファンタジー2はデスゲームが開始して2時間で"終結"し、死者はでなかった。

 

 エクステンドVRはデスゲーム推進委員会を仕留めるための"罠"であり、死者はでなかった。

 

 ブレイブファンタジー3はそもそも"ごっこ遊び"の類であり、死者が出るわけがない。

 

 世の中に存在するほぼ全ての"自称"デスゲームは実際のところ、一人たりとも犠牲者を生み出していない。そう、完全な偽物に過ぎないのだ。

 

 たとえ本当にデスゲームであったとしても、何重にも強固な対策と管理が施された現代の社会においてはいとも容易く鎮圧されてしまうだろう

 

 最早、デスゲームに参加することによる危険性など存在しない。そもそもこんなものをデスゲームと呼んでいいのだろうか?

 

 

 そう、この世界において、"本当のデスゲーム"であったのは一つだけだ。

 

 "それ"に比べたら全てのVRMMOは児戯に等しい。

 

 全ての始まりであり、

 

 至高であり、

 

 究極であり、

 

 そして、世界で唯一、"死者を生み出した"VRMMO。

 

 それが『クロスブレイドVR』。

 

 命を賭して世界を駆け抜ける快感。

 やり直しなど存在しない、スリルと血飛沫に溢れた闘争。

 背中を預けられる者などいない、疑心と暴力に満ちた世界!

 

 あの血塗られた栄光の日々を、忘れることなど出来やしない。

 

 私たちは待ち続ける。

 

 真の世界(バーチャル)の幕開けを。

 

 私たちは待ち続ける。

 

 真の人生(デスゲーム)の始まりを。

 

 

 

『では、これよりデスゲームを始めます』

 

「えええええええええ!???」

 

 ボクの名前は卍荒罹崇卍、動画配信者だ。最近は特にVRMMOに関する配信を多く行っており、今回は優勝賞金が1億円だと告知されていたVRゲームに参加したのだが……。

 

「どうしたんだいお嬢ちゃん。まるでこのゲームがデスゲームだと知らなかったみてぇじゃねえか」

 

 空に浮かぶGMの衝撃的発言にショックを受けていると、隣からさらに衝撃的な発言が飛んできた。え?このゲームがデスゲームなのって周知の事実なの?

 

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>知ってた

 

>いつもの

 

>『独自開発のゲームハードでのみプレイ可能』とかほざいてたシーンで察した

 

>↑デスゲーム専用ハードかな?

 

>まーた卍さんがデスゲームに取り込まれたのか

----

 

 配信中のコメント欄が盛り上がっているのだけが救いだけれど、普通騙されるよね?独自開発のゲームハードとか絶対面白そうじゃん?ボク、最新技術とかそういうの見られるのかなーって思ってこのゲーム始めたんだけど?

 

「ぜんぜん知りませんでした……」

 

「そ、そうか」

 

 なんだかお隣にいたおっさんアバターの人から憐れみの眼を向けられている気がするけどボクは全然悪くない。

 

『それではルールを説明いたします!まず、勝利条件から説明しましょう。あちらに見えます超高層の塔。『バベル』の最上階に辿り着けばクリア。優勝賞金が獲得できます』

 

「なるほど、先着なのでしょうか。ハードルが高そうですね…」

 

「デスゲームと言えば安全マージンと効率のバランスが肝心だからな。そこにスピードという条件が加わるとなると難易度はさらに上がる。こいつは燃えてきたぜ!」

 

 隣のおっさんはデスゲームマニアかなにかなのでしょうか……?奇特な人ですね。

 

 しかし周りを見渡すと、デスゲームマニアはおっさんだけではない事に気づいた。

 

「なるほど、先着ともなれば『蹴落とし』『足の引っ張り合い』も活発となるだろうな。良いデスゲームだ」

「ほむ、35点ですね。先着順ではなく山分けとした方がより殺伐としたデスゲームになると思うのですが」

「いや待て。山分けは悪手だ。下手すると内輪揉めだけで全滅しかねないからな」

 

「なんなのこの人たち……?」

 

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>デスゲームガチ勢ワラワラで草

 

>やべえよやべえよ……

 

>卍さんの命運は早くも終了ですね

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 コメント欄はもはやお通夜状態。今までボクは何度かデスゲームを経験しているが、ここまで闇が深いゲームは他に見たことがない。あまりの衝撃に視聴者数が次から次へと増えているのが唯一の救いだが、遺作にならない事を祈りたいです……。

 

 コメント欄を見ながら絶望していると、GMがまた話し始めた。どうやらデスゲーム談義が始まったのを見て待ってくれていたらしい。実に気の利くデスゲーム運営である。皮肉です。

 

『念を押しておきますがこのゲームはデスゲーム。速さを競うのも大事ですが、それで命を落としてしまわないように気をつけてくださいねえ?ククク……なにせあなた方は3回までしか死ねないのですから』

 

「えっ?3回までセーフなの?よかったー」 

 

 どうやらデスゲームとは言ってもワンアウトで人生が終わるわけではないらしい。状況が変わったわけではないのだけれど緊張がほぐれた。と、その時隣から怒鳴り声が。

 

「ふざけるな!!デスゲームで残機制だと???舐めてんのか???スリルが楽しめねえじゃねえか!!!!!」

 

「この人頭大丈夫?」

 

----

>辛辣すぎて笑った

 

>デスゲームよりこのおっさんのほうがやばい定期

 

>↑そんな定期はない

----

 

「いや、待て。残機が必要なほど高難易度の可能性も考えられる」

「なるほど、ゲーム自体のバランスで調整してくるわけか」

「ほむ、上げて下げてまた上げる。ここの運営はエンターテイメントを理解していますね」

 

『ルールに不満のある方もいらっしゃったようですが、圧倒的なクオリティで評価を塗り替えて差し上げましょう!これ以上の細かいルールは必要ありませんよね?ゲームスタートです!』

 

 GMがゲーム開始を宣言すると、我先にとプレイヤー達は塔へ、あるいは周囲の探索へと向かい出す。軽く数を数えてみたが、少なく見積もっても100人以上がこのゲームに参加しているようだ。

 

「さて、ボクとしては大人しく安全地帯に引きこもっていたいのですが……絶対まずいですよね?」

 

 視聴者さんに問いかけてみると、即座にコメントが帰って来た。やはり『デスゲームの安全地帯ほど信用ならないものは無い』というのは共通認識のようだ。

 

 「仕方ありませんね。とりあえず身の安全は守れるようにレベル上げはしときましょうか。【メニューオープン】っと」

 

キーワードを呟くと、ボクの目の前にウィンドウが表示された。とりあえずの現状確認は必要だ。表示されたメニューに目を向ける。

 

 

アイテム

 

ステータス

 

スキル

 

パーティ

 

フレンド

 

GMコール

 

ログアウト

 

 

「ん?幻覚かな?」

 

----

>ログアウトボタンあって草

 

>押したら死ぬトラップかな?

 

>押しても反応しないんでしょ?俺は詳しいんだ

 

>↑ハッキング式のデスゲームとかならわかるけど、デスゲームとして作られたゲームにログアウトボタン設置するか??

----

 

「わからない時は聞いてみましょう!GMコールポチッ」

 

 ボタンを押すと即座にGMの人が目の前に現れた。

 

『どうなされましたか?』

 

「すいません、メニューにログアウトボタンがあるんですけど仕様ですか?」

 

----

>めっちゃ直球で質問してて草

 

>GM「バグだから消しますね」

 

>↑ありそう

 

>マジでバグなら運営無能すぎる

----

 

『あー仕様ですね』

 

「え!?」

 

『だって残り残機が1になったらもうプレイしたくないですよね?ユーザーに配慮させていただきました』

 

----

>運営有能すぎない

 

>どう見ても無能

 

>デスゲームとはなんだったのか

----

 

「そ、そうですよね!さすがです!」

 

 確かに当然の話なんだけど!ありがたいんだけど!

 

 デスゲームでそんな事あってもいいの!??

 

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