メカ少女を名乗る魔法少女の変な人 作:メカホー
仮に願いを叶える代わりに魔法少女になれるシステムがあるとしよう。
僕と契約して魔法少女になる感じのアレだ。
いかにも胡散臭い、けれども年頃の少女の前に現れたらなんとも抗いがたい。
そんな存在によって、願いを叶える代わりに魔法少女になるとしたら。
どんな願いを叶えるか。
お金のため? 誰かを助けるため? 自分の夢を叶えるため?
まぁ、事情は人それぞれだろう。
私の場合は――
なにせ、前世は男だったという記憶を持つ、いわゆるTS転生者の私には。
叶えたい夢があったから。
その夢を叶えるのに、魔法少女の力が必要だったから。
だから魔法少女になった。
じゃあ、叶えたい願いは何だ……って?
メカ少女って……いいよね。
♪
夜空を駆ける魔法少女がそこに一人。
その速度は音速を超えるほどのスピードで。
さりとて、迷いなく少女は空を駆けて行く。
見つかることはない、機械からも魔法からも感知されないステルス機能を有した”私”の
そうそう捉えることはできないだろう。
「――それで、今日も魔獣どもはごきげんだって?」
『イエス、マスター。現在、目標地点にて無防備な少女を襲撃中です』
「無防備っていったって、魔法少女の卵だから放っておけば”アイツ”が勧誘をかけるだろうけど」
インカム”そのもの”と化している私のマスコットにそう返事をしながら、私は速度を更に早める。
そもそも、この特殊な結界――魔法空間に入ってこれる時点で魔法少女の素質があるんだから。
わざわざこうして、対象の救援に向かうのを急ぐ必要はないんだけど。
「ま、それが目的じゃないからね」
普通の魔法少女なら、自分と同じ境遇の少女を増やしたくないと思うのだろうけど。
私の場合は、単に戦いたいからやってるだけだ。
出力の仕方は違っても、結果が同じならそれでいいと思うんだけど。
とにかく、空を駆ける魔法少女が一人、そこにいる。
その姿は魔法少女というにはいかにも歪で。
衣服は、ぴっちりと身体に張り付くスーツである。
背中には、翼が生えている。
魔法少女らしいといえばらしいが、その構成パーツはすべて機械。
鳥の羽を模した、機械の羽だ。
腰にはスカートを模した装甲が。
靴も金属製でゴツゴツとしている。
全体的に、魔法少女を意識した女性らしいフォルムではあるものの。
決定的に異質なそれを、私は端的にこう呼んでいた。
メカ少女、と。
呼び方は人それぞれだろう、ただまぁロボ娘というと私自身がロボになるし。
武装少女だと広義すぎる。
まぁ、メカ少女が一番無難な呼び方だと思うのだが、どうだろう。
そして、これこそが私の魔法。
この世界の魔法少女は、自身の夢を叶える代わりに魔法を得るという。
某マギカな世界の魔法少女に近い特性を持っている。
だから、人によって魔法の種類が違うのだが。
私の場合は、メカ少女の武装を作ること。
今こうして展開している武装も、私自身のお手製だ。
『マスター、まもなく戦場に到着します』
「おっけー……よし、視えた。全部小型の魔獣で、中型以上はいないみたい」
『私の索敵通り、当然の結果です』
「本当かぁ?」
言いながらも、私は空中で一旦静止した。
腰に備え付けられた装甲のスカート部分から、武装を取り出す。
片手には、銃。
いわゆるビームライフルと呼ばれるソレは、ミドルレンジでも近接でも比較的取り回しやすいこの装甲の基本武器だ。
他の装甲になれば、また違うんだけど。
「よし、行くよ」
『――ステラシステム、スタンバイ』
「魔法少女エクス・マキナ。モードヴィエルジュ! ――エンゲージ!」
言葉とともに、魔獣の群れへと突貫していく。
高速で接近しながら放たれるビームに、魔獣たちは反応が間に合わない。
核を的確に撃ち抜かれ、大きく吹き飛ぶと爆発した。
「きゃあ!」
「おっと危ない」
逃げていた少女が、爆風で吹き飛ぶ。
ホント魔獣って、死ぬと爆発するのが絵面としてはかっこいいんだけど、こういう時困るな。
私はなんとか少女を受け止めて、怪我が無いよう支える。
「え、あ、何!? 貴方その格好……え、あの変なのが一発で……」
「とりあえず、君はもう無事だから安心して。私が守るから」
とはいえ、音速戦闘すら可能な私の動きに、変身もしていない生身でついてきてもらうのは明らか無茶だ。
すぐに地面に下ろすと、動かないよう言い含める。
おそらく中学生くらいだろう女の子は、混乱しながらもその言葉には頷いてくれた。
「絶対にここから動いちゃだめだからね!」
「は、はい!」
守りやすい場所にわざわざ置いたのだから、そこから逃げられると困ってしまう。
とにかく、これで準備は万端。
早速魔獣たちを狩っていくとしよう。
「さぁ、楽しい楽しい狩りの始まりだよ、”システム”」
『イエス、マイマスター』
私のマスコット、システム――なんとも無骨な名前の”彼女”に呼びかけて。
私は両手のビームライフルを握り込む。
眼の前には、狼型の魔獣が複数体、唸り声を上げながら私を待っていた。
♪
戦闘は続く。
迫りくる魔獣の群れを、私は得意の高機動で避けていく。
ブースターによる加速でもって、三次元的な動きで噛みつこうとしてくる狼の上を取り、ライフルで核を撃ち抜く。
爆風を背に続けざまに狼を撃ちぬき、離脱。
爆発が宙を駆ける私の背中で響いた。
『残存魔獣、残り十』
「ありゃ、もうそんだけ」
『ライフルのエネルギー残量、残り50%』
「派手に使いすぎたね」
言いながら、私はライフルを装甲のホルスターになっている部分に戻すと、スカートを回転。
このスカートっぽい装甲、単純なお洒落ってだけじゃなくて武器を入れておくホルスターでもあり、回転ギミックにより手元にちょうどいい武器を用意することができるのだ。
今回使用する武器は――
「やっぱ、ビームサーベルでしょ」
一本の発煙筒みたいな形状の機械を取り出し。
そこからビームをぶぅん、と剣の形に生やす。
二刀流になった私は、再び魔獣へと突貫した。
そのまま、残る魔獣をくるりと回転するような軌道で駆け抜けざまに切り捨てていく。
ライフルでも一撃な小型の魔獣だ、それ以上の長い時間ビームを押し当てられたら、たやすく切り飛ばされるのも無理ない話。
残る十体の魔獣も、あっという間に掃討することができた。
「こんなもんかな?」
爆発で酷いことになった街を見下ろす。
魔法空間内部での破壊は、空間が解除されればもとに戻るとは言え。
派手に吹き飛ばしすぎたかもしれない。
いや、原因はほぼ爆発する魔獣のせいなんだから、私は悪くないでしょ。
と、その時である。
私の直感が、最大限のアラームをかき鳴らす。
同時に、システムが――
『上方より、新たな魔獣の接近を確認! 中型です!』
「ほらやっぱり、他にもいたじゃん!」
『私の索敵をくぐり抜けたイレギュラーです、マスター。対処を!』
「それは単純に君の索敵能力が足りてないだけだ、ポンコツ!」
そんなんだから、今まで相方も与えられず売れ残りマスコットと化してたんだぞ。
と、思いながら私は接近する魔獣の攻撃を既のところで躱す。
相棒がこんなもんだから、常に索敵は怠っていないのだが。
それでも速い、結構ギリギリだった。
そのまま地面に着弾した魔獣は、砂埃の中からこちらを見上げてくる。
その姿は……いうなれば翼の生えたライオンだ。
『確認できました。中級魔獣キマイラです。マスター、お気をつけを』
「今更中級で気をつけるってこともないけどさ……キマイラだろ?」
言いながら、私はキマイラに肉薄する。
キマイラが気付いているかいないか解らないけど、釘付けにしておかないと救助した女の子が危ないからね。
しかし――
「……やっぱり! 全然効いてない!」
『キマイラは純粋な魔力エネルギーに対する装甲を有しています。マスターのビーム兵器は効果が薄いかと』
「ビームといいつつ、魔力を光にして飛ばしたり剣にしてるだけだもんね、これ」
まぁでもビームなんてそんなもんだけどさ。
ロボットモノのビーム兵器と、某運命ゲーの青王の聖剣ぶっぱって設定はともかく絵面としては何が違うんだ? って話だ。
ともかく。
「そうなると――有効なのは、物理属性だ。吶喊力のあるスコルピを持ってくるべきだったね」
『モードチェンジを行いますか?』
「もちろん!」
今の私の武装は、基本的にビーム兵装に集中している。
背中の羽とか、ビームを広範囲に垂れ流す殲滅兵器だし。
物理系の……もっと言えば実弾詰め込んだ銃とかはヴィエルジュの専門外だ。
一応、小型のナイフくらいなら持ってるけど、流石に火力不足だよ。
「モードチェンジ、ヴィエルジュ、トゥ、レグルス!」
『ステラシステム・スタンバイ』
私の宣言とともに、私を覆っていた装甲がすべてパージされる。
残るのは、インナースーツを身にまとった私だけ。
その状況でも、魔法少女だから空は飛べるし、なんならビームサーベルくらいなら形成できるのだがそこはそれ。
情緒というものを大事にしたい。
パージされた装甲の代わりに、上空から飛来する飛行機型の装甲。
それが分離すると、私の四肢に装甲が装着される。
肩には無骨なアーマーが、足には先程みたいな靴だけ装甲ではなく、分厚いパーツが。
スカート部分は変わらない。
ただ、先程までは純白の白だったのが、今は金の差し色がそこかしこに。
見る人が見れば、そのモチーフが一発で解りそうなデザインだ。
そして私は、そのまま地面に着地。
両足を横に大きく開脚すると、地面に手をついて。
「……モードレグルス!」
キマイラに迫る!
モードレグルス、私が使用する”ステラシステム”において地上戦特化モードとして設計されたそれは、二本の実剣とアンカー。
それから実弾の入ったライフルで構成されている。
魔力によるエネルギー装甲と、魔力ビームを連射と単発火力で切り替えられる銃もあるよ。
今回は使わないけど。
ステラシステムは、状況に応じて武装を切り替える某ロボットアニメでは時折見られるギミックだ。
太陽系の惑星を元にした某システムが個人的には特に好きなので、黄道十二宮をモチーフにしたステラシステムとして実装している。
まぁ、問題があるとすれば……十二宮モチーフに考えた割に、まだ十二個分モードが完成してないことなんだけどね。
『マスターは、いつになったらすべてのモードを実装されるのですか? そもそも、どうして十二のモードを実装していないのに、十三番目のモードはすでに実装されているのでしょう』
「いいんだよ、へびつかい座はロマンなんだから!」
軽口を交わしながら、ライフルで牽制して実剣で斬りかかる。
足の装甲に備わっているローラーを駆使して、超高速で地面を駆けながら。
「そら!」
”――――!!”
斬りつけると、キマイラが悶える。
うん、効いてるね。
そんまま何度か切り結び、時には足蹴りで奴の脳天を揺らす。
最終的に正面から飛びかかってくるのを後ろに飛び退いて交わし、今度はこちらから突撃。
奴の口に、剣を突き立てる。
「はいだらああああ!」
掛け声とともに、噛みつくために閉じた口を剣をつかってこじ開ける。
こじ開けられた口に、二本の剣を挟み、片方を足で、もう片方を手で押さえる。
そして空いた手でライフルを取り出すと。
「――悪いね、チェックメイトだ」
全弾発射!
凄まじい銃声が、キマイラの口の中へと叩き込まれていく。
内部をずたずたにしたソレは、ついには核すらも撃ち抜いて――私が離脱。
直後、キマイラは凄まじい勢いで爆発するのだった。
「派手だねぇ」
『状況終了、お疲れ様でした』
「……それ、本当だろうな」
警戒を緩めることなく、周囲の気配を探る。
すると、こちらを見つめる視線が一つ。
先ほど救助した少女が、怯えた様子でこちらを見ていた。
怖かったろうに、もう安心していいよ。
それから、もう一つ。
「……別の魔法少女が来てるね。後のことはその子に任せようか」
『マスターは警戒されているため、妥当な判断かと』
「悪いことは何一つしてないはずなんだけどなぁ」
なのにどういうわけか、同業からの評判が悪いのが私です。
いやまぁ、こんな普通じゃない戦い方をしてれば、そうなるのは当然っちゃ当然なんだけどね。
下手に警戒されてもしょうがない、後のことは一般的な魔法少女に任せるとしよう。
そう考えて私は武装をヴィエルジュ――ステラシステムの最も基本的なモード、プラネッツにおけるアースみたいな――に切り替えると、その場を飛び去るのだった。
♪
「――魔法少女」
「そうよ、それが私達。願いによって縛られ、魔獣を倒すことを定められた存在」
ドレスの上に胸当てという衣装の赤い髪の少女が、制服姿の少女にそう語る。
片方が魔法少女であり、もう片方が魔法少女の卵だ。
先ほど別の魔法少女に、魔法少女の卵が救助されたという事前情報がなくとも、衣装だけでその関係性が解る二人である。
「あ、あの……その魔法少女に、私もなれますか!?」
「なれるわ。今この場所――魔法空間に入れることがその証。何より貴方には――」
ドレスの魔法少女は、制服姿の少女を見る。
その瞳には、硬い決意が宿っていた。
「貴方には――叶えたい願いがある」
「……はい」
「でも、警告しておくわ。その願いを叶えることが、貴方にとって決して幸福をもたらすことはない」
言いながら、魔法少女は自身の姿を見下ろす。
願いを叶え魔法少女となり、今も戦う自分の姿を。
「魔法少女は願いを叶えたら最後、その願いによって生まれた魔力が尽きるか、
「……それでも、叶えたい願いがあります」
「解ってる。だからこそ警告なの」
魔法少女、願いを叶え魔獣を狩る存在。
その強さは、叶えた願いとどれだけ本気で願いを叶えたいと想っているかに依存する。
特に思いの強さはそのまま魔力の量に直結するのだ。
そして同時に、魔力がその身に宿っている限り、魔法少女が戦うことは使命である。
魔力は魔法少女になった直後がピークで、少しずつ減衰していく。
それでも、完全になくなるまでは長い年月を要する。
その間戦いから逃げ出すことは、魔法少女を生み出すマスコットが許さない。
「それで……あの」
「……何?」
「さっきの、あの子のことなんですけど」
あの子
言うまでもない、それは先程制服の少女を助けた
「……ああ、マキナのことね」
「あの子も……魔法少女なんですか?」
「魔法少女エクス・マキナ。紛うことなき、魔法少女の一人よ」
まぁ、と魔法少女は頭を押さえるようにして続ける。
「……とんでもない、問題児ではあるけどね」
魔法少女エクス・マキナ。
この魔法少女の界隈において、問題児にして異端児と呼ばれる少女だ。
透き通るようなクセの強い銀髪に、緑の目。
強烈に周囲を引き付ける美人な顔立ち。
それでいて、背丈は小柄でスレンダーな体系。
人形のようだと、魔法少女は想っている。
「魔法少女って……願いを叶えることで魔法少女になるんですよね?」
「……ええ」
「叶えた願いが、魔法少女の魔法になるんですよね?」
「……そうね」
問いかける制服少女の顔は、歪んでいた。
恐怖。
ソレはなんというか、魔法少女に向けられる表情ではない。
ただ、魔獣に対するものでもない。
言うなれば――
「あの子は、一体どんな願いで魔法少女になったんですか!?」
そう、例えるなら。
刃物を持った不審者と遭遇してしまったような。
そんな恐怖。
「……わからないわ」
ドレスの魔法少女は、制服少女の言葉に頭を押さえつつつぶやく。
そう、わからない。
何一つわからないのだ。
どうしてマキナがあんな姿をしているのか。
どんな願いを叶えたら、あんな姿になって
何せ――
「だって、銃ですよ!? 魔法なんかじゃ全然ない! あんなの、人を殺すための道具です!」
「……そうね、そのとおりだわ」
ことここに至って、マキナ本人と周囲の間に、認識の違いがあるのは明白だ。
マキナにとって、メカ少女はロマンでしかない。
魔法を使って魔獣を倒すのも、メカをつかって魔獣を倒すのも同じこと。
銃にしたって、他の魔法少女も杖から魔力エネルギーを放っている。
武器の形状を変えているに過ぎないのだ。
中には、魔法で実剣を生み出して戦う魔法少女だっている。
ただ――実弾を伴う銃は異様だと言わざるを得ないだろう。
生み出すことは不可能ではない。
生み出すために捧げられた
「……マキナは、異端児よ。何せあの子は――戦うために戦っている」
魔法少女は、結局のところ普通の少女にすぎない。
どこにでもいる、一般人の普通の少女。
実銃を生み出すような願いは、普通抱くことがない。
たとえマキナと同じ願いを抱いたとしても――本気で叶えようとは思わないだろう。
正直、マキナだって自分が異端だと思われていることは知っている。
戦うために戦うことが、異常なことだとは認識している。
それでも、転生というイレギュラーすぎる事態によってどこか認識の歪んでいる彼女は、
「だったらそんなの……悲しすぎます! だって彼女の願いは、戦わなければ叶わないんですよね!?」
そうね、と歯噛みするように魔法少女は同意する。
魔法少女たちは、こう考えていた。
願いを叶えるために、マキナは戦うしかない。
じゃあ、その願いは一体?
考えられることは――たとえば、
もちろん、それは大きな勘違いでしかないのだが。
マキナが、周囲に警戒されていると思い、他の魔法少女と没交渉なのも勘違いを加速させる原因となっていた。
かくして魔法少女エクス・マキナは――周囲に勘違いされていることを気付くことなく。
今日も、ロマンを追い求めていた。
本人は好き勝手生きてるけど周りから勘違いされる魔法少女が無双するの好き……
というわけで書きました。
よろしくお願いします。