メカ少女を名乗る魔法少女の変な人   作:メカホー

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三 メカ少女に培養ポッドはつきものです。

 その夜、私は偵察任務と称して、空を飛び回っていた。

 先日発見した上級魔獣フォルネウスの痕跡をたどって、魔法空間が発生しないか見張っているのである。

 という体で好き勝手空を飛び回っていた。

 

「ひゃっほーう!」

『楽しいですねー! マスター! ひゃっほーう!』

「でしょう!」

 

 システムと一緒になって、空を縦横無尽に駆け抜けるのだ。

 最高速で一直線に飛んでみたり、ドリフトをかけながら急旋回してみたり。

 縦に円を描いてみたり。

 極めつけは最高速で雲を突っ切って、月に手が届きそうなくらいの高度まで上がった後の――

 

「浮遊感ー!」

『ひゃっほーう!』

 

 ――自由落下!

 重力をその身に感じながら、身体を反転してうつ伏せの体勢で落下していく。

 お手軽スカイダイビングを楽しみつつ、雲を突っ切って地上に近づく。

 すでに時刻が深夜といっていいくらいの時間帯なので明かりはポツポツとしかないけれど。

 

「――それでも、キレイだ」

 

 暗闇の中に、ぼんやりと広がる夜景。

 この瞬間、眼の前の光景を楽しめるのは世界で私一人なのだということを実感する。

 ああ、やはりこの瞬間はたまらない。

 

『それにしても、マスターは生身でよくここまで複雑な軌道が取れますね』

「私のパイスーは万能なんだよ、駆動する際の恐怖感緩和までついてるからね」

 

 こんなにも激しい機動をしたら、流石に怖くないかと思うかもしれないが。

 パイロットスーツのおかげでそんなことはない。

 ためらいがなくなると危険じゃないかと思うかもしれないが、その程度でどうにかなるほど変身した魔法少女はヤワじゃないからな。

 恐怖感緩和もあいまって、まぁ、慣れればなんてことない。

 恐怖感を緩和するために精神耐性効果をパイスーにつけたら、他人からの精神系の干渉も受け付けなくなったのは笑ったが。

 

「それにしても、全然それっぽい魔法空間が見つからないな」

『そもそも、先日の殲滅任務で魔法空間は現在、この街に存在していません。我々の日頃の奮闘の成果が出ていると言えるでしょう』

「殲滅したタイミングでフォルネウスが仕掛けてきたってのは、かなり意味深だけどねぇ」

 

 普通に考えれば、殲滅すればこちらが油断する。

 そのタイミングであんな誰が気付くんだって魔法空間を展開するのは。

 完全に何かしらの狙いあってのことだろう。

 

「そう考えると、システムのアレはフォルネウスの策が全部丸つぶれになってる可能性があるな。えらいぞー、システムー」

『でへへー』

「エリートマスコットがその喜び方はどうなんだ」

『!?!?!?!?!?』

 

 普段はもう少し取り繕った喜び方するだろうに。

 よっぽど、この間褒められたのが嬉しかったのか。

 はたまた私が未だに時折褒めるせいで、調子に乗っているのか。

 どちらにせよ、そろそろ揺り戻しが来そうだな。

 朝も朝食のタイマーを一分間違えて焦がしかけてたし。

 

「――と、そんなこと言ってたら、案の定来たね」

『魔法空間の形成を確認。ここ数ヶ月で最大規模の魔法空間です』

「中入りたくないなー、絶対酷いことになってるよ」

 

 言いながら、私は適当なビルに着地して一度変身を解除する。

 ステラシステムは全部で十二のモードの中から、変身時に二つのモードを選択して持ち込む。

 なので、モードを切り替えるには一度変身を解除しなくてはならないのだ。

 魔法空間の中でそんな危険なことはできないからね。

 今回は――おそらく、規模からして敵の数がえげつないことになっていると想定される。

 なので、範囲殲滅能力は必須。

 加えてある程度の吶喊力もほしいとなると……。

 

「よし、モードはヴィエルジュとスコルピオで行こう」

『かしこまりました。ステラシステム――スタンバイ』

「魔法少女エクス・マキナ! モード・ヴィエルジュ――エンゲージ!」

 

 戦闘開始の掛け声は、変身時の掛け声としても利用されている。

 掛け声とともに、私の身体が光に包まれる。

 動きやすい無地のスウェットがパイロットスーツに。

 腕や足に機械のパーツが取り付けられ、最後に羽とスカートだ。

 変身完了。

 やっぱ変身シークエンスはいいね、魔法少女やロボットモノにおいてバンクは定番だ。

 

「じゃ、早速行こうか!」

『イエス・マイマスター!』

 

 そのまま、勢いよく魔法空間へと飛び込んでいく。

 魔法空間の中は、光がない分薄暗い。

 しかし空間そのものが放つ光で視界は確保されている。

 まさに結界の中、といった雰囲気だ。

 そしてその中に、ひしめくように魔獣の群れ。

 

「うわぁ凄い数。確認なんだけど、巻き込まれた魔法少女の卵とかいないよね?」

『センサーに感はありません』

「ならよかった。じゃあ……戦闘開始だ!」

 

 言葉とともに、私は空中で背中の翼を広げる。

 羽のように並んでいたそれが、まるで手を広げたかのように展開された。

 

「発射!」

 

 そして、その先端から無数のビームが地面に向かって放たれる。

 うごめく魔獣たちが、ビームの雨によって瞬く間に消し飛んでいく。

 

『飛行型の魔獣を確認』

「そっちは近接で切り払うよ」

 

 同時に、空を飛ぶ魔獣が個々で襲いかかってくるので、それをビームサーベルで切り払っていく。

 直線的に飛んでくる鷹型の魔獣を、最小限の動きで回避。

 そのまま駆け抜けざまにサーベルを一振り。

 続けて近くの魔獣の翼をサーベルで切り落とした後――再び、背中の翼がビームを放つ。

 乱れ飛ぶ白色の光が、魔獣の核をまとめて撃ち抜いた。

 ――その後も、戦闘は続いていく。

 

「順調順調」

『マスター、お気をつけください。キマイラの複数出現を確認』

「これ、絶対私の通常形態がビーム塗れなの理解してやってるよね」

 

 一応、今回は対策としてアサルトライフルと実剣を一本ずつスカートの中に仕込んでいる。

 モードヴィエルジュは基本形態だけあって、武器の換装が容易かつ、復数の武器を大量に携行できるようになっている。

 が、それでもメイン兵装はビームサーベルと背中の翼なので、ちょっと分が悪い。

 なんてことを考えていたら。

 

『……後方より魔力反応を検出! 魔法少女です!』

「援軍だ!」

 

 空を飛んでこちらに迫っていたキマイラが、高速で飛んできた剣士の魔法少女によって、一撃で斬り伏せられた。

 

 

「何を考えているの、エクス・マキナ。この数に一人で突っ込むなんて無茶よ」

 

 

 どこか怒りと、心配の混じった声。

 聞き馴染みのある魔法少女の声に、私は視線をそちらへ向ける。

 

「いやぁ、夜のパトロールをしてたら、たまたま出現の現場に立ち会っちゃってね」

「それでも……私が来るまで待ちなさいよ、マキナ」

「ごめんごめん、ここからは共闘と行こうよ――ブレイド・ティア」

「ティアでいいわ、ブレイドは……無骨で可愛くないもの」

 

 現れたのは、大きな剣を構えた赤髪の少女。

 燃えるような髪をポニテにして、ドレスに胸当てみたいな格好の正統派剣士系魔法少女。

 背丈は私より大分高い、確か百六十くらいって言ってたっけな?

 胸は更に大きい。

 まぁ、私としてはつかめるくらいあれば十分なのでそこまで気にならないけど。

 システムは煽るのをやめろ、ころすぞ。

 

 とにかく。

 魔法少女ブレイド・ティア。

 それが彼女の魔法少女名だ。

 魔法少女名って、ちょっといかがわしいよね。

 

「それにしても、本当にすごい数ね」

「これでも結構減らしたんだよ。えーと」

『三割くらいです、マスター』

「二割くらい」

『マスター!?』

 

 いや、システムってこういう時絶対盛ってるじゃん。

 長年の付き合いだぞ、わからいでか。

 

「まぁ、いいわ、キマイラは私がやる。その間に貴方は雑魚の殲滅、それでいいでしょう?」

「一応、私も物理系の装備持ってきてるけど」

「先日使ったっていう、デカイ剣二本振り回す奴? 聞いた話だと、地上戦に特化してるんでしょう。あんな数の群れの中に突っ込ませるとか、正気じゃないわ」

「いや、別のやつ。こっちは空も飛べるし範囲殲滅もできるよ」

「貴方……本当にどれだけの数の武装を持ってるのよ」

 

 あはは、とティアの言葉を笑って濁す。

 ティアは、私が無数の武器で戦うことに対してあまりいい印象を抱いていないらしい。

 そりゃ、端から見ればバトルジャンキーですもんね、私。

 実際それはその通りなんだけど。

 

「とにかく……キマイラも相手するならそっちのほうが都合いいから」

「わかってるわ、流石に戦わないでとは言わないから」

「たっすかる――んじゃ、システム!」

『ステラシステム・スタンバイ』

「モードチェンジ・ヴィエルジュ・トゥ・スコルピオ!」

 

 私の宣言と同時に武装が分離。

 即座に次の武装が装着される。

 現れたのは――ドリルだ。

 ステラシステムには、色んなロボットモノのあれやこれやを再現したものが多いのだけど。

 スコルピオに元ネタとなるものはない。

 だが、スコルピオを象徴するドリルは、ロボットモノなら欠かせないファクターだ。

 

『マスター、キマイラ来ます。二体!』

「同時に行くよ」

「解ってるわ」

 

 私のドリルと、ティアの剣が背中合わせにキマイラを穿つ。

 両者が同時に武器を振り抜き、キマイラが交錯すると爆散した。

 さて、スコルピオの武装はこれだけじゃない。

 サソリっぽい武器は、ドリル以外にももう一つある。

 

「毒針だぁ!」

「毒!?」

「あ、ただの針です」

「紛らわしいわ」

 

 ドリルを握っていないもう片方の手で、アサルトライフルを握る。

 これはあれだ、いわゆるニードルガンというやつ。

 トリガーを引くと、凄まじい数の針が眼下の魔獣に向かって飛んでいく。

 

「流石に光翼と比べると殲滅力には劣るけど、装弾数のお陰でいい感じに魔獣が狩れるんだ」

「……相変わらず、恐ろしい武器の種類ね」

 

 私達は、向かい合わせになりながら言葉を交わす。

 ここからはキマイラを相手にしつつの殲滅戦になるだろう、基本は私が殲滅でティアがキマイラ。

 万が一のときは各自適当に連携、と。

 まぁ、それはいいや。

 流石にティアもいれば、この程度の殲滅ならなんとでもなるだろう。

 フォルネウスが直接出てくるとも思えないし。

 

「それにしても……フォルネウスか、ようやく尻尾をつかめたのね?」

「先日見つけた極小の魔法空間と、今回の大規模魔法空間。まぁ、何かしら仕掛けてきてるのは間違いないね」

「それに……大量の小型魔獣とキマイラの組み合わせは、私達を明らかに意識してるわ」

 

 そうだね、と頷く。

 何せ私の基本武装であるヴィエルジュはビーム兵装過多でビームに強いキマイラは苦手。

 対してティアは、見ての通り武器が大剣一本なので大型には強いけど殲滅力が低い。

 単独で何とかできなくはないけど、めちゃくちゃ時間がかかるからな。

 

「まぁ、今は殲滅あるのみだよ」

「……そうね」

 

 というわけで、そこからはひたすら殲滅殲滅。

 現れる魔獣を夜が明けるまで狩り続けるのだった。

 

 

 ♪

 

 

 そう、掃討は日が昇るまで続いた。

 ほぼ完徹である。

 きっつい、いや若いから耐えられないほどじゃないんだけど。

 私の精神は単純に悲鳴を上げている。

 戦うことは好きだが、どっちかといえば戦うことそのものより、装甲をまとって身体を動かす方が好きなのだ。

 それがただ単調に針を飛ばしたりドリルを叩き込んだり。

 途中からキマイラの処理はティアに任せていいと判断してヴィエルジュに戻したけど。

 それでも結構精神的に疲労してしまった。

 剣を振るっているだけだったティアは、更に疲労が激しいだろう。

 明らかにうんざりしているようだった。

 

「このまま学校には、絶対に行きたくない」

『休んでもいいのでは? 十分体調不良を理由にできるかと』

「それはだめ……母さんは私が優等生だと思ってるから、その方がお小遣いもせびりやすいし」

『俗な……ではどうするのです?』

 

 あ、今の割と普通に失望してる感じのシステムの声、なんか効く。

 ドS系ASMRとかやってみない?

 コホン。

 

「あんまりやりたくないけど……使おう、培養ポッド」

『かしこまりました』

 

 言いながら、私は家に帰ると自室ではなく使われていない部屋へ向かう。

 私の家は結構な広さの高級マンションで、更に元は三人ぐらし用だったから空き部屋が多い。

 その一室に、私は魔法であるものを用意したのだ。

 それが培養ポッド。

 強化改造されてそうな女の子が中に入れられるあれである。

 

「五分完全回復モードでお願い」

『かしこまりました。培養ポッド起動』

 

 我が愛しのア◯クサことシステムさんが、培養ポッドを起動してくれる。

 私はパイスーのまま中にはいって、液体を体内に取り込みながら目を閉じる。

 それにしても……培養ポッドに浮かぶ美少女って……ロマンだよね!

 ただ、水の中に呼吸器なしで浮かぶと呼吸できないと思うけど、世の中のロボットモノはそこら辺どう説明つけてるんでしょうね。

 作品によって違うでしょうけど、私、気になります!

 ちなみに私の培養ポッドは、体内に取り込むとそのまま呼吸とかやってくれるL◯L方式になっております。

 ついでに体内の不純物とかキレイにしてくれるからありがたいね。

 

 さて、ここまでそんないいことしかない培養ポッドさんだが、欠点がある。

 いや、ホントいいことしかないし、私も大好きなんだよ?

 ロマンがある、便利、時間がない時の体力回復マジ神、ゴッド。

 なんだけど――

 

『五分経過、完全回復モードを終了します』

 

 システムさんのアナウンスのもと、あっという間に培養ポッドがその効果時間を終える。

 私は外に出て、身体の調子を確かめる。

 完全回復だ。

 さっきまであった倦怠感もどこかへ行っている。

 うーん、相変わらずのチート効果。

 ついでに変身を解除すれば、身体についていた培養液はパイスーごと虚空に消える。

 後は、地味なスウェットに身を包んだ美少女が残るのみ。

 髪まで乾くのすごいよね。

 

「さて、じゃあ準備を終えたら登校しようか」

『かしこまりました。今日こそはタイマーの時間を間違えません』

「信じてるぞ……?」

 

 さて、このチート培養ポッドの何が問題なのかと言えば。

 便()()()()()ことだ。

 なにせ、五分で夜にぐっすり熟睡するよりずっと高い回復効果を得られる。

 こんなもの、使えるのに使わないのはあまりに非効率すぎる。

 だから一時期、こいつを常用してたんだけど。

 削れるんですよね、人間性。

 明らかに自分が常人とは違う考え方をするようになるのがわかって、常用はやめましたよ。

 ただでさえ転生者なせいで、常人とは精神構造違ってるのに。

 これ以上人間やめてどうする! って話だ。

 しかも空いた時間でやることが遅くまでゲームか魔獣狩ってるかのどっちかだ。

 確保した時間、有意義に使ってるかと言われたら絶対にNOである。

 

 後他には、培養ポッドに入れられる美少女はロマンだけど絵面はやばいのだ。

 以前、上級魔獣を討伐したことがあるのだが、その時にかなりの激戦でめちゃくちゃ消耗したのだ。

 命に別状はないけれど、流石にこのまま帰るには明らかにたるい。

 というわけで、現地で建造しました培養ポッド。

 あくまで()()()魔法で造ってるものだから、どこでも造ろうと思えば造れるんだよね。

 魔力の回復も目的にしてるから、消費魔力は最小限になるよう工夫したし。

 で、うっかり培養ポッドに浮かんでいる私を見られてしまったのだ、ティアに。

 

 ティアは、見ての通り跳ねっ返りの強いツンデレ美少女である。

 最初のうちはバトルジャンキーな私を、めちゃくちゃ警戒している気配があった。

 しかし、培養ポッドin美少女を見られて以来明らかに態度が変わってしまわれた。

 まぁ、戦場が廃工場だったのもあって、明らかに敵に囚われてるようにしか視えませんでしたものね。

 当時は培養ポッド全盛期で、人間性も若干オワだったのがよくなかったかもしれない。

 まぁ、今では人間性も大分回復したし、ティアも大分こっちを心配しなくなったし。

 多分……大丈夫だと思います。

 

「ところでシステムちゃん、このカップラーメン硬いんすけど」

『……タイマーが一分早かったみたいですね』

 

 そして今日もシステムちゃんは可愛かったのでした、まる。




何でも造れるのヤバない? みたいなお話でもあります。
ティアさんは一話の赤い魔法少女の方です。
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