メカ少女を名乗る魔法少女の変な人 作:メカホー
先日の襲撃からしばらく、私達は結構めんどくさい状況に追い込まれていた。
というのも、アレと同じ規模の襲撃が毎日と言っていい頻度で発生するのである。
幸い、魔法空間はいつでも発生するけど魔獣は夜にしか発生しないという特性があるから、昼は安全なんだけど。
それでも、毎日徹夜ってのは困る。
私はいいんだよ、人間性を犠牲に捧げれば回復できるから。
でも不味いのはティアだ。
責任感が強くて、魔法空間が発生してしまったら投げ出せないタイプだからな。
とはいえ、ここまでくれば流石に、フォルネウスが本格的な作戦行動を開始したのは明白。
明日には応援の魔法少女がこっちに来るとのことで。
ここ最近は、他所の魔獣出現頻度も高くなってるとかで、中々余裕がなかったんだよな。
とりあえず今日を乗り切ればなんとかなる……わけだけど。
「……フォルネウス、ここで仕掛けてくるだろうねぇ」
『そうなのですか!?』
「仮にもエリートなら、そこは同意してほしかった……」
ポンコツめ……。
とにかく、今日を乗り越えればなんとかなるということは。
向こうにとって、今日が一番の襲撃日和ってわけだ。
なので、十中八九今日がフォルネウスとの決戦になるだろう。
「と、いうわけでその前にすることがあります」
『何をするんですか? わざわざこんな真昼間に魔法少女に変身する意味とは?』
「……人の話聞いてた? 呼び出すんだよ、ティアを」
おっかしいな……一回説明したはずなんだけどな……途中から返事がおざなりだとおもってたけど……こやつ……。
まぁ、そんなポンコツかわいい(マジでかわいいと思う、好き)システムちゃんは置いといて。
私は現在、昼間にティアを呼び出して人気のないビルまで来ていた。
呼び出す方法はスマホだ。
魔法少女は相手の正体を知らない場合、それを詮索してはならないという決まりがあるので私達はお互いの素性を知らないが、スマホの魔法少女専用SNSで呼び出すことはできる。
普段は全然つかってないんだけどね、私。
ティア以外の魔法少女とは没交渉だから。
で、
「……ちょっと、なんでいきなり呼び出すのよ。大事な話って? 手早く話して」
「お、キタキタ。まぁゆっくりしなって。目的は二つあるけど、一つは今日には決戦だっていうのになぜかバカ正直に学校へ行ってるティアを休ませるためなんだから」
「はぁ? っていうかまさか、アンタ学校サボってるの?」
「むしろなんでティアは学校行ってるのさ、一日くらい休んでも魔法少女は認識阻害で変に思われないのに」
やってきたティアが、空から着地してこちらに詰め寄ってくる。
ティアの言う通り私は学校を休んでいた、仮病を使って普通にサボりだ。
そのうちフォルネウスが仕掛けてくることがハッキリしている状況でいたずらに日常生活で体力を使うべきじゃない。
「むしろ魔法少女だからこそ、日常は常に何よりも優先すべしってのが常識じゃない」
「流石に、状況次第だと思うけどな……SNSでアンケ取ってみない?」
「上等じゃない」
ちなみに結果は6:4で休むべきが勝った。
四割も日常生活優先するの? やっぱ真面目だなぁ魔法少女の皆さん。
「二つ目は、今日の作戦について」
「作戦? そもそも貴方、フォルネウスの狙いが解るわけ?」
「断定はできないけど、可能性は限られるでしょ」
言いながら、自分自身を指差す。
「私は、上級魔獣を撃破したことがある」
前にもちょろっと触れたかもしれないが、私は以前上級魔獣を単独で撃破したことがある。
これは結構凄いことだ、敵の幹部を一柱恒久的に減らしたのだから。
まぁ、七十二柱いるけどね。
あと、このことは私と統括マスコットの間の秘密である。
過去に例のないことだから、それを成し遂げた私に過度な期待を周囲が抱くことがないように、とのこと。
「だからフォルネウスは、当然私を殺したいでしょ?」
「……まぁ、そうね。……って、貴方まさか」
「そう、
すごく単純な話。
ティアにはあまり無茶をさせられない、私は元気だけどティアは時折疲れが滲んでいる。
だったら、ティアを待機させて休ませればいいのだ。
こうして私が囮を買って出て、可能ならそのまま倒してしまえばいい。
「――無茶よ!」
「うお」
「あ、ご、ごめんなさい。でも……無茶なのは事実でしょ」
ティアはあまり声を荒げるタイプじゃない。
そんなティアが、こうまで大きな声をあげるなんて。
どうやら、それくらい私は心配されているらしい。
培養ポッドかましたらそりゃそうなるって? まぁはい。
「まぁ、最後まで聞いてよ、私は何も無茶を言っているわけじゃないから」
「そんなの……」
「私は
「……本気で、って」
とはいえ、ここで引くわけには行かない。
思うに、あのコンパクト魔法空間を潰せたのはすごいファインプレーだったと思うんだよね。
フォルネウスにとっても、かなりの打撃だったはず。
なのでここを分水嶺にしたいのは、こちらも同じなわけだ。
「ティア、信じて。私は大丈夫だよ」
「…………っ、聞かせなさいよ」
『マスターって、時折本当に人の心がありませんよね』
おいシステムちゃん、なんでいきなり私のことを罵倒した?
ティアが、視線を逸らしてぶっきらぼうに肯定してくれる。
ちょっと顔が赤いけど、まだ怒ってるのかな。
ともかく、私はあるものを取り出して説明を始める。
ここで説明をぱぱっと済ませたら、しっかりティアを休めないと。
ついでに私も寝るんだ、人間性は睡眠でなければ回復しないのである。
♪
――魔法少女エクス・マキナ。
魔法少女ブレイド・ティアの知る限り最も異端な魔法少女。
その強さを、ティアはその身で直に感じてきた。
一騎当千にして古今無双、無数の”兵器”を使い分け魔獣を殲滅していくその姿は、どこか恐怖すら覚えるものだ。
実際、初めてティアがマキナと出会ったとき、ティアはマキナを警戒していた。
兵器を生み出す魔法もそうだが、何より魔力量が並外れている。
それはつまり彼女の願いがそれだけ強大であるということ。
まぁ、マキナの魔力量の出どころはどちらかといえば「魔法を疑っていない」部分の方が比重は大きいのだが。
当然ながら、それはティアの預かり知らぬ話である。
何にせよ、当時のティアにとってマキナは得体のしれない存在だった。
性格は軽薄で、統括マスコットのように胡散臭く。
何より、どうしてあそこまで魔獣の討伐に執着するのかが解らない。
直接問いただしても、
「それが一番”都合がいい”からだよ。私の力を振るうために、ね?」
としか、彼女は言わなかった。
なお、ティアはこれが何一つ偽りない本音であるとは端から考えていない。
そんな認識に変化が起きたのは、マキナが上級魔獣にさらわれた時だ。
さらわれたマキナは、おかしな見た目の培養ポッドにいれられていた。
とにかくおかしな見た目なのだ。
なぜ人をあんなモノにいれるのか、ティアには全く理解できない。
もしも自分がそんな状態に追い詰められたらと思うと、ゾッとしなかった。
だが、マキナは気にした様子もなく日常に戻ってみせた。
さらわれる以前、マキナは明らかに何らかの干渉を受けていた。
そうでなければおかしいのだ、あんな――
――なお、マキナはこの状態を格好つけて人間性が消失したと表現しているが、実際は単純に徹夜でハイになっているだけである。
ともかく、そんな状態からマキナは何事もなく立ち直って見せたのである。
――羨ましい。
ティアは、そう感じていた。
魔法少女は願いを叶えることで誕生する。
ティアの場合は、怪我で二度とできなくなってしまった剣道をもう一度したいというもの。
結果ティアの願いは叶い、奇跡的に怪我は快癒。
ティアの魔法は、高い再生能力と剣を生み出す魔法になった。
これはティアに限らないが、魔法少女は願いを叶えたということに後ろめたさを感じている。
ティアの場合は、本来ならありえない状況から回復して剣道を続けることができている。
”ずるい”とティア自身が思うのも無理はないだろう。
だから、羨ましい。
魔法少女は、魔法少女であることに後ろめたさを感じているものだ。
なのに、マキナにはそれがない。
「復讐」という目的があるにしろ、マキナはそれを本気で取り組んでいる。
多くの魔法少女にとって、魔法少女であるということは「人々を守る大義」でもって後ろめたさから目をそらす手段でしかないのに。
だから、憧れた。
ティアの羨望は、憧れの裏返しだ。
それまで得体のしれない存在でしか無かったマキナに対する憧れ。
あんな趣味の悪い培養ポッドと、徹夜のテンションみたいな干渉を受けてもなお。
それでも前を向いて魔法少女をできることへの憧れ。
結果として、ティアはそれまでの警戒ではなく、別の感情をマキナへ抱くこととなる。
その名を、信奉といった。
ティアはマキナを信奉しているのだ。
自分にはないものを持っているマキナに。
とはいえ、決してティアにその自覚はない。
むしろティアは、マキナを心配して寄り添いたいと思っている。
いくら立ち直ったとは言え、あんな目にあったのは事実なのだ。
だから無茶を言えば止めようとするし、マキナには日常を大事にして欲しい。
そのうえで、本気で正面から向き合われると、何も言えなくなってしまう。
アホのシステムが「まるで恋する乙女のようですね」と内心思うのも無理はない。
まぁ、実際似たようなものではあるが。
ともあれ、そんなティアだが、マキナに対して今も疑問に思っていることがある。
それは、マキナがどんな願いを叶えたのかということだ。
アレほどの魔力量、よっぽど強い願いだったのだろう。
だが、アレほどの武装、一体どうやってマキナは生み出しているのだろうか。
その答えを、ティアは知らない。
そしてそんなことを考えつつ、今日も魔法空間へと突入していったマキナを見送って。
囮になったマキナへ何か起きたときのためにいつでも行動できるようにしていたその時だった。
ティアのいる場所が、なにもない海に変わったのである。
それは、ティアが突如として魔法空間に放り込まれたことを意味していた。
♪
『マスター、ティア様から反応がありました』
「……やっぱり狙いは
どうやら、
私は周囲の魔獣を翼のレーザーで焼き払いつつ、インカムであるシステムさんに手を当ててティアとの通信を試みる。
「ティア、聞こえてる? ティア!」
『聞こえてるわ、辺り一面海の魔法空間に放り込まれた。フォルネウスの姿は視えない』
「多分、海の中。警戒しつつ時間稼いで」
『わかってる!』
昼に渡した、私が作った通信装置は無事に使えているようだ。
こちらは通信装置ということでインカムであるシステムさんに紐づいているけれど、向こうにはブローチみたいなものがティアの胸元に存在している。
「さぁ、こっちを殲滅して向こうに向かうよ」
『かしこまりました。限定武装の使用でよろしいでしょうか』
「もちろん!」
今、私は大量の魔獣を殲滅している。
これまでより数が多い、明らかに今日が本命だ。
迫りくる小型の犬やヤギ、時には昆虫やコウモリみたいな魔獣を光の翼で殲滅していく。
時折迫ってくるキマイラには、一発蹴りを顎に叩き込んで動きを止めてから、二振り実剣を首に突き刺す。
そして勢いよく剣をねじって首を掻き切って処理。
激しい戦闘は続く。
今回、私はフォルネウスの行動には二つの意味があると考えていた。
一つは先ほども言った通り私を殺すこと。
もう一つは
多分だが、本命は例の小型魔法空間、アレで何をするつもりだったかは知らないがアレが効果を発揮していれば私を殺す算段が何かしらあったのではないか。
しかし万が一それが失敗しても、サブプランがあった。
それがティアの殺害。
私を狙っていると思わせたうえで、連日の襲撃で疲弊したティアを狙う。
なるほど非常に合理的だ。
「思うに、アレだけの戦力を動かすからには相当な準備が必要で、もし本命が潰れたとしても計画を止めることができなかったんじゃないかな。だから、本命が潰れても実行できるサブプランを用意したんだ」
『マスター、なんだか面倒くさいお役所みたいなことをいいますね』
「まぁね! ……行くよシステム。モード
まぁ、元は社会人でしたからね私。
と思いつつ、キマイラを叩き切っていた実剣をスカートにしまって武装を変更する。
モードアペンド。
現在装備している武装に、別のモードの武装を一時的にアペンド……追加する機能だ。
これの利点は、特定の用途に特化した武装を同時使用することで更に個々の目的に対応しやすくすること。
簡単に言えば、光の翼は範囲殲滅を目的とした武装だ。
そしてスコルピオのニードルガンも範囲殲滅に特化している。
これらを用いて、より速いスピードで敵を殲滅するのだ。
私の手に、空から飛んできた二丁のニードルガンが握られる。
「ティア、どのくらい持ちそう?」
『ぐ……っ! あ、この……っ! え、何!?』
「そんなに余裕はなさそうだね。とりあえず最大で三十分は耐えて!」
『三十……? と、とりあえず了解!』
向こうは忙しそうだ。
結構な強襲だったのだろう、フォルネウスが現れているはずなのに報告がなかった。
報告する暇がなかったんだ。
とにかく、こちらはやるべきことをしないと。
『しかし、マスター。これまで一日かけて殲滅していた相手を三十分はいささか無茶があるのでは?』
「バカいわないでよ、私を誰だと思ってるの?」
『失礼しました』
言いながら、私は全方位に光の翼をばらまく。
すると幾つかの魔物はそれに灼かれて消え去るが、幾つかは避けて生き延びる。
そいつ等に対し、翼のビームを照射し続けることで私は連中の移動を誘導する。
誘導からそれそうなやつは、ニードルガンで対処。
空を飛んでる奴なんかも、ニードルガンだ。
やがて一箇所に集まった魔獣を――
「一斉射!」
『フォイア!』
ビームを集束させて焼き尽くす!
消えていく魔獣、いまので軽く一割は飛んだはずだ。
「残りは!?」
『六割です』
「七割ね!」
『マスター!』
お約束は大事にしつつ、私は後方から迫る気配に対処する。
キマイラだ。
この魔法空間で、
「不思議に思ってたんだ!」
『何がですか?』
「どうして今回、キマイラしか襲ってこないのかなっ……てね。中級魔獣って言っても色々いるでしょ?」
迫りくるキマイラに、私も全力で接近。
だが、激突の直前に少しだけ横にずれて、キマイラを避ける。
そのすり抜けざまに、ニードルガンをそっと核のあるだろう場所に添えて。
――発射!
「
『ええと、つまり?』
「……解説は後!」
ごめんね、システムちゃんシングルタスクだから、戦闘中に解説とか難しいよね!
私が悪かったって!
話の本質は、敵の顔ぶれに変化がないということだ。
そうなれば、要するに効率化できるんだよ。
最初のうちは丸一日かかっていても、最終的にはかなりの時短が可能なように。
「なにより、さっきみたいな効率の良い殲滅はここまでやってこなかった。こういう事態で相手の想定を崩すためにね!」
『なるほど!』
そのなるほどはわかっていないなるほどだぞ、システム!
と思いつつ、戦闘を続ける。
残り七回、先ほどと同じことを繰り返しつつ。
キマイラは接射ニードルガンで処理していく。
やがて二十分後には、敵は完全に殲滅されていた。
「よし、終わり!」
『お見事です、マスター』
ティアとの約束まであと十分、余裕はあると思うかもしれない。
だが、実際には結構ギリギリだ。
「フォルネウスは、辺り一面が海の魔法空間にティアを引きずり込んだ。そもそもフォルネウスが水属性の魔獣だから、当然だ」
『とすると、海戦をすることになりませんか?』
「(珍しく)鋭いね、システム。そしてわたしたちに海戦用の武装はない」
だって、限定的なんですもの。
しかしことここに至って、その武装は絶対に必要となる。
だったら――
「
創るしかないのだ、この場で新しい武装を。
何より、ティアの所へ乗り込むには武装の創造は必須なのだから。
私はそう言って、天に手を掲げると――
「――天創魔法! 起動!」
マキナに近しい魔法少女ほど、恐怖より信奉が強くなる仕様です。
こないだ助けた魔法少女の卵はそろそろ魔法少女になってますが、未だにコワーとなっていますね。