転生先はエーテリアス   作:YEX

104 / 330
此処に眠る者と起す者 後

悠真から連絡が入ったタンザナイトは、対ホロウの入り口前に来ると、そこに悠真が立っていた。

 

「時間ぴったりだね。霧島と約束して、これから師匠が隠れてた基地に行く予定なんだ。だから....その時が来たら、頼んだよ。相棒」

 

『ああ、任せろ』

 

「さすが!いつものことだけど、あんたがいるとさ...すごく安心するんだよね。あ、でも出発する前に、片付けないといけないことがあったな....」

 

『片付けないといけないこと?』

 

「大丈夫、あんたの手間になるようなことじゃないって....よくある、休暇のお願いだからさ」

 

そう言い、タンザナイトと一緒に対ホロウ行動部のオフィスに入った。

 

「勤勉な同僚の皆さん各位、お疲れ様で~す。ちょっと失礼しますよ」

 

「浅羽隊員、再度の遅刻ですよ――ってそこにいるのは....タンザナイトさん?」

 

「あー、僕が誘ったんですよ。彼、ゆくゆくはウチに入りたいらしくって。じゃあまずは見学ですねという流れで」

 

『えっ』

 

「あんたには才能があるからね。ちょっと頑張れば、ウチの試験なんて余裕のよっちゃんだって」

 

「ふむ....もしそうなら私は嬉しいぞ――共に修行をつけられるからな

 

『なんか雅がノリノリになってる!?』

 

と、将来のことについて雅がウキウキにしていた。

 

「けど...今日僕がここに来た最大の目的は、皆さんにお伝えしたいことがあるからなんです」

 

「.....あなたがここへ来たのは、出勤日であるということ以外に理由があると....?」

 

「どうもそういうことみたいで....けど月城さんには、いつもいつも感謝してるんですよ。僕のめちゃくちゃな休暇申請を通すために、どれだけ骨を折ってくださってることか...月城さんの尽力がなかったら、バカみたいに休みまくる僕のような不良執行官は、とっくに上層部の査問対象だったでしょうから」

 

「まぁ考えてみけば悔しさもありますけどね。僕らは同期だったのに、そっちはもう僕より遥か先にいるんですから....」

 

「......」

 

と、急に感謝する悠真を見て、目が点になる月城だった。

 

「雅課長...課長が常々僕に寄せてくださる信頼にはもう感謝の言葉もありません。課長がいなければ、僕みたいに病気がちな人は対ホロウ行動部の敷居を跨げなかったでしょうから」

 

「言ったはずだ。お前を選んだのは、強さ故であると」

 

雅は確信したように強く言う。

 

「そして蒼角ちゃん....出勤中、よく君を隅っこに引っ張って偉そうなこと言ってたけど....あれサボるためだったんだ。ごめん」

 

「ええ?そ、そうだったの?」

 

「浅羽隊員、何かあったのですか?」

 

驚いてる蒼角に月城は悠真に訳を聞く。

 

「何も。ただ....やらなきゃいけないことがあって、今日から長めの休暇をいただこうかと。課長ぽく言うと、『過去の己にまつわる修行』ってとこですかね」

 

「ハルマサ、修行するんだ!わたしたちに手伝えることはある?」

 

「ないかな。けど、どうしても力になりたいって言ってくれるなら....僕の仕事、手分けしてやっといてもらっても?そりゃあもう感謝するので」

 

「修行ならば良い。だが、無理はするなよ。上司として、友として、私はお前を信じている――何をしようとしているのか知らないが、期限までに戻って来い」

 

「課長の言う通りです。何かあったら、いつでも私たちに連絡してくださいね」

 

「そうそう!もし期限までに帰ってこなかったら、オフィスのおやつはみーんな蒼角が食べちゃうからね!」

 

「....どうも。なるべく早く戻ります」

 

そう言い、悠真はタンザナイトと共に、対ホロウ行動部を出た....

 

『...なぁ悠真、さっき今死亡フラグみたいなの立ててなかったか?』

 

「あはは、違うって。同僚たちとしばしの別れってことで、柄にもなく感傷ってやつをね.....遅くなっちゃったな、ホロウに入る準備をしようか」

 

『....分かった』

 

若干違和感を感じながらも、タンザナイトは悠真と一緒に霧島がいるホロウへ向かっていった。

 

「....」

 

『どうした?体調、あんまりよくないのか?』

 

迫りくる敵をなぎ倒しながら進んでいくと、悠真が無言になっていた。

 

「大丈夫。このところちゃんと寝てなくてね、ちょっとばかり――ゴホッゴホッ....チッ」

 

『おいおい....ちっとも大丈夫に見えないぞ?』

 

すると、『Fairy』が悠真の体を診断し始めた。

 

[診断。先の戦闘中、浅羽悠真から手の痙攣、咳、射撃精度の低下などを検出。直ちにホロウ環境を離れ、休息することを推奨します]

 

「....認めるよ、確かにベストコンディションってわけじゃないけど...このくらい大したことないって。いま休むわけにはいかないんだ....分かるよね?このことが僕にとってどれだけ重要か...途中で投げ出すわけにはいかない、最後のチャンスだからさ」

 

『....そうまでしてその師匠を探さないといけないのか?』

 

と、心配するタンザナイトに悠真は黄色の澄んだ瞳でこう返した。

 

「....僕は、どうしても答えてほしいことがあるんだ。それになにより、霧島が先に師匠までたどり着くのは避けたい。師匠が()()()()()()()()()()()()()にしても同じ....」

 

「師匠の研究成果があんな奴に手に渡ったら、どれだけの犠牲が出るか。エーテル適性減退症の患者だけじゃ飽き足らず、一般人を実験の対象にする可能性だってある。あれはいうなれば禁断の箱...ひとたび開けたら最後、もう閉めることはできないのさ」

 

「奴のご大層な野望の前にはどれだけ犠牲が出るかなんて、まるで関係ないからね。――そんなこと、僕が許すとでも?だから、頼むよ。相棒(あんた)の力がいるんだ――最後の最後まで、僕と一緒に戦ってほしい」

 

『......』

 

悠真のこれほどのない覚悟の言葉にタンザナイトは考え込み、出した答えは――

 

『――分かった。だけど体が限界になったら、強がったりせずに報告すること....いいね?』

 

「恩に着るよ、相棒。大丈夫、僕は命が惜しいからさ。無理だけはしないと心に決めてるんだ。じゃ、このままいくってことで」

 

『ああ.....『Fairy』、今のうちに六課にもしもの時の連絡を....』ボソッ

[了解、マスター]

 

そうして、無理をしないと釘を刺して、先へとすすむと.....霧島がいた。

 

「悠真、やっと来たか...って君は?」

 

『どうも、俺のことは脱出用アシストだと思っててくれ』

 

「あ、ああ...そ、そうか....コホン、前にも言った通り、ここにはお前の師匠がいた痕跡が沢山残っている。この手がかりを辿っていけば、きっとあの男の行方を突き止められるはずだ!」

 

「....だといいけどね」

 

「そうだ。この前ここで、あの男が残した仕掛けを見つけたんだ」

 

『....仕掛け?』

 

と、霧島が言う『仕掛け』にタンザナイトは首を傾げ、反応する

 

「時間をかけていろいろ試したが、どうしても開けられなかった....あの男は本当に警戒心が強いらしい....あれを解ける奴がいるとしたら、恐らくお前だけだろう」

 

「.....」

 

「今すぐそこに連れていく。先に言っておくが、ここでは天候や時間が乱れるから――」

 

「そんなこと、いちいち言われなくても分かっている」

 

「ハハハ、忘れるところだった。お前も今では経験豊富な執行官だもんな。それじゃあ、ついて来てくれ」

 

そうして、タンザナイト達は霧島の案内と共に目的の場所へ向かった.....雨が降り続く中、仕掛けがあるところまで着いた。

 

「ここだ。おそらく、長い間放置されていたせいだろう。ここのエレベーターはどれも動かなくて、そのせいで行けない場所もあるんだ。あの怪しいコンテナを見てくれ」

 

『ん?』

 

「あいつの正確を考えれば、きっとあの中に手がかりを残しているはずだ!いろいろ試し見たが、この仕掛けを開けることはできなかった....こうなったらお前に頼るしかない。早くなんとかしてくれ!」

 

「....」

 

悠真は何も答えず、周囲を一通り観察した後、ふとしゃがみ込むと、隅にひっそりと隠れていた一枚の紙片を拾い上げた。その紙は非常に古びいて、記された文字は長年の侵蝕によってほとんど判別できないほどぼやけてしまっている。しかし何より気になるのは――その紙の右下に刻まれた、特別な記号だ。

 

『これって...悠真』

 

「....」

 

「うん?悠真、何を見ているんだ?」

 

「別に、大したものじゃない。ただの紙切れだよ」

 

そう言い、悠真は意図的に霧島の視線を避け、その紙をそっと隠し、仕掛けを解くのだった....

 

数分後....ゴゴゴゴっと機械の動く音が聞こえ、コンテナが降ろされた。

 

「...ゴホッ...」

 

「どうした悠真。気分でも悪いのか?」

 

「...平気だよ」

 

悠真は一瞬立ち止まった後、コンテナを開けた。案の定、箱には師匠に関する様々なものが入っており日用品や医療機器のほか、山のような研究資料もあった。

 

その中を霧島は、焦った様子でひっくり返している.....一方、悠真は霧島の死角に身に隠し、先ほど拾い上げた紙をこっそり広げた。

 

「これは...手紙?」

 

『手紙?』

 

それを見ると、かつて文字がずらりと並んでいた紙は長年の侵蝕によりにじんでおり、『代償』『救い』『目の前の...を無視して.....可能性』『ずっと身近に隠....』といった文字の断片だけが辛うじて見て取れる。これの他に、今しがたパスワードとして使われた特殊な記号があった....その部分をそっと撫でる悠真の手が震えていた。

 

『その記号って....なんかどっかで聞いたことあったな...』

 

「....その昔、僕がまだ被験者だった頃...師匠の他にも、僕の周りには忙しなく働く大人たちがいたんだ。師匠曰く、彼らは師匠の仕事ぶりを監視するためにいるのであって、仲間と呼べる存在ではなかったらしくてね」

 

「それで僕らは、彼らを避けて二人きりになりたいときノートにこの記号を書いて合図とすることにしたんだ。師匠は一人で僕のところに顔をだしては、弓を教えたり、ただ隣に座って話を聞かせてくれたりした」

 

『そうだったんだ...ん?』

 

その時、無心にコンテナで探し物をしていたらしい霧島が動きを止めた。とはいえ、何も見つからなかったみたいだが.....

 

「チッ、なぜここにもない....」

 

「何を探しているんです?」

 

「ああ、、何でもない。師匠の行方が分かるようなものがあればと思ったんだかな....何もないな。ハハ....とはいえ、この仕掛けは一人では解けなかったろう....()()()()()()()()()()だった、お前なしにはな。来てもらって正解だったよ」

 

「そうかな....」

 

『?』

 

「僕だってそう思ってた....誰もが自分の家族を良く知るように、僕も師匠のことをしっていると....でも、今は....よく分からない」

 

『...悠真』

 

と、悲し気な表情を見せる悠真にタンザナイトは見守っていると、遠くから突然凄まじい音が響いてきた.....なんと、長い間静まり返っていた周囲のエレベーターが、ゆっくりと動き始めたのだ。

 

「なるほど、この仕掛けはエレベーターに繋がっていたのか....エレベーター.....まさか.....わかったぞ!あの狡猾な奴め、きっとブツを....」

 

「.....?」

『......』

 

「ゴホン、つまりだな....エレベーターを使わないといけない場所が、もう一箇所あるんだ。きっとそこにあの男の手がかりがある。ついてきてくれ!」

 

そう言いタンザナイト達は、動き始めるエレベーターを使って道なり道に進んでいくと、とあるエーテリアスがケースの前で守っていた。

 

「あのエーテリアス、さっきからあのケースの周囲をうろついてるな...まるで守ってるみたいだ....」

 

「エーテリアスがどうしたというんだ?さぁ、ケースを取って来い!きっと師匠の行方につながる手がかりがあるはずだ!」

 

「師匠の行方、ねぇ....僕の見間違いかな?エーテリアスのそばに落ちてる服と眼鏡は....師匠がずっと身に着けていたのとそっくりだ....本当に、あの人がまだ生きていると?」

 

「おい、悠真。師匠の身を案じるのはよくわかる、だがあまり考えすぎるな―――」

 

「はぁ―――もういい、僕は疲れた。あなたが探してるのは....師匠の行方じゃなくて、あれの中身そのものだ。おおかた、()()()()()()()か何かだろう。違うかい?あんたはそれで、自分の研究を完成させたいだけなんだ。『人間がホロウを征服する』ための...偉大なお薬とやらをね」

 

「....っ!」

 

「そのために『療養所』なんて、体のいい人体実験場も作った....病気の子供たちから薬の『原料』を効率よく搾取するために....全部お見通しなんだよ。あんたがホロウでわめいてる今この瞬間にも、療養所の子供たちは救助されてる。だから、観念して吐いてもらえませんかね―――あの人は、生きているんですか?」

 

悠真がそう言うと、霧島の本性を現した。

 

「ちっ....この程度でお前を欺けるとは思っちゃいなかったが....療養所の場所までバレるとはな。まぁいい、大して重要なものでもない」

 

『なんだと....てめぇ、人の命をなんだと....』

 

「ここの仕掛けが解けた以上、お前達も用済みだ....だがここは『兄弟子』として、教えておいてやろう―――お前の敬愛するお師匠様なら....あそこで何か吼えているぞ」

 

「....あのエーテリアスが....」

 

そう、あのケースを守っているエーテリアス....その正体が悠真の師匠だったことに驚く。

 

「そうとも....俺はこの目で、あいつが侵蝕されるところを見たんだからな!愚かにも、『有力者』に盾ついた男の妥当な末路だ....」

 

「...そんな....まだ、聞きたいことがあったのに...僕は....」

 

「責めるならあの男を責めるんだな。後世に名を残すまたとないチャンスだったというのに、奴はこの研究の価値をまるで理解してなかった....考えてみろ。エーテル適性を強化する薬が完成すれば、ホロウなどもはや恐るるに足らず...!支配することさえ夢じゃなくなる!そうだ!時が来れば、新たな世界が誕生する―――俺が!新世界の神となる!

 

『新世界の神だと....どっかの殺人鬼みてぇな発言しやがって....その過程で生み出される無数の無実な人がどれだけの屍を作ると思ってんだ!!

 

と、自分勝手な発言をする霧島にキレるタンザナイト。

 

「病人どものことか?あれは悠真同様、新世界へ漕ぎだすにあたって必要な船賃にすぎないどのみち、俺が介入しようが死んでいく命だ―――そうとも、廃品を再利用するのと何が違う?」

 

「...よくもそんなことが言えたな」

 

「心の底では、お前もわかっているはずだ....この偉大な研究を前に、お前らの犠牲など推計上の誤差にすぎない!だからこそ、『有力者たち』は俺に研究を続けさせたんだ」

 

「エーテル適性減退症の患者なんて、それこそ人口比で言えば()()()()()()()()....仮に副作用のない薬ができたとして、どうやって量産を行うと?」

 

「そんなもの...この疾患を人為的に発症させる方法を考えればいい。人間なんて腐るほどいるんだからな...俺がいま抱えている課題に比べたらよっぽど些末な問題だ」

 

『やれやれ....お前、人格的にも性格的にも終わってんな....呆れて、何も言えねぇぜ』

 

と、怒りを通り越して、呆れられるタンザナイト....それでも霧島は話を止めない。

 

「知らないだろうから、教えてやろう。『有力者たち』は度重なる実験の末に、お前のような患者を何度も磨り潰してきた....最終的に安定した実験結果を残せたのは、お前の師匠だけだったわけだが.....それも余計な感情が芽生えて、無様な結末を迎えるまでのことだ。助かる見込みもない、お前のような奴を憐れんでな....泣ける話じゃないか」

 

『.......』

 

「お前の髄液を採るあいつに、迷いなんてないように見えた。だから、最後の最後に実験を拒否したときは驚いたよ。『有力者たち』がそれをいい顔をしないであろうことは、誰でもわかっていたはずなのに.....」

 

「それじゃ、師匠は―――ゲホッ、ゴホゴホ....」

 

『悠真!!』

 

と、せき込む悠真にタンザナイトは駆け寄る。

 

「ふん、お前の体も何やら訳アリのようだ、急速に衰弱していっているじゃないか.....こちらに運が向いてきたな」

 

「調子に乗らない方がいい....僕に息がある限り、あんたはケースの中身を拝めないんだからね」

 

「はは、どうなるか見物だな」

 

「くそっ...またエーテリアスか、来るぞ!」

『チッ...邪魔なんだよぉ!!』

 

何処からかわらわらと現れたエーテリアス達を二人は戦って突破するのだった.....

ツール・ド・インフェルノのボス候補は決まってるけど迷ってるんだよな....どうしよ

  • ポンペイ「もどき」
  • 「ぺらっぺらの正義のなぁ!!」
  • 「許可なく見上げるな小僧」
  • 「チャオ~」
  • 「アークライズ.....」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。