side:クレタ
.....
その名前を最後に聞いたのは.....
いつだったけな.....
ホルス・ベロボーグ――
白祇重工の先代社長。
.....あたしの、親父だ。
『クレタ、見てくれ!』
親父が見せてくれたのは...何か大きな機械だった。
『この前ダディが話した、白祇重工独自開発の知能重工機械だぞ!』
『これが『ぷろとたいぷ』?いつになったら完成するの?』
『完成させるにはね、お金を沢山かけないといけないんだ。ダディの会社には、まだ充分なお金がないし、立派な機械を作れるような生産ラインもない.....だが心配ない!絶対に、我が娘をダディの知能重機に乗せてみせる!』
そう言って親父はその作りかけのプロトタイプを手に添える。
『こいつはただの重機じゃない....ダディの作った心臓が入っている。危険なホロウで働けるうえに、クレタの言葉も分かるんだぞ!』
『わぁ....』
『クレタ、さぁ、名前を付けてくれ。名前を呼べば、きっと、クレタの願いに応えてくれる!』
.......
『ダディ、ダディ!今日は一緒に遊ぼって約束したのに....』
『クレタ、すまない、ダディは今忙しいんだ....新しいプロジェクトの競争入札....プロトタイプの外注費....パイオニア記念広場の完了検査...少し待っていてくれ、すぐ終わる、本当だ....』
当時のあたしには理解できない言葉が出てきて分からなかったが....これだけは言えたな....
『.......』
『ふんだ、ダディのうそつき...』
......
『...何だって?』
『ホルスさん、分かっていらっしゃいますよね?ここはお互いの為にも....』
『....ダディ?』
『見て見ぬふりをしろとでも言うのか?ふざけるな!はっきり言え!『あの中』には一体何が――お、おい答えろ!』
親父はなにやら誰かと話していた....なんだか怒っていたっけな.....
『ダディ、どこ行くの?一人でお留守番なんてやだよ!』
『あたしも一緒に行く!』
『なっ――クレタ、わがままをいうんじゃない!ダディは大事な用事で出かけるんだ、大人しく家でお留守番してくれ!すぐ帰って来る、ダディとの約束だ....』
そうしてあいつはあたしの前から姿を消した.....
あの、嘘つき.....
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Noside
「....社長、社長?」
「あ...!呼んだか、ベン?」
ベンの問いかけにやっと反応したクレタだった。
「あぁ....依頼が完了したから、プロキシさんがボンプを回収しに来た」
そうしているとリン達が来た。
『よぉクレタ.....そっちは?』
「あぁタンザナイト、ちょっとしたハプニングもあったが、行方不明になった知能重機は3台とも見つかった。これで、白祇重工として依頼したことは完了だ。お前らのおかげで、うちらは土壇場を乗り切れた。『パエトーン』『タンザナイト』力を貸してくれてありがとな」
「今、グレースが3台とも点検してる。アイツほどの腕があれば、すぐに原因がわかるはずだ」
っと明るく振舞っているが.....タンザナイトには見抜いていた。
(....無理してるな、顔で分かる)
「....なんだよ、何か言いたげだな」
そう言うとリンが口を開いた。
「ちょっと気になったんだけど....パイルドライバーが『ホルス』って名前を出した時、あんた、少し顔色を変えたよね?」
「お、おっと...!もうこんな時間か!社長、早いところ依頼料の入金手続きを済ませないと、明日までに振り込めないぞ....」
っとベンが急いでごまかす....
「ベン、大丈夫だ。そんなふうに気を遣わなくてもいい。今ここで答えなかったところで、ネットで調べりゃすぐに出てくるようなことだ」
「それに、プロキシの兄妹とタンザナイトはうちらの恩人で信頼もできるダチだ。はぐらかす必要ねえよ」
そう言うとクレタは話を続ける。
「プロキシ、タンザナイト。アンド―がゲストで出たテレビ番組を覚えているか?あの時司会者が、数年前にどごぞの社長が大金を持ち逃げしたって言っていたろ。あれをしでかしたのは、当時の白祇重工社長のホルス....フルネームはホルス・ベロボーグ――つまり、あたしの親父だ」
「旧都陥落前日の夜、白祇重工の口座から大金がごっそりなくなったんだ。それと時を同じくして、アイツは飛んだ」
「治安局の調査による結論はこうだ――白祇重工の経済悪化、並びに当時請け負っていた記念広場の完成が間に合わなかったことを恐れ、ホルスは経費を持ち逃げし、姿をくらました....アイツのの後先考えねえ行動のせいで、白祇重工はどん底に突き落とされた。残されたうちらはそのつらい時期を乗り越えて、ここまで這いあがってきたんだ」
「クレタ、今までたくさんの苦労してきたんだね。白祇重工が辛い時を乗り越えることができて、本当によかった」
っとリンはホッとするような言葉をかけた。
「ありがとうよ....そんなわけで、あたしはとっくにホルス・ベロボーグを親父だと思ってねえんだ。今の白祇重工だってあの無責任やろーとは何の関係もねぇ」
「待つんだ、クレタ!自分の父親に対して、そんな言い方はないよ!!」
クレタがそう言うといきなりグレースが割り込んできた。
『うおっ、いつの間に!?』
「当時、会社の口座からお金が無くなったのは事実だけど...それがホルスさんの仕業だと証明できる人はいないじゃないか!治安局が言うところの調査結果も、持ち逃げ説も、最初から彼らのぞんざいな推測に過ぎない!」
「父親の不在で君が辛い思いをしたのは分かるし、治安局によくない印象を植え付けられたのも、仕方のないこととは言え...ホルスさんをそこまで恨む必要はないじゃないか!それにあの人が失踪した時、君はまだ幼かった。彼と過ごした時間も多くはないんだから、分からなくても無理はないさ――私たちにとって、ホルスさんがどれだけ凄い人だったかを....」
「分かってねえのは、お前の方だろッ!!」
っと長々とホルスについて擁護していたグレースだが相当地雷だったのか、キレるクレタだった。
「――!!」
「.......」
『....オホンッ、ところでグレース....何でここに点検してたはずだろ?』
っと険悪な雰囲気を変えるため話題を振るタンザナイトだった。
「....あの子達が逃走した原因について、目星がついたから知らせに来たんだ」
「ほ、本当か?それはよかった....」
安心するベンにグレースはその詳細を話す。
「うん。3台とも、論理コアをチェックして分かったよ。あの子たちは逃走する前に、ホロウの深部から同一の信号を受信していたんだ。その信号の識別コードは、うちの会社の知能機械とフォーマットが同じだった。そこから解析できた文字列は――BLG prototype」
「そうだよ、クレタ。信じがたいことだけど....この信号は、どう考えても『プロトタイプ』から送られたものさ」
その話を聞いたリンは『プロトタイプ』について聞く。
「『プロトタイプ』....それも白祇重工の機械なの?」
「先代社長が失踪する前に、白祇重工が開発していた最初の知能機械だ。当時、我が社の生産ラインは他に後れを取っていて、自分たちで開発できたのは核となるパーツだけだったんだ。後は全部、図面通りに製造する外注せざるを得なかった。だが惜しいかな....完成して、あとは支払いだけというところで、旧都陥落事件が起きてしまった」
「外注先はホロウ災害に巻き込まれて消滅し、プロトタイプも行方不明になった、はずだったが....」
「プロトタイプは、消えてなんていなかった。しかも、未だに一部の機能は生きている。おチビちゃん、これから君が嫌がるような話をするよ。あの人とはもう関わりたくないだろうけど、プロトタイプも立派な会社の資産だ。あそこに搭載されている論理コアにも多大な価値がある」
「君はどうしたい?――プロトタイプを探す?それとも、そんなものは初めからなかったことにする?」
グレースの言葉にクレタは黙り込んだ.....
『.....俺は部外者だからホルスの事もクレタ達のいざこざについては何も言えないが.....一つだけ、言うぞ』
「....なんだよ」
『『後から後悔しないために、今自分のやりたいようにやれ』.....だ』
「っ!!.......」
『まっ....時間はまだたくさんある、結論は考えてからにしな』
その言葉にアンド―は賛同する。
「兄弟の言うとおりだぜ。どんな強靭なパーツだって、金属疲労ってのがあんだ。ホロウを走り回った人間なら言うまでもねぇ、たっぷり休んどかねぇとな」
「あー....アンド―とタンザナイトの言うとおりだ。こんなに遅くまで付き合ってくれたんだから、プロキシさん達も疲れただろう?今日のところは一旦、帰って休んでもらうのがいい。ホロウに行ってプロトタイプを探すと決めたら、必ずまた連絡する。その時は、もう一度力を貸してほしい」
そう言い、この日は解散となった.......