次の日の朝....開幕からビリーが挨拶する。
「おはよう店長、タンザナイト!ちゃんと休めたか?昨日はよっぽど疲れてたみたいだな、よこになった途端ぐっすりだったぜ」
『おう、慣れない土地だから眠れるか心配だったが....大丈夫だったぜ』
「それよりビリー、お兄ちゃん知らない?どこにもいないんだけど.....」
「おう、もう一人の店長なら今さっき店まで送ってきたとこだぜ」
と、ビリーは答える。
――どうやら、デバイスの一部をリン達の所に車に積んで、移動式のプロキシ工房にする準備んするためらしい....
『へー....そうなのか』
「うちにあるH.D.Dデバイスを、ここまで運んでくるってこと!?」
「そーゆうことみたいだぜ。もう一人の店長が言うには、都市からだとやり取りが不便だし、かといって郊外には知能設備が少ないから長距離のデータ通信は遅延しちまうんだと」
そんな会話をしていると、シーザーが来て、挨拶する。
「おうプロキシ、タンザナイト!起きてたんだな。ビリの字の言うとおりだ。これでずいぶん仕事がしやすくなるはずだぜ」
『電気代とかどうするんだ?』
「安心しろ、電気やネットはこっちでなんとかしてやる。たとえ郊外でも....オマエらを『水を蹴った魚』みてぇにしてやるからな!ハハハハ!」
『それを言うなら、『水を得た魚』だ。蹴ったら干からびるぞ』
シーザーが間違ったことわざを訂正すると、少し恥ずかしがり切り替える。
「ゴホンゴホン///....と、とりあえずデバイスが届くのを待ってる間、ブレイズウッドの町に顔を出しといこうぜ。連れてってやるよ。オマエらはオレらみたいな、根無し草の暮らしは慣れてねぇだろう...ってルーシーのやつがな。それもそうだ。住むとこを手配してくれるように,
「そうなんだ、お気遣いありがと!」
と、リンはシーザーに感謝する。
「なーに、すべきことをしたまでだぜ。そうそう、町から帰ったらルーシーたちにも声をかけてやってくれよな。オマエの兄貴が言っていたが、レースの前にホロウのデータを集めとく必要があんだろ?ルーシーたちも、ここ数日『ツール・ド・インフェルノ』の準備にかかりきりだ。お互い助け合えることがあると思うぜ!」
シーザーがそう言い、早速二人は、シーザーの案内とともに連れて行く。
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シーザーが小麦肌のでこに装飾品が結んでいる人に声をかける。
「カーサ、挨拶に来たぜ!プロキシとタンザナイトと一緒にな!」
「おやシーザー....街から来たってプロキシとエーテリアスはこの人かい?新エリー都の人も、あたしたちみたく若いうちからあくせく働いてるんだね――にしても青色のエーテリアスなんて珍しいわね...おまけに会話するし」
『どうも』
「シーザー、こちらの方は....?」
「こちらの方?ははは、都会の人の言い方は面白いね」
と、言い方に笑い、自己紹介する。
「わたしはカーサ。ブレイズウッドの町長をやってる。この町は昔、
「カーサ。ここへ来る途中、例の装飾を作ってる連中がいたな」
「仕方ないだろう、町への送油管は壊れたままなんだから。ガソリンスタンドが営業できないから、工芸品でも作って売るくらいしかできないのさ。幸い、最近大口の注文が入ってね....それにもうすぐ『ツール・ド・インフェルノ』もあるだろ。『サン・フリント』もよく売れてるよ」
「サン....フリント?なあに、それ?」
と、なじみのない言葉にリンは質問する。
「ああ、こういう
そう言って渡されたのは――輪の中心にユニークな絵が描かれた工芸品だった。
「この模様、人が逆さまになってるみたい....」
『確かにそう見えるな』
「おっ、よく気づいたなオマエら!この逆さんなってるやつこそ、走り屋連盟の初代覇者なんだぜ。もっともじいさん連中は、太陽と炎の神の顔面とか言い張ってるがな。神は英雄を導いて燃える湖に火をつけさせ、ホロウの中から
と、答えるシーザーにリンは訳を聞く。
「こういう変わったデザインだもん、何かわけがあってこうなってるんだよね?」
「その通りだ。実はな、こいつのモチーフになってんのは最初の『ツール・ド・インフェルノ』とその
「そうなの?確か石油みたいな物質って、エーテル侵蝕を受けやすかった記憶があるけど....?」
「間違っちゃいない。実際、災害が起こってすぐエーテル物質は地下施設やパイプラインをつたって侵蝕し、浅いところに埋まっている原油に
「その天然ガスが燃えて噴出してるっていうのが、話に出てきた『シンダーグロー・レイク』なんだね?」
「その通り。燃え盛る湖が誕生したことによって、旧油田エリアに住む全員の生計は守られたのさ。とはいえ、あたしらがずっと枕を高くして眠れるかというと....そうでもない。天然ガスとエーテル物質が燃焼してできる副産物はすぐエーテル結晶に変わって、
『ふんふん...』
「放っておいたら結晶がどんどん積み重なって、最終的に噴出口を塞ぎ....火はやがて消えちまう。一度でもそんなことが起きたら、地下の石油はまた
「実はなプロキシ。シンダーグロー・レイクの火は昔、それで一度消えかけたんだ。当時、どうにかしようと、ある若い走り屋が仲間とホロウに入ったんだ。そいつらは用意してた特製の『火打石』を使い、命懸けで結晶をぶっ壊した――今オレ様の手の中にある、こいつでな」
そう言い、シーザーが四角形の物体の形をしたモノ――『火打石』を取り出す。
「ホロウの中は地獄....おまけに『キャロット』さえ持ってなかった。そいつらがどうにかシンダーグロー・レイクに着いた時、結晶はまさに『湖面』をおおいつくすところだったんだが....いっときの猶予もないと、その若い走り屋はバイクごと湖の深いとこにたった一つ残った、
「そっか....その人の犠牲を追悼するために、みんなでサン・フリントを作ってるんだね....」
と、リンがその飛び込んだ人に労わろうとしたが....
「おいおいプロキシ、そいつが飛び込んだまま死んだなんてオレ様は一言も言ってねぇぜ!」
「えっ」
「まぁ、そう思うのも無理もないけどね。一緒に火の湖に向かった仲間も、彼は死んだと思ったくらいだから。でもその翌日、なんと奇跡的にホロウから出てきたのさ」
『マジか....』
「若き走り屋の勇気に
その言葉を聞いたリンは死んでいなかったことにホッとする。
「よかったぁ、ハッピーエンドで終わって....」
「ハハハ、そうだな。悲劇のまま終わってたら、『ツール・ド・インフェルノ』はいまいち燃えねぇ感じになってかもな!もちろん、初代覇者の武勇伝はそれだけに留まらねぇ!ヤツは戻ってすぐ、旧油田エリアの大小さまざまな走り屋連中を集めて、走り屋連盟を創ったんだぜ。それからは『ツール・ド・インフェルノ』を数年ごとに開催するってルールで定めたんだ。シンダーグロー・レイクに、
「そういうこと。今でも『ツール・ド・インフェルノ』が、最強の走り屋にしか成し遂げられないってのは変わらない....けどあたしら住民にとっちゃ、もはや
そう言ってると、だいぶ時間が経っていた.....
「ツール・ド・インフェルノの伝説のことになると、つい時間を忘れちまうなあ...」
「でもプロキシの仕事に役立ちそうだよ」
「そうか?それなら良かったぜ。プロキシ、タンザナイト、オマエらの設備に電気を通す件について、オレ様はもうしばらくカーサと話がある。先にガソスタへ戻って、ルーシーたちと話してくれ」
『おう、分かった』
と言うと、タンザナイト達はガソリンスタンドへ向かうこととなった――