ホロウ内某所――
「リン、タンザナイト、それにカリュドーンの子の皆、聞こえているね?今回の任務はホロウデータの収集だ。リン、ちゃんと段取りは分かっているね?」
「もちろん。安全なとこを見つけて、データスタンドを充分に置いてくればいいんだよね!」
「安心しろよ、プロキシ。俺らとならパイセンのときみたく、エーテリアスと鬼ごっこにはならん」
と、ライトがそう言っていると、リンがとあることに質問する。
「前から聞こうと思ってたんだけど....ライトさんはビリーのこと、『パイセン』呼びだよね。何かわけがあるの?」
「ハハン....それはだなプロキシ。旧油田エリアの走り屋チームには『チャンピオン』ってポジションがあんだが....オレらんとこじゃ、
『
「普通、イザコザが起きたら覇者が出張ってきて間に入るんだが、それでも収まらねぇ時はあるし、そもそも
「ま、大将の言った通りさ。走り屋チームの
『確かにな.....』
と、タンザナイトはシーザーを見る。
「オヤジはなんて言ってたっけな....『帝王が最強である必要はないし、最も賢い必要もない。それらをまとめて上に立つ素養があればいい』...だったか?けどカリュドーンの子じゃ、オレ様がたまたま『最強』も兼ねちまってんだよなぁ!ハハハ!」
「ふんっ、なーにがおっしゃりたいのかしら?あなたが
『それは...うん、お疲れ様です』
「あはは!プロキシちゃん、タンザナイトくん....実は私ね?もうずっーとライトのこと、雑用だとおもってたんだぁ~!」
「はぁ...うちの管理人兼お嬢様は、使えるものは何でも使う主義だからな」
そう言いながら、タンザナイト達はデータスタンドを設置するため、移動する。
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三回目のデータスタンドを設置している時、誰かの悲鳴が聞こえる。
「「うわぁぁぁ!?」」
「ん?何か聞こえなかった?」
『あー....多分、
「いつの間にそんなのをつけていたんですの?」
『まぁとにかく....行ってみようぜ?』
そう言い、トラップを設置したデータスタンドへ戻ってみる....
「なんだこれはぁ!?スタンドに触った瞬間、急に周りが爆発したぞ!?」
「だから止めようぜって言ったんだよ!あの『蒼光の騎士』の前だと俺らより先回りされるって!」
『そこの盗人未遂犯達止まりなさい!!』
と、作動したトラップに戸惑っていると、タンザナイト達が現れる。
「ぐ...ぐふ...おいおいエーテリアスさんよぉ....もういっぺんハッキリいってくれやぁ。誰が盗人だって?」
「なんか何事もなく振舞っていますが...そのダメージと焦げ具合で全然ごまかせていませんわ」
とよく見て見ると、データスタンドを盗もうとした人たちは爆発したダメージと焦げ跡がちらほら見える。
「うっうるさい!....クソッ
『手筈?....あーはいはい、そういうことね』
「ん?タンザナイト、今のでなんかわかったのか?」
何か勘づいたタンザナイトにシーザーは聞いた。
『如何やらこいつらは、わけは知らんが『決闘』を申し込みたいらしいな』
「!!」
「へー...『決闘』ね――なら、チームの一員として、価値を示す時が来たみたいだな」
と、ライトはサングラスをかけなおしながら言う。
「へっ...へへ...俺達は走り屋だ。もめ事ときたら、それで解決するのが公平だわな」
『さっき爆破でほぼ壊滅してたけど?』
「やかましい!!....ライト、あんた...カリュドーンの子のチャンピオンになって以来、負けなしなんだってなぁ!昔の屈辱を思い出すときがきたみたいだぜ。まだ忘れちゃいないんだろう?『エンバー・アリーナ』のことはよ」
「――!!」
と、その言葉にライトが驚いた。
「ヘッヘッヘッ、やっぱりな!昔、あそこでずいぶん辛酸をなめたそうだな。まだ記憶に新しいんじゃないか?何を隠そう、俺達の『チャンピオン』もあそこの出なのさ。だが、いつも地面に這いつくばってたあんたと違ってうちのは20連勝を誇った豪傑だ!」
「....待てよ。ひょっとして、そいつは....」
「はっはっは。震えているなライト!そうとも、お前のよく知るこのお方だ――!!」
「...悪い、誰だ?」
「え」 『ハァー....』
「うぉぉぉぉぉっ!!ライト!」
その言葉に、ガスマスクをつけたオラウータンのシリオンが飛び出してきた。
「舐め腐りやがって!」ビターンッ
「うおっ!?」
「オレっちだ!ベルラム!!テメェに20連勝を阻止された!」
そう言いながら、『ベルラム』というシリオンが装着していたサングラスやマスクを捨てる。
「ゴーマンな野郎だ!イケメンで、強くて、人気で、イケメンだからって.....すっとぼけてんじゃねぇ!」
『こいつ今『イケメン』って二回言ったぞ....』
「ベルラムか....いいぜ、覚えとこう」
と、ライトはベルラムに指を指した。
「――ぬぅぅ....馬鹿にしてんのか!それ聞いたの三回目だぞ!」
「『.....』」ジー
「フッ....」
リンとタンザナイトはライトに細い目で見つめていると、ベルラムが戦闘態勢に入る。
「もういいぜ....オレッちらの因縁も――今日限りだからなぁ!」
と、ベルラムは棘付きの盾を装着した銃っぽい電動チェンソーを担いで、襲いかかるのだった。
『手、借す?』
「いや、いい....一人で行ける」
『そうか』
「ライトさん、あのベルラムって人よりも強いみたいだけど....辛酸を舐めた、って....負けちゃうこともあったってこと?」
「ハハ...そうとも」
と、ライトは渇いた笑いで返事をした。
「あそこは...
「ライトぉぉ!マジメにやりやがれ!」
ガキィィィンッ!
「っ――」
ベルラムの攻撃をライトのガントレットで受け止める。
「そんなんで負けたって、あとで言い訳は聞かねぇぞ!」
「へぇー...」
キィィィンッ!
お互いに弾き、離れる。
「うぉぉぉぉ――ライトォ!受けてみろぉ!」ダッ!!
「フッ――」ボッ!!
ベルラムが向かってくるのに対し、ライトはガントレットを起動し、加速する。
「っ!!」
ドコォォォォォンッ!
「ガハッ!....」
ライトの一撃でベルラムが吹き飛ぶ。
「ぐあぁぁぁぁ!?」
ドコォォン!
「べ...ベルラムの兄貴ぃ!!」
「すっ....凄い」
『やるじゃん...さすが『チャンピオン』』
ベルラムは壁にめり込み、倒れる。
「がはぁっ....ま、参った」
「ベルラムの兄貴が負けちまうなんて!こ....これからどうすりゃいいんだ?た、たしか俺らは....」
「どうもしねぇ!データスタンドのことは諦めろ。何かありゃあ、オレッちが責任を取る!」
「へ...へい、分かりやした。ベルラムの兄貴....」
そう言い、ベルラムがライトたちの前に来る。
「ライト。オレっちがここに来たのは、テメエと一戦交えるためだ。テメエが決闘に応じてくれた以上....連盟のルールに従い、潔く負けを認めらぁ。クッソぉー....あれから何年も経つっていうのに未だに歯が立たねぇとは。名誉挽回はならず、か。無念だ....」
「そいつはどうかな...ハナから『挽回』する必要もなかったんじゃないか。別に、殊更あんたのことを忘れてたわけじゃない....あの地下闘技場のことは、俺に言わせりゃ何もかも覚えとく価値のないものだったからな」
「なな、何だと!?」
と、ライトの言葉に驚くベルラム。
「金のために相手を痛めつけ、金のために痛めつけられるフリをする....そんなものの、どこに『名誉』があった?あのリングに上がってたのは、行くあてを無くした死にぞこないだけだ。
「ライトさん...」
「今のあんたは実力であの場所を離れ、郊外で走り屋の『チャンピオン』に収まった....そうだろ。どうして、あの肥溜めに心を置いてきたフリをする?」
「――!!ラ、ライト....それは....!」
「郊外に感謝するんだな。ここは決して、あんたの出身や過去を笑わない。
ライトがベルラムの行動を悟るように言い続ける。
「俺と決闘がしたいなら、こんな回りくどいことせずとも相手になってやる。結局のところ、俺にも挑戦したいと願ってやまない相手がいるからな」
「あ....ああ、わかった。ライト、ゴホン....その...礼を言う」
「きにするな、ベッカム....じゃなかった、ベルラム」
「あっ」
『ハイお疲れ~解散解散っと.....』
「ライト、テメエ....!結局、オレの名前を覚えようともしてねぇじゃねぇか!やっぱ適当こいてやがったな!」
「待った、名前はともかく....それ以外は本心だ!」
「何の慰めにもなってねぇよ!」
こうしてちょっとしたトラブルもあったが、なんとかデータスタンドを設置することが出来たタンザナイト達であった.....