転生先はエーテリアス   作:YEX

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悩み

ルミナスクエアに着いたタンザナイト達は、その繁盛に唖然としているシーザーが呟いていた。

 

「たまげたぜ、さすがは都会だなぁ。ビルが丸ごと映画館とは.....」

 

「郊外の映画館はこうじゃないの?」

 

「オレらのとこに、こんな豪勢なビルはないな。いわゆる映画館って言っても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()っつーか....郊外には、露天のドライブシアターがあってよ。天気が良くて人気の映画だと、()()()()()()()()()()()から走り屋が集まってくるんだぜ。場所取りのために決闘したりとかな。けど、都会の映画館もここまでごった返してるとは思わなかったぜ」

 

『ん~....でも普段はこんなに多くはないんだがな』

 

と、話している丁度その時、定員らしき女が現れる。

 

「お三名様、グラビティ・シアターへようこそ!今週は()()()()()()の特集上映となってまして、日替わりで異なるテーマの映画を上映しております。本日のテーマは『手に汗握る』で『ポッター・ヒル』『アタック・オン・サイバーズ』『ザ・ビッグ・ホロウ』、そして『コーヒー・ラバーズ』です!」

 

(えぇぇぇ......)

 

(やった、今日はホラー映画だ!)

 

映画のラインナップで片方は嫌そうな顔、片方は喜んでいる二人だったが、シーザーはふと、気になるものがあった。

 

「『手に汗握る』ラインナップのなかに、妙なもんが紛れてる気がするんだが....」

 

「『コーヒー・ラバーズ』のことですか?確かにジャンルはラブコメですが、このセレクトには科学的な根拠があるんですよ!この映画を観ると、胸がドキドキするんですから!

 

「えっ、む...胸がドキドキ....?本当か?」

 

「シーザー、興味あるの?」

 

リンがそう言うと、シーザーは動揺する。

 

「はっ!?い、いや別に....?せっかくでけぇハコなんだ、やっぱホラーにしようぜ。その方がスリルってもんがあるだろ」

 

(うわ~....すっぜぇ分かりやす....)

 

「では、チケットをお調べしますね...『アタック・オン・サイバーズ』と『コーヒー・ラバーズ』は次の回に空席があります。『アタック・オン・サイバーズ』でよろしいですか?」

 

「いや、やっぱ『コーヒー・ラバーズ』!」

 

すると、リンが急に観る映画を変更した。

 

「えっ、リン、なんだよ急に....」

 

「ホラー並にドキドキかもだし....?」

 

「そ、そうか?まぁオマエがそこまで言うなら、オレ様も別に、興味なくねーし?」

 

((興味あるじゃん....))

 

二人は、シーザーの反応にこう思ったのだった。

 

「んじゃ、『コーヒー・ラバーズ』にすっか!」

 

そう言いタンザナイト達は『コーヒー・ラバーズ』を観た.....

 

 

 

「....ったくよぉ、アンジェリーナがループにホレてんのは誰が見てもわかりきってたろ!?なんでループの野郎は信じねぇんだよ!アンジェリーナが諦めちまうとこだったじゃねぇか!なぁ!?」

 

『めっちゃ喋るじゃん』

 

映画を見終わり、早々シーザーがキャラについて熱く語りだしていた。

 

「あっ.....コホン、まぁなんだ、前半は息できねぇくらい笑ったけどよ、後半は登場人物たちの関係にハラハラさせられっぱなしで、本当にドキ.....手に汗握る映画だったな」

 

(今ドキドキって言おうとしたな....)

(言い直した....ドキドキを言い直した......)

 

「それに、不思議なんだがよ....観終わったいま、なんつーか....心があったかいような感じがするんだ。リン、タンザナイト、今日は映画に連れてきてくれてありがとうな。それじゃ、次はどうすっかな?」

 

『なら俺がいい喫茶店を知ってるぜ?』

 

「おっ?一体どんな所なんだ?」

 

「もしかして――あそこだね」

 

『ああ、多分シーザーは知らないと思うが....『カモン・ミールティ』だ』

 

そう言い、三人は『カモン・ミールティ』へ向かうのであった。

 

 

 

~~~~

 

「いらっしゃい」

 

「ここがカモン・ミールティか....初めて来たが良い店じゃねぇか!」

 

「あぁ、タンザナイトさん.....また女の子を捕まえてきたんですか?」

 

『人聞きの悪いこと言うな、おい』

 

「そんな女の子ばっかり構ってますと....後ろ刺されますよ?」

 

『いや別にそんなんじゃねーって....それにこの前は男同士で来たろ....』

 

と、言うタンザナイト。

――ここ先日、ビリーとアキラが一緒に来て、会話していたのだ。

 

「もしかしてタンザナイトさん....そっちにもあるんですか?

 

『死にたいらしいな([∩∩])』

 

「....リン、そっちってどっちだ?」

 

「うーん....シーザーにはまだ早いかな....」

 

「??」

 

タンザナイトと店長が会話している時、ふとシーザーは濁した言葉に疑問を抱いてたが、リンが止める。

 

『さーてと....なにする皆は?俺は『シナモンたっぷりアップルパイとミルクティー』だが....』

 

「オレ様は....この『魅惑のカステラ』『ミルクティー』だな」

 

「じゃあ私は、『午後のパンケーキ』『レモンティー』で!」

 

それぞれメニューが決まって、注文し、待っている間にシーザーは口を開く。

 

「タンザナイト、今の人知り合いか?けっこう仲いいんだな?」

 

『ん?まぁな、元々この店俺が買い取ったものだし』

 

「なっ!?...買い取ったのかよ!?

 

『ああ、そこで()()()()反乱軍にここを経営してるのさ』

 

「す....すげぇ.....」

 

「ははは....さすがだね」

 

と、二人は感心する。

すると、シーザーは二人に話しかける。

 

「....さっき、街に住みたくねぇのかって聞かれてたけどよ、オレ様の馴染みはみんな郊外にいるから離れたくねぇてのが本音だったのかもな。ま、そいつらをこれからも守ってくんなら今の体たらくじゃ到底ダメだって話なんだが....」

 

「シーザー、それって....覇者になりたいって話のこと?」

 

「ああ、プロキシ、実はここ数日、ずっと考えてた。オレ様はガキの頃から『ツール・ド・インフェルノ』の伝説を聞いて育ったんだ。なんのために覇者になりてぇんだと聞かれたら、迷わず自分が『最強』だって証明するためだと答えたのさ」

 

「けど、『覇者』ってのは単純な強さだけのもんじゃねぇって気づいちまったんだ」

 

『......』

 

「ポンペイのオッサンは、黙っていりゃシラを切れた手下に悪事をわざわざ自分でバラしたうえ、手打ちまで持っていきやがった。そのうえ、カリュドーンの子とブレイズウッドの問題まで片付けてな....」

「あいつがここ半年を見せなかったのも、()()()()()()()()()()()()だったてのに....そのことをオレ様が知ったのはほんの数日前だ。そんな可能性があったことも、選択肢があることも知らなかった....!」

 

と、シーザーは悔しそうに呟く。

 

「ルートの条件を提示されたときだって、ルーシーはオレらだけじゃなく旧油田エリアにとってどうなのかってとこまで頭が回ってたろ?オレ様はどうだ?ルーシーに説明されるまでチンプンカンプンだった

「それにカーサも....()()()()()()()()()になりながら、町長としての責務を全うしようとしてたじゃねぇか....!あいつらと比べたら.....オレ様は周回遅れのドンケツさ」

 

『本当にそうか?』

 

「....えっ?」

 

と、ここでタンザナイトは口をはさむ。

 

『まぁ確かにシーザーはそこが弱みだが.....他の人より強いものがあるぜ?

 

「そうだよ!ホロウで荷物を見つけた時、怒ったりしないでまずはカーサさんに『持ってけ』って言ったでしょ?」

 

『あの時、ほぼ全員カーサを疑っていた。でもシーザーは町の人たちを第一に考えただろ?...もしあのままだったら荷物は侵蝕されていた』

 

「ハハハ....なーに言ってんだ。んなもん、誰だってそうするだろうが。オレ様のメンツや意地よりも、みんながメシにありつけることの方がよっぽど大事だぜ」

 

と言うが、照れくさくなりながらシーザーは言う。

 

「けど....オマエラらにそう言ってもらえて、なんだか急に()()()()()()()()()()()がすんぜ!オレ様は馬鹿だけどよ、一度決めたこと目標は何が何でもズラさねぇんだ。猪みてぇにな。アイツらに追いつけるよう、せいぜい努力するさ!それに、オレ様には頼もしい仲間がこれでもかといるしな!

 

『そうか....頑張れよシーザー』

 

「ああ!ポンペイのオッサンなら、相手に不足はねぇってわかったんだ。どっちが上かは、レースで勝負をつけてやる!」

 

そう意気込んでいるシーザーに――店長が料理を持ってくる。

 

「なら、これ食べて精をつけな....サービスだ」コト...

 

「おぉ、いいのか?」

 

サービスだと言って渡してきたのは――数種のフルーツを乗せたプリンだった。

 

「ああ、何やら生きこんでるのが聞こえたんでな....応援がてら作ったのさ。じゃ、頑張れよ」

 

「ありがとう、店長!....よーし、絶対勝つぞ!―――アム」

 

「『.....』」ニコッ

 

そうして注文したスイーツを口に運び一時を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、旧油田エリアの某所―――

 

「ポンペイの親分、これ。新しいルート割り当てのリストです」

 

と言って『トライアンフ』の部下、ルシウスがリストの紙を持ってくる。

 

「親分の言われた通り、新規開拓した輸送ルートの何本かはカリュドーンの子に振っておきましたよ」

 

「そこに置いておけ」

 

「親分、あの新規ルートを拓くのには結構骨を折ってた気がするのですけど....いいんですか?連中にあげちゃって」

 

「モルスの野郎が小賢しいマネをしなければ、不要な手間ではあったかもしれんな」

 

すると突然、ポンペイは、ルシウスの前に近づく。

 

「ところで、ヤツはこの件をあいつ自身の独断専行だと言っていたが.....ルシウス、貴様はどう思う?」

 

「そりゃあ、親分....モルスだってまぁ、あれでチームの利益を考えての行動だったわけで.....」

 

そう言うルシウスにポンペイは座りながら答える。

 

「フン、答えになっとらんな。俺の気のせいか?貴様はこの件にあまり動じていないと見える」

「勝利に貪欲であることは、()()()()()()()()()。だが俺達は覇者なのだ。仁義に照らして、()()()()()()()()()がある」

「走り屋連盟が強固であることは、油田の安全にとって必要なこと.....それを無視して利益などというものはない。身内同士でゴタついている隙を、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そう言うとポンペイはギロリとルシウスを睨む。

 

「それと貴様....ここのところ、随分都市の企業と懇ろにやっているみたいだな?

 

「お、親分!そんな言い方はないですよ...ハハ!採油プラント用に手配した防護服に問題があったんですって。どうにかする必要に迫られてのことで....」

 

と、ルシウスは冷や汗出しながら否定する。

 

「そうだといいがな。ルシウス、貴様は頭が回り、野心もあるが....目先の利益を焦りすぎている。賢さにあぐらをかいて、道を誤るなよ」

 

「はい、親分.....」

 

「ゴホッ!ゴホッ.....」

 

するとポンペイはせき込む。

 

「フン....この書類の束には終わりというものはない!近頃はいつにも増して()()()()()().....俺も年には逆らえないということか?」

 

「またまた....近頃は『ツール・ド・インフェルノ』のことにかかりきりですからね。そつちに気を持っていかれてるんですよ」

 

「ククク....それもそうだ。あのシーザーって小娘はなかなか面白いが....まだ俺も取って代わらせてやるつもりはないからな」

 

「ですが、親分....そろそろ、働きすぎもほどほどにしてもらわないと。なんたって――最高に盛り上がるイベントが控えてるのに....ガス欠になられちゃ困りますから」

 

この時、ポンペイは知らなかった。

―――このとき既にルシウスの策にはまっていたのだと....

 

そして、ルシウスは知らなかった。

―――その策すらも()()()()()()()()()によってただの茶番に変えられたことを......

 

 

 

 

 

 

 

『.......』

 

「どうしたのタンザナイト?明日が『ツール・ド・インフェルノ』が始まるから寝るよ」

 

『ん?ああ、悪いけどオレ明日の朝遅れる』

 

「えぇ?なんで?」

 

『ちょっとやり残したことがあるからな....』

 

「?」

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