ブリンガーとの戦いが終わり、いつもの日常へもどっていると、とあるDMからメッセージが届く。
[デタラメチャーハン]
『あなたが『蒼光の騎士』ね?依頼を頼んでいいかしら?』
『ごめんなさい!今説明してる暇ないの!助けて!今すぐ!これが最後のチャンスなんだ!もし断ったら一生後悔することとなる!』
『ありがとう!とにかくルミナの映画館に来て!本当に!大至急!』
『そうじゃない!僕を助けてほしいんだってば!黒服の悪党に捕まっちゃって大変なんだよ!』
『ありがとう!映画の裏口で待ってるから、赤いジャケットを着て、赤いサングラスをかけている人を探して!』
『そうだ、合言葉を決めておこう。私が「デタラメ」って言ったら、君は「チャーハン」って言って!あと絶対に目立たないように行動すること。いい?』
――――――
『....よし、行くか』
こうしてタンザナイトは緊急のメールを確認すると、ルミナスクエア行のホロウを作り早速向かっていった。
~~~~
『....なんだあの
映画に着いたタンザナイトが見たのは...入口に黒服が立っていて、その周りには多くの人がいた。
「アストラ様!?アストラ様がいるの!?この中!?」
「下がりなさい」
「おしたわね!?あんたの家でもないのに!」
「本日、アストラ様はこちらにて大切なイベントにご出席されます。部外者の立ち入りはご遠慮ください」
「ちぇっ、大切なイベント?どうせTOPSの連中が開く会場かなんかだろ?」
「そうよ、その退屈な会議をアストラ様が盛り上げてくださるんでしょ!?今日は何の日か知ってるの?私たちはね、アストラ様のバースデーをお祝いするために集まったんだから!」
『.....やべぇ』
その勢いにタンザナイトは呟くと、映画館の裏口に、群衆を横目に様子を見ているような誰かの姿があった。
彼女はこちらに手を振ってから、一見意味のなさそうな仕草をする。『黒服の注意をそらせ』ということなのだろう。
(えーと.....おっ?あのポスターは....)
タンザナイトは周りを見渡すと、そこにファンの皆が言っていたアストラ様と思わしきポスターが目に映った。
(よーし....あれを利用するか....)
そう思い、タンザナイトは群衆から離れ、物陰に隠れながら結晶の人形をだす。
『『
その形はポスターにあった全く同じポーズのアストラの人形を瞬時に作り終え、再び映画館に戻り、注意をそらせる。
『おい左見ろよ!あれって....アストラ様じゃね?』
「なんですって?....ほ、本当よ!あれはアストラ様だわ!!」
「なにっ!?」
「っ!急げ!!」
ドドドドドドドドッ!!
『偽物のアストラ』に群衆と黒服は気を取られている内にタンザナイトは『デタラメチャーハン』と接触する。
「.....デタラメ!」
『チャーハン』
「パーフェクト!さぁハイタッチしましょ!ふふっ、私こういうのに憧れていたの!」
『あーはい...』
そう言い、ハイタッチしたあと、デタラメチャーハンは言う。
「まずはグットね、すぐ来てくれて助かっちゃった。みんなが殺到している今がチャンスよ....こんなところ二人で抜け出しましょう!」
『....普通に出ればよくね?』
「大手を振って出られない事情があるの。決まっているでしょう?ルミナスクエアから出られたら、詳しく話すわ。まずはあの群衆をどう躱すか考えないとね。特に、あの黒服の悪党ども....」
『なら...一瞬で離れられる方法があるぜ?』ゴゴゴゴ....
「な...なんなのそれ?」
と、タンザナイトはホロウ空間をつくりだす。
『これを通ればルミナスクエアから一気に目的の場所まで行けるぜ?』
「それってあれよね?ワープみたいな!パーフェクト!もう一つグットをあげるわ。それじゃ人目がつかない所までエスコートをお願いね、エーテリアスのナイトさん!ルミナスクエアをはなれたならなんでもいいわ!」
そう言い、二人はつくりだしたホロウ空間へ入って行った。
「ああああっ!アストラ様がぁぁぁっ!?ばらばらに!?」
「....ってこれただの人形じゃねぇかっ!!」
「そんな!本物のアストラ様は!?」
~~~~
人がいない路地裏に着いたデタラメチャーハンは何かを確認すると、口を開く。
「うん、悪党はついて来ていないみたいね。これでやっと一息つけるかしら.....」
『悪者....といかただのボディーガードだったと思うが.....』
「そんなんじゃないわ。それに、私のボディーガードは一人で充分.....とにかく.....ようやくお礼を言えるわね!あなたがいなかったら、こんなにうまくいかなかったもの。『チャーハンネッ友の会』、主席の栄誉をあげるわ!」
『いらない』
「ちょっ!?そんなストレートに言う!?....こほん、ここからはもう私一人で大丈夫。これ以上あなたを巻き込むのも悪いし....じゃあね、今後なにかプレゼントを贈るわ!」
『できればスイーツで』
「えっ....それでいいの?ほら例えば、
『....サイン?』
「あっ」
『あー....もしかしてなんかの有名人?だからあんだけ黒服いたんだな』
「えっと...その....知らない?アストラって?」
『アストラ.....はいはいあれだろ?有名だよね、ロボットみたいな見た目で永遠に走るミームネタでおなじみの『アストロガンガー』』
「アストラよ!」
と、大声で叫びながらサングラスを外す。
「ロボットじゃないわよ!どっからどう見ても誰もが魅了する美人歌手よ!?あとガンガーって何よ!ヤオよ後ろは!」
『.....全部言ってんじゃん』
「あっ.....」
「『........』」
二人は沈黙になりサングラスをかけなおす...数秒たつと、デタラメチャーハン、もといアストラが開き直った。
「え....えぇそうよ!私がアストラ、本人ですけど!何か!?」
『開き直ったよ....』
「私だって、認知されるのは素敵なことだと思っているけど....マネージャーと約束したの。『一人で外出する時は、バレないように変装する』って」
『......サングラスだけで?』
「コホン!....本題に戻りましょうか。予定通り、そろそろポート・エルピスへ出発するわよ!」
『予定ってなんすか?』
「ふふ、
『いやそうはならんやろ』
「いい?エーテリアスがTOPSの後ろ盾に持つ大スターをさらって、お偉いさんたち肝煎りのイベントを台無しにした.....もう私達、一蓮托生で死なば諸共なの!」
『ホロウ空間でクーリングオフすっぞ』
「もう手遅れなんだから、大人しく私の一日脱走計画に加わってちょうだい!ずばり....サボって、逃げて、ポート・エルピス!そんでもって、ラストはリバーブ・アリーナよ!特にリバーブ・アリーナね。面白そうなイベントがあるらしいの!貴方のその力で行けるでしょ?」
『.....はぁ、分かったよ――困ったお転婆姫様だ....』
こうして二人は、早速ポート・エルピスへ向かうのであった。
~~~~
海風が挨拶代わりに吹き付け、空が一口で呑み込めそうな雲が差し出す.....燦々と照り付ける太陽のもとでカモメの鳴き声と波の音が混ざり合い、乳白色の波を生み出している。
ここがポート・エルピス。
皆とに入るやいなや、アストラは釣り人のいるエリアへと嬉しそうに駆けだしていった。
「見て、釣りをしているわ....釣り具からなにから万全。さぞいっぱい釣れてるんでしょうね」
「......」
「変ね。隣のバケツはお魚でいっぱいなのに、こっちはバケツは
「おっと、お嬢ちゃんは辛らつだなあ....おっ、来た来た!こりゃあ大物じゃぞ!今度こそ....ちっ、逃がしたか」
と、如何やら魚が逃げたらしい.....
「まーた逃がしたのかよ?」
「いいか、結果が重要じゃない。過程こそがすべてなんじゃ.....」
『さてはお前、昔警察だな?』
「釣りかぁ....懐かしいわ。もうずいぶんやっていないもの」
すると、アストラは懐かしそうに釣りを見ていた。
『やったことあるのか?』
「うん、仕事で何度かやったわ。簡単で楽しいわよね!釣り糸を水で垂らしたら、心の中で10秒数えるでしょ....それからぐって引き揚げると、魚がかかってるの!」
「10秒!?谷じい、この人釣りの達人だよ!いや、もう達人の域を超えてんな.....!」
「その時もこんな感じで釣りをしてたけど....うーん、何か足りないような....」
「何が足りんのだ?エサか?竿か?それとも場所か?やっぱり場所がよくないと思っとったんじゃ。そうと決まれば移動じゃ!」
「そうそう、スタッフが足りないわ!魚を持ったアシスタントが潜ってくれてて、私が糸を垂らしたら、針に魚をつけるの!」
「お嬢ちゃん、釣りって....人をひっかけるほうかい!映画の撮影じゃないか!」
『.........』
「映画といやあ....おねーさん、あの有名人に似てるね?誰だっけ....友達がすきなんだよな~.....」
「えっと、違うわよ」
「違くねぇて....!そうだ、アストラさんだ!いやでもそんなはず....!ひょっとして、スーパーそっくりさん?」
「な、なんでそう思うの?」
「だって友達、アストラさんのこと『女王』って呼んでたし。女王様にしちゃ、なーんか
「ワシに聞いてどーする。女王様だがなんだが知らんが、竿を振る邪魔になるだけじゃい。ま、ワシのバケツを蹴っ飛ばそうもんなら、ワシだってそいつのバケツを海にシュートしてやるからのう」
「私....いますぐこのバケツを蹴っ飛ばしたほうがいいかしら....?」
『やめとけ、色々と面倒になる』
と、タンザナイトは止めると、アストラはふと何かを閃く。
「そうだ....あそこの灯台って、上に登れるのかしら?」
「ワシに聞いてどーする。あの灯台に登れようと登れまいと、竿を振る邪魔になるだけじゃい....灯台の下に男がいるじゃろ。あれが管理人のマックダンじゃ、登れるかどうかはあいつに聞け」
「よし、行ってみましょ!管理人さんがいいって言ってくれたら、上まで登ってみたいわ」
そう言い、二人は灯台へ向かうこととなった。
「この灯台に登れるかって?登れるには登れるが、今日は風も強いし大したものは見れんぞ....」
「ううん、そんなことはないわ!私の直感が言っているの――きっと港で一番の景色が、ここで見られるって!」
「本当に....そう思うのか?灯台の良さを分かってくれる若者が、まだいたなんてな....いいとも、好きなだけ登っとくれ!」
「ありがとう!それじゃあ、カモメを見に行きましょう!」
『はいはい....』
そうして、灯台に登ると、アストラは静かに眺めている。
「......」
何かを考えているのか、一言も発さない....彼女の表情からは活発さが消えて、まるでポスターに載っているあの人のように.....
『......』
「.......」
終始無言で彼女を見つめるタンザナイト.....すると、アストラから何かが聞こえる。
「ふんふんふ~んふん.....ふんふん~....♪.....ハッピバースデー・トゥー・ユー」
『誕生日?.....あーそうえば、今日はあんたの....』
「そ....今日は私の誕生日。どうしても今日だけは、
『.....じゃあ今歌ったのは、俺は『好きでもない人』ではないんだな』
「当然でしょう。私ね、今日自分で『やろう』って決めたこと、なにもかも最高だったなって思ってるの。特に、
『へー.....』
「一人でも逃げだす自信はあったけど、こんなに楽しくはならなかっただろうし。感謝のしるし、ご褒美....なんて呼んでもいいけど、貴方は今日、このアストラのたった一人の観客よ」
『それは光栄のことだな』
ふと、アストラはさっきの言葉を思い出す。
「それにしても、『女王』か....いつからだろう?そんなイメージ持たれるようになっちゃったの....」
『ポスターチラ見したが、だいぶイメージが違うんだよな....』
「当然よ。仕事は仕事、私は私だから。まぁ....それでも、やりすぎかなって思うときはあるけど。今のこの私だって、自分を慰めたくて元気いっぱいの演技をしてるだけかもって思ったり.....はあ、ひとつ年をとったっていうのに、なんにも変わってない気がする....」
『変わらなくてもいいことだってあるさ』
と、タンザナイトはアストラが落ち込んでいるのを励ます。
「そうかもね。来年の誕生日も、こんな風にワガママできる勇気があったらいいなあ。その時はまた、貴方に助けてもらおうかしら」
『それは勘弁してくれ』
「ふふ...」
タンザナイトはちょっと苦笑いする。
「....風が強くなってきたかも。降りてリバーブ・アリーナに行きましょ、今日は最後の目的地!」
『ほいほーい....』ズズッ
ポート・エルピスの灯台を満喫したアストラは、最後の目的地『リバーブ・アリーナ』へ向かうこととなった。