「......」タッタッタッ....
アタッシュケースらしきものを片手で持ちながら走っていると――
バリバリッ!!
『追いついたぞ....っ!』バリリッ....
「もう追いついたのか....さすが『蒼光の騎士』だ」
雷の轟音と共にタンザナイト(∞モード)*1がヒューゴの前に立ちはだかる。
『さぁ、その『勇者の外套』を渡して貰おうか...!』スッ
「......そんなに欲しいのなら―――ほらっ」ボフッ
『っ!』
ヒューゴがそう言うと、『勇者の外套』を雑にタンザナイトの顔に投げつける。
『ウプッ....やけに素直だな――っ!?』
「っ!」ズァァッ!!
『あぶねっ!?』フッ――
ふと、ヒューゴと目が遭った時、鎌のような武器で攻撃してきたヒューゴをギリギリで避けるタンザナイト。
「ほう、今のを避けるか」カチャカチャ....
『くそっ....つい気が緩んだたけど――もう、油断しねぇぞ!』バリリッ!
タンザナイトは、電撃が走ると、どこからか
一触即発、火花が散ろうとした瞬間――どこからか、ならず者のホロウレイダーたちが現れる。
「ん?」『ああ?』
「今日はボウズだと思っていたが、最後の最後でツキが回って来たな!」
「おおお、大人しくしろ!エーテル物質をありったけ差し出せ、金目のものがあればそれでいい!タダで逃げられるともうなよ!」
『....ハァ、空気読んでくれない?』
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ。今日の稼ぎは
すると、ヒューゴが鼻で笑った。
「通行料?ここホロウだ。まさか貴公ら....自分がホロウのあるじだとでも言うのかね?新エリー都の市長殿でも、
「なんだぁ、もやしみてぇな体で偉そうな口ききやがって...!差し出す気がねぇってんなら、こっちも遠慮はしねぇ。こちとら、もう何人もあの世送りにしてきたんだぜ....さぁお前らはどうしてやろうか...!」
『......っち』
「えっ?」
「残念だが......今の俺は――」
「とっくにキレている!」『お呼びじゃないんだよ!!』
シュバババッ――ドコォォォォォンッ!
ヒューゴとタンザナイトが素早い動きで数分もかからずホロウレイダーたちを片付けた。
「うわぁぁぁぁ!かかか、勘弁してくれ!」
「恐怖で取り乱すくらいなら、初めから手を出すべきではなかったな。道を選んだ以上は、
「お、俺が間違っていた!どうか命だけは!」
「もうこんなことしねぇ!」
『はいはい、とりあえず治安局に引き渡しますよ』
「....待て、騎士くん。こちらを殺す気で喧嘩を売って来た連中だぞ。貴公はそれを許そうというのか?」
『別に許すってわけじゃないよ。現に邪魔しに入って来たし』
「では何故?」
『何故って....ただの物取りに命奪うことでもないだろ?』
「......」
タンザナイトがそう言うと、ヒューゴは考え込む。
「やはり、君も共感してくれないか...悪党に罰を与えるのに、何を躊躇うことがある?こいつらが今まで手にかけた命の数を知っても、同じことがいえるか?俺はただ、この世界に然るべき『公平』を取り戻しているにすぎない」
『....ヒューゴさん、別に悪党に罰は与えるのは
「っ....!」
凛とした表情でタンザナイトが言うと、ヒューゴは、昔のことをふと思い出す。
~~~~~
「いずれ、お前達は俺の技術をマスターするだろう....だが、今はそれ以上に重要なことを教えておく。それは....信念だ」
「信念?じっちゃん、なんで怪盗に信念が要るんだよ?」
「当たり前だろう。おれ達が何のために戦うと思ってんだ?」
昔のライカンが言うと、ヒューゴは決まっているだろうとスラスラと戦う動機を言う。
「富と栄光、権力のために決まっているだろ。いつの日か頂きに立って、誰にも指図されずに生きるためのな――誰しもそう願うものだろ?それともなんだ、ライカン....お前が言う信念ってやつは正義とか夢とか、絆とか.....そんな綺麗ごとじゃないだろうな?お笑いだぜ、もう少し大人になれよ。いつまでも
「....なんだと!フン、お前なんぞにわかってたまるか」
と、ライカンが怒っていると『ジャック』という人物が鎮める。
「その辺にしておけ。いいか....信念とは、単純明快だ。俺は己の行く道は正義だとは言わんが、それが間違いだと思わん。この世には『公平』でないことが多すぎる。だからこそ俺は、公平をもたらすために特別な手段を用いることもいとわない――だが、命....これだけは
「ああ、じっちゃん」
「.....」
「返事が聞こえんな、ヒューゴ」
すると、ヒューゴは口を開き、淡々と言う。
「じっちゃんの言う通り、この世は不公平だ。公平さをもたらすというなら、誰かを傷つけた者には同様の痛みを与え、命を奪ったものには等しく死を与えるべきだ。それに、命の重さなんて持ち主によるだろ。1人殺せば、その他大勢を救える命だってある」
「お前はやや傲慢にすぎるところがある。そいつに身を委ねていると、いつか道を踏み外すぞ」
「じっちゃん、俺は
「おい、なんて口のきき方しやがる!ジャックのじっちゃんに拾ってもらわなかったら、お前も俺も、今頃どうなってたかわからないんだぞ!」
「ヒューゴ....お前は頭が回るし実力もある。お前自身で他者を『罪人』と定め、その命を奪うのも容易いことだろう。だがある時、それが濡れ衣だとわかったら?お前が手にかけた者を生き返らせることがでるのか?」
「....そんな間違いは犯さない」
「人は、人である限り、必ず間違いを犯すものだ。むろん、率直にものを言えるところがお前の長所でもある。ただ....過去に縛られすぎるなよ。憎しみは人を育てなどしない。ただ破滅に導くのみなのだから」
~~~~
「.....君もじっちゃんみたいなことを言うのか」ボソッ
『?』
「騎士くん....どうやらあの
『....裏切り者?』
「ああ、失敬....あいつから聞かされていなかったかだろう?――ライカンは、昔俺と一緒に『モッキンバード』を立ち上げて活動していたのだよ」
『っ!...マジ?』(そういや前の世界でライカンの秘話であったな....今思い出したぞ....)
「そうとも....もっともあの裏切り者は俺の
『....もしかして、ライカンが義足なのそれのせい?』
「...ふっ、どうだろうな?」
と、含みのある笑止で言う。
『....まぁ、そう言うのは本人の問題だからいいとして....俺の考えは変わらない。『罪を憎んで人を憎まず』――人の命を奪うなんてことは、あってはならないんだから.....』
「――ならば、貴公がどれほどの
『っ!』
カチャカチャ!!
ヒューゴはアタッシュケースを上から落とすと、機械の起動音と共に、巨大な鎌へと変形する。
『うわ、やっぱかっけぇ!?』
「では....行くぞ!」ダッ
『!』
ガキィィィィン!
『グッ....』
「ほう、やるな....あの
タンザナイトが銀の盾で、ヒューゴの鎌を受け止めると、すかさずタンザナイトは金の槍で反撃する。
『『サンダーストーム』っ!!』*2ギュルルルルルッ!
「うおっと!」ガリリッ!
槍先から電気を溜めて、その先から竜巻状の電気エネルギーを放つが、放たれる直前、ヒューゴはそのまま飛んで、盾を利用し、
「っ!」ググッ
『おっ』
そして、ヒューゴは鎌の先端を地面に刺し、肩で支え先端から氷のエネルギーを溜め始める。
「はぁっ!!」バキュゥゥゥゥンッ!!
『『エルブスリング』!』*3バリリリリッ!
ガリガリガリっ――ドコォォォォンッ!!
ヒューゴの遠距離攻撃が放たれると、タンザナイトの周りに電気で出来たいくつものリング状のものが回転し、バリアを作ってヒューゴの攻撃から防いだ。
「てぁぁぁっ!」ズァッ!
『ぬぅっ!』キィィンッ!
防ぎ切ったバリアを解くと、すかさずヒューゴの鎌攻撃を放たれるが、金の槍でぶつけ、防ぐ。
「騎士くん、メイフラワー家の人間には気を許すなよ....無論、その飼い犬も」
『っ――なんでだよ....!』
「新エリー都の市長殿はその座に就くまで、どれだけの屍を踏み越えていったのだろうな?」
『....ぬぅん!』バッ
「!」
するとタンザナイトは、『アレスターボ』で上空に飛ぶ。
『......っ』
「なっ!」
タンザナイトは、槍を掲げると、電撃が一気にその槍へと集まり出し、二回転程槍を回し、ヒューゴに向かって突き出した。
『『トニトルスカイピア』っ!』*4
バキュゥゥゥゥゥンッ!!
「っ....」
ドコォォォォォンッ!
槍状の電気エネルギーがヒューゴに向かって襲い掛かり、爆発音が鳴り響いた。
『.....』スタッ
タンザナイトは降りてみると....そこには焦げ跡しかなく、ヒューゴの姿はどこにもなかった。
『いない....か』バシュッ
(逃げちゃったのかなぁ...)
タンザナイトは『∞モード』を解除すると、同時にリンとライカンがやってきた。
「おーい!」
『ん?』
(あっリンちゃんとライカンさんだ!)
「さっき物凄く光ってて、爆発音がしたけど大丈夫だった!?」
『ああ、大丈夫だ。ちょっと勝負に熱が入ってしまったが....』
「....」
すると、ライカンはあたりを見渡し、タンザナイトに声をかける。
「失礼....タンザナイト様、あの怪盗....もといヒューゴはどこに?」
『あー....すまん逃げられた』
「....そうですか」
タンザナイトがそう答えると、ライカンは静かに考え込む。
「....どうしたのライカンさん?」
「申し訳ございません。ふと...昔のことを」
『確か....ライカンは昔『モッキンバード』の一員だったっけ?』
「.....ヒューゴから聞いたのでしょうが、その通りでございます。ヒューゴとモッキンバードを立ち上げる以前、我々にはジャックという恩師がおりました――」
そこからライカンは、自身の成り立ちなどを話した....
行くあてのないライカンとヒューゴを受け入れ、実用的な技術の数々、人としての道理までも伝授してくれた人物らしい....
だが、それをもってしても、ジャックの教えはヒューゴに届かなかった。あるいはあのころから、彼と袂を分かつことを決定づけられていたのかもしれない.....
それは、モッキンバードの数々の『成功』と『失敗』があった....そしてその『失敗』は....とりわけ悲痛なものだった――それは、ヒューゴがとある一家を皆殺しにしたことだった。
そのせいでもう見てられないライカンは『モッキンバード』を抜けたのであった....
所変わって、話が終わるころには、タンザナイト達は『RandomPlay』に入っていた。
「――申し訳ございません。プロキシ様、タンザナイト様。不愉快な昔話をお聞かせてしまいました」
『いや、いいけど....そんなことがあったんだな』
「ヒューゴは名門の一族に生まれましたが、家族....とりわけ
『....』
(それって....)
「ヒューゴは私だけではなく、その場にいたすべての者を利用しました。彼の選択を批判するつもりはございません。ですが、
『ライカンさん....』
「いずれにせよ、サクリファイスのコアはヒューゴの手にあります。まずは市長閣下にご連絡し、次の行動を起こす前に助言を仰ぎましょう」
そう言うと、ライカンは市長へ電話をかけると、すぐにつながった。
「親愛なる子供たちよ、また声を聞けて喜ばしい限りだ。ライカン君から話は聞いている。サクリファイスのコアはモッキンバードに盗まれてしまったそうだな」
『すまん市長さん....俺がいたばっかりに...』
(追い詰めたとおもったけどなぁ....)
「大丈夫だ。これについては、我々が対処しよう」
「何かお手伝いできることはありませんか?その、私達、頂いた任務を果たせなかったので....」
「いや...君達はよくやってくれたよ。ただ、
「危ないことならもうさんざん巻き込まれたし、今更どうってこともないです!それに、モッキンバードの彼とはやり取りしていたこともあるので力になれるかもしれません!」
『俺も、このままやられっぱなしもいかないのでね.....』
(私もそうだよ!)
「....その気持ちのことはしかと受け取った、ただ....そうだな。君達のことは十分信頼している。この際だから、正直に話してもいいだろう。少し前、私は1通の予告状を受け取ったのだ」
「....市長閣下!」
と、口ごもった声でライカンが言う。
「ライカン君、彼らを危険な目に遭わせたくないという気持ちは分かる。私も同じだよ。だが、本当のことを知っておくべきだ」
『本当のこと?』
「予告状は、サクリファイスとタンザナイトの力を利用して、新エリー都に復讐を果たすという旨の内容だった」
『なっ!?』
これにはタンザナイトも驚く。
「タンザナイトのこともそうだけど....復讐って?」
「....予告状を送り付けた人物、或いは組織かもしれんが...サクリファイスとタンザナイトを用いた新エリー都への襲撃を計画しているようだな。これまでの調査で判明していることのいくつかも、この推測を裏付けるものだった。君達も知っての通り、サクリファイスの力は未知数で制御することはできない。そしてタンザナイトの力は成長し、まったく別の性質に変わる。あれらを
「でもそれなら、なおさら私たちも参加すべきだと思うんです!きっと力になります!」
『俺の力を兵器にされるって聞いたら誰だって止めに入るに決まってる!』
(そうだよ!絶対にそんなことさせないよ!)
と、やる気満々に伝えるが.....
「言った通り、本件がもたらす危険は度を越している。あくまで君達は新エリー都市民であり、市長である私が守るべき存在だ。それに....君達二人の身にあれば、カローレ君が生きていたとして、絶対に許してはくれないだろう。とにかく、この件についてこれ以上は話せないのだ。安心したまえ、新エリー都市政がうまく対処する」
「その通りです。プロキシ様、タンザナイト様、どうか私共を信じてお任せください」
「では今日はここまでとしよう。また会おう、子供たちよ」
そう言い、市長との通信が切れた.....その後、その場で解散することとなったのだ。
ねじれポイント
ライカンとの戦いは先にタンザナイトが来たので代わりになった