死体となったシエナは、アンビーとトリガーが運ぶこととなったので、一旦二人は解散することとなり、ビビアン、タンザナイト、リンの計三名で探索をすることとなった。
「ところでタンザナイト様、パエトーン様、未来は変えられると思いますか?」
『変えられる』
「えぇ!?そ....即答!?えっと、わ...わたしは変えられると思うなぁ~....!」
即答したタンザナイトに驚きながらもリンも堪えた。
「そう、ですか....覚えているのです。こういう光景は、数えきれないほどに見てきましたから....私はどうして不幸しか見えないのでしょう....何故、些細な幸せに触れることすら叶わないのでしょう....」
『ビビアン....』
と、ビビアンは悲しそうな声で、呟いていた....
「....敬愛と最愛のあなた様達に一つ、教えてあげます」
「『?』」
「予言の力は、完全に制御できるものではないのです。いつも一瞬のうちに起きて、沢山のイメージが浮かんできます。最も多いイメージは、死です。病や事故、災害によるもの....もちろん、中には死に至らないものもあるとはいえ...例外なく、最後には必ずそれが起きるのです。回避する術はありません。伝えておくべきは、これだけかと。こんなわたしを気味が悪いと思ったのなら、わたしを遠ざけて頂いて構いません。別に、わたしは気にしないのです」
と、自分のことを卑屈になっているビビアンにタンザナイト達は.....
『なーに言ってんだ。いまさらそんなことで俺の心が揺さぶれるかよ。だろ?』
「うん!だってビビアンはビビアンだもん、私たち、もう仲間でしょ!」
(うんうん!)
―――負を否定した。
「っ!...やっぱり、あなた達は私の『光と希望』なのです....」
『....思ったけど、さっきから気になっていたがその『光』とか『希望』とかって何なんだ?』
と、疑問に思ったタンザナイトは、ビビアンに訳を聞いた。
「....それは、絶望のどん底にいた私を救ってくださった神様のような存在なのです。パエトーン様は覚えていらっしゃらないかもしれませんが....あのとき、わたしは確かにあなたに助けて頂いたのです。」
「そ...そうなんだ」
「はい、それからパエトーン様のファンになりしばらくたって、パエトーン様の相棒を語ったタンザナイト様が現れたのです。.....お恥ずかしい話、実は最初のころ『パエトーン様の相棒を語るとは....なんて無粋な!』と、毛嫌いしてました」
『えっ、そうなの』
「はい....でもタンザナイト様のファンになったきっかけはとあるインタビューを受けた時でした.....暇つぶしに興味本位で見てましたが.....タンザナイト様の勇姿や愛....そして、エーテリアスという怪物になって、どんなことを思ったのかの返答―――『この体で嫌なこと数えることよりも、この体で良かったことを少なくても数えたら、それだけで前に進める』と!私、その言葉を聞いて、感動したんです。呪われたといっても過言ではない力を、それでもなお立ち上がり、前に突き進むその姿.....その瞬間から、私はタンザナイト様のファンにもなったんです!」フンフン
『お...おう』
(す...すごい語るね)
「....というかよくそんな言葉が出てくるね、タンザナイト」
段々と鼻息を荒くし、長文で語るビビアンにタンザナイト達は少し引いていた.....
「はっ....す、すみません。わたしったらつい.....コホン、
「そうなんだ....私、ビビアンがその力を誇りに思える日がきっと来ると思う」
「あ..ありがとう....なのです///」
と、ビビアンが顔を赤くする。
『....っと、たしかブリンガーの手帳はここら辺にあるはずだが.....』
「そ、そうなのです!注意深く探してみるのです!」
と、ビビアンは恥ずかしさを誤魔化すついでに、ブリンガーの手帳を探すのであった。
数分後.....
『....全然っ見つかんないんだけど!?』
「おかしいですね....」
自販機を見つけ、いくつか探してみたが、手帳らしきものはどこにもなかった....
「はぁー...ここも無駄か....イテッ」ガンッ
ふと、リンはうっかり足を自販機にぶつけた―――すると、本来ドリンクが出てくるはずの場所から古びたノートが転がり出てきた。
『なんか出て来た!?』
(でぇたぁ☆*1)
「さ、さすがパエトーン様なのです!こんな方法でみつけてしまうなんて....そこに痺れる憧れるのです!プロの情報屋よりもグーなのです!」
「いやはは....たまたまだよ」
『でもこれで間違いないな....これこそが、ブリンガーが言っていた手帳....というかノートだな』
そう言うと、ブリンガーが残したノートを確認する。
『...なんだこの数字?わけわからんぞ...』
(うむむ....頭が痛くなりそう....)
「確かに、ここに書かれていることは、今のところサッパリなのです....」
ビビアンと一緒にブリンガーのノートを読み時始めた時、突如として、エーテリアスの咆哮が耳を打つ――次の瞬間、思いがけない姿がエーテリアスの前に立ちふさがり、あっという間に斬り伏せてしまった。
「これはこれは...久しいな、プロキシくんに騎士くん」
『ヒューゴ!?』
「たったいま君たちの命を救った男に対して、その驚愕した眼差しは正しいのかね?」
そこに現れたのは、ヒューゴだったことに二人は驚いていると、ビビアンが冷静に口を開く。
「どうしてノコノコ出てきたのです、ヒューゴ。あなたがいなくても、パエトーン様とタンザナイト様はわたしだけで守れるのです」
「なに....ほんのついでだ、ビビアン。仲間の実力に、俺は絶対の信頼を置いている」
「待って、今『仲間』って言った....?あんたたち、顔見知りだったの!?」
『オンドゥルウラギッタンディスカ!?』
「す、すみませんパエトーン様、タンザナイト様、その....うっかり伝えるのを忘れていたのです....わたしは、怪盗団『モッキンバード』の一員です」
なんと、ビビアンはヒューゴと同じ、『モッキンバード』の一員だったのだ。それを知ったリン達も驚く。
「その通り。俺があのオークションにたやすく潜入できたのも、すべてはこちらのビビアン嬢が、会場のバックヤードに細工をしてくれたお陰というわけだ」
『アンタトオレハ!ナカマジャナカッタンディスカ!!』
「ちょっとうるさいタンザナイト」
『はい』
「....あのときコレクションを落札したのはバックヤードに忍び込むためだったの!?」
「パエトーン様、忠告したはずなのです。目に見えるものだけを信じていては、お話にならないと」
「だが安心したまえ、プロキシくん、騎士くん。おれ達に誓って悪意などない。君も知っての通り....新エリー都を震撼させた怪盗団『モッキンバード』のメンバー達は、その長年にわたる暗躍にもかかわらず、依然として謎に包まれているのだ。だが、たったいま君達にその正体を明かしてみせた...これは『怪盗』にとって、示すことのできる最大限の誠意だと思わないのかね?」
「でもライカンさん、あんたのこと危険人物とか言ってたよ...?」
と、ライカンが言っていたことを思い出すリンだった。それに対し、ヒューゴは鼻で笑う。
「あの男のことだ、大方俺達の昔話でもしたのだろう?このような複雑極まる関係を前にして、片方の言い分だけを鵜吞みにするのは...公平ではない。おれ達の目的は至ってシンプル...モッキンバードとして、君という優秀なプロキシと優秀なガードマンと長期的な協力関係を結びたい、それだけなのだ」
「わたしたちには、あなた様達の力が必要なのです」
「もっとも、すぐに答えを出せというものは酷だ。まずは我がモッキンバードの理念をしってもらってからでもよいだろう」
ヒューゴはそう言い、『モッキンバード』の理念を語った。
「俺達みなが嫌というほど知っているように....この世界は公平ではない。富の分配などはその最たるものだな。TOPSの連中が
『....』
「そう、誰かが進んで天秤の傾きを正さなければならない。モッキンバードはそのために生まれた!身の丈以上のものを抱え込んで離さない連中から奪い、それを真に必要とする者の手に届ける。それこそが、『正義』だと信ずるがゆえに」
「悪いけど、賛成するわけにはいかないかな」
『俺もだ』
「構わない。言葉で示すことができるものには限界があるからな。かくなるうえは、行動で証明してみせよう。だが、今は理念や信念といったものを越えて対処すべき、差し迫った危機がある。讃頌会が密かに、サクリファイスと騎士くんを用いて新エリー都に害をなさんと企んていることは知っての通りだ」
「タンザナイト様の力を利用するなんて....許せないのです!」
「俺達は、その最新の手がかりを提供できる。先ほど君がビビアンと見つけたノートもその一つと言えよう。高みで物憂げなふりをしているだけの連中には決してできない援助だ。そして、此度の駆け引きにおける最も重要な鍵....サクリファイスのコアもまた、俺の手中にある。またとない取引だと思うがね」
『あっそういえば、そうだったわ』
と、タンザナイトはサクリファイスのコアの件を思い出す。
「降りかからんとする災厄を阻止する...この一点において、今だけはお互いの目指すところが一致しているはずだ」
「うん....もう少しだけ考える時間を頂戴....」
すると、ヒューゴはとある提案を出してきた。
「こうしよう。まだ君に憂慮があるというなら、此度の協力にはライカンを連れてくることを許そう。いかがかね?あの男の存在だけでも、俺への牽制として十分だろうが....奴のバックには市長勢力がついていることだしな。君もさぞかし安心だろう?」
『そこまで?』
「むろん、他のお友達を連れてくるのもいいぞ――
「そこまで言うなら....わかったよ」
「契約成立、グーなのです!パエトーン様、タンザナイト様、これをあげます」
ビビアンがそう言って渡したのは....雫型のペンダントだった。精巧で高価に見えるが、中は空洞になっているらしい。
「私たちの最初の協力を記念して、取っておいてください」
「これより、我々でノートの内容について仔細に調べるつもりだ。何か情報が見つかり次第、俺から連絡を差し上げよう」
ヒューゴはそう言い、タンザナイト達はこのホロウからでるのであった。