しばらくして、各チームがそれぞれの任務を終え、再び全員が集まった....
「俺達が最後とはな。間違いなく誰かさんのせいだろう、違うかね?」
「....」
「喧嘩しなければ、ビリになることもなかったわ」
「パエトーン様とわたしは息ぴったりなのです、一番乗りは当然かと」
「最下位は何か奢ってもらわないと!」
『はいはい、奢るな奢るな....』
と、タンザナイトはリンの悪乗りを止めるが...
「ああ、それが公平というものだろう。無事ことを成した暁には、プロキシくん達にご馳走すると約束しよう」
『いや乗るのこれ?』
「....いつの間に、競争になってしまったのでしょうか」
....どうやら、ヒューゴもそれに乗っていたようだ。
気を取り直して、ヒューゴが場所の確認する。
「諸君、ブリンガーのノートに記された座標は、遠くない場所にあるはずだ。弛まず歩もうではないか」
『....ん?』
すると、前方から何やら耳障りな音が響いてきた....
「これはまた轟音だな....この先で何かが起きているのか」
「....皆さま、ここでおまちください。私が見て参ります」
「多分エーテリアス、それも複数いると思う。念のため私も行くわ」
「ビビアン、お前も行ってくるんだ。ライカンから目を離すなよ。隙を見て、私達を市長に売り渡すかもしれないからな」
『するとは思えないが....』
「....そのようなことはいたしません。ですが、もしビビアン様がお望みなのでしたら、どうぞご自由に」
「じゃ、じゃあ、わたしも行く、のです....」
「ど、どうしたのビビアン、すっごくぎこちないけど....」
と、過呼吸なビビアンを見て、心配するリンだった。
「わ、わたし、
『ええ....』
「....ビビアン様、そういうことでしたら、我々と参りましょう」
「え、ええ.....」
そう言うと、ビビアンはぼうっとのぼせたまま、ライカン達と一緒に先へ進んだ。
「あれほどに熱狂的な崇拝を受けるというのは...どのような気分なのかね、『パエトーン』と『蒼光の騎士』」
「実は最初からとっくに知っていたの?私が『パエトーン』だって.....」
「ハハハ....鋭いな。おっしゃる通りだが、ビビアンには黙っておくべきだと思ったのでね。彼女自身の手で真実にたどり着く方が、よほど意義があるしいうものだ.....騎士くんが介入したことでもうバレたが....」
『ごめんて』
「それに、ライカンさんとビビアンを先に活かせたのもわざとてでしょ。私に何か話でもあるの?」
「やれやれ、何もかもお見通しとは」
すると、ヒューゴはさっきの胡散臭いような雰囲気が一瞬にして変わった。
「ビビアンを――俺は、彼女のことを実の妹のように思ってきた。どういうわけか、あれはセレナにそっくりでね。ああ、セレナとは俺の腹違いの妹のことだ。君にかつて教えたように、この世を去ってずいぶん経つが。ビビアンは君たちをたいそう気に入っている。『パエトーン』と『蒼光の騎士』としても、
『.....』
「そこで....君達に頼みがある。どうか、ビビアンを守ってやってはくれないか」
『!』
「待って、どういうこと?」
と、唐突の発言に二人は困惑する。
「....俺の中に残った、
「あんたの信念....?」
『っ!....それって....』
(あの時の.....)
と、リンは考え込むが、タンザナイトは前にオークションの時のことを思い出す。
「ライカンから聞いてはいるだろうが....モッキンバードを立ち上げたとき、俺たちは誓いを交わした。自分たちの手で、この世にあまたとたる公平でない物事を正そう....ただし、何があっても他者の命を奪うことはしない、とな。当初こそ、俺はこの誓いに忠実だった...だが、それもあんなことが起きるまでだ。」
「俺の憎んだ男....俺の父親が目のまえにいたんだ。指を動かせば、一思いに殺すことのできる距離に....にもかかわらず、俺は躊躇った。あの忌々しい誓いを思い出してしまったからだ。あいつらが俺に何度も言い聞かせてきた言葉が何度も脳裏をよぎった。結局、俺は何もしなかった。しかしどうだ、その選択がもたらしたのはより多くの無辜の人々の死だった!何もかもみなあの男のせいで!」
「俺があいつを殺してさえいれば、防げた悲劇だった。生きる資格のないやつにかけた情けの代償だそれから俺は、こう考えるに至った....時には一人を殺すことで、より多くのものを救えるのだと」
「やっぱり....共感はできないかな」
と、ヒューゴの思いを聞いたリンは返す。
「....そうか。騎士くん同様、君にも譲れないものがあるのだろう。ビビアンは優しい。俺は彼女に手を汚させたくはない。だが分かるだろう。この世には常に『悪人』となるべき者が必要だ.....だから、俺は君達に謝らなければならない」
『?』
「ど....どうして、急に謝るの?」
と、急に謝って来たヒューゴにリンは訳を聞く。
「君達は強く、善良かつ優秀で....また幸運でもあるからだ。この世は、君達のような人間を多く必要としている」
『.....』
「騎士くんは店長くんに聞いたと思うが....最初に尋ねた映画のことを、まだ覚えているだろうか?『悪魔の子』という復讐を題材とした映画だ。未だに拝むことはできていないのだが、同名の別作品を見つけてね。その筋書きの中では、『悪魔の子』の真の正体はなんと『神の子』であったのだ」
(......?)
「くだらん話を山ほどしてしまったな。そろそろあいつらが戻ってくる頃だろう。ビビアンのことを、どうにかよろしく頼んだ」
ヒューゴがそう言うと、帰って来たビビアン達と合流し、その先へと進む......
すると、目の前には黒い結晶の周りに黄緑色の巨大な何かがあった。
「この、繭みたいなものは....」
「皆様、ご注意ください...!私の見間違えでなければ....その中にいるものこそ、サクリファイスでございます」
『マジっすか!?』
「休眠状態のようね。いつ目覚めるかは分からないけど」
「....もし目覚めたとしたら、非常に厄介なことになるでしょう」
すると、ビビアンはふと、思い出す。
「待って、それでは....ブリンガーのノートに記してあった地点には、どこもこのようなサクリファイスが一体ずつ眠っているということですか?それなら....現時点でわたしたちが把握しているだけで、十数体ものサクリファイスがいるということになるのです!」
『!?』
と、その場にいた全員が驚く
「休眠状態とはいえ、讃頌会にはこれらを目覚めさせる手段があるはず....サクリファイスがホロウの外でも存在できることを考えたら、とんでもないことではないですか!何十というサクリファイスが目覚め、人々の暮らしている場所に現れる....」
「....旧都陥落に匹敵する大災害へとつながるでしょう。これが予告に示唆された、新エリー都にたいする復讐....!」
「じゃあ、急いでサクリファイスを如何にかしないと。讃頌会の連中に渡すわけには....!」
「サクリファイスを見つけてくれて感謝する。だがすまないな、そいつがお前達のものとなることはない」
すると、そこに現れたのは.....なんとハルトマンであった。
『ハルトマン....!』
「...あの鼻持ちならないおじさまなのです!どうしてここに?」
「お嬢さん、言葉には気を付けたほうがいい」
「レイヴンロック家の人間....ということはあの事件も、あなたが....!」
「お前のその顔は....ほう、わかったぞ。友人のことについては聞いている。まことに.....残念だよ。彼女がもうすこし利口であればな」
(「『.....!』」)
と、ハルトマンの発言にアンビー、タンザナイト、インフィニティの目つきが変わる。
「あなた様の目的は、最初からこのサクリファイスでしたか....ずっと我々を尾行していたのですね?それも慎重に距離を保って....私としたことが」
「狼のシリオンはやはり鋭い。だがここまでうまくいったのはひとえに、君の
「....私の....元、相棒?」
『!....それって―――』
「そう呼ばれるのは些か気に食わないが――まぁよかろう」
ヒューゴがそう言うと、ハルトマンの傍に立つ。
「ヒューゴ、あなた....」
「ハルトマン殿と俺は、事前に
(そんな....ヒューゴ君....)
『.....』
「もちろん拒否してもかまわない――その場合は、こちらも強引な手を使うしかなくなるがね」
「あ、あんた....その男に何をあげたの?」
「サクリファイスについて、現時点で俺達が知り得るすべてだ――もちろん、あのコアについてもな....ああ、あと騎士くんの
『なっいつの間に....』
「で、でも....なんでそのようなことを?」
「簡単なことさ。俺は『上』に行きたいんだ。こちらのハルトマン殿は、俺にTOPSへの仲間入りをするチャンスを約束してくださった。こんな好条件を拒む奴がいると思うかね?」
「......」
「そ、そんな....讃頌会のことを調べると、約束してくれたのは.....モッキンバードが、できる限り世界に公平をもたらすべく存在するという、あなたの言葉は.....すべて、嘘だったというのですか?」
と、今までヒューゴと共にしてきたビビアンはショックを受ける。
「......ビビアン、お前は他人を簡単に信用しすぎる。忠告してやったはずだな。人は誰しも嘘をつく....誰もがみな、真の目的を隠すべく、軽率に虚言を弄することになれているのだと」
「ヒューゴ、お前は....!」
「ハハハ....鮮やかな裏切りの一幕だな。お前達のいさかいに横やりを入れるつもりはないのだが、少し道を空けてもらってもいいだろうか?俺の部下たちは、そこのサクリファイスを取り出すために慎重に期す必要があるのだ」
「...貴方の思い通りにはさせない――!」
アンビーは戦闘態勢にはいると、肌にピリピリと感じた....その先には―――
バチッ――!バチッ!
『良いわけ....ねぇだろ!』バチチチッ!
「タンザナイト....」
怒りがこもった瞳で睨み付ける『