『......』
今、タンザナイトは『RandomPlay』の前で悩んでいた。
(.....どうしたの剣くん?)
『....この中にビビアンがいるが....話しかけるべきか否か...』
「....どうしましたか?タンザナイト様」
『フォオウ!?』ビクッ
と、後ろから声をかけられたのは....ライカンであった。
『ら...ライカンか....どうした?』
「市長閣下から重要事項をあなた方に託したいと考えておいででございます.....が、何やら店前で悩んでいたので声をかけたのですが....恐らく中の様子を察するに、ヒューゴに対して負い目を感じているのではないのかと....」
『うっ....やっぱりライカンには察しがつくか....』
と、苦い顔をするタンザナイト。
「あの事に関しては、確かにヒューゴは多くの間違いを犯し、モッキンバードの道義にも背きました。ですが私が唯一確信しているのは、あの男が彼女やあなた方を、本当の意味で危険にさらすつもりはなかった....ということです」
『....
「はい....私がこれを言う資格はないことは百も承知でございますが....彼女がこれまでの選択を疑わず....落胆せず前を向いて行けることを願うばかりでございます」
『....そうかな』
そう言い、ライカンと共にビデオ屋に入って行った。
いざビビアンと対面すると、そこにはほとんど感情の動きはないように思えた.....
『えっと...ビビアン、その...ヒューゴについてだけど.....ごめんなさい、俺....』
「大丈夫です。タンザナイト様.....わたしもモッキンバードの一員なのですから。モッキンバードは利益のために集うことはなく、また利益のために分かたれることもありません」
『そ...そう?』
「はい。ヒューゴに彼なりの執念と目的があったように、わたしにも成し遂げなければならないことがあるのです――讃頌会、そしてサクリファイスについて....わたしは徹底的に追及します」
「.....モッキンバードのもと一員として、あなた様を敬意を表します」
「ありがとうございます...でもモッキンバードが本当に厄介なのはここからなのです。そうでしょう」
「....おっしゃる通りでございます」
『えっ?』
(ひょ?)
「えっ?」
と、なんか勝手に話が進んで戸惑うリン達。
「プロキシ様、タンザナイト様。我々三者は現在、讃頌会ならびにサクリファイスの件について調査するという同一の目的があると信じております。そのうえで市長閣下は、今後は双方で協力して事態にあたるように....と」
「協力の申し出ということなら、市長様にはそれなりの誠意を示してほしいのですが。モッキンバードが
「至極当然のことかと。市長閣下は直接手を下すことのできない代わりに、で
「ですが、
「私たちとビビアンとタンザナイトで、ちょっと相談するね。何しろこの依頼にはいろんな人が関わってるから....慎重に考えなきゃ」
その言葉にライカンは了承する。
「もちろんでございます、慎重な検討を要することは想像に難くありません。私はバレエツインズにて、皆様のお返事をお持ちするといたします」
そう言ってライカンは外へ出て行った....
「リン、ライカンさんが言っていた市長さんと協力する話、君はどう思う?」
「うーん....でも先生の件が.....」
「リン...それは、市長さんは先生のことを全ては話してくれていない、ということかい?それなら確かに、情報を引き出すには、協力を続けるしかないな....」
『ビビアンはどう思う?』
「モッキンバードのモットーは権力者を打倒すること....市長さんに協力するとなると、恐らくビビアンも困るんじゃないかな?」
「モッキンバードはただひたすらに、権力者を打倒しようとする組織ではないのです。モッキンバードの望みとは、全ての人々が平等な権利を享受できること。市長様を信頼している、とまでは言えないのですが、現段階では協力してもいい相手だとは思っています」
「そうなんだ....じゃあライカンの所へ行こうか!」
(話がまとまったね!)
そうして、ビビアン、タンザナイト、リンの三人はライカンがいるバレエツインズへ向かうこととなった....
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「プロキシ様、ビビアン様、タンザナイト様、既にご決断なされたようですね」
「でも協力するかは誠意次第だよ」
「ええ、ご安心ください、サクリファイスの件に関しては、市長閣下と皆様の利害は一致しております。何よりも、新エリー都の市民こそ、我々が守るべき対象ですから」
そう言い、ライカンは市長へ通話を繋げる。
「それでは、直ちに市長閣下との通話をお繋ぎいたします」
「親愛なる子供たちよ、私と引き続き協力してくれることをとても嬉しく思う。ヒューゴ・ウラド君の件については誠に申し訳なかったとしか言いようがない。このような結末になってしまうとはな....市長である以上、モッキンバードの行いを完全に容認することはできないが....それでも一個人として、彼のことはとても高く評価していたのだよ」
「ふん...」
と、ビビアンは冷たい視線で返す。
『ンンッ...それで市長さん、なんか進展が?』
「以前ブリンガーから手に入れた地図に基づいて、我々が詳しく調査を行った。あのサクリファイスを製造していたのは、かつてヤヌス区で活動していた讃頌会の責任者だ。名をランドンという」
(なんかライカンみたいな名前だな....)
「もっとも、当人は数年前に事故で死んでいるようだがな。生前はサクリファイスの研究に没頭し、生ける者をあの怪物へと変じさせる薬剤を開発したとされている。」
「ただ、薬剤の安定性には疑問符がつくものであり、そして、彼の死と共に製造方法も失われた。当時ヤヌス区で暗躍していた讃頌会の秘密、それを完全に復元することはもはやできなくなったと言っていいだろう」
「ランドンという責任者亡きあと、ヤヌス区における讃頌会の大規模な活動が見られなくなったことも、また事実ではあるのだが.....ブリンガーが残した地図に記されている地点とは、当時讃頌会が、成功に最も近いサクリファイスの試作品を隠していた場所なのだ」
『えっマジ?』
「えっと、その人はもう死んでて、讃頌会はここ最近ヤヌス区では活動していない....じゃあ、今回のことはハルトマンが個人的にやってただけってことですか?」
「残念ながら、そうではないんだ」
と、市長は否定する。
「調査によると、ハルトマンは確かに、何者かと秘密裏に連絡を取り合っている。それも、決まって
「もしかして、TOPSの人間と?」
「TOPSは複雑に絡み合う巨大な財政連合体だ。こうしたことに自ら進んで関与することは決してない。自分たちにとって利のある成果をただ享受する...それが彼らのやり方だからな」
『そうなんだ...』
「ハルトマンの行動原理はすべて、TOPSにおいて自身が一席を占めること...加えてレイヴンロック家の内部で支配的な地位を確立することにある。私の推測が正しければ、彼はかつてランドンに従っていた讃頌会の残党と繋がり、新たなサクリファイスの製造を援助しているのだろう」
「でも、ハルトマンがそんなことをしてTOPSに何か得があるんですか?だいたい、讃頌会がハルトマンに協力してるとして、サクリファイスみたいな重要なことを全部教えちゃうとは思えないんですけど...」
『一理あるな』
「サクリファイスの出現は、市民たちの大規模な恐慌を引き起こします。そんな混乱のなか、もしTOPSが自身の手でサクリファイスに対処してしまったら?当然、現市政は職務怠慢の疑いに向けられ、都市の安全保障をTOPSに委ねようという声が上がるはず」
『なるほど、自作自演みたいな感じか....』
「簡単に言えばそうなのです。そして、民心がTOPSに傾いてしまったとき、こちらの市長様の立場は....けっしてグーではないはず、なのです」
(けどもしそれが失敗したら元も子もないとは思うが....?)
タンザナイトがそんなことを思っていると、市長がビビアンの説明を褒める。
「ビビアン君、君の鋭さには相変わらず舌を巻くばかりだ」
「それで、あなたとの協力は、私達にどんな得があるのというのですか。よき市長として、市民を守る義務がある....とか、そんな理由であれば聞きたくありません」
「わたしは正義の使者ではありませんし、口先だけの信念を語られて、鵜呑みにするほど愚かでもないのです」
「私はただ、共通の敵がいるということを示したいだけだ。完全に理念が一致しているわけではないが、少なくともこの件に関しては協力の余地があるように思う」
「ハルトマンの居場所を特定することはできなくとも、彼がモッキンバードを『殺した』ことにつて、レイヴンロック家との対立を煽ることはできる....それがこちらの誠意だ」
『あっ、あの情報って市長がやってたのか!?』
と、タンザナイトが言う....実はここ最近、『モッキンバード』の死やヒューゴの出世などについて色々にな情報が目や耳ににとまっていたのだ。
「なるほど、あの情報を広めていたのはあなたでしたか。いくら調べても世論誘導の種が分からないので不思議に思っていたところだったのです」
「種をまいたのは私ではない。この情報が世に流れた時、より速く、より広く伝わるよう取り計らったにすぎない。そう、少し伝手を頼り、ヒューゴ君が世間に『迫害された英雄』として映るよう.....」
『なんて用意周到なんだ....』
「最初に言った通り、一個人としては、ヒューゴ君をとても高く評価しているのでな。私は喜んで、彼の名誉回復を手伝うとも」
「.....」
その答えにビビアンは沈黙する。
「とにかく、協力について私の要望を説明させてほしい――幾度にもわたる調査の結果、前回あの場所にあったサクリファイスの休眠体以外にも、同様のものが存在する可能性のある場所がいくつか見つかった」
『マジっすか!?』
「部下を派遣して処理したいところだが、私の一拳手一投足は多くの目に晒されている.....そこで君達には目標地点に向かい、サクリファイスを回収してもらいたいのだ。」
「回収されたサクリファイスは、二度と誰にも利用されることのないよう私が責任もって処分する。加えて、子供たちよ。君達を
『大丈夫なんですかその人....』
「なに、心配はいらない....私の友人は特殊調査委員として、虚狩りに比肩しうると言われる実力者のひとりなのだ」
「つまり...虚狩りと同レベルの凄い調査員が、私達を手伝ってくれるんですか?それに先生の研究とも関係がある....?」
と、市長が言っていた気になる言葉を確認するリン。
「その通りだ。彼女は近々、所要の為にヤヌス区を訪れるらしい。本来なら正式な面会の場を手配するのだが、そちらは不要だと言われてしまってね。なんでも、彼女の方かで君達7を観察して、接触するタイミングを計りたいそうだ。詳しいことは、向こうからアプローチがあるまで待っていてくれ」
「さて.....ここまで聞いてくれたからには、三人とも今回の依頼に異議はないということでよろしいのだろうか?」
「...はい」
『おう、任せろ!』
「私たちだって、新エリー都がパニックになることは望んでませんから。全力を尽くします!」
市長の質問に三人は了承した。
「わかっている。君達は、きっと私を失望させることはない。立場上、私達は友人になれないかもしれない。だが、決して敵でもない。後のことは君達に任せる。通話はこちらから切らせてもらう。それではまた」
そう言い、市長は通話を切った....
「お三方が引き続きご協力くださること、大変嬉しく存じます。あなた方にお力添えいただければ、此度のサクリファイス回収も滞りなく運ぶことでしょう」
「それでは、少々私用がございますので、お先に失礼させていただきます」
ライカンはそう言うと、その場を離れた.....
「パエトーン様、タンザナイト様、今すぐ出発しますか?」
「うん、出発しよう!」
『こっちもできてるぜ』
(ゴーゴー、だよ!)
「わかりました、いざ出発なのです!」
そう言い、三人はバレエツインズのホロウへと入って行ったのだった.....