転生先はエーテリアス   作:YEX

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古き友人と再開

「ありがとうございます。パエトーン様、タンザナイト様、モッキンバードを信じてくださって....」

 

『気にすんな...俺たちだって、こんな状況見過ごせねぇよ』

 

「うん、そうだよビビアン」

 

そう言いながら、休眠体がある場所へ向かっていると、そこは空だった。

 

「ここにあったはずの休眠体は、先に持ち去られてしまったのでしょうか?それとも、讃頌会が休眠体の隠し場所を変えようとしている?

 

「いいえ、適切に扱わなければサクリファイスが目覚めてしまうのです。かえって自分たちが危険になるのですから、よほどの事情がない限り移動なんてしないはず....まさか彼女は、市長が捜査の手を伸ばしていることに気付いて....?」

 

「えっと...ビビアン?何の話しているの?」

 

『...っ!二人とも隠れろ、誰か来る...!』

 

タンザナイトがそう言うと、少し離れた場所から男性たちの話し声が聞こえてきた。相手が誰なのか分からなかったため、一旦隠れて、こっそりと聞き耳をたてることにした....

 

「ハルトマンのやつ、俺達TOPSと繋がりたいばかりに、情報をでっち上げたんじゃないでしょうね....もう何度も辺りを回ってますけど、なにも見つからないじゃないですか」

 

「まっ昔からレイヴンロック家の言う事は話半分に効いとけっていうしな。ここ数年で落ちぶれたのだって別に不思議じゃない」

 

「連中、昔はずいぶん裕福だったそうですね。当時は何を()()()にしてたんです?」

 

「さあな。一応、表向き関わっているのはカタギの分野だそうだが、裏で何をしているのかは誰も知らん」

 

「サクリファイスみたいな怪物を、こっそり作ってたんじゃないでしょうね。でなきゃ、むかーしの休眠体がこの辺にあるなんてこと、知りようがなくありませんか?それに俺聞いたんです。」

 

(ん?)

 

「たとえオリジナルのサクリファイスが使えなくても、予備の計画があるって....あの男、えらく自信満々に言っていたんですよ」

 

「予備の計画?」

 

「いやまぁ詳しくは知りませんけど....俺がエドモンドさんの傍にいた時、そんなことを言っていたんです。TOPSはサクリファイスを何に使うつもりなんでしょうね?研究に使うんだとしたら、いつか俺達もホロウで普通に暮らせる日が来るんでしょうか?」

 

「よせよ。知らない方がいいこともある」

 

「はいはい.....取り敢えずこの辺では何も見つからなかったわけですし、ホロウを出て報告に戻りましょうか。今戻れば、丁度外勤を打刻してから退勤できますしね!」

 

「....ああ、まずは出るか」

 

そんな会話をし、TOPS関係者が去った後、ビビアンは浮かない顔をしていた....

 

「やはり....愚かなハルトマンは、TOPSに入りたい一心で虎の皮を求めるような真似をしているのですね。讃頌会にいるあの子は、人の命を何とも思っていない...この件に関わる人間が増えるほど、危険に晒される命も増えるのに....」

 

「....ビビアン、さっきからきになってたんだけど、『彼女』とか『あの子』って、誰のこと....?」

 

「はっ....!」

 

と、ビビアンが呟いた言葉に不思議に思ったリンが聞いてくると、ビビアンがはハッとした顔をする。

 

「うっかりしていたのです。どうか気にしないでください。『彼女』とは、讃頌会のメンバーなのです。以前、わたしと少なからぬ関わりがありました.....サクリファイスのことを聞いた後、何が起こったのか知りたいと思ったのも、そのためです」

 

「けしてあなた達に隠し事をしようとしたわけではなくて、ただ....讃頌会は、わたしにとってあまりいい思い出ではないので、まだ向き合う勇気が持てなくて.....ですから、パエトーン様、タンザナイト様、もう少しだけ時間をください。何から話すべきか整理ができたら、必ずやあなた達にお話しするのです

 

『そうか...分かった。お前がそう言うのなら....』

 

「うん、無理やり傷に触るようなのは嫌だし」

 

(待ってるよビビアン!)

 

と、三人はビビアンの事情を了承する。

 

「それに、今の毅然としてて優しいビビアンを見れば、ここまで頑張って来たんだなってことはわかるもん」

 

「パエトーン様、タンザナイト様...!ああ、もし急いでいなければこの場でたっぷり三時間はあなた達を賛美するのに!このことは忘れずに帰って、就寝前にきちんと賛美を済ませます!」

 

『やっぱやばいわこいつ』

 

「コホン...とにかく、まずは休眠体を探しに行きましょう。讃頌会はきっと、サクリファイスを回収しようとしている動きに気付いているはずなのです」

 

そうして、他の休眠体を探すべく、移動を開始する。

 

「ハルトマンの予備の計画とはいったい....とても気になりますね.....」

 

『絶対碌な物じゃないと思うが....』

 

「はい、嫌な予感がするのです」

 

数分後....休眠体がある場所に来たが、ここにもそれらしきものがなかった。

 

「ここにあるはずのサクリファイスの休眠体も消えたのです。こんなにも正確に休眠体の現在位置を把握している人物、一体誰なんでしょう....」

 

『.....ん?何か前方に誰かいるぞ』

 

「えっ?....行ってみましょう」

 

人影が見えたので近づいてみると....そこにいたのは白髪の黒スーツを着た女性がいた。

 

「やはりあなたでしたか、ビビアン」

 

「カミエルお姉様!どうして、あなたがここでサクリファイスを...?」

 

(姉様???)

 

「そのように畏まった呼び方は不要です、ビビアン。私はあなたの『姉様』などではないのですから」

 

「あなたがここにいるのは、讃頌会を止めるためですか?」

 

「....ビビアン。私は、讃頌会を離れたことはありません」

 

カミエルはうつむきながら、ビビアンの言葉を否定する。

 

「どうしてです?あなたは、ランドンが何をしたか知っているはずなのに!」

 

「ランドン様は....あれも始まりの主のためでした。方法こそ過激でしたが、必要な犠牲だったのです。ビビアン。あなたはあの時既に、離れることを選んだ....再びこの件に首を突っ込む必要はありません。今日は貴方を見なかったことにします。お友達と一緒にここから出て行ってください」

 

「カミエル?もしかして()()()()()()()()()()のではありませんか?もしそうなら、私が助けになれるのです....!」

 

「助ける?あの時、あなたが『彼女』を助けたようにですか?」

 

「わたしは...」

 

ビビアンが戸惑っていると、カミエルが口を開いた。

 

「ビビアン、あなたは涙を流していますね。そして、その視線は私に向けられている....」

 

「....違う、違うのです....」

 

「ビビアン、あなたは()()()から全く変わっていませんね。涙を隠す必要はありません。私はこれから辿る結末について、ハッキリと理解しているつもりです。ですが、あなたにはあなたの選択があったように、私には私の選択があります」

 

()()だけ忠告しておきます、この件には手を出さないことです。彼女は...あなたをとても憎んでいますから。それと....そこのエーテリアスさん」

 

『えっ俺?』

 

と、急に振られてきたタンザナイトはあっけにとられる。

 

「あなたの存在は讃頌会にとって、とても未知数な存在です。あなたの存在が大きくなるほどに、讃頌会の手があなたに向けられます。そして彼女も....そのことを理解してください」

 

『えっ...お、おう』

 

「あなた達にあったことは、彼女には言わないでおきます。ですからもう、私達のまえには現れないでください」

 

「カミエル!」

 

カミエルは最後に自ら投げた煙幕弾の煙に消えた。その音とともに、何体かのエーテリアスが引き寄せられてきた。いくつか疑問はあれど、目下の危機の処理が先決だ.....

 

『来たか...』

 

「パエトーン様、お下がりください!先ほどのことは....後で必ずご説明します!まずは目の前のエーテリアスを片付けましょう!」

 

蛸撃鞭(テンタウィップ)』っ!*1』シュバババッ!

 

タンザナイトの右足が八本の鞭に変わり、回転しながらエーテリアス達にぶつける。

 

「うわっ!蛸みたい!」

 

「流石、タンザナイト様なのです!」

 

『.....!ビビアン、ちょっといい?』

 

「えっ?....ひゃあっ!」

 

すると、タンザナイトはビビアンを後ろから持ち上げる。

 

戦闘機足(ブースターレッグ)』ガチャンッ!

 

「っ!....な、成程!そういうことですね!」

 

ビビアンがそう言うと、ビビアンのスカートの中に入っているバーニア装置を起動させ、タンザナイトの変形したジェットブースターで空中へ発進する。

 

茈幻蝶の飛翔針(パピオン・スティンガー)』っ!!*2

 

「私達の愛で貫くのです!」

 

 

ズドォォォォンッ!!

 

 

そのまま、加速の勢いで、エーテリアス達に突進し、ビビアンの傘で吹き飛ばす。

 

『よっと....』ガッチャン...

 

「はぁ....た、タンザナイト様の初めての共同作業...しかも、名前まで考えてくれたなんて....」ウットリ...

 

敵を全部倒したあと、タンザナイト達は着地し、ビビアンはさっきの行動でうっとりしていた。

 

「ちょっとービビアン?大丈夫?」

 

「はっ...!も、申し訳ありません!つ、ついタンザナイト様と一緒に攻撃できたことに、私うっとりしてたのです....と、取り敢えず、サクリファイスを探してみましょう!」

 

ビビアンが正気に戻り、辺りを探索するが、他に眠っているサクリファイスは発見できなかった。ビビアン達と相談し、一旦ホロウをでてから次の行動について話し合うことにした。ちょうどその時、電話が鳴り出した――

 

『「リン、ビビアン、タンザナイト。予想以上に時間がかかったようだけれど、何かあったのかい?」』

 

「市長様から渡されたいくつかの座標で、サクリファイスの休眠体は既に、ほとんどが失われていました。カミエル....讃頌会の人間が、自ら多くの休眠体を処分していたのです。理由はサッパリですが...」

 

『「讃頌会の人間がわざわざ休眠体を破壊する理由はなんだ...?」』

 

「ビビアンが言っていたことは本当だよ。私もこの目で見たし...」

 

「おまけに、その讃頌会の人間は....わたしのかつての知り合いなのです。ランドンが死んで、てっきり彼女も讃頌会を離れてと思っていました。まさか残ることを選ぶなんて思わなかったのです」

 

「『ビビアン....君は讃頌会には、何かしら関わりがあったのかい?』」

 

アキラがそう言うと、ビビアンの口から語り始める。

 

「小さい頃、私はしばらく讃頌会に身を寄せていたことがあります。当時、ランドンはこのエリアの讃頌会内部では、とても尊敬を集めている人物だったのです。やがてあまり多くのことが起こり、ランドン亡きあと、私はあの場所を後にしましたが.....」

 

「とにかく、わたしがサクリファイスを気にかけているのは、こうした縁があるからこそなのです。わたしは良く知っています。サクリファイスを生み出すために、もうすでに多くの命が犠牲になっていることを....ヤヌス区でサクリファイスが現れたと聞いたとき、わたしはひたすら不安でした」

 

「あの時、讃頌会で起こったことの再現となってはなりません。だからこそわたしはヒューゴに頼んでまずはサクリファイスのコアから調査を始めてもらったのです」

 

「『ビビアン....』」

 

と、アキラが慰めようとすると、ビビアンは止める。

 

「待ってください!今はまだ慰めのタイミングではないのです。私はただ、ことの経緯をご説明しているだけなのですから。目下、わたしたちにはもっと重要なことがあります。慰めについては...その、悲しい時は必ずパエトーン様とタンザナイト様によしよししてもらいますので!

 

『ブレねぇなお前』

 

「恐れながらパエトーン様とタンザナイト様、その時は私の為にお時間を作ってください!私、一度沈んだらなかなか浮き上がってきませんから」

 

「大丈夫、ちゃーんとあんたに上を向かせてみせるよ。そうなるまで一緒にいてあげる」

 

『...俺もな』

 

「は、はい...!では、今本題に戻りましょう。さきほどホロウで出会った、あのTOPS関係者二人が気になるのです」

 

『確か....『予備の計画』だったっけ?』

 

「はい、これは、最近もみ消されたいくつかのニュースと、関係があるように思われます。実は、レイヴンロック家が仕切る鉱区でこのほどの事故があり、多くの労働者が命を落としたそうなのですが...遺族に対して、基準をはるかに超える賠償金が支払われたことで、レイヴンロック家の責任を追及するような動きは起こりませんでした」

 

その言葉にタンザナイトは疑問を浮かべる。

 

『あー...?ちょっとそれ可笑しくない?確か今のレイヴンロック家の財政状況は最低ぐらいにまで落ちてなかったか?

(宝くじで小遣い稼ぎしてたしね)

 

「そうなのです。タンザナイト様の言う通り、それだけの多額の賠償金をポンと支払えたのは不思議ではありませんか?」

 

「言われてみると怪しいね...鉱区での事故って言っているけど、実は違う可能性もあったり?」

 

「はいなのです。労働者たちが亡くなった原因は、鉱山の事故ではないと睨んでいます。このことについて、古い友人たちを訪ねてみるつもりです。パエトーン様とタンザナイト様、お時間はありますか?彼らは六分街からそう遠くない場所にいるのです。できれば、一緒に行きたいのですが....」

 

「わかった。一緒に行こ!」

 

『いいよ、この後やることないし....』

 

そう言い、タンザナイト達はホロウから脱出し、古い友人と会うため、ルミナスクエアまで向かった......

*1
片足を八本の長い触手に変形し、相手にぶつける

*2
ビビアンのタッグ技、空中に飛び、相手に向かって突進し、ビビアンの傘で貫く技

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