今までのことを語らっていると、ビビアンはそうした出来事に関わってこそいなかったものの、その舞台となった場所を訪れていた....改めて新エリー都にはそこかしこに偶然が転がっていることを実感した。ついこの間知り合った人と知り合う機会が、実はこんなにあったのだ。
しばらく話していたら、食事の時間になっていた.....
「あれっ?この辺じゃなかったっけ....評判のお店でね、ずっと行きたかったんだ~!」
『おいおい....』
「.....パエトーン様、タンザナイト様!」
『ん?』
「えっ?どうしたの?」
と、ビビアンに呼ばれたので二人は振り返る。すると、ビビアンは恥ずかしくなって川辺の所に慌て視線を移し、言う。
「...その六番街で黒猫を見ました。郊外のハーモニカを聞いて、零号ホロウの外で....慰霊碑を訪れたりもしました。それは偶然ではなくて....」
Boooo――!!
バサバサッ....
船の気笛が鳴り、その影響で鳥たちが羽ばたく中でお互いに視線を見つめる。
「あなたたちを....」
ビビアンは、一気に二人の距離を縮まらせた。
「ずっと追いかけてて...やっと会えたのです」
「『.......』」
その姿にあっけにとられている二人だった。
ビビアンは二人に、そうなった経緯を話し始めた....
「小さい頃からずっと、わたしは不幸をもたらす子だと見なされてきました。いろいろな場所を転々としながら、たくさんの不幸を見てきたのです」
「わたしが涙を流すたび、誰かが不幸に見舞われる。そんな呪詛を数多と聞いて.....自分の涙を、そして存在そのものを憎んだのです」
「わたしを受け入れてくれた場所では、どこであろうと予期せぬ出来事が起きました。多くの場所を転々とし、その度に同じ結末を迎えて...もはやどこへ行けばいいのかも、分からなくなった....」
「そんなある晩、とあるスレッドで自分のことが議論されているのをみつけたのです。そこではわたしの知っている人も、知らない人も、わたしが呪いをもたらしたのだと決めつけて....」
「ある人は悪意から揶揄し、ある人は私に消えてほしいと願い、ある人は邪な憶測を広げ....まるで、わたしの存在そのものが災いであるかのようでした」
「そうしている内に陽が落ちて、新エリー都のあちこちに明かりが灯りはじめます。こんなにもたくさんの光があるのに、わたしはそのどれに向かうべきかわからない....そうだ、いっそこの光の間に消えてしまえばいいんだ、と.....」
「そうわたしが心に決めたときです。スマホが鳴りました。この世界が私にくれる最後の言葉、それが誰からのものなのか気になって、最後に、見ておこうと思ったのです.....」
「それは、あなたからのメッセージでした。パエトーン様」
ビビアンは透き通った声で、リンのことを指した。
「えっ...?私?」
「はい。もう一人のパエトーン様にも確認済みなのです!その期間、アカウントを使って投稿していたのはあなたのほうだと。ですが、きっとあなたは覚えていらっしゃらないと思います。あれは、何でもない日にネットに現れた、何でもない投稿にすぎないのですから」
「それでも、わたしはその夜、ようやく自分がどこへ向かうべきかを知ることができたのです――あなたが歩んだ道を歩き、あなたが見た景色を見たい。いつかあなたの前で、そのすべてを直接伝えられるときまで」
ビビアンは言い終わると、リンは慌てる様子でびびに聞いてくる。
「それで...その時、私なんて送ったっけ....ぜんぜん思い出せない!」
『俺も気になる、それ』
(わたしも~)
「そ、それは....それは、パエトーン様がご自分で思い出してください!私の口からは言えないのです!」
「えー!なんでそうなるの!?」
『ははは....』
これにはタンザナイトも笑うしかなかった。
「パエトーン様、タンザナイト様、わたしは感謝しているのです。ただ、あなた達の御言葉や姿勢などで私を救ってくださっただけでなく――わたしにこの道を歩ませ、今あなたの目の前にいる『ビビアン』にしてくださった....そのことに」
「パエトーン様、タンザナイト様。わたしは今の自分が、とても好きなのです」
川面から吹く風がビビアンの髪を巻き上げ、彼女の顔をなでる。彼女の目に宿った光は跳ねるように輝きながら、過去の良いこと、悪いこと、幸福なこと、悲しいことを語りたくてたまらないかのようで―――その感情と過去が交錯するさまは、これまで彼女が歩んできた道を彷彿とさせた.....
「先ほどライカンさんから連絡がありました。どうやら進展があったようなのです。今からビデオ屋に戻って、確認しましょう」
『本当か!...なら急ぐか』
そう言い、タンザナイト達は急いで『RandomPlay』へ向かったのであった。
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「リン、おかえり。少し前、ライカンさんに言われたんだ。君達が戻ったら、オンラインで話したいことがあるそうだよ。さっそくかけてしまうよ」
そう言って、アキラはライカンへ通信を繋げる。
「プロキシ様、ビビアン様、タンザナイト様。リナに護送させた男性ですが、すでに落ち着きを取り戻されました。私共は彼の説明の元に、ハルトマンがサクリファイスのコアを隠している場所を特定しましてございます」
「また、これも彼からの情報ですが、はるはあのコアを何やら取引に使うつもりであるとか。おそらくその相手となるのは、讃頌会の一員でございましょう」
「やはり、そうだったのですね....ですが、コアの隠し場所が特定済みなのであれば、取引の前にかすめ取ってしまえばいいだけなのです」
その言葉にライカンは賛同する。
「正しく。可能であれば、一刻も早く目標地点へと赴き、サクリファイスのコアを手に入れて頂きたいのでございます」
「うん。私達に任せて!」
『おう、任せろ!』
と、二人は自信満々に言う。
「申し訳ございませんが、こちらはまだ処理しなければならないことがあり....コアの奪還については皆様にお任せするほかありません。ですが、以前市長閣下がお約束してくださった『支援者』が、今回は皆様の一助になることと思います。座標は彼女に伝えてありますので、目標地点にて皆様と合流できるでしょう。皆様のご武運をお祈りしております」
ライカンはそう言い通信を切る。
「パエトーン様、タンザナイト様、準備ができたらすぐに出発しましょう。ハルトマンに先んじて、サクリファイスのコアを手に入れるのです」
「うん、出発しよう!」
『おう!腕が鳴るぜ!』
そうして、タンザナイト達はハルトマンがコアを隠してるとされている場所へ早急に向かうのであった.....