ホロウに入った三人は、辺りを見渡すと、そこにハルトマンとカミエルの姿があった。
「サクリファイスのコアは、どこにあるのですか?」
「そんな大事なもの、俺が自ら持ち歩いていると思うか?カミエル。それに、レイヴンロック家と讃頌会が協力を結んでもう何年にもなるが....俺とディナ様はほとんど面識がない。サクリファイスのコアは、此度の協力に対する俺からの誠意だ。ディナ様のほうも、それに見合った誠意を示すべきだと思うが?」
「今日は
「もちろんだとも。では、コアを置いている場所まで案内しよう。お前の確認が済んだら、ディナ様を呼んで協議をしようじゃないか」
「はい。案内してください」
カミエルがそう言い、ハルトマンと共にコアがあるところまで移動し始めた。
「如何やらハルトマンは自分の値をさらに吊り上げようとしているみたいなのです。欲の皮が突っ張りすぎて、身の丈をこえてしまいそうです。ですが、サクリファイスのコアという重要なものを引き取るのに、どうしてカミエル一人を派遣したのでしょう....」
「それにカミエルはどうやら、ハルトマンとディナが直接会うことを避けているように見えます。これも気になるのです」
「ハルトマンが言ってた、ディナって人は誰?」
『話の内容的に讃頌会の重要な役割のような感じだが....』
と、二人は話に出てきた『ディナ』という人物に疑問を浮かべる。
「ええ...一応は....パエトーン様、タンザナイト様、急ぎ出発しましょう。ハルトマンより先に、コアの隠し場所に到達しなければいけません」
「近道はもう策定したけど、途中でエーテリアスが出るよ。その時は二人に任せるからね」
『おう、まかせな!』
「安心して任せてほしいのです。パエトーン様のご安全は、わたしが守ってみせます」
そう言い、ビビアン達はハルトマンより先にコアを奪うため、出発した。
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数分後....屋上につくと、箱の周りに手下が配置されてるのを目にする。
「箱の中身をこちらに渡してください。さもなくば、容赦しません」
「おうおう、大きく出たなお嬢さん...そう言うのは俺を倒してから――」
『『
「アベシッ!?」
喋っている途中で、タンザナイトが足からブーメランを生成し、切り離して投げつけ、相手にぶつけた。
「なっ...!まずいぞ、『蒼光の騎士』がいる!」
「おい早く急げ!コアを守る――」
『『
『ぎゃぁぁぁぁっ!?』
続けざまにタンザナイトは右手の五本指を一つずつ龍の頭に変え、狙いをさざめて発射し、その場にいた手下たちをものの数秒で完封した。
『よし...いっちょ上がり!』
「凄い...どんどん繊細な動きができてる...」
「これはグーなのです、タンザナイト様!さぁ早くサクリファイスのコアを!」
ビビアンがそう言って、サクリファイスのコアが入っているとされている箱を開ける――が、中は空っぽだった。
「っ!大変です。パエトーン様、タンザナイト様、箱の中は空っぽなのです!」
「『ええっ!?』」
これには二人も驚くのだった。
「まさか....ハルトマンは最初からここにコアが置いていなかったのでしょうか?」
「お前達、どうやってここを嗅ぎつけた!?」
と、ここでハルトマンが現れた。
「箱の中にあったコアはどこへやった?お前達が持っているんじゃないのか!?」
『?』
「ハルトマン様、これがあなたの言っていた『安全な隠し場所』なのですか?」
皆が対峙している時、突然背後から声が聞こえてきた――その人物は、赤い髪をしており見た目がゴスロリチックな服を着た女性がいた。
「元気そうで何よりね、ビビアン」
「ディナ!」
「うふふ...!うれしい、私のこと覚えててくれて...あなたがあんまり元気そうだから、もう昔のことなんて綺麗サッパリ忘れちゃったのかと思ってたわ!どうしちゃったの?あなたのせいで死んだ人たちが、毎晩夢枕に立ってたまらないんじゃなかったの?」
『っ....』ピクッ
「あ、あの時私は本当に何も知らな....!」
「知らなかった?なら、お父様の愛と関心、そしてみんなからの賞賛を一身に受けていたあのとき....どうしてそう言わなかったの?」
「ち、ちが....」
ビビアンが弱々しくなっていると、カミエルが話を割って入って来る。
「ディナ様、ビビアンお嬢様はあの時....」
「お黙りカミエル。そもそも、なぜ貴方がハルトマンと一緒にいるの?私、そうしろって言ったかしら?」
と、笑っていたディナはカミエルが入って来た瞬間、氷のように冷たい視線に切り替わり、言い放つ。
「わ...わたしはただ、先にサクリファイスのコアについて、真贋を確かめるべきだと思ったのです。ハルトマン様が何か小細工を弄するのではないかと....」
「そうなの?ああカミエル、あなたの忠義って本当にすてき....私ったらてっきり――あのとき、ビビアンの与太話を鵜呑みにしてお父様を殺したみたいに....私を殺す計画でも立ててるのかと思っちゃった」
『「!?」』
「滅相もありません、ディナ様」
「裏切ろうなんて思わないでカミエル。あの時しでかしたことで、あなたは私に大きな借りがあるんだから。けど、あなたの心配はもっともね。だってこのコア――たしかに偽物だもの」
「「『えっ?』」」
コアが偽物だと言ったことに、三人だけではなくハルトマンも驚く。
「そ、そんなはずない!このコアは俺がヒューゴから奪ったものだ!何の証拠もなく、偽物などと....言いがかりもいいとこだろうが!」
「ふふ、おバカさん....」
ディナはハルトマンたちのそばに歩み寄ると、彼の部下の露出した傷口にコアをあてがい、表情ひとつ変えずに押し込んだ。部下が地面に倒れて絶句するなか、彼女は不快そうに手を拭っただけだった。
「サクリファイスのコアはね、体内のエーテル粒子を短時間で極限まで増幅されるの。けど御覧なさい、あなたの部下を。ただ痛い痛いとわめいてるだけでしょう....分かったらとっととこの役立たずを黙らせて。お父様が始まりの主に捧げた作品は、こんなお粗末なものじゃなかったわ」
(というかさっきのコア、お前が持ってたのかよ!!)
「なら、本物のコアは....」
「あなたはどう思う、ビビアン?本物のコアはどこにあるの?」
「知りません。本物のコアを持っていたとして、真っ先に砕いていたでしょうけど...ディナ、あなたはサクリファイスがなんであるか、これ以上ないくらいわかっているはずなのです!彼らにあんな『祝福』が授けられたこと自体、間違いだったというのも!」
「間違い?」
すると、ディナは可笑しいと笑い飛ばす。
「誰が『祝福』を授かるか...それを決めたのは、あなたなのに?貴方が涙を流さなければ、彼らが不幸に見舞われることもなかった。でしょう?今さら善人ぶらないでビビアン。あの人たちの運命を決めたのはあなた。あなたが、彼らに災いをもたらしたのよ。」
「ランドンにとって、あれは犠牲者を運ぶための口実に過ぎませんでした!わたしの涙に関係なく、生きた人間であれば誰しもが、サクリファイスの被験者として扱われたはずです!わかっているでしょうディナ!ランドンは最終的に、あなたを犠牲にすることさえ厭わなかった――」
「黙れ、黙れ、黙れ....!すべてはお父様自身の理想のためだった!なのにビビアン、どうしてあなたはいつも私のすべてを台無しにするの?」
と、努もった声が耳にこだまする。
「昔も今も.....あなたはいつも私の邪魔をする!あと少し、ほんの少しで、お父様のご遺志をはたせるところだったのに!」
『.....つまらねぇ』
「.....はっ?」
「っ!た、タンザナイト様?」
呟いた方に顔を向けると、タンザナイトがいた。
『予言したのがビビアンで....目的を成功できなかったのが、お前だろ?ただ、それだけだろ...!』
「っ.....!」ピキッ
「タンザナイト様.....」
と、タンザナイトは呆れながらディナの言葉を鼻で笑った。
その行為にディナは眉がピクピクと動く....
「このっ...『祝福』を授かった....サクリファイスもどきの癖に......この私に喧嘩売ろうってことかしらっ....?」ピクピクッ....
『――何度だって喧嘩売ってやるよ!偉いからってふんぞり返ってんじゃねぇ!!俺が
「―――っ」
「タンザナイト....様」ウルッ....
その力強い言葉にビビアンは一筋の涙が零れる....
「.....っ!ならここでビビアン諸共、死ね!!」
ディナが言い終わると当時に、付近から爆発音が数回響き渡り、地面に揺れ始めた。如何やら大量のエーテリアスが急速に接近しているらしい。
ハルトマンは慌てて部下に準備していた車を出すよう言い、カミエルとディナを連れて走り去った。
「大変....沢山のエーテリアスが接近してる!」
『迎え撃つぞ!リン達に近づけさせねぇ!』スッ
「私も....助太刀します!」
二人は戦闘態勢に入り、接近するエーテリアス達を退治し始めるのだった。
「.....」
その光景を見ていたひとりの白髪の女性がタンザナイト達を見つめていた.....